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能作文徳×常山未央による自邸兼事務所「西大井のあな」

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能作文徳(能作文徳建築設計事務所)×常山未央(mnm)による品川区の自邸兼事務所「西大井のあな – 都市のワイルドエコロジー」を見学してきました。横須賀線 西大井駅、もしくは浅草線 馬込駅から徒歩10分程の場所。


1986年竣工の鉄骨造住宅を中古で購入し、1階を自身達の設計事務所、2階を民泊、3〜4階を自宅として使う(延床面積154.8m2、事務所42.7m2)。リノベーションのために一部を業者に解体してもらい、その後生活しながら自身達で考え施工していくという。
子どもがケンケンやゴム跳びをして遊びそうな私道と、奥には横須賀線と新幹線が通る。


1階にはシャッターと壁があったが取り払い、事務所を2面開口とした。
左は既存の門扉のまま手付かず。外階段で2階へ上がる。


コーナーの鉄骨はコンクリートで被覆補強した。その際型枠の内側にダンボールを貼って表情を出したが「表層の紙がうまく剥がれなかった。」と笑いながら話す能作さん。


事務所。まだ施工中と事前に聞いていたが、想像以上に未完。しかしスタッフやインターンが仕事をしている。


左を向くと解体後そのままになっている配水管、給水管と水栓、コンセント、天井・壁裏の配線もそのままだ。


それでも少しずつ完成に向けて作業は進んでいるそうで、例えば鉄骨を被覆しているロックウールへの飛散防止塗装、床板張り、一部断熱材施工、、


コーナーの開口部と打合せスペース(ベンチは仮)などがとりあえずできたので、2階から事務所機能を降ろしてきた。
筆者が立っている位置にキッチンカンターを取り付ける予定。引越後、近隣にパン屋がないことが判明し困っているので、ここでパンを焼いて販売しながら地域との接点を設けるというアイデアも温めているそうだ。


仕上げ用のフローロングが片隅に積んであるが、これは展示会場で使われた廃材利用。コンプレッサーも購入したので吹き付け塗装などもDIYする。
床と天井に穴が空いているが、床は既存の地下室に通じており、模型やサンプルの収納に重宝する。そして天井が「西大井のあな」だ。


見上げると4階まで通じており、光が落ちてきている。この「あな」を中心にこのリノベーションは形作られていく。


2階へ。


2階では「あな」がその全貌を現しはじめる。


和室と解体痕のコントラスト。
玄関のタイルや上がり框、廊下の床板を剥がし "土間"として拡張。廊下と階段の境に壁があったが取り払い、広くなった床に「あな」を空けた。


リノベーションやリフォームの現場でよく目にする壁や床と乱れた配線だが、通常と大きく異なるのは天井に穴が空き、ブレースが姿を現していることだろう。


下は事務所とダイレクトに通じている。当然誤って足を踏み外せば落下することになるため手摺を設置する予定だが、既にこの状態で数ヶ月経過している。


二間続きの和室はまだ既存まま。海外の友人が遊びに来た際に既に泊まってもらったそうで「面白い!」と好評だったそうだ。
いずれAirbnbで民泊にすることなどを計画。左奥(玄関入って左手)にシャワー室を設ける。


階段を見上げると4階のトップライトが見えた。薄暗い2階に光や空気が通り抜けるという意図は良く伝わる。


3階へ上がる途中、床の断面がよく見える。床スラブはデッキプレートにコンクリートを流したコンクリートスラブ。隙間に新聞紙(中空材の代わり?)や、二重床の施工は当時の職人の愛嬌だろうか、、、


ここまで見て、この建物は施工中で1階の事務所のみが機能していると思ったら大間違いだ。能作・常山夫妻は完全にここで生活し仕事をしているのだ。


4面に開口がありとても明るい。剥がした天井から配線やシーリングライト、コンセント、ブレーカーパネルまでもがぶら下がり、カーテンもないが、すっかり慣れてしまい特に不便を感じないという。
ただし、これで完成ではなく徐々に仕上げている途中だ。(いつ完成かは分からないが)


この辺り既存では、2階同様階段に接して壁が立ち、キッチン横の床が広く、洗濯機の向かい側に水回りを仕切る壁があった。施工図がきちんと残っていたのでブレースの位置が正確に分かるためそこを狙って「あな」を空けた。


そうして垂直方向に空間が広がり、光と空気、気配の全てが連続する開放的な空間に生まれ変わった。


およそ居住中の住宅とは思えないカット。階段室にあった小窓からも光が注ぎ込んでいるが、既存では壁があったので光は階段室だけのものでしかなかった。
壁はALC板で比較的断熱できているそうだが、今後天井、壁共にセルロースファイバー断熱材と、内窓を取付け二重サッシュにすることで断熱性能を上げていく。


4階寝室もすごい。こちらも4面開口で非常に明るいが同じくカーテンがないため、朝は早くに目覚めてしまうのではと思うが、二人とも慣れてしまい全く問題なく “定時” まで寝られるそうだ。
問題は4層吹き抜けのため、1階から蚊が自由に上がってくるため蚊帳だけは取り付けた。


右手が南で電車も通る側になるが、今後の計画では、右手にサンルームを設け、洗濯乾燥室兼防音のためのバッファーとする。


日射を遮るものがない4階と、隣家の陰になる2階では熱環境が大きく異なる。実際各階に湿温度計が取り付けてあり、訪れた際3℃以上の違いがあった。この吹き抜けに熱交換用のファン付きダクトを通し、季節によって空気を交換できるようにもする。
エアコンがロープで縛り付けられているが、もはや筆者も驚かなくなっていた。


屋上には太陽光集熱器で温水を作り、1階事務所の熱交換器に送り、そこで温められた高効率の不凍液とペリメーターヒーターで窓際を温める。また太陽光発電も行い蓄電池に充電することなど、屋上では様々なことを計画しているが、斜線によってすぼまっているため面積が限られている。何をどのうように設置していくか悩みどころだそうだ。


「SDレビュー2017 入選展」


常山未央さんと能作文徳さん。「最終的にはオフグリッド(送電インフラから家を切り離す)を目指しています。お金を掛ければ一気に出来るかもしれませんが、廃材を利用したり、できるだけ環境負荷の少ない素材や設備を検討しながら進めているので、少し時間が掛かりそうです。都会でも享受できる太陽光を利用し、自分たちで実験しながら作り上げていく『都市のワイルドエコロジー』がテーマです。」

【関連記事】
「SDレビュー2017 入選展」レポート(当作品が出展)
「en [縁] ―ヴェネチア・ビエンナーレ帰国展」レポート
「SDレビュー2013 入選展」レポート
「ユメイエ展:日本の若手建築家」と「A&A展」レポート


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浅利幸男による立川の集合住宅「拳山荘」

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浅利幸男(ラブアーキテクチャー一級建築士事務所)が手掛けた東京 立川の集合住宅「拳山荘」の内覧会に行ってきました。場所は立川駅より徒歩8分ほどの住宅地。


地上3階建て、木造。建築面積293m2、延床面積706m2。木造3階建て、18住戸からなる長屋。
敷地は二面接道するL字型で、既存のケヤキとコブシの大木を活かしながら、街に緑を還元する集合住宅として計画され、この東側と、、


こちら北側の接道まで、地域に開かれ自由に往来できる散歩道(庭)を通した。左が既存のケヤキ。


散歩道は敷地内に3本通され、それぞれが棟の間のトンネル状通路で繋がれている。


そして建物も散歩道とそこに植わる植栽と積極的に干渉し、絡み合うよう複雑な平面と立面を形成している。


散歩道のデザインは庭園美術家の長崎剛志/N-treeが担当した。
中木の植栽は枝垂れるように植えられ、散歩道を覆い、地面は石や三和土によって、あえて不陸を演出しながら蛇行する。




既存のコブシを中心に緩急を付けた植栽と、何年も前からあったような石畳があたたかい雰囲気を醸し出している。


敷地を縫うように散歩道。




左のピロティは駐輪場。


建物は凹凸の外壁面と、12本の外階段が複雑に錯綜しながら、庭と渾然一体となった風景をつくっている。


迷い込んだ近所の住人。


見上げると面白い風景が現れた。


1階からはどこも庭が近い存在となる。専有部とは軽やかな手摺で仕切られており、布団を干す際にも使えそうだ。




工事のために剪定されたケヤキとコブシや植えられた木々が成長し、数年で全く違う風景を見せてくれるだろう。


左から担当の石毛正弘さん、浅利幸男さん、長崎剛志さん。
「賃貸集合住宅の過剰供給は無秩序な街並を助長しやすいですが、逆に賃貸集合住宅をつくることで、スプロール化した街並を修復できればと考えました。立川駅の喧噪や人工的さとは対照的に、穏やかで緑豊かな温泉旅館のような風情を与えた街づくりです。」と浅利さん。

【拳山荘】
設計:浅利幸男、石毛正弘(ラブアーキテクチャー一級建築士事務所)
   須賀茂幸(元所員)
作庭:長崎剛志(N-tree)
施工:吉田工務店


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廣部剛司による東京・中野区の「中野坂上の二世帯住宅」

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廣部剛司(廣部剛司建築研究所)による東京・中野区の「中野坂上の二世帯住宅」を見学してきました。
既存の増築家屋を敷地奥に残し、旗竿敷地に分筆した上で、手前L字型の敷地に新しく家屋を建てた。


敷地面積149m2、建築面積83m2、延床面積190m2。木造2階建ての二世帯住宅で、1階と2階で世帯が分かれる。
中央ラップサイディングが張られたボリュームには階段動線が納まり、接道側と左側にそれぞれの世帯の玄関が見える。
駐車場は左右に振り分けられ、右手のインナーガレージはアルファロメオの限定車のためのスペースだ。ご存じ廣部さんもアルファ乗りだ。


接道側の扉を開けると階段が現れたので、2階世帯への玄関だった。奥の扉を開けると1階世帯の玄関に通じている。


1階世帯は細長い平面を持ち、玄関から右に水回り、左に洋室と和室の寝室。その奥にDK、リビングと続く。


家族が大工をしていたことから施主は木質の空間を望んだ。床梁は現しにすることでそれはさらに強調され、かつ天高を取るためとしても採用した。
右に見えるのが既存家屋で工事中の仮住まいとして利用された。


