Quantcast
Channel: japan-architects.com
Viewing all 584 articles
Browse latest View live

伊東豊雄、皆川明、名和晃平が参加の「フランク・ロイド・ライトへのオマージュ」展

$
0
0
東京 天王洲T-ART HALL(寺田倉庫内)で11月22日より開催の「フランク・ロイド・ライトへのオマージュ/HOMMAGE TO FRANK LLOYD WRIGHT」展オープニングに行って来ました。


本展は2017年にフランク・ロイド・ライト生誕150年を記念してスタートしたYAMAGIWA主催の企画展の第二弾である。YAMAGIWAは1994年からライトの照明の製造・販売をしており、ライトのデザインの素晴らしさを伝えるとともに、今日まで復刻を続けてきたYAMAGIWAのものづくりを知ってもらう機会になればと企画。


今回も各方面で活躍する作家3名を迎え、フランク・ロイド・ライトへのオマージュとして、名作TALIESIN 2を独自の解釈でデザインしたものを展示販売する。参加作家は、伊東豊雄 (建築家)、皆川明 (デザイナー)、 名和晃平 (彫刻家)。


伊東豊雄「TALIESIN POLYGON」 ¥1,200,000 受注品
素材をアクリルに変え現代的に表現。セードと遮光板の連続から成るライトのタリアセンに対し、3種の多面体による構成を考えた。 


光が透過する面と透過しない面があり見る角度により異なる表情を見せるTALIESIN POLYGON。調光によりランダムに点滅するモードなども楽しめる。


伊東豊雄氏
「構成はコンペで参加したノルウェーのダイクマン中央図書館から発想を得ました。家の明かりが連続していくような照明を作ろうと思いました」 


皆川明「TALIESIN+」¥38,000
オリジナルのタリアセンに僅かに装飾を加える(プラスする)ことを考え、自由に付け外しができるパーツを提案。


木に見立て、鳥がとまる様子や木漏れ日を楽しむコンセプト。


12ピース入りのパーツ。
遮光板の寸法が白銀比(1:√2)であることに着目し、1枚の遮光板を同じ比率で分割した。


名和晃平 「PARTICLE-T2」受注品
光を反射する黒色炭化ケイ素粒子で覆った作品。空間に合わせられるよう2段ずつ増える計10パターンの高さで展開。


地面から生命力が溢れ立ち上がるようなイメージ。

昨年の作家3名(坂茂、橋本夕紀夫、groovisions)によるオマージュ作品を展示したコーナーもあり併せて鑑賞できる。

3作品をモチーフにした愛らしいフィンガーフードたち。


【フランク・ロイド・ライトへのオマージュ】
会期:2018年11月22日~11月25日
会場:T-ART HALL 東京都品川区東品川2-6-10
詳細:http://www.yamagiwa.co.jp/


***************
******
****
japan-architects.com 
日本の建築家・デザイナーと世界をリンク
Web : www.japan-architects.com
Twitter : @JapanArchitects 

Facebook : japanarchitects

*********************
****
Reproduction of any of these images and texts without written permission is prohibited. Copyright: japan-architects.com




「7人の若手建築家によるサーファーの家展」レポート

$
0
0
7名の建築家が鎌倉・藤沢エリアを対象に、サーファーのための木造住宅を提案する展覧会「7人の若手建築家によるサーファーの家展」に行って来ました。


会場は大船駅構内のホームギャラリー。


そして湘南モノレール全車両の中吊り2枠。


参加建築家は大野力(sinato)、西田司(オンデザイン)、川添善行(空間構想一級建築士事務所)海法圭(海法圭建築設計事務所)、髙濱史子(髙濱史子建築設計事務所)、田辺雄之(田辺雄之建築設計事務所)伊藤立平(伊藤立平建築設計事務所)。

沿線観光マップ。鎌倉市を囲む3つの鉄道(湘南モノレール、江ノ島電鉄、横須賀線)はひとつのリングを形成しているのがわかる。このリングを鎌倉・藤沢リングと呼び、観光×鉄道×建築という三つの要素を掛け合わせることによって、この3つの鉄道とその周辺の可能性を探り既存資源を生かした楽しい周遊の拠点をつくろうという提案を行っているのが2015年設立「鎌倉・藤沢リングプロジェクト研究会」。

本展を主催するにあたり、建築設計というやや専門的な分野の取り組みを、地域の人々にわかりやすく親しめる形で伝えることをひとつの目的としたという。


「海と風と人と」伊藤立平/伊藤立平建築設計事務所
計画地は自身の事務所も構える七里ヶ浜。丘を登った眺めのよい中腹で太陽、風、海と生活が一体となるような住む力を呼び起こす家。


「展望屋根の家」西田司/伊藤健吾/吉村梓/田中比呂夢(オンデザインパートナーズ
毎朝波をチェックするために展望デッキに上るサーファーが、その途中の様々な空間をも楽しむことができる家。中吊り広告になることを意識して広告的にデザインしたそう。


「SWELL HOUSE」田辺雄之/田辺雄之建築設計事務所
波のうねりのような異なる半径の円によって平面的、断面的に切り取られた住宅。3本の塔は、オフショアの風の向きと太陽からの光を考慮した夏の塔と冬の塔、そしてうねりを確認できる見晴らし塔。


鎌倉にある田辺雄之さんの事務所では、期間中提案した住宅の模型を展示している。


「SWELL HOUSE」1/30模型。塔をコンセプトにしたプロジェクトは実際に長野県で設計しているそうだ。


左から田辺雄之、伊藤立平、オンデザインの伊藤健吾、田中比呂夢の各氏。

【7人の若手建築家によるサーファーの家展】
会期:2018年11月17日~11月23日
会場:会期中運行の湘南モノレール全車両、湘南モノレール大船駅構内のHomeギャラリー
詳細:http://kamafujiring.com/housingexhibition2018/


***************
******
****
japan-architects.com 
日本の建築家・デザイナーと世界をリンク
Web : www.japan-architects.com
Twitter : @JapanArchitects 

Facebook : japanarchitects

*********************
****
Reproduction of any of these images and texts without written permission is prohibited. Copyright: japan-architects.com

岸和郎による集合住宅のリノベーション「書院/Third-place」

$
0
0
岸和郎(K.ASSOCIATES / Architects)による東京の集合住宅のリノベーション「書院/Third-place」を見学してきました。
2009年に手掛けたプロジェクトで、70年代に建てられた集合住宅の一住戸をリノベーションした。


玄関を入ると大理石張りのクランク状アプローチとし、シーンの切り替えを演出。


玄関から三回折れ曲り現れるリビング・オフィス。
施主からは住居であると同時に、オフィス、立礼茶席としての機能を求められた。


少ない要望ではあるが、実際のところどのようにデザインを進めるか考えるうちに、住居とオフィス、そして茶室とも密接な書院造という日本に古来よりある様式に至ったという。
総漆喰の壁と天井、そして奥に床と書院。


向かい合わせにモダンな床と、右手に小さな付書院。


空間中央の、岸さんがデザインした立礼卓(りゅうれいじょく)は、お茶席にもオフィスワークにも使える。


伝統を意識しながらも岸さんオリジナルの解釈がなされた床。吊り棚にはお茶道具と並んで、倉俣史朗の一輪挿し、バリ島で見つけたシルク織物を張った戸棚。
落掛(おとしがけ)にはアルミハニカムパネルを用い、裏側には間接照明が備わる。
書院にも大胆にバリのバティックをあしらい、掛け軸代わりに杉本博司の写真が掛かる。


向かいの床はハレを演出するビビッドなオレンジのスタッコ仕上げ。
そして雪見障子と付書院。


倉俣史朗に影響を受けていることを隠さない岸さんが、カッシーナのためにデザインしたソファ。


背後には黒さび仕上げのスチール板の壁。裏手は浴室やキッチンといった水回り。


床(ゆか)は伝説の数寄屋大工、中村外二に作ってもらった栗材のフローリング。同じ木から削られた付き板で木目が連続している。


岸和郎さん。「このThird placeは都心に住むクライアントのための常の住居、第一の住宅でもなければ、別荘、すなわち二番目の住宅でもありません。これはThird Place、都市居住者のための三番目の場所としてデザインされました。時にくつろぎ、時には仕事の場、また立礼のお茶席としても使えるし、またプライベートなパーティーにも使える場所としてデザインしましたが、それはよく考えてみると、日本の書院の空間なのではないか、そうか、それならば現代の書院として設計してみようと考えたのがこのプロジェクトです。」


【書院/Third-place】
設計監理:岸和郎+K.ASSOCIATES / Architects
施工:斉藤工業
延床面積:78m2


【関連記事】
岸和郎展「京都に還る_home away from home」/ギャラリー・間 レポート
岸和郎プロデュースによる「New Japan Standard」展レポート

**************************
japan-architects.com 
日本の建築家・デザイナーと世界をリンク
Web : www.japan-architects.com
Twitter : @JapanArchitects 

Facebook : japanarchitects

***************
***********
Reproduction of any of these images and texts without written permission is prohibited. Copyright: japan-architects.com

山﨑健太郎のデザイン監修による京都の「スパ&ホテル水春 松井山手」

$
0
0
山﨑健太郎/山﨑健太郎デザインワークショップがデザインアーキテクト(デザイン監修)として携わった、京都 京田辺市の温泉複合施設「スパ&ホテル水春 松井山手」を見学してきました。建築設計はプレイス総合計画。
オープンは12月7日。


敷地面積8,300m2、延床面積8,900m2。S造+一部RC造、地下1階、地上5階建て。
スパ、ホテル、フィットネス、レストランなどから成る。


高速道路(第二京阪道路)のトンネル上で、南北が高速のパーキングエリアに挟まれるというかなりユニークな敷地に位置している。


さらに本線トンネルの上部に、ボックスカルバートで構築されたトンネルが既存。その上に建物が建っているのだ。地面からボックスカルバートがせり上がり、段状に見えている。
その異なる上面レベルを利用した立体的な構成となっており、左(北)からエントランス&レストラン、ホテル、ロビー&レストラン、スパ、露天浴場&フィットネスと並ぶ。


山﨑さんがデザインを担当したのは、正面のエントランス棟とホテル棟の外装、エントランスからフロントやロビーの共用部、和食レストラン、イタリアンレストラン、ホテル、フィットネス、そして庭だ。


大きな庇で伸びやかな印象のエントランスアプローチ。


エントランスを入るとホテルのフロント。


左を向くと施設奥へ進み、スパのフロント、左奥に和食レストランと続き、そこから右を向くとロビーへと続く。(当日は各設備の搬入や残工事が行われていたため資材が多い)