見返すと和室の障子が行灯のように浮かび上がっている様子が見える。


刷毛目を引いたシラス塗りの壁は水回り、納戸を除くほぼ全室内で採用した。


2階。回り階段はそのまま塔屋へ通じ、屋上へ出ることができる。
左は納戸と、個室が2室。


ご主人の個室は書斎も兼ねるため、光庭から淡い間接光を取り込んだ。ガレージに植わるイヌマキが頭を出している。


LDK。天高は頂部で4.5m、大きな気積で床面積以上の空間が広がる。
左手には中層のマンションが建つため、トップライトを採用し拡散した光で室内を照らす。


反対側には高窓を設けた。天高がある故に、近隣と視線が合いにくい位置から採光することができた。


ダイニングの奥からスキップした2階の個室へ通じる。床下はかなりの広さの収納スペースになる。


キッチン周辺の収納はシナ合板で製作し、2色に塗り分けた。


スキップを上がると、こちらにも個室が2室。


収納は隣の部屋と入れ子状に。奥からバルコニーへ出られる。


「分筆されたタイトな敷地に、2階建てという縛りの中で、二世帯6人、二台分の駐車場を求められるプログラムでした。しかし逆に2建てということから、高さ方向にはのびやかな寸法体系を持ち、平面では分からないゆとりある空間をもつ住居ができたと思います。」と廣部剛司さん。

【中野坂上の二世帯住宅】
設計監理:廣部剛司建築研究所
構造設計:構造設計工房デルタ
施  工:山菱工務店

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永山祐子の自邸「杉並のいえ」

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永山祐子(永山祐子建築設計)の杉並区の自邸「杉並のいえ」を見学してきました。
1974年竣工の8階建てマンションの最上階、メゾネットになった一室をリノベーションした(2層で188m2)。


光量を落とした玄関を抜けると、むき出しの荒々しい梁と、モルタルで滑らかに仕上げられた柱・壁、そこにアッシュ材の床とシナ合板の建具で設えられたギャラリースペースが現れる。はつられた梁はそのままではなく、特殊塗装をし、コンクリートの剥がれを抑え、周囲と色を馴染ませてある。


廊下には川久保ジョイのアートが掛かる。ギャラリースペースは、その非日常な場所として昔の記憶を持ったままの場所とした。
左の壁の裏はオフィス。


オフィスは将来的な永山事務所のアネックスを想定されているが、まだ稼働していない。
オフィスでは、はつられた躯体も白で塗装した。床はラーチ合板にUV塗装。


部屋を出ようとしたところで気付いた、一手間かけた扉の手がかりは内側にステンレス板が貼られアクセントとなっている。


上階へ。階段室を見上げるとさらに川久保ジョイの作品。3枚セットの2枚がこちらに掛かる。


上階は125m2、二面に大きく開口したLDK。こちらでは梁もモルタル、天井は木毛セメント板で仕上げた。
階段室は合わせガラスで間仕切り、引戸で開閉。


既存はオフィス利用で、いくつかの部屋に分割されていたが、雑壁を取り払いワンルーム空間とした。ダイニングテーブルはオリジナル。


中央に陣取るのはSANCALのソファ。


ダイニングの脇には藤元明のアートが掛かる。奥はキッチン。キッチンはなかったので一から作った。システムキッチンはLIXILを導入。


照明は左に調光式のアッパーライトで間接照明に。ダイニングのペンダントライトはGERVASONIの「BRASS95」。スライドレールに付くのは青色発光ダイオードでノーベル賞を受賞した中村修二らが開発した「SORAA」の紫LED。ほかキッチンでは埋め込みのダウンライトが付く。


反対側。可動間仕切りの左奥が寝室。右奥はウォークインクローゼット。その右側が水回り。


西向きに横連の開口と、造り付けのデスク。


デスクはリビングから寝室まで約10m。家族皆が自由に使うデスクで、裏にコンセントが多数備わっている。


床置きのエアコンには、永山さんらしい編み込みのワイヤーチェーンでカバーが掛けられている。冬場は床暖房を利用(ガスと電気のハイブリッド式)。


西側の幹線道路の騒音と、西日を遮るのはAGBが新開発したブラインド内蔵トリプルガラス「スラティア」。外側の空気層内をブラインドが上下する。操作は据え付けのタッチパネルのほかスマホ(Wi-fi)でも可能で、各面の下げ具合や透過具合も個別に調整出来る。内側の2枚はLow-Eガラスで、断熱性能も非常に高い。
通常集合住宅ではサッシュは共用部であるため独自の交換はできないが、管理組合と交渉し、クレーンを使って付け替えたという。


寝室とWICを閉じた状態。シナの木目を丁寧に選んでヘリンボーン張りに。


寝室。今は家族4人で川の字で休んでいるが、将来は子ども室とする予定で、長机はそのまま学習机になる。


可動仕切りは普段はオープンにしているため、ウォークインクローゼットは収納に引戸がつく。キッチン以外に収納はこのコーナーに集約されている格好だ。


水回り。浴室は珍しいガラス引戸で、ジョー・プリンスの戸車で吊られてる。浴槽奥の間接照明が効いている。前述のようにオフィスだったため、この水回りも一から作った。


トイレ。こちらの照明も凝っている。


引戸の端、手掛かりは透明アクリルで設え、使用中の明かりが透過する。




LDKの端は特注スチールサッシュの大開口で、ルーフバルコニーの植栽が入り込むようなデザイン。


ルーフバルコニーは93m2、全面デッキ張り。植栽は荻野寿也景観設計が手掛けた。人工土壌に実の生る植物を多く植え、子どもたちが楽しめるようにしながら、キッチンの近くにはハーブを植え、直ぐ料理に使えるようにした。


自邸ならではの、自己責任ディテールだ。


ぴたっと全てが納まっている。それをリノベーションで実現。


永山祐子さん。「家族の気配が常に感じられるように生活の場を、寝室含めてワンルームとしました。既存の太い2本の独立柱を起点に、寝室、リビング+ダイニング、キッチンの各ゾーンが緩やかに分けられています。マンションだと子どもが走り回るのは気を使いますが、ここでは下階も自室なので戸建てのような気楽さがあり、そして "庭"を持つことができたのが何よりも良かったです。」

【杉並のいえ】
・設計監理:永山祐子建築設計/永山祐子、山岸大助(元所員)
・施  工:濱田崇裕、大迫未来雄


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山中祐一郎 × 木のいえ一番協会 によるCLT実験住宅「CLTHUT」

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山中祐一郎(S.O.Y.建築環境研究所) × 木のいえ一番協会 による「CLTHUT」を見学してきました。
ご存じの方も多いと思うが、CLTはCross Laminated Timber(直交集成板)の略で、ひき板を繊維方向が直交するように積層接着した木質系材料。厚みのある大きな板で、建築の構造材、土木用材、家具などにも使用されている。その利用は欧米で急速に伸びており、特にPCa材のような施工性の良さや構造体としての特性をいかして、中層建築や商業建築などに多く用いられている。


今回山中湖畔に完成したのは、国土交通省「平成28年度サステナブル建築物等先導事業」の補助を得て、CLT低層住宅における技術開発を目的とした実験棟を建設するプロジェクト。今後は小規模・現し設計に適した設計手法・接合部の開発、コストダウン開発、経年変化の検証、温熱環境測定などの技術的な開発を実施すると同時に、体験宿泊など木のいえの暮らし方についての研究にも役立ていくものだ。


つまりCLTによる、戸建て住宅の普及を目指し技術検証を行う実験住宅ということだ。
構造設計と技術協力はエヌ・シー・エヌが担当。


延床面積48m2の実験棟「CLTHUT」。内も外も断熱材は使用せず、外壁も見えている梁・軒天もCLT現しのままで、塗装のみ施されている。


玄関扉。冬の寒さが厳しい山中湖なので、断熱性を高めるため、壁面と同じ15cm厚のCLTパネルから削り出して製作した。


室内も全てCLT現しの空間。仕上げはなく、ログハウスとは全く異なる木質空間。
トップライトから光が差し込む2階と、その下に水回り。奥にキッチンが設えてある。


室内の壁・天井、床、軒裏、外壁を塗り分けた。
3m程張り出したデッキの縁側に、1.2mの庇を出し、内外が気持ちよく連続する。


構造は15cmのCLTパネル構造。井桁状に組まれた4枚の躯体が、そのまま梁になって外へ飛び出したような格好で、庇を支えている。


L字型の二面開口は、木製サッシュがCLTの壁にアウトセットされているので完全に開け放つことができる。


ナイフで切り取られたような不思議な開口。


ルーターを使って角に内Rをつけた意匠が可能。
材の接合部はエヌ・シー・エヌが開発した金具をドリフトピンで接合。見えてくるのはピンの頭だけだ。


小窓もルーターによる切削(サッシュをアウトセット)。


階段も。CLTの塊に垂直方向と、45度方向の二方向からルーターで削り出して作ることができる。


裏側もユニークだ。右手のキッチンもCLTの一枚板をくり抜いて作られている。


浴室はさすがに下半分をFRPで防水されている。


2階は、21cm厚のCLTパネルの床がそのまま構造となり、水平力を担保している。
宿泊体験をしながら実証実験をしていくことができるように、2階を寝室スペースとして使用する。
(筆者も宿泊体験をする予定なのでその際のレポートもアップします)


山中祐一郎さん。「CLTを徹底的に使って設計してみました。今までこういった低層の建築ではそのメリットが活かせませんでしたが、単純な構成で高強度、高精度、しかもログハウスと同等の断熱性も期待できるので、仕上げや被覆なしで住空間を作るのに向いていると思います。課題である耐久(耐候)性も庇とセットにすれば克服できるはずですし、軸組のように見えなくなる部分もなく、自分で手入れできることから経年と共に愛着も湧く住宅が作れそうです。」

【CLTHUT】
事業者:木のいえ一番協会
意匠設計:山中祐一郎/S.O.Y.建築環境研究所
構造設計・技術協力:エヌ・シー・エヌ
CLT製造・加工:銘建工業
施工:ビ・ボーン
協力:アールシーコア、日本CLT協会


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「イサム・ノグチ ー 彫刻から身体・庭へ」展レポート

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7月14日より東京オペラシティ アートギャラリーで開催の展覧会「イサム・ノグチ ー 彫刻から身体・庭へ」の内覧会に行ってきました。

彫刻、陶芸、庭、ランドスケープ・デザインなど領域横断的な活動をした20世紀を代表する芸術家イサム・ノグチ(1904~1988)の、国内では12年ぶりとなる回顧展。大分県立美術館を皮切りに巡回スタートした本展は、香川県立ミュージアムを経て、今回東京での開催が最後となる。


本展は、イサム・ノグチが抽象彫刻の分野にあっても常に「身体」を意識し続けたことや、そうした意識が、子供のための遊具デザインやランドスケープといった人間をとりまく環境へ向かい、空間の彫刻=庭園への情熱に拡大していったことに着目し、その活動の全容に迫るというもの。模型・資料・動画、石の彫刻まで海外・国内の約80点を展示する。


開会の挨拶をする和泉正敏氏。彫刻家で財団法人イサム・ノグチ日本財団理事長の和泉氏は、出会いから亡くなるまで25年間、イサム・ノグチの片腕となり石彫制作のパートナーとして寝食をともにしながら制作に協力した人物。「ノグチが生きていたら、この場で皆さん一人一人と挨拶していたと思います。こちらの会場では、学芸員による石彫の配置のセンスに感心しました。」

会場は、「身体との対話」、「日本との再会」、「空間の彫刻 ─ 庭へ」、「自然との交感 ─ 石の彫刻」と4つの章で構成されている。

《第1章 身体との対話》
この章では、身体性への問いかけがイサム・ノグチの制作において重要であったことを、彫刻やドローイング、舞台美術など、主に初期の作品を通して紹介している。

20代半ばに滞在した北京の人々を毛筆と墨で描いた「北京ドローイング」と呼ばれる一連の素描。イサム・ノグチの芸術の出発点と言われているこれら8点の作品は国内初展示。


〈北京ドローイング(横たわる男)〉1930年 イサム・ノグチ庭園美術館/ニューヨーク)


イサム・ノグチの身体というテーマは、1930年代から手掛けた舞台装置の制作において一層顕著に表れる。舞踏家マーサ・グラハムとの協同作業は30年以上続いた。彫刻、ドローイング、映像など。


マーサ・グラハムの舞台「ヘロディアド」のための舞台装置 1944年

《第2章 日本との再会》
イサム・ノグチは、1950年に19年ぶりの来日を果たした。日本の暮らしや伝統、歴史や社会と向き合いながら、 建築家の丹下健三、谷口吉郎、デザイナーの剣持勇ら多くの芸術家たちと親交を深めながら、広島の橋(欄干)や原爆慰霊碑、慶應義塾大学の新萬來舎のデザインなど、様々なプロジェクトにも参画した。

陶作品。"陶器による彫刻”ととらえ、日本の自然や伝統文化の中から抽出したフォルムを、現代的でユニークな形へとと蘇らせた。


〈柱壺〉 1952年 イサム・ノグチ庭園美術館/ニューヨーク
日本の古墳時代につくられた土管状の円筒塙輪からイメージを得ている。 


〈かぶと〉 1952年 草月会(千葉市美術館に寄託)


萬來舎の内観写真(1950-51年 現存せず 撮影:平山忠治)と、萬來舎のためのコーヒーテーブルと4脚のスツール(1951年 慶応義塾大学)

来日早々、建築家の谷口吉郎と協力して手掛けた慶応義塾大学の萬來舎は、建築、インテリア、工芸、彫刻、庭を含む総合的造形空間。


〈萬來舎 1/50模型〉
慶応義塾で長く教えた亡き父、詩人・野口米次郎の記念室であるとともに、多くの戦没学生を慰霊するモニュメントでもあったという。


〈慶応義塾大学 第二研究室 設計案 配置図と平面図〉
庭園室内設計:イサム・ノグチ
建築設計:谷口吉郎 


〈広島の原爆慰霊碑の習作模型〉イサム・ノグチ庭園美術館/ニューヨーク
丹下健三と広島市長の依頼で制作したが不採択となった幻の案。


〈2mのあかり〉


〈AKARI〉1953年頃〜 香川県立ミュージアム

《第3章 空間の彫刻 ─ 庭へ》
最晩年に至るまで長く手掛けられた庭や公園、ランドスケープなど、大地を素材とする「彫刻」作品を紹介。 庭の仕事は「彫刻」を「大地」に結びつける試みであり、 同時にそれは、重力によって大地に縛りつけられた人間の「身体」と向き合うことでもあった。

環境的作品は、日本の禅の庭、そして世界中を訪ねて出会った石の遺跡など、古今東西の文化にインスピレーションを受けて生まれている。




〈チェイス・マンハッタン銀行プラザの沈床園のための模型〉
1960-63年頃 イサム・ノグチ庭園美術館/ニューヨーク

「大人が子どものような想像力を持ったとすれば、世界は一変して全く新しい体験として目に映るに違いない」と語ったイサム・ノグチ。1940年頃から手掛けるようになったこれら遊具やプレイ・スカルプチャーにその思いは遺憾なく発揮されている。


〈オクテトラの模型〉1968 イサム・ノグチ庭園美術館/ニューヨーク
八面体に球体状のヴォイド(空虚)を穿った遊具、プレイ・スカルプチャー。この幾何学性には、親友だった発明家・思想家バックミンスター・フラーからの影響がうかがえるという。


〈デトロイト、フィリップ・A・ハート・プラザのホラス・E・ダッジ・ファウンテンの模型〉1972年-79年頃 イサム・ノグチ庭園美術館/ニューヨーク


〈スライド・マントラの模型〉
1966-88年頃 イサム・ノグチ庭園美術館/ニューヨーク(イサム・ノグチ日本財団に永久貸与) 
螺旋形の滑り台。構想から20年以上を経て大理石で制作された。 

《第4章 自然との交感 ─ 石の彫刻》
後半生を代表するのは、大理石よりも硬い玄武岩、花崗岩などによる峻厳な石の彫刻。


〈無題〉1987年 インド産花崗岩
イサム・ノグチ庭園美術館/ニューヨーク(イサム・ノグチ日本財団に永久貸与) 

〈イサム・ノグチ年譜〉
最後の展示室では、イサム・ノグチがどのような人生を送ってきたかを写真と共に振り返る資料が壁一面に。興味深い出来事の数々に、実際の作品群にも増して多くの人が足を止め真剣に見入っていた。

【イサム・ノグチ ─ 彫刻から身体・庭へ】
会場:東京オペラシティ アートギャラリー
会期:2018年7月14日(土)~9月24日(月)
詳細:https://www.operacity.jp/ag/exh211/


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佐々木龍一 + 奥村梨枝子による集合住宅「Modelia Brut KAGURAZAKA」

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佐々木龍一(佐々木設計事務所)+ 奥村梨枝子(YTRO Design Institute)による新宿区の集合住宅「Modelia Brut KAGURAZAKA」を見学してきました。
都営大江戸線牛込神楽坂駅から徒歩2分の場所。


敷地面積169m2、建築面積100m2、延床面積428m2。RC造、5階建、12住戸からなる共同住宅。


Modeliaシリーズで展開しているスクエアの意匠は、毎回趣向を変え外観の自己主張をしている。今回は開口の周囲に浮造りした杉板型枠で表情を出した。


江戸時代からある神楽坂の階段状の坂や、路地をコンテクストとしてすくい上げ、アプローチのデザインに落とし込んだ。


塀にもスクエアの開口を設けた。路地に並ぶ建物の窓がこちらに向いているようだ。


階段室。踏面はグレーチングを使い光を透過させ、共有部が暗くならないよう配慮。




203号室(この住戸のみ内覧者向けにModeliaがモデルルームとして設えた)。玄関を空けると「U」字型のプランの中央にキッチンがあり、扉の向こうが水回りとなる。
下足入れはカリモクに依頼した特注。カリモクが建築家とコラボするのは珍しいケースとのこと。


キッチンと水回りによって振り分けられた居室。ワンルームだか2Kといった印象。




スクエアから切り取られた街並み。


303号室。前述の上階の住戸。平面は同じだが、、


見上げると斜線規制に掛かる部分が吹き抜けになり、星空のようなトップライトがリズミカルに設けられている。


302号室。一番小さいタイプの住戸。キッチンにはバイブレーション仕上げされたカラーステンレスを張った。


401号室。一番広いタイプの住戸で1LDK。


キッチンは杉板型枠を使ったコンクリートで造作されている。


4階になるとスクエアからの視線は住宅の屋根の上に抜け、遠景が望めるようになってくる。


カリモクの下足入れは各住戸に導入されている。玄関からキッチンへは土間のように瓦タイルが張られている。


501号室。玄関のみ4階で居室は5階になる。


ワンルームだが二面の大開口と、


広いバルコニーが魅力だ。


佐々木龍一さんと、奥村梨枝子さん。
「神楽坂という江戸時代からの文化が根付く場所です。如何に文化、街と共に暮らすか、この神楽坂プロジェクトにおいての四角いファインダー越しに街を切り取って、生活に取り込んでもらえたらと思います。」

【Modelia Brut KAGURAZAKA】
設計監理:佐々木龍一/佐々木設計事務所+奥村梨枝子/YTRO Design Institute
プロデュース:モデリア
施工:中村弥工務店


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直井建築設計による杉並区住宅「Primitive House」

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直井建築設計事務所による東京・杉並の住宅「Primitive House」を見学してきました。


敷地面積:335m2、建築面積:133m2、延床面積:248m2、木造2階建て。二つのゆったりとしたシェイプの切妻ボリュームが特徴的だ。


都市計画道路に面しているためセットバックが求められた。手前のボリュームはガレージと玄関。左手から地下の音楽スタジオへ通じる。
外壁の仕上げはジョリパットネオのエンシェントブリック仕上げ。


庭へ通じている玄関ポーチ。ポーチ手前側には自転車なども置くことができる。


玄関は石張りの床が外部から連続。廊下の先にトイレ、右奥はLDKに通じる。左はガレージへ。


車2台分のガレージ。DIY好きのご主人のために、大工作業ができるよう広々としたガレージに。


LDK。手前がダイニング、奥がリビングになる。この後、施主が既に持っているTRUCKの家具や手作りの家具が各所に据えられる。
庭は左奥に南の庭と、筆者の背後に東の庭と二つある。