和食レストラン。


水平垂直の構成が美しい店内。施設北側正面の大開口を持つ。


小上がりの座敷席はカウンターとボックス席。


あまり “和” に寄りすぎないようにしながら4種類の性格の異なる客席を選べる。
手前は10人掛けの大テーブルで、店のアイコンになるようなゴールドの重厚な天板とした。


左から座敷席、テーブル席、ボックス席とレベル差が付けられており、どの席からも外を望むことができる。
黒い天井はそのまま庇へと連続し、伸びやかさを強調。


夕景。組木のパーティションも相まって柔らかな明かりに包まれる。
外構に植えたばかりの竹が見えるが、暫くすれば景色も変わってくるだろう。


ロビー。高さ7.5m、幅22.5mの大空間と天井までの大開口。外には水盤と四季折々に表情を変える木々を植えた庭が広がる。
ソファはリーンロゼ、フリッツハンセン、vitraなどから形状や色を様々に選んだので、客はお気に入りのソファ見つけるように楽しむことができる。


後ろを振り向くとイタリアンレストラン。オープンキッチンでガヤガヤと賑やかに食べたり飲んだりするカジュアルな雰囲気だが、本格的なイタリアンやワインが楽しめるそうだ。


2階からロビーを見ながらホテル棟へ。真西を向いているため夕焼けが望めるという。
天井や軒裏には高反射のアルポリックを張り、ロビーや景色を映し込んでいる。


クイーンシングルルーム。ダークで落ち着いた雰囲気に、家具の一部に差し色を入れ、ビジネス利用にも対応しながらリゾート感も出している。


窓際の水回りは一転、ホワイトと全面開口で非常に明るい。曇りの入ったプロフィリットガラスとブラインドが付き、夜になると重要な演出効果をもたらすことが後で分かる。


デラックススイート。折上げ天井や造り付けソファなどで、一般の客室とは大きく異なる。右の障子を開けると水回りへ。


ゆったりとしたツインベッド。ベッド周りはなぐり加工のフローリング。黒御影で引き締めた窓際に空が映り込む。


半屋外の内風呂には温泉が流れる。洗面ボウルや水栓はDuravitを採用している。


1階まで降りてきてフィットネスルーム。トレーニングマシンに呼応するように、天井を張らずにメタリックな配管や設備を現しに。


2階からアプローチするフィットネスルームは小山のようなステップを設えた。自分とマシンだけになりがちなフィットネスルームにおいて、目線が高くなる休憩スペースから空間全体を眺めることができるアイコン的な存在となっている。


インストラクターも開業に向けた準備に余念がない。


各所の撮影を終えるとすっかり日が傾き、ロビーが全く違う表情を見せ始めた。




天井のアルポリックがその効果を発揮している。


一般には公開されないが、庭側から見ると劇場の舞台のように見える。


外観もその姿を一変させた。


プロフィリットガラスと白いブラインドにより、全体が淡い光に包まれる。


スパ部分は山﨑さんの担当ではないが少し紹介。こちらは温泉の受付。


内風呂の他に様々な湯が楽しめる露天風呂。


こちらはいくつものタイプが選べる岩盤浴エリア。


岩盤浴室のひとつ。


山﨑健太郎さん。「事業主さんは、これまで多くの温浴施設を展開されてきました。今回の計画では、温浴機能に加えて、スパやフィットネス、レストランの従来事業と新たにホテル事業を加えた複合施設の計画です。施設のへそであるロビーは、昔の銭湯にある富士山を眺めるように、大きな水盤越しに庭を眺められる空間を作りました。いろんな世代の利用者さんが共有できる風景と今回のプロジェクトの柔らかい象徴を目指しました。」

【スパ&ホテル水春 松井山手】
・デザイン監修:山﨑健太郎デザインワークショップ
・建築設計:プレイス総合計画
・施工:東洋建設
スパ&ホテル水春 松井山手


*************************
japan-architects.com 
日本の建築家・デザイナーと世界をリンク
Web : www.japan-architects.com
Twitter : @JapanArchitects 

Facebook : japanarchitects

*********************
****
Reproduction of any of these images and texts without written permission is prohibited. Copyright: japan-architects.com

ニコ設計室による杉並区の「麻生さんの家」

$
0
0
西久保毅人/ニコ設計室による杉並区の「麻生さんの家」を見学してきました。


敷地面積120m2、建築面積51m2、延床面積88m2。木造2階建て。
旗竿敷地に建っており、長いアプローチの先に丸いたたきのポーチと、斜めに角度を付けた玄関が出迎える。


洗い出しの土間が納戸まで連続。沓脱石がアクセントに。


1階はLDKと水回り。積極的に色を使うニコ設計らしい空間が広がる。


DKの上は天井が下がり、リビング側は天井が高めで南北に開口が設けられ開放的だ。
当日は吉祥寺の亀岡珈琲さんがコーヒーを振る舞い、部屋中がコーヒーの香りに包まれていた。




土地を購入した際いくつか既存の庭木を残し、縁側のようなデッキを設えた。
軒には一部穴を空け、光を取り込みながら借景の緑がよく見えるようにした。


階段の下に犬か猫の部屋を作ってあるのかと思いきや、ルンバ(自動掃除機)の部屋だそうだ。


2階は1階とは対照的に細かく部屋に分かれている。階段室の上には足を垂らして座る書斎で、ニコ設計の住宅ではしばしば登場する人気のプランだ。




温もりある仕上げのトイレ。スペースのない場合は無理をせずタンク式を採用。


寝室。暫くはここで家族皆で布団を敷いて寝るという。右側に予備室がもう一部屋ある。そして1階の天井が下がっていた部分は、2層にしてロフトを設けた。レベル操作をすることで多くの居場所が生まれている。


下段は客間としても使えるフリールームで、左の寝室とは引戸で仕切ることができる。奥のにじり口から先ほどの書斎に通じる。


階段室なのか書斎なのか曖昧な空間が面白い。


西久保毅人さん(右)と、ニコ設計室の皆さん。昨年から事務所に在籍するフランス人のマリオン・コンラディさんが初めて担当した。

【麻生さんの家】
設計監理:ニコ設計室
構造設計:筬島建築設計事務所
施工:宮嶋工務店


*************************
japan-architects.com 
日本の建築家・デザイナーと世界をリンク
Web : www.japan-architects.com
Twitter : @JapanArchitects 

Facebook : japanarchitects

*********************
****
Reproduction of any of these images and texts without written permission is prohibited. Copyright: japan-architects.com

田根剛による会場デザイン「CITIZEN “We Celebrate Time” 100周年展」

$
0
0
12月7日より南青山のスパイラルガーデンにて開催される、田根剛が会場デザインを手掛けた「CITIZEN “We Celebrate Time” 100周年展」のプレス内覧会に行ってきました。


展覧会概要:
「シチズンは、1918年に創業し、今年100周年を迎えました。シチズン時計の100年の歴史と、これから向う未来、そして、ここにある『今』、私達を取り巻く全てを祝福し、喜びと感謝をより多くの方々と共有するために『CITIZEN “We Celebrate Time” 100周年展』を開催いたします。
6年に渡り『時とは何か?』を共に問い続けてきた建築家の田根剛氏(Atelier Tsuyoshi Tane Architects)と、シチズンの時計メーカーとしての信念を表現する展示空間を、好評を博した2014年に引き続き、スパイラルガーデンにて展開します。
シチズン時計が考える、時間と時計の『今』を是非ご覧ください。」


〈LIGHT is TIME – We Celebrate Time ver.〉
メインのインスタレーションは恒例の、シチズンの腕時計の基板による。


その基板を今回は72,000個使用した。72,000という数字は2014年に同じくスパイラルで開催した際の入場者数であり、時間の単位12の倍数だという。
見る位置が少し変わると幾何学的な模様が無限に現れる。


今回現れたのは、この刀でズバッと切ったように見えるアングルだ。


直線が消失点に向かっていくような見え方も。


会場に行くと分かるのだが、今回は斜めの円の連続による表現かと思いきや、写真のように四角形が斜めに配置されたのが最小単位で、これらの連続をスパイラルガーデンの円に沿って並べたとのこと。
幾何学(矩形)という基本形は実は使いたくなかったと明かす田根さん。ちょっとした狂いが簡単に目立ち、ごまかしが効かないためだ。
しかし時計作りに精密な調整=チューニングは不可欠。この展示でも精密さを表現するためにも挑戦したという。


中央には「Watch is a product that has a life. – 時計は生命を宿した製品です。」と書かれた台と、周囲に60個のムーブメントが並ぶ。
人間が作るプロダクトで、人間の意思に関係なく、一度動き出すと壊れるまで(或いはエネルギーがなくなるまで)動き続ける時計は、一種の生命のような存在ではないか、という表現。


固定されずに置かれただけのムーブメント。自分の力で小刻みに動き続けている様は確かに小さな生き物のようだ。


〈Synchronized Time〉
20世紀は時を進め、時間を効率化、未来を予測し、時代を推進してきた。グローバル化の時代、地球の裏側でも同じ時間が瞬時に共有される=シンクロニシティとして、同じ1秒という単位で様々な出来事を切り取った。






エスプラナードではシチズンのもの作り、歴史などを紹介。

田根剛さん。70時間連続の設営作業だったそうだ。
「シチズンさんとは、こちらから一方的な提案ではなく、何度も何度も時間を掛けながらワークショップを繰り返しながら練り上げていきました。時を正確に刻む、そのための技術がどれで凄いことであり、その "時"がどれだけの意味を持つのか、当たり前のことを美しく表現しましたので、是非実際に会場にいらして下さい。」

【CITIZEN “We Celebrate Time” 100周年展】
会場:スパイラルガーデン(東京都港区南青山5-6-23)
会期:12月7日~12月16日、11:00~20:00(※会期中無休)
詳細:https://citizen.jp/100th/event/spiral/index.html

連携企画
【田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future ─ Digging & Building】
会場:東京オペラシティ アートギャラリー(新宿区西新宿3-20-2)
会期:2018年10月19日〜12月24日
詳細:https://www.operacity.jp/ag/index.php

連携企画
【田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future―Search & Research】
会場:TOTOギャラリー・間(港区南青山1-24-3)
会期:2018年10月18日~12月23日
詳細:https://jp.toto.com/gallerma/ex181018/index.htm


*************************
japan-architects.com 
日本の建築家・デザイナーと世界をリンク
Web : www.japan-architects.com
Twitter : @JapanArchitects 

Facebook : japanarchitects

*********************
****
Reproduction of any of these images and texts without written permission is prohibited. Copyright: japan-architects.com

arbolによる練馬区の住宅「8house(はちハウス)」

$
0
0
堤庸策+堤円佳/arbol(アルボル)による東京都練馬区の住宅「8house(はちハウス)」を見学してきました。
大阪をベースにするarbolが、東京で初めて手掛けたプロジェクト。