こちらは東の庭は、朝日に照らされながら朝食を楽しめるように配置した。


いい季節にはテーブルを庭に出しての朝食が気持ちよさそうだ。屋根は本スレートを採用。
ブルーベリーやオリーブが植わる植栽は直井充弘(直井造園)が担当。直井克敏さんの実弟だ。


リビングは中央にcharnwood製の薪ストーブ。床は幅広のオーク。南の庭に面して全面開口だが、格子窓や扉で異なる開口で設えてある。


サッシュや扉は製作。


両開きの扉を全開にして庭と連続。隣家の生け垣がかなり立派なので、プライベート感のある庭を実現できた。


右の引戸はガレージへ通じる。庭に対してほぼ同じ接し方で、共に両開きだが、引戸と扉ではかなり異なる雰囲気になることにあらためて気付かされる。


庭から戻ってキッチン側を見る。キッチンカウンターが備わりハイチェアを並べる。


手入れは大変だが、奥さまはキッチン回り全てに木製天板を選んだ。それに合うようブラウンのタイルと真鍮のモール、ゴールドのペンダントライトなどで設えた。


キッチンからパントリーに回り込む。大きな作業台と、収納がたっぷり。
突き当たりから東の庭に出られるので、庭に植わるハーブを摘んですぐ料理に使える。


地下の音楽スタジオ。42m2あり、本格的な機材が入るそうだ。
壁にニッシンイクスのスプリットフェイスを張り、天井には厚み違いの板材をランダムに張ることで凹凸を作り、音の反響を抑えてある。


冒頭で記した門扉からこちらに直接出入りできる。


2階へ上がる途中、存在感を見せる鋸痕の付いた梁成450mmの梁。


2階は階段と水回りをコアにして、その回りに室が配されており、右に家事室、左に子ども室が2室、奥に主寝室と続く。
煙突の背後でハイサイドが口を開けているのは洗面室と家事室、浴室(ガラスが入っている)で、中心で空間が閉ざされるのを避け、気配や空気が繋がるよう工夫されている。


子ども室から家事室側を見る。


洗面室と浴室。水栓や洗面ボウルは施主が選んだKOHLER。


洗面室と浴室は棟まで天井が取ってあり、かつ主寝室に面するバルコニーにも開口し、大きな気積で共同浴場でしか味わえないような開放感となっている。

「接道や敷地境界から大きなセットバックが必要でしたが、比較的大きな敷地が幸いし、セットバックしながら、ダイニングの庭、リビングの庭と時間によって性格の違う二つの庭を作り、家族がLDKのどこかにいつもいられるようにし、お施主さんがお持ちの家具に合うよう、プリミティブで味わいのある仕上げに注力しながら計画しました。」と直井克敏さん。

【Primitive House】
・設計監理:直井建築設計事務所
・構造設計:なわけんジム
・施工:内田産業
・造園:直井造園土木
・設備:ZO設計室


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CLT実験住宅「CLTHUT」体験宿泊レポート

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山中祐一郎(S.O.Y.建築環境研究所)×木のいえ一番協会によるCLT実験住宅「CLTHUT」に体験宿泊してきました。
建築の詳細については以前のレポートを参照


CLTを使った戸建て住宅の普及を目指すため、技術検証を行う実験住宅であるこの建物は、山梨県山中湖畔の森の中にあるフェザント山中湖の一画に建つ。


フェザント山中湖はログハウスデベロッパーのBESSが運営するシェア別荘地で、CLTHUTの監理を担当している。センターハウスも巨大なログハウスで、チェックイン・チェックアウトなどの手続きはこちらで行う。中にはレストランなども併設されている。


木のいえ一番協会は、戦後の効率と利便性だけを追求した住宅の普及により、木のいえをすっかり見なくなってしまった現代を憂い、「自然材を建物の内外装にふんだんに使い、木が醸しだす情感と、年月とともに深まる味わいを楽しむ暮らしの普及を目指す。」と活動する一般社団法人だ。


そして夏の湿気や、冬の寒さも厳しいこの山中湖畔で体験宿泊を繰り返しながら、平地での住宅としてフィードバックしていく目的で建てられたのがこの実験住宅「CLTHUT」で、設計を山中祐一郎が担当した。
竣工は2018年2月。半年経った建物の体験宿泊をする機会を得られた。


仕上げも断熱も不要とされるCLTだが、外気に触れる部分には耐候性を高めるために塗装だけしてあり、さらに軒を深く出し、雨の影響も少なくした。


内装は壁天井にホワイトの拭き取り塗装で、山小屋の雰囲気に寄りすぎない「住宅」の雰囲気だ。そして玄関土間全てが木というのも贅沢だ。


内覧会で訪れた際はなかったラグ、クッション、テーブルが設えてある。


キッチンには一通り調理できるよう、IH、深底フライパン、ケトル、コーヒードリッパー+ポット、食洗用品、ボウル、ザル、菜箸、トング、包丁、まな板、ふきん、オーブン電子レンジ、冷蔵庫、分別ゴミ箱が備えてある。


消耗品はゴミ袋、ラップ、アルミホイル、ティッシュ、蜂用殺虫剤などが。


食器棚には大皿、小皿、深皿、マグカップ、グラス、各種カトラリーが4人分揃えてある。


浴室。給湯はガス。ドライヤーと宿泊人数分のフェイスタオルとバスタオル。タオルはホテルのように交換サービスがないので、連泊する場合はセンターハウス横のコインランドリーで洗濯できる。


シャンプー、リンス、ボディーソープ。シャワーの湯量は申し分ないが、シャワーカーテンがあった方が良いと感じた。


2階は寝室。どのように敷くかはお好みだが、手摺子がシンプルなので落下に注意したい。またマットレスがなかったので、堅めが苦手な場合はキャンプ用のマットを用意すると良いだろう。(ここはあくまでも宿泊施設ではないのだ)


2階には間接照明が備わる。ペンダントやスポットなどいくつかの照明で、好みに調整して楽しむことができる。


真夏の今回は用はなかったが、秋以降は薪ストーブの体験もできるだろう。ちなみにパネル型のカーボンヒーターも1台常備されている。


夕刻、デッキでは当然バーベキューだ。デッキは住宅を想定しているためか十分な照明が備わる。


地元のニジマスを食べたかったため魚屋を探して買い求めた。東京とは違い、クマゼミの混じる鳴き声をBGMに楽しんだ。


夕食後、湖畔まで2分歩いて山中湖花火大会報湖祭を堪能。

朝、トップライトの明るさで目を覚ます。目覚めの瞬間に緑と青空が見え、鳥のさえずりが聞こえ、木に包まれた空間にいる。そんなことがこんなにも非日常なのかと実感する。夜には雲間に星も見ることができたこのトップライトは、中山さんがどうしてもとこだわった箇所だったが、正解だ。


朝食前に湖畔に出ると見事な逆さ富士も拝むことができた。
重量感と安心感のあるCLTと山中湖の自然に囲まれ、特別な3日を過ごすことができた。断熱性能をみるために、秋か冬にもう一度体験してみたい。

この実験住宅は体験宿泊が可能です。
基本的には木のいえ一番協会会員向で、施設維持協力費として1泊¥15,000(棟貸し)、最大2泊まで。
一定の条件で非会員の方でも利用できるので、協会事務局まで問い合わせてください。

【CLTHUT 体験宿泊】
木のいえ一番協会:www.kinoie-1ban.or.jp
メール:info@kinoie-1ban.or.jp
電話:03-5790-6360


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土田拓也/no.555による横浜の住宅「MRM」

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土田拓也/no.555一級建築士事務所による横浜市港北区の住宅「MRM」を見学してきました。


敷地面積141m2、建築面積54m2、延床面積135m2。木造+一部RC造、地下1階、地上2階建て。
切妻のボリュームに横連の開口が上下に二列あるのが特徴だ。


正面は南東向き。横から見ると下層は半地下になっているのが分かる。背面の屋根は斜線の影響で寄せ棟になっている。
斜め後ろに見えているのはご両親の家だそうだ。


腰壁に囲まれた珍しい玄関アプローチ。その先にピロティーがあるようだ。
外壁は杉板にホワイトの拭き取り塗装。


アウトドアが大好きなご主人はこの広いピロティーを望んだ。スケートボードも見えるが、ここにスパイン(スロープ)を作りたいと考えているようだが、近隣への騒音の心配もあり思案中だとか。
腰壁は基礎がそのまま立ち上がったもので、静かな住宅街でオープンになりすぎないよう配慮した。


横連の開口はこちらにも採用されている。右の引戸が玄関。


地下階。この空間は昔の家屋にあった大きな土間のような働きで、簡単な接客や、立ち話ができるようにした。さらにご主人の趣味の部屋でありガレージであり、倉庫。およそ思いつく外遊びギアが一通り揃い、アウトドア好きにはたまらない空間だ。唯一(?)奥さまのものは右奥のアップライトピアノだろうか。
床はモルタルで、電気式の土壌蓄熱を導入している。


引越は1年前に済んでおり、植栽が落ち着き、生活感が出てきたところでの竣工写真撮影のタイミングで訪問した。
壁の棚などはご主人自らが取り付けたものだ。


1階へ。


1階はLDK。天井を抑えたDKの先にリビングが連続する。


左を見ると収納、浴室と続き、奥の右手がトイレとなる。


キッチンから。横連開口から景色が4枚の絵のように切り取られている。


ダイニングを抜けると切妻ボリューム一杯に気積が広がり、DK上の2階が姿を現す。
中心の梁は右の外壁を支えるもの。象徴的な存在になるよう塗装されていない。


床はオスモのオーク材フローリングだが、土田さん達の手作業で浮造加工されている。また壁は本漆喰、天井は土田さんの建築では定番の木毛セメント板となる。


窓に近付いておやっ?と思う。外観で見たときはフラットだったにも関わらず、内部から見るとサッシュがアウトセットされている。これはアウトセットされたサッシュの出幅に合わせて外壁をふかし、外観を面一にしてあるのだ。


2階は寝室とクローゼット。床と同じラーチ材で作られた収納家具で緩く仕切られる。


1階2階が連続する開放的な空間は間仕切りのない大きなワンルームと言える。屋根の開き止めにスチールのタイバーが幾筋か通される。


間接光に柔らかく包まれる小屋裏空間。

「半地下にあるホビールームは、家族が顔を合わせるスペースとして、第二のリビング的な役割を担わせています。この気を使わないスペースは、裏の敷地の両親も孫の顔を気軽に見に来れ、ママ友などもハードルを感じず来れるよう計画しています。ホビールーム前のピロティでは、ご主人の趣味のスケートボードを音を気にせず楽しめるようにしていますが、子供達の遊び場であったり、テーブルを置いて時間を過ごす第三のリビングにもなっていきます。家族の意思によって、居場所がズレていき、室の名前もズレていくような計画としています。」と土田拓也さん、担当の平野佳乃さん。