敷地面積83m2、建築面積41m2、延床面積86m2(容積対象延床面積:74m2)。木造2階建て。
第一種低層でかつ上記のスペックに、家族5人と、親世帯2人の計7人が住まう二世帯住宅だ。(来年もう一人生まれ8人に)
「はじめ電話で依頼内容を聞いたときは聞き間違いなのかと思った。」と堤さん。聞き間違いでないことが分かり、非常に難しいプログラムで挑戦しがいがあるプロジェクト、"それでこそ建築"と思い引き受けたそうだ。
ちなみに「8house(はちハウス)」とは施主の名前に「八」があり、ファサードのデザインが「8」の字を描いているのをはじめ、構成に「8」の字を用いているためだ。

 ガルバリウム鋼板の波板は外壁だけに留まらず、柱や梁にも巻き付けた。
法定建蔽率50%ながら敷地一杯に建っているのは、2階バルコニーがデッキ張りでスリットを開け、雨が落ちるようにしたためガレージ部分の多くが建蔽に算入されていないため。

役物を使わずに曲げた角に合わせ、笠木にもRが付けられている。
そして気になる開口部はテント膜が張られているのだ。

二世帯だが玄関は一つで引戸で出入り。8人住まいの玄関としてはかなり小振りだ。正面が浴室で二世帯の共用部としてスポット一灯で象徴的な空間とした。

1階は親世帯。収納を兼ねた大きなテーブルがDKの中心に据えられる。
右奥がお母さん、左奥がお父さんの寝室。

お母さんの部屋。専用の洗面ボウルが備わる。

表の植栽やこの中庭は、大阪のグリーンスペースが担当した。
テント膜はこちらにも使われており、塀で覆われた硬さがなく、光も透過するので圧迫感を軽減している。

2階LDK。6人で暮らすストイックだが、細かなルールを設けながら緻密にデザインされた空間。床の目地や柱、家具の位置、建具や収納の幅・高さなどお気付きの点があるだろうか。

1階に見えた中庭は、2階でも光を取り込みながら、空間に緑を添える重要な装置だ。
左の壁に沿って、設備を並べ空間を有効利用。奥が主寝室となる。
個室はコンパクトにし、LDKをできるだけ広く取り家族がいつも顔を合わせられるようにした。右の壁にテレビ代わりにプロジェクターを投影する。
壁・天井はマーブルフィールの左官仕上げでしっとりとしている。


オールステンレスのキッチン。Mieleの食洗機と、施主が選んだKOHLERの水栓。
キッチンの左に洗濯乾燥機が納まり、その上の戸の中が物干しスペースになる。物干しスペースの中には窓もあり、24時間換気の吹き出し口もある。


主寝室。ダブルベッドを置いてプラスアルファの広さ。

幅3mある古材の天板を使ったダイニングテーブル。脚の部分は製作で1階同様収納が備わるテーブルだ。
良く見るとダウンライトが対角線を結ぶように配置されている。


リビングスペース側。洗面室は設けられないので、洗面台がリビングスペースに露出している。奥に子ども室。

子ども室。下に中学生のお兄ちゃん、上に小学生と幼児の女の子が寝るという。一応ロールスクリーンを用いてプライバシーを確保できるようになっているが、数年後いよいよ手狭になった場合は、ガレージ横のスペース(この部屋の下)に離れを作ろうかと施主は考えている。
筆者の左手前に小さなクローゼットがあるが、このご家族は基本的に非常に物が少ないコンパクトな生活をしているので、この計画が成立するのだ。

バルコニー。サッシュはスチールの製作で黒皮塗装がされている。
不思議なもので、テント膜で覆われていると隙間があることと物理的に薄いためか、閉鎖感がとても少ない。

大阪からオープンハウス開催のため上京した堤一家。「今回の条件は、第一種低層、二世帯住宅、ガレージ付き等と制約がある中で、間口6m、奥行き13m、の敷地を1650×2500グリットで区切り、立体で考えることにより設計の糸口が掴めた気がします。」

【8house】
設計監理:arbol
構造設計:土屋設計
施工:栄港建設
造園:GREENSPACE


**************************
japan-architects.com 
日本の建築家・デザイナーと世界をリンク
Web : www.japan-architects.com
Twitter : @JapanArchitects 

Facebook : japanarchitects

***************
***********
Reproduction of any of these images and texts without written permission is prohibited. Copyright: japan-architects.com

相坂研介による「上北沢の住宅」

$
0
0
相坂研介(相坂研介設計アトリエ)による東京都世田谷区の住宅「上北沢の住宅」を見学してきました。


敷地面積150m2、建築面積89m2、延床面積246m2。RC造、地下1階、地上3階建て。
打ち放しの塀に囲まれながら、内側の住居棟が守られているような外観だ。


裏側も同様に塀が囲む。こちらは塀に開口を設けてあるが、単なる意匠ではいようなので、中でどのような効果があるのか確かめてみたい。
屋根にはソーラーパネルが見える。


横スライドのシャッターを持つガレージ。厚い塀の重なり部分にステンレスの門扉。
施主は防犯、防災、そして災害時の備えに対する意識が非常に高く、それらの設備や要件を満たしながら設計が進められた。


門扉を開けると中庭。完全なプライベート空間にバスケットゴールが据え付けられている。
塀は3.7mから螺旋状に5.8mまで高くなっていく。


ガレージには電気自動車用の充電器が備わる。

将来、奥さまの両親と二世帯住宅になる予定で、段差のないバリアフリー動線や、エレベーターを備えるなどした。


主寝室。1階には寝室が二つあるが、共に室内用シャッターが付いている。さらにガラスはフィルムを挟んだ合わせガラスだ。


裏手の塀の内側にも中庭があり、今回新たに井戸を掘った。この辺りは比較的容易に井水が出るそうだ。井戸は普段は電動ポンプで汲み上げ、非常時のために手動ポンプも。
塀の開口は防犯上、当初無い予定だったが、それでは暗く通気も悪くなるため、ステンレスの横格子を付けた上で開けることとなった。
横格子は杉板型枠のピッチに合わせてある。


そしてこちらはシェルターの入口。
元々納戸として計画していたが、計画中に某国の弾道ミサイルが日本上空を飛び回っていたこともあり、折角なのでシェルターとしても使えるようにスペックを切り替えた。


中は7〜8帖程の広さ。一家が最低1週間は過ごせるような備蓄を進めるそうだ。


核・生物・化学兵器に対応したイスラエル製の高性能フィルター。非常時にはフィルター(金色のもの)を左のダクトに接続し、黒いチューブと接続。電源入れると、フィルターを通した外気が入り正圧状態になり、部屋の反対側にあるダクトからワンウェイで排気する。停電時には手動ポンプでも空気を取り込むことができるそうだ。


浴槽はなんと二つ。二世帯だからかと聞くと、一方は水風呂用だそうだ。
手前、お湯を張る浴槽からは三つめの庭が望める。盆栽が置かれる坪庭だ。


階段は細めのスチール材で軽快なデザインに。踏み板にはサイザル麻を巻き付けた。
(写真:相坂研介設計アトリエ)


2階LDK。親戚が20人近く集まることがあるので、折りたたみのテーブルが複数並べられるよう広々とした空間。
右手のキャビネットには観賞魚の水槽が置かれる。


一角に和スペースと神棚・仏壇・押入。和室を作り込んでしまうと、後で自由が効かなく生る可能性があるので、畳は敷くだけにした。
左は子どものスタディースペース。


DK上部には3階のガラス床が口を開ける。ほぼ吹き抜けのような効果で開放感が得られ、3階からハイサイドライトのごとく光が良く入る。


奥さまのメインステージであるキッチンからは、3階の子どもフロアや、階段の上り降り、リビング、スタディースペースなど子どもの様子がよく見える。
天井の折上げ部分には間接照明が仕込まれている。


3階のガラス床はフリースペースに開いていた。ここには卓球台を置くそうだ。
床はオーク材。


振り返ると子ども室が二つ。実はこの住宅、施主主導による風水で間取りの多くが決められており、水回りの位置はもちろんのこと、奥の子ども室の扉は左右対称に並べてはいけないなど細かな指定もあったそうだ。

「敷地外周を塀で覆い、中央に容積を最大化する3階建てを置きました。外壁と建物の間に用途の異なる3つの庭を形成しながら、開放感も確保。防犯・耐震・耐火、非常時を想定した太陽光発電や井水設備、さらにNBCフィルター付きの地下シェルターまで設けて『家族を守る』という強い意志を、さりげない外観に閉じ込めました。」と相坂研介さん。

【上北沢の住宅】
設計監理:相坂研介設計アトリエ
構造設計:金箱構造設計事務所
施工:三浦工務店


**************************
japan-architects.com 
日本の建築家・デザイナーと世界をリンク
Web : www.japan-architects.com
Twitter : @JapanArchitects 

Facebook : japanarchitects

***************
***********
Reproduction of any of these images and texts without written permission is prohibited. Copyright: japan-architects.com


2018年注目された記事ベスト20

$
0
0
japan-architectsブログで2018年アクセス数の多かった記事ベスト20です。
当ブログは事務局スタッフが直接取材に伺い、写真や記事は全てオリジナルで構成されています。あまり専門的に寄らず、どなたが読んでも分かりやすく、あたかも「行った気になれる」ような記事が特徴です。
[The 20 most popular articles of 2018 - japan-architects blog]


1、「建築の日本展」レポート/森美術館



2、小堀哲夫「NICCAイノベーションセンター」



3、能作文徳×常山未央 自邸兼事務所「西大井のあな」



4、Niji Architects「扉の家」



5、手塚建築研究所「番町教会」



6、石井秀樹「尾山台の家」



7、井上洋介「下北沢の家」



8、中川エリカ「新宿パークタワーラウンジ」



9、シーラカンス「HOUSE TM」



10、岸本和彦「Earth & Horizon (House-K)」



11、小山光/キー・オペレーション「神田テラスビル」



12、番場俊宏/abanba「桜新町の集合住宅」



13、中川エリカ個展「竣工直前展」/プリズミックギャラリー



14、井手孝太郎/アールテクニック「Path」



15、相坂研介「本牧の住宅」



16、田根剛展 「未来の記憶」/東京オペラシティ アートギャラリー



17、「芸術家の棲む家 – 建築家と芸術家のコラボレーション」



18、「平田晃久展 Discovering New」/ギャラリー・間



19、御手洗龍「stir」



20、黒川智之「三ツ池の蔵」

本年もJapan-Architectsをよろしくお願いいたします。


**************************
japan-architects.com 
日本の建築家・デザイナーと世界をリンク
Web : www.japan-architects.com
Twitter : @JapanArchitects 

Facebook : japanarchitects

***************
***********
Reproduction of any of these images and texts without written permission is prohibited. Copyright: japan-architects.com