【MRM】
建築設計:no.555一級建築士事務所/土田拓也+平野佳乃
構造設計:frame works/秋元恵美
施工:安斎工務店


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岩佐周明/岩佐設計工房による「武蔵野アトラスターズスポーツクリニック」

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岩佐周明/岩佐設計工房による東京 三鷹の「武蔵野アトラスターズスポーツクリニック」を見学してきました。JR三鷹駅から徒歩3分のメディカルテナントビルの2階。
[photo: Toshihiro Sobajima]


このクリニックは、社会人ラグビートップイーストリーグに所属する横河武蔵野アトラスターズのチームドクターとスタッフが、トップチームの現場で培ってきた「スポーツ医療」の経験を活かし、整形外科及びリハビリテーション領域における地域医療の向上と発展を目指して開設された。


エントランスを入るとラウンドした待合室が現れる。


診察室や、、


検査室にもアトラスターズのチームカラーが使われ、壁面のグラフィックなどスポーティーなイメージを演出。


待合室の背後には中空ポリカーボネート板越しにリハビリ室の躍動感を感じることができ、回復への期待感を高める。また外光を待合室にも導くことができる。


リハビリ室。待合室にもこちらにも、床にはリノリウムが張られている。リノリウムは天然素材を主材とした衝撃吸収性の高い床材だ。


本来広さを求められるリハビリスペースであるが、今回138m2と限られた床面積であるため円弧を描くパーティションにより、奥行きが見えにくく広さを感じさせる工夫がされている。

「諸室は外周から内へ向かって『動から静の等高線を描く様なヒエラルキー』としてグラデーションを成しながら、リハビリテーション、検査、診察のそれぞれにおいて快適性と機能性を追求した医療空間を目指しました。」と岩佐周明さん。

【武蔵野アトラスターズスポーツクリニック】
設計監理:一級建築士事務所岩佐設計工房
グラフィック:粟辻デザイン
施工:天然社
事業主:イービストレード
webサイト:https://musashinoasc.com


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御手洗龍による目黒区の店舗兼住宅「stir」

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御手洗龍(御手洗龍建築設計事務所)による目黒区の店舗兼住宅「stir」を見学してきました。東急東横線 学芸大学駅から徒歩5分程の場所。


敷地面積74m2、建築面積54m2、延床面積147m2。RC造、4階建て。
敷地は東横線の高架に隣接。さらに北側には2020年完成予定の、駒沢通りと目黒通りを接続させる幅員20mの道路が建設中であるため、近い将来大きく環境が変わることを想定し計画された。


そこで1階部分はテナントとし、すでに和食店が入ることが決まっている。


2階より上、住居部へのエントランスは南側の路地にある。
北側は今後すぐに道路工事用の仮囲いで塞がれてしまうため、暫くは店舗への出入りもこちら側になる。
細い私道の突き当たり、人が吸い上げられていきそうな外階段が見える。向かいに工場や小さなショップもあり、既に住民同士が近い関係にあるという。外階段はそのような地域環境を住宅の中にも引き入れるようなイメージで設置された。


2階玄関へ。


玄関ポーチは南北に抜けるピロティになっている。


玄関扉を開けると、先ほどのアプローチ階段がそのまま接続するような、大きくうねる螺旋階段が現れた。


天高5.3mの二層吹き抜け空間と大開口。道路や鉄道といった通常ネガティブに捉えられる要素を遮断せず、施主の "この地に棲まうのだ"という強い意志に最大限に応えたような計画だ。
螺旋階段の中央辺りがリビングエリア、左側がダイニングエリア、左奥がキッチンのLDK。


空間や環境を正にstirする(混ぜる)、stair(階段)だ。

建物はt=220の柱壁構造。壁の中に200×400で配筋された鉄骨が10本程打ち込まれている。壁が薄いためコンクリートは高性能AE減水剤を用いたスランプ18のものを流し、所員総出で型枠を叩いて気泡を抜いたそうだ。


階段はそのまま3階、4階へと連続する。


3階。右の壁は、奥からトイレ、収納、洗濯機、洗面室+浴室。


回り込むと主寝室が現れる。


螺旋形状に呼応するような天井。




4階へ。


全く異なる空間へ上っていくような感覚。


4階ゲストルーム。将来は子ども室にする予定。


そして広いルーフバルコニー。屋外キッチンも備わりパーティーが開けるようになっている。屋根にはハンモックを掛けられるようフックも。


滑り台のような階段室の上屋がそのまま塊で現れている。路地から始まった螺旋階段の旅はここで終わるが、次に線路に続いているようにも見える。


御手洗龍さん。「オープンで社交的なお施主さんは、週末になると人が集まれるような家にしたいと望まれました。ご友人やこれから形成されるご近所とのコミュニティーを大切にするための階段を導線の中心に据えました。大開口に面した緩い勾配でゆっくりと上ると、街や建物の見え方が様々に変わっていきます。」

【stir】
設計監理:御手洗龍建築設計事務所
構造設計:平岩構造計画
施工:イケダ工務店


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福田世志弥による「八ヶ岳の住宅・レストラン」

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福田世志弥建築設計事務所が手掛けた山梨県北杜市の「八ヶ岳の住宅・レストラン」を見学してきました。

7年連続ミシュラン三ツ星を獲得した和食料理店「青山えさき」のオーナーシェフ江﨑新太郎が、料理人人生をかけて都心から離れ、自然豊かな八ヶ岳山麓にレストランと住まいを移す計画だ。


標高1,200m、白樺や赤松に囲まれた1500坪の敷地は、10年ほど前に購入したもの。手前、有機的な石のアプローチの先がレストラン棟、奥に見えるのが住宅棟。

南西側からレストラン棟を見る。エントランス側の軒にはコーナーがあるが、その他は森に対して大きく円弧を描く屋根と床スラブに、三つ星型の平面を持つ室が挟まれるような形だ。


エントランス。天井や収納に、あえて赤身の心材を使い意匠としている。壁は本漆喰の磨き仕上げ。


ドアを閉めようと振り返るとドアノブがオリジナル製作のガラスでできており、透過した光が美しく反射していた。


店内に入ると印象的な円形のトップライトと、複雑な曲面を持つEP(艶消し)の天井に柔らかく包まれる。トップライトは屋根形状に合わせアクリルを円錐型に製作し、はめ込んでいる。


客席は6名掛けのテーブルが1台。昼一組、夜一組のみで、全国の厳選した食材と山梨のフルーツを使った創作和食を提供する。三面開口が自然に包まれるような感覚を誘い特別な時の流れを演出する。


キッチンは家庭用の雰囲気に仕上げられており、客席ともオープンで距離も近くキッチンでのライブ感を間近に感じることができる。


"客を自宅に招くようなレストラン"がコンセプトである。一画に江崎シェフの書斎をイメージした寛ぎのエリアを設け、食前や食後にソファにゆったりと寛ぐことができるようにした。今後書棚には江崎シェフの愛読書などが並べられる予定。

客席のテーブルや椅子、書斎の椅子なども福田さんがデザインしたものでコーディネートされている。


住宅棟へ。こちらも柔らかな円を基調にデザインされ、エントランスの軒に角があるのもレストラン棟と同じだ。


反対側へ回ると全体が長円形だと分かった。複数の開口と、屋上にバルコニーも見える。盛り土の下には畑を作り、レストランで提供する野菜やハーブなどを育てる予定だとか。


エントランスを入ると天井まで届く大きな書棚が出迎える。正面、上がり框をあがると飼い犬用の洗い場がある。


LVL材を用いた書棚は高さは4.5m、棚板は2.3mmの鉄板を曲げて製作した。棚板は取り外し可能で衣類をかけたりアイディア次第で多様な使い方ができる。
正面から見ると洗い場を避けられるよう階段が納まっている(!)


室内は壁の少ないワンルーム空間。森に開いた大開口はウッドデッキに連続している。長円形の天井にS字型に切り込まれたようなトップライトが目を引く。そして部屋の中央には同じく長円形のオリジナルソファ。

トップライトは二面あり、それぞれ南北を向き、質の異なる自然光が差し込む。夜はトップライトの縁に沿って配されたLED照明が煌めく。


屋上バルコニーから見た様子。屋根はガルバリウム葺き。


キッチンはL字型で、そのままダイニングテーブルに連続する。椅子はレストランと同じデザインのものを採用。


反対側には水回りとゲストルーム、2階が主寝室だ。両室ともフロアレベルが下げてある。


ゲストルームは扇型。奥に見えるのは真鍮製のフロアランプ。こちらも福田さんオリジナルのデザインだ。


水回り。フロアレベルは浴室に掛けて少しずつ下がり、浴槽からはグランドレベルから森林ビューを楽しむことができる。


2階主寝室はモンゴルのゲルを思わせるような空間だ。屋上へは、こちらのトップライトに梯子をかけて上がる。


腰壁にはデスクが設えてあり書斎使いができるようになっている。


福田世志弥さん。「敷地を何度も訪れ、施主の江崎さんとどの木を切って造成するかを検討しました。住宅、レストランという異なるプログラムでも、太陽、枝葉方向、生態系のでき方を応用してこの地に馴染むような建築ができたと思います。将来的には宿泊小屋なども併設できると良いのではと話しています」

【八ヶ岳の住宅・レストラン】
設計管理:福田世志弥建築設計事務所
構造設計:小西泰孝構造設計
施  工:株式会社新津組

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オンデザインによる新宿の瞑想スタジオ「muon - ムオン」

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オンデザイン/西田司+西澤正子+伊藤健吾による新宿の瞑想スタジオ「muon - ムオン」を見学してきました。
muonは、関東を中心に全国にヨガやピラティスなどのプログラムを展開する「スタジオ・ヨギー」の新業態で、日本初の瞑想専用スタジオだ。