「RCRアーキテクツ展 夢のジオグラフィー」レポート/ギャラリー・間

$
0
0
1月24日からTOTOギャラリー・間で開催の「RCRアーキテクツ展 夢のジオグラフィー」のプレス内覧会に行ってきました。
RCRアーキテクツはスペイン・カタルーニャ地方のオロットを拠点に、歴史や文化、自然に寄りそった活動を続ける3人組(ラファエル・アランダ、カルマ・ピジェム、ラモン・ヴィラルタ)の建築設計スタジオで、2017年にはプリツカー賞を受賞した。
[Exhibition, RCR Arquitectes: Geography of Dreams]ギャラ間


展覧会概要:
「私たちにとって人生とは夢であり、建築とは夢を見るための道具である。私たちは夢と建築を通して、真に重要な現実を創造することができる。そのような夢を通して、私たちは人生をたどっていくのだ。」
この展覧会は「夢のジオグラフィー」というタイトルのもと、私たちRCRアーキテクツの歩みと「夢」というコンセプトを示すものである。データや図面、コンセプト・スキームなど基本的な説明に始まり、旧友で写真家の鈴木久雄氏の視点を通じて制作された代表作品の映像へと続き、RCRが建築をどのように理解しつくっているのかを紹介する。その後、「夢のジオグラフィー」として今後何年もかけてたどり着こうとしている私たちの夢、宇宙観(コスモロジー)を体現したプロジェクト「ラ・ヴィラ」の中へと入っていく。
「ラ・ヴィラ」は、森林と水の流れ、そして記憶の住まう土地(ジオグラフィー)であり、その場所は私たちを、開かれた研究の場(ラボラトリー)の創作とその探求へとつき動かした。それは人間の知覚に対する意識を変容させ、新しい関係性や行動を促すことのできるような、横断的で総合的、そして可能な限り最も本質的で根本的な方法でつくられた研究の場となるだろう。
さらに「ラ・ヴィラ」をともに進めている奈良県吉野町の人びとや吉野の森をはじめ、2017年に訪日した際にめぐった各地の旅の体験をまとめたドキュメンタリー映像、テキスト、そして描画(スケッチ)を通じ、RCRと日本との長年にわたる交流を紹介したい。


上記概要にもある通り本展はとてもシンプルで、彼らの「夢」である「ラ・ヴィラ」を中心に紹介する展覧会となっている。


RCRを構成する3つの軸、
・RCR Lab・A:リサーチや創造のための建築研究施設。
・RCR Architects:1988年、3人によって設立された建築創造ワークショップ。
・RCR Bunka:建築・ランドスケープ、芸術・文化の社会的価値の認識を向上させるために設立された財団。


〈ラ・ヴィラ/La Vila〉
RCRの3人が長年温めてきた夢のジオグラフィー構想を実現させるべく、地元オロットで入手した広大な敷地。


吉野和紙に水彩で描かれたラ・ヴィラの全体図。140万m2(東京ドーム30個分)の敷地には動物や鳥、昆虫が息づき、木々や草花、山や森に包まれる。


そこに建築によって失われた人の営みや心を建築によって取り戻すべく、創造のための研究施設や宿泊施設を作る。宙に浮く円盤にはそのアイデアが描かれている。
そしてこの、まだ形の無い物語を、この展覧会やこの敷地を訪れた人たちと一から共有し創造していきたいと思っているのだ。


本展のメインビジュアルであるラ・ヴィラの風景。後方にある建物と池を改修する仕事でこの地と出会った。


本展に合わせて刊行された「RCR Arquitectes Geography of Dreams」にはプロジェクトの詳細が記されており、敷地や周辺環境のリサーチなども。


「夢」の建築のスケッチ。
これらを幾つ造るか、規模、境界、予算などは決まっていないという。


〈紙のパヴィリオン/Paper Pavilion〉ラ・ヴィラに最初に造られる予定の建物。
写真家鈴木久雄との長年の交友から通じた奈良・吉野との出会い、そこから花開いたプロジェクト。吉野の人々との結びつきを具現化すべく、吉野杉や吉野和紙をふんだんに使って造られる。


設計の検討に模型は作らないそうで、展覧会のために造られた模型だ。


〈紙のパヴィリオン/Paper Pavilion〉のモックアップ
単なる展示模型ではなく、閉会後ラ・ヴィラへ運び、建物の一部として実際に使用される。
吉野の木材をわざわざラ・ヴィラまで運ぶのは、2022年に吉野で行われるカヌーの世界大会に向けて、シンボルとなるカヌーをRCRでデザインすることや、そこで培われた友好関係としてプレゼントされたためだ。


その他、"共有された創造性"という信念のもとに手掛けてきた代表作を自己紹介的に展示。


〈トゥッソル・バジル陸上競技場〉 1991-2012年、スペイン、オロット
〈ベル=リョク・ワイナリー〉 2007、スペイン、パラモス


〈ラ・リラ・シアター・パブリック・スペース〉 2011年、スペイン、リポイ
〈サン・アントーニ ジョアン・オリヴェール図書館〉 2007年、スペイン、バルセロナ


〈スーラージュ美術館〉 2014年、フランス、ロデーズ
〈オフェイドゥの火葬場〉 2014年、ベルギー、ホルスベーク


4階〈書かれた、そして描かれた風景〉
吉野和紙に水彩で描かれた森。森は彼らにとって尽きるこの無いインスピレーションの源であり、その森を空間的に表現した。


この抽象的な表現方法によって、"共有された創造性" というものが沢山の人々の協力によって出来ている、その複雑性も表現しているという。


奥には映像〈吉野の森 ラ・ヴィラの森〉
本展「夢のジオグラフィー」全体を反映する映像で鈴木久雄が撮影した。
2017年吉野を訪れた際の様子や、オロットの様子が上映される。吉野では山、製材所、吉野和紙の工場などを、オロットではオフィスの様子や、ラ・ヴィラの野山などが紹介される。
そして驚くのは吉野の森とあまりにも似ている点だ。遠く離れたスペインと日本の違いではなく、双方の共通点を是非見ていただきたい。


ラモン・ヴィラルタ(左)とカルメ・ピジェム。(ラファエル・アランダは都合により来日できなかった)
「2010年にこのギャラ間で開催されたグループ展『GLOBAL ENDS』で発表した『人間回帰』の構想を発展させたのが今回のラ・ヴィラになります。物質的なものだけではなく、精神的なもの、つまりもっと大きな視野で世界を理解する、といった価値の変換を表現しています。そのような感覚を是非会場で感じていただきたい。」


TOTO出版より刊行された〈RCR Arquitectes Geography of Dreams〉
前半に今までの作品、後半に夢のジオグラフィーであるラ・ヴィラ、そして彼らにとって特別な国である日本との関係が収められている。
「自立する本にしたい」という要望があったという。


〈ラ・リラ・シアター・パブリック・スペース〉


〈スーラージュ美術館〉


〈ヴァールゼ・クローク・メディアテーク〉
書籍の詳細:https://jp.toto.com/publishing/detail/A0377.htm


【RCRアーキテクツ展 夢のジオグラフィー】
会期:2019年1月24日(木)~3月24日(日)
会場:TOTOギャラリー・間(港区南青山1-24-3 TOTO乃木坂ビル3F)
開館:11:00~18:00、入場無料、(月曜・祝日休館)
詳細:https://jp.toto.com/gallerma/ex190124/index.htm

【関連記事】
RCRアーキテクツによる「プリツカー賞受賞記念講演会」/安田講堂
TOTOギャラリー・間 25周年記念展「GLOBAL ENDS」


*************************
japan-architects.com 
日本の建築家・デザイナーと世界をリンク
Web : www.japan-architects.com
Twitter : @JapanArchitects 

Facebook : japanarchitects

*********************
****
Reproduction of any of these images and texts without written permission is prohibited. Copyright: japan-architects.com

新関謙一郎による目黒の住宅「NKN Project」

$
0
0
新関謙一郎/NIIZEKI STUDIOによる目黒区の住宅「NKN Project」を見学してきました。
二組のクライアントによる依頼でA・B二棟建っている住宅だ。

 左のA棟は敷地面積100m2。右のB棟は敷地面積165m2。
二組のクライアントは同じ敷地を気に入りそれぞれに分筆、新関さんに設計を依頼してプロジェクトがスタートした。

 敷地は接道より1.8m程の高低差がある。公園の中に入り込むような敷地で、当然この公園に対してどう向き合うかが大きなテーマとなる。そのため外観や基本的なコンテクストの解釈は両棟とも共通になるよう設計側で主導し、内部の細かな要望をそれぞれのクライアントと詰めていくというコーポラティブハウスに近い形となった。

 「外観は街のためにある」という新関さん。常にシンプルなボリュームを美しい構成で街に据える。
まずはA棟へ。前庭はピンコロ石を敷き駐車場に。公園の木々と親和するように大きめの木が植わる。

 両棟の境界は直線であるが、間にアイビーを植え、手前をA家、奥をB家が面倒を見る。またA棟にとってB棟の壁が塀になるような、その逆でもあるような、お互いが少し関係性を持ちながら計画されている。

 玄関を開けるとすぐ大きな一枚壁と、壁のような収納に挟まれた空間の先に公園が覗く。壁は大きめの骨材が入った土壁左官刷毛引き仕上げ。
左手に水回り、左後ろに主寝室、階段を上がってLDへ通じる。

 水回りはトイレ(筆者後ろ)と洗面室が一体で、ガラス扉の奥がシャワー室。

 照明を消すと洞窟の如き空間へ雰囲気を変えた、天高3.4mの半階下のフリールームへ。セカンドリビングのような使い方も想定してるそうだ。

 階段より少し手前までが収納で、、、

 裏側は書斎になっている。

 2階LD。一部引越が済んでおり家具が入りはじめていた。

 2面の大開口から公園の緑を贅沢に享受できる。常緑樹が多く殆どの視線は遮られているがロールスクリーンが備わる。

 振り返ってダイニングスペース。奥は子ども室とキッチンへ通じる。

 屋上も設けた。森を眺めながら寛げるキャンティレバーのテーブルと、ベンチが作り付けられている。

 次にB棟へ。

 木製シャッターを持つガレージと、その横の扉を開けるとアプローチが現れる。

 遺跡のような重厚な佇まい。

 玄関ポーチ前で見返す。ガレージには大きな正方形の開口が設けられており、ガレージ内の閉塞感をなくしている。

 玄関扉を開けると向かい側に中庭と連続するよう引戸が設えてある。
動線は左右へ振り分けられる。左下がリビングとDKへ、左上が主寝室、さらに左手にゲストルーム、右上が子ども室と水回りへ通じる。

 ゲストルーム。台形のためデスクが鋭角な三角形に。開口はサッシュを全面引き込むことができる。

 バルコニーから見えるルーバーの内側には設備類が納まる。

 2階主寝室。二面の開口は左が北西を向く。

 主寝室の奥は収納やウォークインクローゼット(W. C)へ通じる。

 W. Cとバルコニー。さらに奥へ通じているようだ。

 こちらのバルコニー(屋上)は照明を備え、バーベキューなども楽しめそうだ。

 W. Cを抜けると、玄関から上がることのできる2階へ通じていた。

 見返すとこのように。左から子ども室1、W. Cへ、玄関へ、水回り、背後に子ども室2となる。機能上、長手方向に細かく分節された。

 子ども室2。こちらの部屋には植栽のある小さなバルコニーがつき、その先に公園の緑も望める。

 浴室はダークな色調のモザイクタイルを貼った。縦スリットの開口からは中庭の緑が覗く。

 2階から地下1階を対角に見通せることで空間に奥行きを感じられる。

 地下1階リビング。天高4.6mのゆったりした気積に、開口一杯の緑。植栽のすぐ向こうまで、公園で遊ぶ子どもが来ることもあるとか。
庭には屋外家具を置き、アウターリビングとしても使うという。

 電動のロールスクリーンは遮光タイプ。壁には暖炉が埋め込まれる。その奥はDKで、リビングに置かれるソファが届いていた。

「ここは造成された擁壁によって公園と分断された敷地でした。『公園に隣接する住宅』ではなく、『公園の中にある住宅』と考え、住宅によって公園が切り取られるのではなく、住宅によって公園を広げるというイメージで、『森を街に返していく』ことを目指し、かつてあったこの地域の地形に戻すことからはじめました。」と新関謙一郎さん。

【NKN Project】
設計:NIIZEKI STUDIO
構造:長谷川大輔構造計画
施工:栄港建設
*************************
japan-architects.com 
日本の建築家・デザイナーと世界をリンク
Web : www.japan-architects.com
Twitter : @JapanArchitects 

Facebook : japanarchitects

*********************
****
Reproduction of any of these images and texts without written permission is prohibited. Copyright: japan-architects.com

2019卒業設計展 スケジュール

$
0
0
各大学の卒業設計展スケジュール2019年版

■ 1/28〜2/3「東京芸術大学 卒業・修了作品展」
会場:学部/東京都美術館、大学院/大学美術館・大学構内
http://diploma-works.geidai.ac.jp/

■ 1/28〜2/3「海洋建築工学科・卒業設計展」
会場:日本大学船橋キャンパス 12号館4F 製図室

■ 2/7〜12「首都大学東京卒業設計展」
会場:首都大学東京国際交流館
www.instagram.com/arch.diploma2019/

■ 2/13〜17「武庫川女子大学建築学科作品展・卒業設計展」
会場:西宮市立市民ギャラリー
https://twitter.com/sakuhintenmwu?lang=ja

■ 2/14〜17「京都工芸繊維大学 卒業・修了制作展」
会場:京都文化博物館 本館5,6F、別館
www.facebook.com/events/564473920665405/

■ 2/14〜24「早稲田大学芸術学校卒業設計・学生作品展」
会場:新宿パークタワー 1F ギャラリー3
www.ozone.co.jp/event_seminar/event/detail/720

■ 2/16〜18「近畿大学建築学部卒業設計展」
会場:11月ホール(近畿大学 東大阪キャンパス)
https://twitter.com/kindaiten2018?lang=ja

■ 2/18〜19「千葉大学建築学科 卒業設計展」
会場:千葉大学西千葉キャンパス 工学系総合研究棟2 2F
www.facebook.com/chibaARCH2019/

■ 2/21〜24「JIA関東甲信越支部 かながわ建築祭 卒業設計コンクール」
会場:馬車道駅コンコース
www.jia-kanto.org/kanto/activity_event/students-event/3878.html

■ 2/22〜24 「新潟建築卒業設計展」
‏会場:PLAKA 2F ときめいと
www.facebook.com/session.n/

■ 2/23〜25「Diploma×KYOTO’19 京都建築学生之会合同卒業設計展」
会場:京都市勧業館みやこめっせ

■ 2/26〜28「四国建築学生 卒業設計展」
会場:かるぽーと 第3展示場

■ 3/3〜10「せんだいデザインリーグ2019 卒業設計日本一決定戦」
会場:せんだいメディアテーク 1Fオープンスクエア
www.onvisiting.com/2018/12/19/miyagi-20190303/

■ 3/4〜6「広島平和祈念卒業設計展」
会場:広島県立広島産業会館
https://twitter.com/hirosotsu_2019

■ 3/11〜12「中部卒業設計展」
会場:名古屋市中小企業振興会館
http://nagoya-archi-fes.com/gde/about

■ 3/18〜3/19「デザイン女子No.1決定戦2019 NAGOYA」
会場:サーウィンストンホテル 2階 メゾン・ド・オペラ
http://design-girls-1.com/

■ 3/21〜25「赤レンガ卒業設計展」
会場:横浜赤レンガ倉庫
https://akarengadiploma2019.wixsite.com/akarengadiploma2019

※情報が入り次第更新していきます


*************************
japan-architects.com 
日本の建築家・デザイナーと世界をリンク
Web : www.japan-architects.com
Twitter : @JapanArchitects 

Facebook : japanarchitects

*********************
****
Reproduction of any of these images and texts without written permission is prohibited. Copyright: japan-architects.com

堀内雪+堀内犀のアトリエ兼自邸「多摩川の家」

$
0
0
堀内雪+堀内犀/スタジオCYの東京 狛江のアトリエ兼自邸「多摩川の家」を見学してきました。
小田急小田原線 和泉多摩川駅から徒歩15分程。


敷地面積149m2、建築面積75m2、延床面積147m2。S造3階建て。
ファサードは南を向く。グレーに塗装されたレッドシダーの下見張りと、製作による紺色のスチールサッシュ。3階は漆喰で仕上げた。


家の前はすぐに多摩川で、遙か500m先の対岸まで人工物が無いロケーション。


ガレージにはご主人であり、仕事のパートナーでもある堀内犀さんの愛車、カワサキW1S。奥に勝手口。
前庭にはテラスを設え、両開きの扉を通じて連続する。


エントランスからは土間のダイニング。その奥に中庭、右奥にはキッチンが見える。
ダイニングであり、接客スペースであり、趣味のスペースであり、二人の好きな物がそこかしこにディスプレーされている。


前庭のテラスから土間、中庭へと連続するため、過ごしやすい季節には開け放ち、ピロティのような空間にできる。
壁際に鎮座するのはビンテージのステレオレコードプレーヤー。イギリス製でステレオ録音されたレコードを再生できる初期のものだそうだ。


両開き扉を開放するとこのように。風や光をたっぷり取り込むことができる。


キッチンへは土間から下足を脱いで一段上がる。
黒皮ままのスチールをメインの素材にした空間だ。カフェにできるよう計画されており、先のダイニングも客席として使われることになる。


造作したスチール製の棚やキッチンカウンター。トグルスイッチがアクセントだ。
飲食店の営業ができるようキッチンには仕切りも備えてある。


そしてキッチンカウンターには業務用のコーヒーサイフォンやミル、ロースターが置かれ、すでにカフェの雰囲気だ。
中庭を介した光と、右手裏庭の開口からの光も入る。
右奥には和室、さらに右には来客用のトイレ。


スチールのアングル材で製作したキッチンカウンター。天板にステンレス、その上に浮くようにセットされた天板は古材で、ベイマツ材でアメリカの住宅で梁として使われていたものを流用した。


どこにいても二人の気配が感じられるよう2階の床や、廊下が持ち上げられ隙間が見える。ハイサイドと合わせ視線が抜け開放感たっぷりだ。
キッチンの製作はリネアタラーラ。


明るく広々とした来客用トイレ。紫の差し色や、遊び心が感じられるデザイン。掃除が容易になるようCATALANOの壁掛け便器を選んだ。


和室は客間としても使う。床の間は土壁の左官仕上げに、床柱はツバキ。
建具は京都の古建具屋で見つけ、それに合わせ開口を設計した。


雪見障子(雪さんを見る)。障子の上部は、光量を増やすために "ハイサイド障子"としたが、下の古建具に合わせ製作したそうだ。
左の襖には唐紙が貼られている。


2階へ。16mmの鉄板を使って殆ど振動が気にならない階段。


階段から見下ろすキッチン。もちろんこの後美味しいコーヒーを淹れていただいた。


階段を上がると正面にアトリエ兼リビング。押しても引いても開けられようフロアヒンジの扉を採用。


2階からは土手の上に視線が抜け、夏には一面緑の景色を眺めることができる。
「当然この景色を眺める大開口にしたいが、ここは別荘地ではなく、あくまでも日常の生活空間であることからフラットな全面開口は避け、敢えてフレームで区切ることで、外のスケール感と中のスケール感が対比できるようにした。」と堀内さん。
機能的な開きをデザインに活かしつつ、両開き、滑り出し、フィックスを選んだ。


アトリエでもあることから、このスペースは天井高も取れファクトリー感を出すためにもデッキプレート、鉄骨、エアコンは被覆しなかった。
左にキッチンがあるのは、1階のキッチンが本格的にカフェとして機能した場合、こちらを日常のキッチンとするためだ。


宙に浮くような木の箱は収納で、外壁に使ったレッドシダーを細く裂いた際の廃材を利用した。下にはキッチンが覗く。
渡り廊下の先は水回りと、右奥に3階への階段がある。


水回り。洗濯、洗面、トイレはワンルーム。北側の奥に位置するが、開口を多く設け通気と採光はたっぷり。


浴室は中庭に面する。アトリエ・リビングより2段上がっているため、ここからも多摩川が望める。
壁と床の一部に十和田石を使った。十和田石の肌触りは浴室にとても合うが、掃除などのメンテナンス性を考慮し床は足が触れる部分のみとした。


3階寝室。1日の終わりにホッと寛げる優しい空間に設えたという。壁は珪藻土で調湿に配慮。


この家はとにかく居場所が多く、しかもそれぞれの性格が異なる。
開口にはグリーンのレースカーテンと遮光ブラインド。


ルーフバルコニーには芝生が張られ、多摩川と連続するような景色が得られる。
ここからは富士山も望め、何カ所もの花火大会を見ることができるという。






堀内雪さんと、堀内犀さん
「土地探しをしているときに奇跡的に出会った場所です。この環境を活かしながら、前庭、中庭、裏庭を介して光や風が心地良く抜けるよう計画しました。1階、2階、3階と機能や用途が変わりながら、カラーも変化することで、それぞれの場所で違った楽しみ方ができるようになっています。」と雪さん。