新宿WESTスタジオの一部を瞑想スタジオ「muon」に改装。


瞑想の世界へ続く結界として「参道」を進み、静かに非日常のときへ誘う。


待合室に入る。間接照明のみで光量を抑えた「庭」をイメージした空間。ロッカーに上着や貴重品を預ける。もちろん携帯電話もここまで。


庭に置かれる縁台の雰囲気。鉄瓶で湧かした白湯をまずいただき心を落ち着かせる。


そして瞑想室は「光の森」をイメージ。光の柱が淡く空間を照らす。


感度を上げて撮影するとこのように。参加者は思い思いの光の柱を選び、用意されている特注の座布団へ腰を降ろす。
スーツなど着用者のためにベンチ席も用意されている。


光の柱は岡安泉による。乳白色のアクリル製角パイプに、メープル材を極薄にスライスしたシートを貼り、内部にLEDライトが仕込まれている。


インストラクターの説明をまず聞き、音声ガイダンスに従いながら瞑想を進めていく。
瞑想というと日本では寺などで行うのが一般的だが、欧米ではヨガの次のトレンドとして普及しはじめており、仕事前や、合間に30分程行うのが多く、仕事のパフォーマンスを向上させたり、質の良い睡眠を取れるといった効果が確認されているという。


光の柱はプログラム中、いくつかのパターンに光り方を変化させていく。光の柱と向き合い、自分の心を見つめ、自分の身体を感じ、五感をフル活用して自然と瞑想状態に入っていく。


左に西田司さん。「瞑想スタジオが既に多くあるニューヨークでいくつか体験してきましたが、どこへ行っても寝落ちしてしまいました(笑)。ここでは宗教色を排し、カジュアルで気軽に参加できながらも、動線を工夫し、瞑想に没入できる空間に仕上げました。」
この日筆者も30分の体験瞑想をしたが、終わると頭と身体がすっきりとし、とても良い気分になった。

【瞑想スタジオ muon】
設計:西田司+西澤正子+伊藤健吾/オンデザイン
照明:岡安泉照明設計事務所, KOYA JAPAN Lighting
クリエイティブディレクション:志伯健太郎/GLIDER
施工:船場
瞑想スタジオ muon:https://muon.world/about/


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斎藤裕美+平山真/SHIP一級建築士事務所による次世代健康診断施設「KRD Nihombashi」

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斎藤裕美+平山真(SHIP一級建築士事務所)が内装を手掛けた次世代健康診断施設「KRD Nihombashi」の内覧会に行ってきました。
斎藤さんと平山さんは共に手塚建築研究所出身。独立し2015年に事務所を設立した。


場所は東京 日本橋。今年竣工した13階建てテナントビルの1階と2階に位置する。
従来の人間ドック施設とは異なり、日本で初めての試みとして、通常よりも詳細な血液検査の他、眼科と歯科の精密検査を同時に実施し、身体の総合的な状態を把握する健診を実施することができる施設となっている。

1階は112m2の多目的スタジオ。2階は各種検査を行うフロアで444m2とゆったりした空間の中で寛ぎながら健診を受けることができる。


まずは2階へ。左側のエントランスにあるクロークで、検査着やスリッパなどを受け取り靴をしまうと先ず白いカウンターが出迎える。 バーコード決済のためレジなども無くすっきり美しい。


天井には路地のようなサイン。本施設は各検査室をゆるやかにつなぐ3つのエリア「LOBBY」「LOUNGE」「LIBRARY」があり、それぞれの場所ごとにオリジナルで設計・選定された家具を配し、健診の間の時間も受診者が見つけた思い思いの場所で過ごせるよう工夫している。


ロビー。 漆喰で仕上げられた壁は、間接照明を効果的に用いて浮遊感を出し、上質で軽やかな雰囲気を演出している。


待ち時間もゆったり自分のスペースを持つことができるよう配慮されたデザインのソファ(E&Y)。


窓際に並ぶ椅子で屋外を眺めて過ごしてみるのもいい。


奥へ進むとラウンジエリア。周囲には各種検査室が配置されている。
本施設は、1回に8名、1日に6組、計48人までとしており、受診者が健診だけでなく医師と対話できるような時間を大切にしているそうだ。


回遊動線に沿って進む。


エントランスを過ぎるとライブラリースペース。ブックディレクターによる本のセレクトは「何のために」「どうやって」健康になるのか、という2つの視点で選ばれており、健康だけでなくその先の人生の過ごし方に目を向けられる選書だ。


医学書ばかりでなく漫画や写真集なども並んでいる。通路脇には個室もあり読書や仕事もできるようになっている。


ブックシェルフの間に歯科検査室。


奥まで進むと通りに面したワークスペース。健診の合間に仕事などができるよう、Wi-Fi完備のフリースペースも用意されている。
右手には女性に嬉しいパウダールームも備わる。


1階多目的スタジオ。昼を挟んだ健診の際に、弁当の受け渡しや食事スペースとしても使用される。
スタジオには今後可動式キッチンが導入され、「健康=まずは食事から」をテーマに、クッキングスタジオやヨガ、セミナーなど様々な健康リテラシー向上のプログラムを開催していく。


床はモールテックス仕上げ。天井は杉材をルーバー状に張り込んでふかしてある。壁面収納はバイブレーション仕上げされたステンレス。


壁面収納は扉を動かすと椅子の収納場所として使われていたり、、、


シンクも全面開口になって現れる仕組み 。


平山真さんと斎藤裕美さん。「以前クリニックは手掛けたことがありましたが、今回は次世代型の健康診断施設という、日本では概念も新しい施設。この場所にきて、ちょっと立ち止まって自分自身の健康のことやこの先の生き方を考えることができるスペースとはどのような空間なのかということを考え、実際の空間にしていくプロセスは、たいへんやりがいがありました。」

設計・監理:斎藤裕美+平山真/ SHIP一級建築士事務所
(設計協力:知念里奈 / まる・ち設計)
照明:EOS plus
機械・電気設備:設備計画
家具:E&Y
施工:アズ

【KRD Nihombashi】
https://www.krd-nihombashi.com



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田根剛展「未来の記憶」レポート/ギャラリー・間

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10月18日からTOTOギャラリー・間で開催の「田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future ― Search & Research」のプレス内覧会に行ってきました。
翌19日からは、初台にある東京オペラシティアートギャラリーでも同名の個展を連携して開催(副題のみ異なりオペラシティは "Digging & Building")、という前代未聞の企画だ。テーマを共通としながら、氏の密度の高いこれまでの活動と、"建築は記憶を通じていかに未来をつくりうるか"という挑戦を、ふたつの会場で紹介するが、それぞれの会場で見せ方は大きく異なる。
[Tsuyoshi Tane | Archaeology of the Future ― Search & Research]


会場を入って左手の壁にはいつものように展覧会概要が記されているが、今回はマニフェストと呼び、田根さんがそのマニフェストにサインをする事で、内覧会開始直前に会場設営が完了した。

–マニフェスト–
「まだ誰も見たことのない、経験したこともない、想像すらしたことのない、そんな建築をつくりたいと思っています。でもそれは奇抜な未来型の建築とは違う、場所の記憶からはじまる建築、そんな途方もないことを考えています。
私はいつも考古学者のように遠い時間を遡り、場所の記憶を掘り起こすことからはじめます。そこでは今日の世界から忘れ去られ、失われ、消えてしまったものに遭遇し、それらを発見する驚きと喜びがあります・・・


・・・Search & Researchは、アイデアの発掘と収集からはじまる思考と考察の展示となります。各プロジェクトごとに行われた考古学的リサーチは、思考の痕跡が残るように集められているのです。建築は記憶を継承し、この時代を動かし、未来のその先の記憶となります。まだ誰も見たことのない未来の記憶をつくること、建築にはそれが可能だと信じています。
いま私は、記憶は過去のもではなく、未来を生みだす原動力だと考えはじめました。場所の記憶からつくる建築は未来の記憶となる。それを『Archaeology of the Future』と呼んでいます。」


上記マニフェストにあるように本展では、21の作品が特注のラックごとに、そのリサーチや思考の痕跡が並んでいる博物館のような展示だ。


それぞれの作品脇の壁には思考の源泉であるイメージ写真や、絵画、スケッチなどで埋め尽くされる。


壁の隙間には所々田根さん手描きのメモが記されているのでチェックしていただきたい。


一見雑然と見える会場だが、一つ一つのラックを見ると実は整然と並べられており、正に博物館の展示物をじっくり観賞できるような設えとなっている。模型やサンプルの数は600点にのぼる。


ラックはそのまま中庭まで展示される。中と外の展示物で特に差をつけているわけではなく、フラットに観賞できるが、模型などは風雨除けのアクリルケースに入る。


屋内と同様の展示スタイルだが屋外では開放的で違った見え方がする。


中庭の奥にはシェルフのような箱が並ぶ。今回の展示物をフランスから運ぶために作られたコンテナだ。


こちらも博物館のバックヤードなどにある資料のストックケースのようだ。一部の段に展示されなかったものが納まっている。
これらのコンテナは展示予定ではなかったが、ギャラ間からの要望で急遽展示物となった。


4階展示室は暗幕が掛かり、靴を脱いで入場する。右下に見えるのは下足入れ。


進むと四面をスクリーンに囲まれ、光沢のある床に設えられた空間が広がる。


22の作品が美しい映像や写真で次々に映し出され、田根さんの世界観に没入できる。



個々の展示作品を一部紹介。

〈エストニア国立博物館〉 2016
3人組の建築ユニット、ドレル・ゴットメ・田根(DGT.)として国際コンペに勝利し、一躍注目されることとなった。


イメージ模型や、プログラムの構成模型。


周囲のランドスケープ。
旧ソ連軍の軍用滑走路跡地を利用して、場所の記憶を未来へ繋げる。


このプロジェクトに10年に渡って関わる間に、過去や記憶を掘り起こし、それを建築によって未来に繋げる事が可能なのだと確信したという。


〈弘前市芸術文化施設(仮称)〉 進行中
こちらもコンペにより獲得したプロジェクトで、明治時代に建てられたレンガ倉庫を改修した現代アートの美術館。2020年の完成を目指している。


〈千總本社ビル〉進行中
京友禅の老舗を、ヨーロッパのバロック様式の多様性をヒントに改修するプロジェクト。


友禅のみならず、和サロン、ものづくり、キャラリーなど、日本文化の伝統と未来を担うプロジェクト。


〈新国立競技場案 古墳スタジアム〉 2012コンペ最終選考案
DGT. と田根さんの名前が国内で認知される切っ掛けになったプロジェクト。
今でも負けたことが悔しいそうだ。