【多摩川の家】
・建築設計:堀内雪/Studio CY  
・構造設計:西薗博美構造設計事務所
・施工担当:高政工務店


*************************
japan-architects.com 
日本の建築家・デザイナーと世界をリンク
Web : www.japan-architects.com
Twitter : @JapanArchitects 

Facebook : japanarchitects

*********************
****
Reproduction of any of these images and texts without written permission is prohibited. Copyright: japan-architects.com

進藤強/ビーフンデザインによる板橋区の集合住宅「feel CnB」

$
0
0
進藤強/BE-FUN DESIGNによる板橋区の集合住宅「feel CnB」
東武東上線 成増駅から徒歩5分程の場所。


敷地面積476m2、建築面積272m2、延床面積776m2。RC造3階建て、22住戸からなる長屋。
東西に7m程の高低差を持ち、かつ三角形の変形敷地。


南側と北側に玄関を振り分け、メゾネット若しくはトリプレットで複雑な入れ子状を構成しながら、ほぼ全ての住戸で南側に開口を持つように計画されている。


既存では木造の建物が3棟建ち、周囲に鬱蒼と草木が生えていた。その状態で売りに出されていたのを進藤さんが見つけ、事業計画を立てたうえでオーナー候補に提案し、プロジェクトがスタートしたという。
写真は敷地の下側(西)から、解体が終了し更地になった状態。


平面は何とこのような形。さらに断面が南へ北へ複雑にからまっている。


6つの棟が接続したような外観が階段状に連なる。


アパート名の「BnC」は「Bicycle and Cat」の意だ。つまり自転車好きや猫好きが暮らしやすいアパートとなっている。階段には自転車用にスロープをつけた


南北共に敷地内通路を設けそれぞれ路地のような風景を作りだしている。
既に入居がはじまっているが、この日は4住戸の見学ができた。




西側は暗渠になった緑道に面しているが接道はできない。


公開空地にできれば近隣にも親しまれる路地になりそうだ。


北側の4号室。土間や壁面ラックに自転車を置くことができる。
左の引戸がトイレ、奥に洗面と浴室。


洗面室の足元にキャットドアが付き、洗面台の下にトイレを置くことができる。


2階は収納と洗濯機のスペースのみ。


3階はLDK。L字を逆さにしたような断面で構成されているため、奥の開口は南に面している。


この住戸はモデルルームとして家具が設えてある。


ダイニングキッチンの上は、、、


ロフトのベッドスペースに。3階はスキップしながら3層を構成している。写真ではなかなか伝わらないが、垂直方向の迷路のような面白さ、日常に変化が感じられるようにしてあるのだ。


東端の13号室。玄関を入ると螺旋階段と土間のみ。自転車がおける広さだけが取られている。全住戸で、2階若しくは3階に寝室が配置できるよう、1階は居室としての選択を排除しているのだ。
手前に、猫が外へ逃げないようにスクリーンゲートが付いている。


2階はキッチンと洗濯機置き場。


トリプレットの3階を見上げると何やら造作物が現れたが、、、


キャットウォークだ。左手前は透明アクリルになっており、肉球を眺めることができるというマニアには堪らない "設備"だ。


敷地と同じような変形の部屋だが、二面に開口があり明るく、バルコニーもつき開放的。


21号室はメゾネット。キャットウォークが付くのは、南側に玄関がある住戸。
こちらは別パーターン。


2階から垂直に上がり、、、


ロフト高さで水平に移動する。ここに寝ていると下から猫が上がってきて、横から眺めながら布団に潜り込んでくる、といったストーリーが目に浮かぶ。


18号室。階段を上がってバルコニーに出るのは、その下に別住戸のロフトがあるため。
これらのキャットウォークは半分の住戸に設えてある。また、飼える猫の頭数も住戸によって制限があるそうだ




進藤強さん。「複雑な敷地条件、法令、収支計算、立地、ニーズなど様々な要件を勘案し、最適解ともいえるアパートを提案できました。一見不合理で、住宅や集合住宅を建てるには無理があるような土地でも、その良さやここでできることを掘り起こし、プロジェクト化できるのは建築家ならではの仕事ではないでしょうか。」

【feel CnB】
設計監理:進藤強/BE-FUN DESIGN + 湯本峻大/Nomadic
構造設計:安藤耕作構造計画事務所
施工:環境クリエイト


*************************
japan-architects.com 
日本の建築家・デザイナーと世界をリンク
Web : www.japan-architects.com
Twitter : @JapanArchitects 

Facebook : japanarchitects

*********************
****
Reproduction of any of these images and texts without written permission is prohibited. Copyright: japan-architects.com

徳田慎一による大田区の「池上のクリニック」

$
0
0
徳田慎一(徳田慎一建築設計事務所)による東京 大田区の「池上のクリニック」を見学してきました。東急池上線 池上駅から徒歩5分ほどの場所。
徳田さんは青木淳建築計画事務所出身だ。


元々自宅兼の耳鼻科医院。経営者(院長)が亡くなってから長らく住み手もない状態であったが、その経営者のご息女の旦那さんが、泌尿器科の医者として務めていた総合病院を定年退職し、この機会に町医者として地域に根ざした医療を行おうと、診療所部分を拡張修繕し、開業したのがこのクリニックだ。


周囲にRCのマンションが並ぶが、本門寺の参道に面する雰囲気の良い建物だ。
「恐らく3回ほど増築され、元の部分は昭和20年代だったのでは。」と徳田さん。


旗竿敷地で長いアプローチを持つ。シャッター付きの門扉はそのままで、看板を耳鼻咽喉科から泌尿器科へ変えた。


真新しいモルタルのポーチと自動ドアを抜けると、昭和の面影を残した空間が現れる。


既存では手前にエントランスと待合室、半分より奥が診察室だったが、今回左手壁の向こう側の住居部分へ診察室を拡張した。
スタディでは天井も張り直そうと考えていたが、解体が始まり中央の柱が現れると、これを残した方が良いと思い、それに合わせ天井も現しにしていくこととなった。


解体を進めると耐震にかなり問題があることが発覚。左手の壁や中央の壁などを耐力壁となるよう補強し、開口部にも柱やブレースを追加した。2階も居住を考えているわけではないが要所に耐震補強のみ施した。設計は建物を補強することを前提に進めていったという。
椅子は新たに製作したもの。左の長椅子は座面の奥行きが広いが、具合の悪くなった患者が横になれるようにした。


「町医者になる」という院長の思いを反映する雰囲気が表現されている。
驚いたことに施主である院長は、はじめのプレゼンでOKを出したのち、一度も現場を確認しなかったという。「お願いしたのだから任せる」ということだったそうだが、設計者としては初めての施主確認が引き渡しの時という、かなりスリリングなプロジェクトだっただろう。


3種類床板が確認できる。増築の度に異なる材が張られたのだ。
上から少し飛び出しているパイプは暖房用に2階へ引き込まれたガス管だが、アクセントになるよう敢えて残した。


診察室は元食堂。一見全て新しく見えるが、奥の2枚のドアは既存。垂れ壁には鴨居が付いたままだったりする。
待合室と診察室合わせ53m2。


出窓やサッシュ、棚もそのままに。


今ではなかなか手に入らない貴重な磨りガラスがそのまま残っている。


診察室のドアの向こうは元キッチンだったバックヤード。こちらは補強した構造合板などはそのままに。勝手口が懐かしい。


元和室は事務室に。正面の四角い開口は診察室と通じており、磨りガラスを移設した。
座っているのは院長の奥さま、つまり先代院長のご息女で、この家で長く暮らしていた。
見てきた食堂(現診察室)とキッチン、この和室などが一番古い時代のもので、左の部屋や、ちらりと見える階段から上は増築。


徳田慎一さん。「まちと建物の雰囲気もさることながら、ここでキャリアを完成させようとしている院長先生の考えに惹かれ、設計を始めました。長い時間を経たものを手掛りに、かつて耳鼻咽喉科時代に流れていた空気を想像しつつ、とにかく観察する日々。設計は、既存の空間を下地にして、元々あったものと新しく作るものとの関係性を作っていくような、コラージュに近い作業だったように思います。」

【池上のクリニック】
設計・監理:徳田慎一建築設計事務所
構造設計:KKSエンジニア
施工:TH-1


*************************
japan-architects.com 
日本の建築家・デザイナーと世界をリンク
Web : www.japan-architects.com
Twitter : @JapanArchitects 

Facebook : japanarchitects

*********************
****
Reproduction of any of these images and texts without written permission is prohibited. Copyright: japan-architects.com


UDSによる「HAMACHO HOTEL」開業レポート

$
0
0
日本橋浜町の清州橋通りに2月15日にオープンする「HAMACHO HOTEL」内覧会に行ってきました。
ホテル・店舗・賃貸住宅からなる複合施設「HAMACHO HOTEL & APARTMENTS」のホテル部分である。安田不動産が「手しごと」と「緑」のみえる街、というコンセプトのもと進める街づくりプロジェクトのひとつ。UDSが建築デザイン監修と、ホテル企画・設計・運営を手がける。
建物の足元や各客室のバルコニーに緑をふんだんに取り入れており、国内外から訪れるゲストのみならず、浜町に住み、働く人々との交流と賑わいを生み、コミュニティを創出する場となることを目指す。


地下1階地上15階、RC造、敷地面積1,423m²。


ホテルの客室数は全170室。1階はダイニング&バーとチョコレートショップ、2階〜15階が客室という構成。


エントランス。
ホテルと賃貸住宅の共有エントランスであるが、1階のエレベーターホールでセキュリティーを設けている。建物全体の植栽はSOLSOが監修。




中に入ると、ロビーを中心に左手にダイニング&バー、右側にレセプションとエレベーターホールがある。ロゴマーク「H」はHAMACHOの頭文字で、佐藤卓が手掛けた。


まずはエレベータで15階へ。
最上階の15階にはテラス付の部屋が4室ある。


〈テラスルーム〉 40m²
床を下げることで生まれる立体的な室内空間と併設するテラスで広がりを感じられる空間。3室はこのタイプで宿泊料は30,000円〜。


松などの和テイストにローズマリーなどのミックスした植栽のテラス。 


バスルームからもグリーンをのぞむことができる。


<プレミアムテラスルーム> 45m²
こちらは1室のみの特別客室。乃村工藝社 A.N.D.による内装デザインで、古材やデニム生地のカーペットなど、他客室とは異なるテーストと遊び心のある設えとなっている。 パーティールームとしての使用を想定し、バーカウンターやターンテーブルが備わる。
宿泊料は35,000円〜。


テラスはアウトドアリビングのように東京の景色を眺めながら寛げる。


〈コーナーダブルルーム〉 25m²、12室(3階〜14階)
各フロアに1室しかない2面の開口でパノラマに街が広がる開放的な部屋。
宿泊料は13,000円〜。


13階でありながら窓から松の木が見える!(12階にしっかり固定されて植えられている) 


〈ダブルルーム for relax〉15m²、34室(3階〜14階)
窓際には、荷物を置いたり足を投げ出せる機能を持たせたベンチソファーが備わる。
宿泊料は11,000円〜。同じ広さでビジネスユースに適した「ダブルルーム for business」もある。


1階に降り、専用の階段で2階の「TOKYO CRAFT ROOM」へ。


柳原照弘氏をクリエイティブディレクターに展開する、クラフトの新しい価値を東京を経由して世界に広げるプロジェクトの拠点となる特別客室だ。日本各地の作り手と国内外のデザイナーをマッチングして完成したアイテムを、客室の一部とするコンセプト(アイテムによっては購入も可能)。78m²、宿泊料は50,000円〜。


開業時には2組のデザイナー(アムステルダムのデザインスタジオDe Intuïtiefabriekと、スウェーデンのインゲヤード・ローマン)によるアイテムがお目見え。年に数点新しいデザイナーの作品が追加されていく計画で、今夏にはCKRによるテーブルの発表が予定されている。


インゲヤード・ローマンによる有田焼のカップは各客室で楽しむことができる。


〈nel CRAFT CHOCOLATE TOKYO〉1階
日本の手しごと×チョコレートをコンセプトにしたショップ。ガラス越しにチョコレートが出来上がっていく様子を眺めながら一息つけるカフェも併設。


ショコラティエがベトナムの契約農家など複数産地のカカオ豆の選定から行って作り上げるボンボンショコラ“ビーントゥーボンボン”や、カカオ豆の発酵度合いによる味の違いが楽しめる商品。


〈SESSiON〉1階
ブルーノート・ジャパンによる街のダイニング(食堂)をテーマにしたダイニング&バー。
デザインは乃村工藝社 A.N.D.が手掛けた。「セッション」には、国内外から訪れたホテルゲストのみならず、浜町に住まう人や働く人が集い、心地よいリズムや対話が生まれるような場所になって欲しいという思いが込められている。豚の角煮やコロッケなど親しみのあるメニューをプロの技でアレンジした食事を提供。


ホテルエントランスからダイニング&バーを見る。


「SESSiON」の外部エントランス。

「HAMACHO HOTEL」はデザインコンシャスでありながら気取らない親しみやすさがある。3月には良品計画が展開する国内初の「MUJI HOTEL GINZA」を開業させるUDS。今後も攻めの企画、設計、運営であたらしい文化やコミュニティーを創出していってくれそうだ。

【HAMACHO HOTEL】
企画・インテリアデザイン・建築デザイン監修:UDS/ the range design INC.
プレミアムテラスルームデザイン:乃村工藝社 A.N.D.
TOKYO CRAFT ROOM デザイン・クリエイティブディレクション:TERUHIRO YANAGIHARA STUDIO
植栽デザイン監修:DAISHIZEN SOLSO
アートワーク :トモル工房 / Spiralarts & Co. / ALL GOOD FLOWERS
設計・監理 :松田平田設計
運営 :UDS
所有者 :安田不動産
https://hamachohotel.jp/

*************************
japan-architects.com 
日本の建築家・デザイナーと世界をリンク
Web : www.japan-architects.com
Twitter : @JapanArchitects 

Facebook : japanarchitects

*********************
****
Reproduction of any of these images and texts without written permission is prohibited. Copyright: japan-architects.com

「ル・コルビュジエ 絵画から建築へ―ピュリスムの時代」展/国立西洋美術館

$
0
0
2月19日から上野の国立西洋美術館で開催の「ル・コルビュジエ 絵画から建築へ―ピュリスムの時代」展、プレス内覧会へ行ってきました。
2016年世界遺産に登録、そして開館60周年を記念した展覧会だ。


展覧会主旨:
「若きシャルル=エドゥアール・ジャンヌレ(ル・コルビュジエの本名)が故郷のスイスを離れ、芸術の中心地パリで「ピュリスム(純粋主義)」の運動を推進した時代に焦点をあて、絵画、建築、都市計画、出版、インテリア・デザインなど多方面にわたった約10年間の活動を振り返る。
第一次大戦の終結直後の1918年末、ジャンヌレと画家アメデ・オザンファンは、機械文明の進歩に対応した「構築と総合」の芸術を唱えるピュリスムの運動を始めた。そして、絵画制作に取り組みながら新しい建築の創造をめざしたジャンヌレは、1920年代パリの美術界の先端を行く芸術家たちとの交流から大きな糧を得て、近代建築の旗手「ル・コルビュジエ」へと生まれ変わる。
本展はル・コルビュジエと彼の友人たちの美術作品約100点に、建築模型、出版物、映像など多数の資料を加えて構成。ル・コルビュジエが世に出た時代の精神を、彼自身が作り出した世界遺産建築の中で体感できる、またとない機会となる。」


コルビュジエによる日本唯一の建築。パリで彼に師事した前川國男、坂倉準三、吉阪隆正の3人の日本人建築家の協力により完成した国立西洋美術館本館は、所蔵品が増えるにつれて建物が中心から外へ螺旋状に拡張する「無限成長美術館」のコンセプトに基づいている。


本展は展示作品のみならず、コルビュジエの作品そのものの中で展覧会を堪能する機会。
まずは1階19世紀ホール。


展示作品と合わせ、空間の詳細な撮影も試みた。
三角形のトップライトから光が注ぎ、奥のスロープより目線を変えながら2階に上がっていく仕掛け。


〈メゾン・ドミノ〉1914年、第一次大戦後の復興計画のために考案した集合住宅の工法システム。


〈画家オザンファンのアトリエ・住宅〉1922-24年、パリ


〈スタイン=ド・モンヅィ邸〉1926-28年、パリ




〈ヴォワザン計画〉1925年、場所を選ばない都市デザインの一般解として構想。


〈イムーブル=ヴィラ〉1922年、都市デザインを構成する住居の一類型として考案。




スロープを上って2階へ。




〈エスプリ・ヌーヴォー〉
ピュリスム(純粋主義)の運動は1918年末、第一次大戦が終わったばかりのパリで、シャルル=エドゥアール・ジャンヌレと画家アメデ・オザンファン(1886―1966)が共同で開いた絵画展によって始まった。
彼らは1920年に雑誌『エスプリ・ヌーヴォー(新精神)』を創刊し、機械文明の進歩に対応した「構築と総合」の理念を、芸術と生活のあらゆる分野に浸透させることを訴えた。ジャンヌレはこの雑誌に「ル・コルビュジエ」のペンネームで建築論の連載を行い、1922年には従弟のピエール・ジャンヌレと共同の事務所を開いて、建築家ル・コルビュジエとして本格的に活動を始めます。


2階は四角い回廊を周りながら、4つの章に分け展示されている。
第1章:ピュリスムの誕生
第2章:キュビスムとの対峙
第3章:ピュリスムの頂点と終幕
第4章:リュリスム以降のル・コルビュジエ


〈ラ・ロシュ=ジャンヌレ邸〉1923-25年、パリ
右は1926年撮影の竣工直後の写真。






キュビスムを代表するピカソやブラックの作品も。






〈積み重ねた皿、三角定規、開いた本のある静物〉、〈白い椀〉などジャンヌレ(コルビュジエ)の絵画作品


コルビュジエと〈ヴィンセンホフ・ジードルンクの住宅〉1927年、シュトゥットガルト






正面〈エスプリ・ヌーボー館〉パリ国際装飾芸術博覧会のパヴィリオン。


〈肘掛け椅子〉/バスキュランチェア、〈寝椅子〉/シェーズ・ロング など


最後にサヴォア邸のコーナーで展示は締めくくられる。


〈サヴォア邸〉1928-31年、ポワシー/フランス
コルビュジエが提唱した「近代建築の五原則」= ピロティ、屋上庭園、自由な平面、水平連続窓、自由な立面全てが、最も純粋な形で体現された建築。






サヴォア邸のオリジナルスケッチ。平面、室内パース、外観パース、俯瞰などが一枚に検討されている。


サヴォア邸の人物のいるパース、断面










ガラスで囲われてしまった、普段利用できない周り階段を退場の際利用できた。








【ル・コルビュジエ 絵画から建築へ―ピュリスムの時代】
会期:2019年2月19日〜5月19日
会場:国立西洋美術館開館
詳細:https://lecorbusier2019.jp


*************************
japan-architects.com 
日本の建築家・デザイナーと世界をリンク
Web : www.japan-architects.com
Twitter : @JapanArchitects 

Facebook : japanarchitects

*********************
****
Reproduction of any of these images and texts without written permission is prohibited. Copyright: japan-architects.com

荒谷省午による西宮の「目神山の住宅」

$
0
0
荒谷省午/荒谷省午建築研究所による西宮の「目神山の住宅」を見学してきました。
目神山は荒谷さんの師、竹原義二氏のさらに師である石井修氏が20以上の作品を残した地区であり、荒谷さんにとってはこの地区2作目となる。


敷地面積874m2、建築面積237m2、延床面積m2。木造2階建て。
親が50年ほど前に建てた家を建て替える計画だ。


接道より3mの高さまで緩やかに傾斜した敷地に平屋の棟をいくつか雁行させながら配置し、その上に一筆書きで屋根を掛けた。


既存では西寄り(右)に大きな2階建ての棟が建っており、東寄りに手入れされた庭木が植わる大きな庭があったが、今回十分に活用出来る庭の使い方を求められたそうで、庭(余白)の残し方を多くスタディした。
アプローチはそのままで、玄関の位置も踏襲。中央に小さく盛り上がる庭石の辺りに建物の角があった。


今回大きく変えたのは、庭を敷地中央に取り、持ち上げた棟の下にピロティ設け、そこを介して南北に連続させることだった。
ピロティの高さは180cmほどで、無垢の鉄柱で支持した。無柱にする事もできたが、コンクリートスラブが厚くなることや、それだけのコストを掛ける意味があるのかを検討した結果柱を立てた。
砂利の部分はこの後コンクリートブロックが敷き詰められる。


ピロティを抜けると南の庭。土の部分は芝生になる予定。つまり堅い庭と、柔らかい庭にして目的によって使い勝手を良くしたのだ。


南に面した新しい庭はキャッチボールや、ちょっとしたサッカーも楽しめるくらいの広さ。ダイニングやリビングに接続するバルコニーからも出入りできる。
外壁はモルタル。クラックが入りにくいように目地を切り、金ゴテ仕上げと、スタイロ仕上げで表情を変えた。