オペラシティの展示会場ではスタジアムの1/100模型が展示される。
「負け惜しみに聞こえますが、この案の良さがオペラシティの巨大模型で分かっていただけると思う。東京オリンピックまで2年のこの機会に、もう一度皆さんに見て頂きたかった。」と田根さん。


〈Todoroki House in Valley〉 2018
世田谷区の等々力渓谷近くに今年できたばかりの住宅。


敷地環境より展開していったイメージ模型。


高低差のある敷地のイメージを植生や住環境にも発展させ、地面近くのウェットと、上空の谷から吹き上げるドライな風を享受できる建築とした。
左は施主が作ったテラリウムで、それぞれウェットな環境とドライな環境を小さなビンの中に閉じ込めたもの。


〈フォンテーヌブロー 週末住宅〉進行中
パリ近郊で進行中のプロジェクト。森や岩が混在する自然豊かな敷地で、建築が自然の中に建つことと、建築が自然になることを模索した。
国立公園の中に位置し、役所の審査に1年を要したという。


〈LIGHT is TIME, Citizen in Milano Salone〉 2014
初出展のミラノサローネに於いて、Best Entertaining賞とBest Sound賞の2冠を獲得。その後、南青山のスパイラルで凱旋展を開催し大きな反響を得た。


12月7日から同じくスパイラルで、シチズン時計創業100周年記念のイベント「CITIZEN “We Celebrate Time」で新作を発表する。ギャラ間、オペラシティ、スパイラルと3会場同時に展覧会が開催されることとなる。


〈横浜駅デパートメントストア(仮称)〉進行中
2020年開業予定の、横浜駅西口駅ビルの内装デザインを手掛けている。


開港の地横浜として、グローバルポートシティをテーマに、各フロアに様々な都市の巨大な地図が挿入される。


〈とらやパリ店〉 2015
既存店を改修したインテリアデザインを担当。建築設計のみならず、小さなインテリアデザインでもその設計プロセスは変わらない。その土地(フランス)のものを使い和の空間を作った。


〈クキオのヴィラ〉 2017 コンペ案
ハワイ島の溶岩大地につくる住宅。古墳スタジアムを彷彿とさせるプロジェクトだが残念ながら実現には至っていない。


本展に合わせてTOTO出版より刊行された田根剛初の作品集「TSUYOSHI TANE Archaeology of the Future」と、瀧口範子によるインタビューが収録された「田根剛 アーキオロジーからアーキテクチャーへ」はパリの事務所の様子も。


作品集は、マニフェスト、コンセプト、イメージ、ドローイング、タイムラインの5つの章からなる。






田根剛さん。「はじめオペラシティからオファーを頂いており、数週間後ギャラ間からもオファーを頂きました。それではと思い切って同じタイトルで連携したかたちで実現しようと思いました。実際始まるとそれは本当に大変な作業でした。二つの会場の性格や規模などを考えながら限られた作品数の中で、見せるもの、見せ方のバランス考え、かつ一方だけを観ていただいても完結する必要もありしました。ギャラ間では渾然一体とした中で、パラレルにそして総合的にコンセプチュアルな模型群を見て頂き、皆さんが自由に感じ取っていただければと思います。」


【田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future―Search & Research】
会期:2018年10月18日~12月23日
会場:TOTOギャラリー・間(東京都港区南青山1-24-3 TOTO乃木坂ビル)
詳細:https://jp.toto.com/gallerma/ex181018/index.htm

連携企画
【田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future―Digging & Building】
会期:2018年10月19日〜12月24
会場:東京オペラシティ アートギャラリー(東京都新宿区西新宿3-20-2)


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田根剛展 「未来の記憶」レポート/東京オペラシティ アートギャラリー

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10月19日より東京オペラシティ アートギャラリーで開催の「田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future ─ Digging & Building」内覧会に行って来ました。


オープニングの挨拶をする田根 剛氏。「ギャラリー間での個展と同時開催であることに加え、パリと日本の時差など数え切れない困難を乗り越えこの日を迎えることができました。展覧会をつくるプロセスを通じて、自分自身これからどこに向かうべきなのかという未来を考える良い機会にもなりました」


Digging & Buildingがテーマの本展。建築をつくる際に、まず考古学者のように遠い時間を遡り掘り起こし、場所の記憶からはじめるという田根氏の創作の方法を示してくれる。入口でディスプレイされている古材は京都のプロジェクトで使用したもの。本展の会場構成にも用いられている。


ギャラリー1。田根氏がどのプロジェクトにおいても実施するイメージとテキストを使ったリサーチの手法を、天井高6mの空間を使って展示。古代から未来へ向かう記憶を12のテーマで掘り下げる。


ギャラリー2では代表作である7つのプロジェクトを、コンセプト模型や参考にした物などとともに展示。それぞれのエリアはあるものの、ゆるやかな動線で境界のない世界観を表現。古材や歴史的資料が点在している様子は発掘現場のイメージ。


〈エストニア国立博物館〉1/50模型。幅2m、長さ10m。スタッフが4ヶ月間かけて制作した。


〈新国立競技場案 古墳スタジアム〉


中に入ることができる。木枠にメッシュで固定されている苔は本物なので、定期的に水やりをして会期中大事に育てていくそうだ。


〈10 kyoto〉
2017〜進行中


最後のコリドールでは2004年以降100作品以上の田根氏の全活動を紹介する年表(すべて紙に見えるがよく見ると映像資料もある)。

【田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future ─ Digging & Building】
会場:東京オペラシティ アートギャラリー
会期:2018年10月19日〜 12月24日

連携企画
【田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future―Search & Research】
会場:TOTOギャラリー・間
会期:2018年10月18日~12月23日
詳細:https://jp.toto.com/gallerma/ex181018/index.htm


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永山祐子、藤本壮介、落合陽一等が参加の「DESIGNART TOKYO 2018」レポート

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東京の街を会場にしたデザインとアートの祭典「デザイナート・トーキョー(DESIGNART TOKYO) 2018」が今年もスタートした。初開催となった昨年4万人を超える来場者を記録し話題となった本イベント。今年は「Emotional Life~感動のある暮らし~」をコンセプトに掲げ、渋谷・青山・六本木などのギャラリーやショップで前回の規模を上回る100を越えるエキシビジョンを展開する。


DESIGNART TOKYOの発起人チーム
「今年のDESIGNART TOKYOが見据えているのは2021年、そしてその先です」
開会式には、外交関係樹立150周年のパートナーカントリー 駐日スウェーデン大使の挨拶や、Dezeen、Monocle、Financial Timesなど海外メディアの取材も入り国際色豊か。


そんなフェスティバルの顔となるフィーチャーアーティストに、藤元明と永山祐子を起用。南青山のエイベックスビルのアトリウムに、大型インスタレーション「2021#Tokyo Scope」が出現!

PCV製の直径7m×17mの半球と円錐が組み合わさった雫型の鏡面バルーン。藤元氏が2016年より主催するアートプロジェクト「2021」を永山氏が東京という都市空間へ拡張するコンセプトである。

赤い線は、明治神宮、東京オリンピック1964レガシーや新国立競技場と行ったヘリテッジゾーンをもつ北西側と、六本木ヒルズやこれから大きく変化する豊洲のベイゾーンをもつ南東側、その2エリアを串刺すように通っている。

ビル正面から望むと、ファサード部の2、2、1と合わさって「2021」に見える仕組みだ。


オフィシャルなコラボレーションは初となるアーティストの藤元明、建築家の永山祐子夫妻。
「2つの重要なゾーンを結ぶ線上に位置するこの場所に置くことで、各々の場所に意識を広げてもらいたい。また2021に焦点を当てることで、オリンピック以降の東京の未来像に思いをはせるきっかけとなればと思います」

ほんの一部ではあるが、プレスツアーで訪れた選りすぐりの展示をいくつか紹介したい。


ベサン・ローラ・ウッド「ペリエ ジュエ ポップアップ・バー」/スパイラルカフェ
イギリス出身の気鋭アーティスト、ベサン・ローラ・ウッド(Bethan Laura Wood)がペリエ ジュエのために制作したアート作品「ハイパー ネイチャー(Hyper Nature)」。


空間デザイナーは松村和典が手掛けた。ウッドの作品にも用いられているグラデーションをプリントした紙製のオブジェを群生する植物に見立て空間構成している。

藤本壮介(CANADA GOOSE 千駄ヶ谷)
防寒力の高さとスタイリッシュなデザインで知られるダウンジャケットのブランドのために、普段はそれ自体を目にすることは少ないダウンを用いたショップウィンドウをデザイン。


グリッド状に等間隔で整列したダウンをレイヤー状に配置した。照明によって空を舞う雲のような様々な移ろいを感じることができる。


落合陽一 「Silver Floats」/kolor
波源を形にした彫刻(メディアアート作品?)。
磁力を発生させ、その抵抗力で物体を浮かせ回転させている。

クラーソン・コイヴィスト・ルーネ「House Art View」/TIME & STYLE MIDTOWN

CKR(クラーソン・コイヴィスト・ルーネ)が7年前に手掛けたアートコレクターのための海辺の個人住宅「ヴィラ・ヴィードルンド」にインスパイアされ、日本の異なる地域とのコラボで製作した9つのプロダクトを展示。

「Bookends」
岐阜県関ヶ原町の大理石を用いたブックエンド。15cmの長さを1時間ほどかけてカットし、最後は人の手で磨いて仕上げた。

邱柏文「HappierCafé」/東京ミッドタウン ガレリア3F
黒川紀章、ニューヨークの建築家ケビン・ケノンの事務所で勤務した経歴をもつ台湾出身の建築家、邱柏文(ジョニー・チウ)のインスタレーション「HappierCafé」と、台湾クリエーターたちの作品を同時にチェックすることができる。

「Oblik coffee stand」
コンクリートの穴のホールドでマグの高さに合わせ調整する。

HappierCaféのコンセプトを説明する邱柏文氏。「子供にかえったように好き放題に描いてください。このシートを台湾に持ち帰り、『これが東京のハッピーだったよ』と公開する予定です」