玄関へ。土間はモルタルで、右奥の階段からガレージに通じている。上がり框の下に間接照明が仕込まれている。
天井は木毛セメント板で、軒天井から連続する。


右へ進むと、ハッとするような朱が鮮やかな和室が現れる。


朱の引戸、襖は和紙の壁紙が張られたもの。仏間や客間として利用する部屋だ。


玄関から左は段床を伴いながら奥へ廊下が続く。左手にはウォークインクローゼットがあり、藍の壁にはピクチャーレールが備わる。


廊下を進むとLDKの手前に前室のような小部屋。そこに2枚の引戸。
藍色はEP(エマルジョンペイント)に砂を混ぜて、表情を付けながら塗った。


左の引戸はトイレで、右を開けると洗面室と浴室。


洗面室から左を向くと、家事室、そしてパントリー、キッチンへと続く家事動線。


家具や建具に丁寧な仕事が見られた。ラワン材に柔らかな加工がされた手掛かり。戸当たりとして埋め込まれたブラシは荒谷さん標準の仕上げだそうだ。また引戸と戸袋の境に見切りを一筋入れ、戸を閉めたときの納まりが美しくなるよう一手間かけている。


水回りからキッチンは施主の好みが強く反映されているという。「それらを調整しながら自分の設計に落とし込むのはおもしろい。」と荒谷さん。


玄関から続く廊下を見返す。分節された屋根が交互に勾配を変えていく様がよく分かる。


ダイニング・キッチン。緩やかな勾配の大きな天井が、左のリビングに向かって開放感をもたらす。
ヘリンボーンの床は施主の要望を反映した。


ダイニングから少し上がってリビング。この下がピロティになる。持ち上げられたリビングは景色の眺め良くするためでもある。


西宮の街並みと大阪湾を望む。


リビングに据えられるようにレイアウトされた畳スペースは3人の子どものための勉強部屋。右手から2階に上がることができる。
リビングの壁も同様に砂混のEP。畳スペースはシルバーのガルバリウム鋼板貼り。


施主はチェストやテーブルなどのビンテージ北欧家具を多く所有することから、配置を楽しめるように、壁を多めにした。


2階は、通常ならロフトと呼べるような天井の低いコンパクトな空間だが、ここからでないと見ることができない内外の眺めがある。


下の畳が子どものスペースで、こちらは親のスペースとして使う予定だそうだ。


畳スペースの左手奥へ。
正面の開口からちょうど梅が咲いているのが見える。


子ども3人の寝室。まだ小さいので引戸は付けずにオープンに。間仕切りは黒板塗装がされている。左奥に主寝室。


振り返ると子どもが好きそうな凹凸が沢山ある。


子ども室の奥から。開口から見える庭は今後植栽がもっと入れられる。


主寝室の出入りは不思議な三角の "廊下"に面する。「大きなところと小さなところを意図的に設けでメリハリを付けた。」と荒谷さん。


左はトイレで、反対が主寝室。


主寝室へは、玄関から上がったり下がったりしながら30mほどの動線がある。離れのように一番小さなボリュームとして配置されている。
床はサイザル麻だが、綿が混紡されて足触りが柔らかい。


荒谷省午さん。「建て替え前の住宅は、この広い敷地が持つ可能性を充分に使いこなせていないように感じました。今回の計画では、これまでのここでのクライアントの生活に敬意を払いつつ、この場所のポテンシャルを最大限引き出す事に注力しました。平屋を少し立体的に捉えることにより、眺望の確保や大きな軒下など、敷地に残される余白部分もまた魅力的な空間とすることが出来たと思います。」

【目神山の住宅】
・建築設計:荒谷省午建築研究所
・構造設計:エス・キューブ・アソシエイツ
・施工:山陽建設工業


*************************
japan-architects.com 
日本の建築家・デザイナーと世界をリンク
Web : www.japan-architects.com
Twitter : @JapanArchitects 

Facebook : japanarchitects

*********************
****
Reproduction of any of these images and texts without written permission is prohibited. Copyright: japan-architects.com

砂山太一と浜田晶則による展覧会「鏡と天秤」

$
0
0
東京・京橋のAGC Studioにて3月12日より始まったAGC Studio Exhibition Vol.27「鏡と天秤 -ミクスト・マテリアル・インスタレーションー」展へ。


二人の建築家、砂山太一と浜田晶則がAGCの旬の素材を媒体として表現するインスタレーションである。
コンセプトは「Mirror」と「Libra」。鏡は非日常(ハレ)と日常(ケ)の境界が曖昧な社会をどのように映しとっているか、天秤は非日常(ハレ)と日常(ケ)のバランスをどのように計っているのか、それぞれの解釈によって製作された装置と空間を体感することができる。


〈Libra〉浜田晶則
ガラス筐体とフッ素樹脂フィルムで構成される天秤と、特殊12.2chのマルチチャンネルオーディオシステムによるサウンドの作品。


フィルムは、繋がれたガラスの塊によって水平に張られており、それを支えるように対をなす182kgもの大きなガラスが45度に傾きを維持して "大地"に立っている。


さらにフィルムの上には1対の漏斗と、音響彫刻家の國本怜氏による立体的な音像を可能にする球体スピーカー。膜の上の水が落ち、摩擦力と表面張力によってとどまり、音と共鳴する。


浜田晶則氏(左)、國本怜氏(右)
チームラボのプロジェクトで協働したという二人。「非日常と日常、仮想と現実、主体と容体、これらを両義的なものとして思考するための装置がLibraです。ぜひ体感しに来てください。」


〈Mirror〉砂山太一
鏡として使用可能な反射率と高解像度な映像表示を兼ね備えた、AGCの拡張ミラー型ディスプレイ「Augmented mirror」を主に使用したミクストメディアインスタレーション。


反射率65%のハーフミラーの背後に液晶ディスプレイを配置したミラー型ディスプレイによる鏡面サイネージ空間。液晶ディスプレイの光がハーフミラーを通過し、鏡の表面に映像が表示される(表示の無い黒い部分は通常の鏡)。L字型に構成された鏡の壁が、鏡像、実物そして映像が混ざり合う拡張された空間をつくっている。


砂山太一氏。「メディアの再生装置のような空間です。先に空間の中にカラーMDFで厚みのある平面を作り、その後映像や配置するものを考えていきました。」

AGC Studio Exhibition Vol.27 
「鏡と天秤 -ミクスト・マテリアル・インスタレーションー」
会期:3月12日(火)~ 5月11日(土)
開場:10:00 ~ 18:00(日曜・月曜・祝祭日休み)
入場:無料
会場:AGC Studio(東京都中央区京橋2-5-18)
ディレクション:中崎隆司
主催:AGC株式会社 AGC Studio
www.agcstudio.jp/event/3857


*************************
japan-architects.com 
日本の建築家・デザイナーと世界をリンク
Web : www.japan-architects.com
Twitter : @JapanArchitects 

Facebook : japanarchitects

*********************
****
Reproduction of any of these images and texts without written permission is prohibited. Copyright: japan-architects.com

クリスト&ガンテンバインの建築展「The Last Act of Design – スイス建築の表現手法」レポート

$
0
0
3月20日より代官山 ヒルサイドテラスにて開催のクリスト&ガンテンバイン「The Last Act of Design – スイス建築の表現手法」内覧会に行ってきました。


クリスト&ガンテンバイン(Christ & Gantenbein)はエマニュエル・クリストとクリストフ・ガンテンバインによって1998年に設立されたスイス・バーゼルを拠点とする新しい世代の建築設計事務所。スイス国立博物館やバーゼル州立美術館などを手掛けたことでも知られ、2018年にDeezen”Archi tect of the Year” 賞を受賞するなど世界からも注目されているスイスを代表する建築設計事務所である。

クリスト&ガンテンバイン、日瑞建築文化協会顧問の古谷誠章氏(もう一人の顧問アトリエ・ワンの貝島桃代氏は欠席)を囲み、本展のオープニングを祝うメンバー

主催は2018年に日本とスイスの建築の文化交流を促進させるためのプラットフォームを構築すべく、スイスとの関わりの深い建築家 有志が6名(石田建太朗/平瀬有人/黒川智之/金野千恵/湯谷紘介/黒川彰)により設立された一般社団法人日瑞建築文化協会。第一弾として企画されたクリスト&ガンテンバイン日本初開催となる本建築展は、東京・京都の2拠点において、 国立西洋美術館、京都工芸繊維大学などでのレクチャーと併せた開催となる。

本展は、2010年から2016年に竣工した7つの建築を、長年展覧会や出版のプロジェクトにおいて協働してきたイタリア人写真家のステファノ・グラツィアーニの目を通して表現される写真をメインに、表現媒体としての立体的なドローイング、そしてアンビルトの9つの模型によって構成されている。
  
写真は大小様々なサイズがあり、その中にはグラツィアーニ氏がクリスト&ガンテンバインの事務所を訪れ、スタディモデルなどプロジェクトのプロセスを自由に撮影したものが含まれている。
面白いのは、それらの模型やマテリアルなどを撮った写真の方が、実際に完成した建物の写真よりも、はるかに大きいサイズで大事そうにフレームに入れて展示されている点。

リンツ・チョコレート・コンピテンシー・センター(建設中)2019年秋に竣工予定。
そして模型写真。
吹き抜けエリア。本展のために再制作されたドローイングと模型が置かれたテーブルがある。
ドローイングは、青と黒をベースに、線、影、色、背景、ヴォイドといった様々なツールで表現されている。

最新の3Dプリント技術によって製作された9つのアンビルトプロジェクト。エマニュエル・クリスト氏は「これらアンビルトは僕たちにとっては同じように重要なもの」と話す。 
シテ・ドュ・ラ・ミュージック(スイス ジュネーブ 2017)

左から写真家のステファノ・グラツィアーニ氏、エマニュエル・クリスト氏、スタッフ、クリストフ・ガンテンバイン氏。
「本展のタイトルThe Last Act of Designは、『設計する行為は建物が建ったら終わりなのか?』という問いからきています。建物が何年も経ったあとも、デザインという行為は写真、ドローイング、模型といった媒体を通して持続し新たな表現で形づくられているという僕たちの考えを伝えたいと思いました」
【The Last Act of Design – スイス建築の表現手法】
東京展会期:2019年3月20日〜3月31日
会場:ヒルサイドテラスF棟 ヒルサイドフォーラム
主催: 一般社団法人 日瑞建築文化協会 + スイス大使館

京都展
会期: 2019年4月4日〜20日
会場: 京都工芸繊維大学 美術工芸資料館
主催: 一般社団法人 日端建築文化協会 + 京都工芸繊維大学 KYOTO Design Lab
+ 京都工芸繊維大学 美術工芸資料館 協力: スイス大使館

*************************
japan-architects.com 
日本の建築家・デザイナーと世界をリンク
Web : www.japan-architects.com
Twitter : @JapanArchitects 

Facebook : japanarchitects

*************************
Reproduction of any of these images and texts without written permission is prohibited. Copyright: japan-architects.com
Viewing all 584 articles
Browse latest View live