AXISビルでは、4組中3組がミラノサローネ出展作品という質の高い若手デザイナーによる作品を集結。中庭やガーデンテラスといった屋外での展示も楽しめる。

沖津雄司「focus」/2F リビング・モチーフ
モビール状に吊られたレンズで周囲の環境に焦点を当て、常に変化し続ける知覚空間を構築するインテリアオブジェ。組み込まれた照明をONにすると異なる表情を見せる。


YOY「PAINT -Light-」/4F JIDAデザインミュージアム
光のペンキで描いた絵画のような照明シリーズ。内部に配したLEDと、ペンキの軌跡をネガ印刷した透明シートによってペンキのかすれや筆を忠実に再現している。

板坂諭「Neba Chair」/フレッドペリーショップ東京
森林が抱える問題、環境の問題、経済格差の問題など幅広いテーマを身近な椅子で表現。

鹿児島睦「穂高」/HIDA 東京ミッドタウン店
穂高誕生50周年を記念し、鹿児島睦によるファブリックやプロダクトを展示している。「おばあちゃんの家に遊びに行ったような、暖かくて懐かしい感じや、流行を追うのではなくウィリアムモリスのように永く愛される手仕事感のある良いものを目指しました」

関連トークも充実。10月28日に開催されるHOME-FOR-ALLが主催「みんなの家、その先へ 2018」には、伊東豊雄、妹島和世、アストリッド・クライン、マーク・ダイサム、藤森泰司、千葉学、アトリエ・ワン、槻橋修が登壇する。また、会場ではミニオークションとして伊東豊雄や妹島和世などの会場限定の一品のオークションを開催する。

展示されているアートやデザインを購入できるという特徴をもつDESIGNART TOKYO。今年はチャリティーにも貢献できる。

【DESIGNART TOKYO 2018】
会期/10月19日(金)~28日(日)
開催エリア/表参道・外苑前、原宿・明治神宮前、渋谷・恵比寿、代官山・中目黒、六本木・広尾など
詳細:http://designart.jp/


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井手孝太郎による世田谷の住宅「Path」

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井手孝太郎(アールテクニック)による世田谷の住宅「Path」を見学してきました。


敷地面積292m2、建築面積146m2、延床面積396m2。RC造、3階建て。
多角形のボリュームで組まれたような基壇に、二つの棟が乗り、ただ者ではない建築であることが容易に想像できる。
左右にトンネルが口を開けているようだが、左が車庫、右が玄関になる。


車庫。ここまでデザインに力を入れた車庫はなかなかないだろう。ショールームではなく個人住宅だ。


車1台とバイクや自転車を数台停められるスペース。


玄関へは、砕石が樹脂舗装された数段のステップを伴うアプローチ。透水性が高く水溜まりが全くできない。
玄関扉は鉄製(亜鉛メッキ+リン酸亜鉛)で建物の迫力に負けないように力強い。


玄関扉を入ると眼前に立体的な中庭が広がる。山道とも洞窟とも取れるような小径が、段床や階段と同化しながら奥まで続いている。
右手に見えるのは収納や下足入れで、右端が下履き動線で、中央が上履き動線となる。


振り返るとカーペット敷きの小上がりスペースが。大型のテレビも備わり、子どものゲーム仲間が集まるスペースだとか。玄関のすぐ脇で気兼ねなく遊べる。


照明を点けると間接照明により違った意匠が浮かび上がる。
この住宅の照明は殆どが間接照明で、動線ではスイッチパネルを設けず人感センサーで点灯する。


下足入れ側。玄関から動線が並行に二つあるという贅沢なつくり。


奥まで進んだところで見返す。階段、いや小径は回り込みながら続くが居室はまだ現れない。
右下はガレージへ通じる。


中庭を囲むようにU字型の建物が建っているのが分かった。そしてここは山であり谷だということも。


足元の小径は単なる動線ではなく、山を踏みしめながら出来上がった小径 = "Path"なのだ。


上りきるとキッチンとダイニング。大開口から谷を見渡すことができ、下に玄関からの小径が見える。
不整形なダイニングの平面と合わせるように作り付けられたテーブルは、大判の一枚タイルの天板だ。


キッチンの奥にはパントリーとエレベーターが備わる。エレベーターは1階から屋上まで4層を結ぶ、家事には重要なショートカットとなる。
この建築の物語を紡ぐ動線は、豊かな居場所の提供と、シーンの変化を生みだすが、それが不合理なもので留まってはならないよう配慮されている。


段差の付けられた天井は造作ではなくRCの躯体ままだ。段差の縁に付くはスチール(亜鉛メッキ+リン酸亜鉛)のフレームには照明が納まる。
木繊セメント板はコンクリート型枠としてそのまま使ったもので、テクスチャーとしての豊かさはもちろん、吸音や調湿の効果をもたらす。


ダイニングの奥はリビング。こちらも複雑な段床と岩山を彷彿させるオリジナルのソファ。六角形の部分はオットマン。


照明を点けると違う空間が現れたようだ。


リビングの開口2面にのみ外付けブラインドが備わる。


この建物、中庭に面した内側は複雑な多面で構成されているものの、外側は敷地なりのシンプルな矩形だ。それが感じられないように、角にはエレベーターや洗面室を配し、各所が家具で作り込まれている。


半階上がって子どものフロアへ。


子どもフロアは、まず造り付けのデスクと、洗面室とシェルフが並ぶスタディスペース。奥に子どもたちの寝室がある。


ホテルライクな洗面室。


スタディスペースを見返す。正面と右手の外壁は直角なのだが、雑壁、建具、家具によって作り込まれどこが角なのかを全く分からない。


振り返ると、立体的に配された子ども室が3室。


6角形や7角形の平面と凹凸のある断面。


それぞれ形や、開口からの景色が異なる。


3階へは親の寝室。どこまで上がっても植栽が見える。


奥さまの寝室。化粧台や、ベッド脇でリラックスしながら読書できるように設えてある。


ご主人の寝室。可動式のテレビや大容量の収納が設えてある。奥は2階のリビングに通じており、仕事で遅く帰ってきたときなどにも短い動線で部屋に入ることができる。


半階上がって見返す。そして水回りへ。


山登りもいよいよ9合目。抜かりなく統一された雰囲気を持つ水回り。


段床は浴室でも続く。


カルデバイのホーロー浴槽に浸かりながら、植栽と空を眺められる開放的な浴室。


露天風呂の雰囲気だ。


遂に山頂(屋上)へ。
この造形は模型を作らずに全て3DCADのみで検討・設計していくという。


柱壁が上下フロアで接続していない箇所が多く、「構造計算ができない」と構造家が何度か変わった。
そして施工業者は複雑すぎて施工図が描けない、配筋業者はどこに配筋すればよいか分からない、など全ての関係業者にとってチャレンジだったそうだ。


屋上にはアウターリビングが設えられた都心のオアシスだ。階段でもエレベーターでもアクセスできる。


子ども室のあった辺りの外観はこのように。
植栽は30面近くあり、業者による定期的なメンテナンスが当然必要だ。


井手孝太郎さん。「全てPC上の三次元空間の中で立体で計画します。全体構成を押さえた後は、シーンを紡ぐように、一つ一つの空間を手で掘り進めていくような作業でした。そこに手彫りのpathが残りました。誤解を受けがちですが、PC上では実在模型よりも原寸大でよりプリミティブな作業の集積が出来ます。彫刻家に憧れた時期もありましたが、かなり近い作業を楽しみました。」

【 Path 】
・設計監理:アールテクニック/井手孝太郎
・構造設計:設計直/北山直身+小山内博樹
・施工:和田建築株式会社


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小大建築設計事務所による「小⇔大展」レポート

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11月3日からプリズミックギャラリーで始まった、小嶋伸也+小嶋綾香/小大建築設計事務所による「小⇔大展」に行ってきました。


展覧会概要、要約
「事務所設立から4年、ある時は都内の狭小地にホテルを設計し、密集地域特有のプライバシー問題に向き合い、またある時は中国の携帯電話も通じない山村で、図面も読めない職人達と炎天下の中議論し、またある時はルーブル美術館でも展示した移動する建築ではファッションデザイナーと試行錯誤を繰り返した。プロジェクト毎の文化的背景や地域の習慣も大きく異なり、思いもしないタブーを指摘され、想像もしないドラマが次々と降りかかり続けた・・・


核心を突くアイデアにはとても大きな力があると信じている。それは多くの関係者を巻き込みながら成長していく力強さがある。そしてそのアイデアは我々の手を離れた後も人々を惹きつける力があると信じている。
建築は複雑なパズルのようでだが、無数の形のゴールがある喜びがある。地道な検討の上に誰も見たことのないような、ピースがパチッとはまる瞬間を我々は追い求めている。」


そんな様々なドラマを抱えた7つのプロジェクトを通して、その実践の一部を紹介している。


〈Origin villa〉中国浙江省 2018年12月竣工予定
中国農村部の廃れた限界集落の6棟を解体して宿泊施設を新築し、村を再生するプロジェクト。


生活感溢れる集落に馴染みすぎては観光客は望めない、しかし集落と調和する必要もあるという相反する2つの要件がテーマ。




〈Hotel Comfact〉東京
間口6m、細長い敷地に建つ11階建てのホテル。


室内空間を取るために、4mピッチで250mm角の極細柱に設定。


かつ、柱の散り(段差)を無駄なく利用するインテリアを検討している。


〈Hotel C〉中国成都
6棟のホテルを各国から招待された建築家によって進められているホテル。与えられた位置は他の5棟に囲まれた中央広場であるため、周囲の個性的な棟を眺められながらもプライバシーに配慮する計画。


〈NAKAMA des ARTS〉ルーブル美術館内シャルル5世ホール
香取慎吾の個展のための会場デザイン。


香取慎吾の国境や領域に縛られない、ボーダーレスなアート活動を体現した展示空間を目指した。


〈Anju〉帝国ホテルプラザ
香取慎吾とのコラボレーション作品。防災頭巾から着想したパーツをジッパーで結束しながら積み上げていく。


一つ一つは柔らかいが、集まり結束することで強い空間を生みだす。頭巾には香取慎吾の絵画が転写されており、アーティストの世界観に包まれる空間となる。
参考:SDレビュー2015入選展


他にも展示作品があるので会場でじっくりみていただきたい。

【小⇔大展】
会期:2018年11月3日 ~ 12月22日
会場:プリズミックギャラリー
詳細:www.prismic.co.jp/gallery/works/?p=2315


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