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シーラカンスによる横浜の住宅「HOUSE TM」

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シーラカンス(改組前)による横浜の住宅「HOUSE TM」を見学してきました。東急田園都市線あざみ野駅から徒歩25分程の場所。
1994年竣工で、故小嶋一浩と共に、入所したての赤松佳珠子が初めて担当した建築だ。施主がこの住宅を手放すこととなり、この度見学の機会が設けられた。


敷地面積129m2、建築面積52m2、延床面積85m2。RC造(薄肉床壁構造)、地下1階、地上2階+屋上。
右の階段を上って増築された玄関を現在は使っているが、当初は地下右手の扉が玄関だった。


当初の玄関から。スタッコ仕上げのブルーの壁が天井まで伸びる。


玄関の左は地下室で、24年のうち様々に用途が変わってきた。二人のお子さんは既に独立し、現在はあまり使われていない。


1階LDKに上がると今度はシルバーの壁が現れた。2層の吹き抜けだが、正面上のモルタル仕上げの部分は寝室が木造で増築されている。増築などの改修は建築関係の仕事をしているご主人自ら手掛けた。


ポリカーボネート中空板のトップライトと、筆者背後の全面開口により非常に明るい空間だ。


オリジナルでは空間の対角まで見通せる大きな気積。右上(2階は同じくポリカで仕切られた和室。木漏れ日のようにランダムな光がそこかしこから差し込んでいる。
(photo: CAt)


振り返って、大開口の先は住宅街の通りに直角に面しており、視界が遠くまで抜ける。


過去に掲載された誌面を広げながら説明して下さった赤松さん。平面はジグザグになっている。また大きな壁面が象徴的に感じられるよう3面を塗り分けた。

薄肉床壁構造。構造部である薄い壁・床(天井)と、その間をさらに半分程の厚みの薄い壁で塞ぐようなかたちだ。薄い部分は要所要所で開口とし、建物の隅々に外光が行き届くよう工夫されている。


縦スリットの足元は地下にとってトップライトとなるよう、1階の床7ヶ所に開口が設けられている。


当日ダイニングテーブルには、この住宅の掲載誌が多数並んでいた。


キッチンもRC。シンクやガステーブルを入れ替えた際に天板に大理石を張ったそうだ。左上のレンジフードはオリジナルのまま。
キッチンの背後は水回りになる。


上部の棚は後ほど取り付けられた。


水回りはギザギザ平面から矩形が飛び出すような形で、キッチンと合わせて2階の居室の下になる。打ち放しの浴室が四半世紀でどのような経年変化をするのか、設計者にとっては興味深いのではないだろうか。(かなりきれいだ)


ダイニングと階段室は一枚の構造壁で隔てられる。階段室は全面トップライト。階段を上がると洗面台とその隣がトイレ。


扉の向こうはオリジナルの居室(キッチンと水回りの上)でご主人のお母さまの部屋。その右手に増築したご主人の寝室と、ちらりと見える階段は屋上へ通じる。


寝室。大きな三角形のトップライトはかつてダイニングを照らしていた。


屋上へはハッチを開け出入りする。当初はハッチもトップライトとして機能するよう透明だった。


キッチンの脇から見上げるとこのように光が導かれる。グレーチングの階段で十分な光を落とそうとする場合、この位目の粗いグレーチングが必要なようだ。


屋上は緑化仕様で、数年前まで芝が生えていた。竣工から2年間、東工大の屋上緑化による実験のモニターとして、緑化による室内温度のデータ取りに協力していた。その効果はてきめんだという。


竣工当時の同じカット。造成されたばかりの敷地が牧場のように広がる。
トップライト部の上に突き出す円筒は、屋外から照らす室内照明だ。
(photo: CAt)


ダイニングの片隅から地下へ。ハシゴのような急な階段。


地下は子供部屋。子どもが小さいうちは親子4人の寝室として使っていたが、子どもが大きくなってから2室の子供部屋をつくった。
扉がポリカだ。


部屋を抜け見上げると3層の吹き抜けで、熱循環用のパイプが通っている。
ポリカの扉はこの光を部屋に取り込むためだと分かった。


納戸を回り込んでもう一つの子供部屋。


1階で説明した床に開いたトップライトから光が差し込む様子と、構造がよく分かる。


そして最初の表に面した部屋に通じる。


一度外へ出て現在の玄関へ。階段状に植え込みが4段連続する。


玄関。正面の扉部分は庭に面した大きなガラス窓だった。


当時の施工の様子を探るCAtの皆さん。


赤松佳珠子さんと、施主の戸松俊さん。
「新人の赤松さんは初めての担当プロジェクトで張り切っていたのか、毎日のように現場を訪れ、真っ黒に日焼けしていました。」と戸松さん。
「建蔽40%の敷地で延床が85m2くらいしか取れませんでした。そこに家族5人がのびのびと過ごせるためには敷地に対してどのように置くかが重要でした。ジグザグの平面は外部に坪庭のような空間を生み、そこを内部の延長に感じられるようにし、かつ部屋の中に死角をつくり、同じ空間で別々に過ごすことが窮屈にならないよう目指しました。」と赤松さん。

なおこの住宅は仲介業者を介して、建物ごと売りに出される予定。「シーラカンス作」ということで解体せずにどなたかに住み続けて欲しいものだ。

【HOUSE TM】
設計:シーラカンス
構造:TIS&PARTNERS
施工:親松工務店

【関連記事】
恵比寿の複合ビル「恵比寿SAビル」と「CAt 新オフィス」


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西久保毅人/ニコ設計室による江東区の住宅「廣石さんの家」

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西久保毅人(ニコ設計室)による江東区の住宅「廣石さんの家」を見学してきました。


敷地面積62m2、建築面積37m2、延床面積98m2。1階RC造、2・3階木造。
敷地は江戸時代に造られた運河のほとり。昭和になってから護岸と堤防が造られ、さらにその後運河は埋め立てられ、長細い土地だけが取り残されたような格好だ。


前面道路に17m接するも、奥行きは3.6mの敷地に、間口16m×奥行き3mの建物。通りに対して圧迫感のある「壁」にならないような佇まいを検討した。


埋め立てられた運河の上は現在区の土木事務所となっており、今回住宅を建てる際、測量したところ堤防が50〜60cmほど越境していた。この堤防を削るために調査、予算計上、承認、工事手配などなど役所側で時間が掛かり、計画開始から4年を経ての竣工となったそうだ。


1階部分はRC。通りに広く面しているので「守る」ための強さや、上階との差を付け圧迫感を軽減させる。


敷地ぎりぎりに建てることもできたが、同じく圧迫感を軽減させるために50cmほどセットバックさせた。その分室内は狭くなるので出窓を効果的に利用。


玄関は片側に寄せると洞窟のようになってしまうため、建物の中心に据えた。
コンクリートの型枠はラーチの荒っぽい木目を出し、それに合わせるように壁の内側もラーチで仕上げた。


反対側からも上り降りできる立体回遊型。


片側は階段というより3段のスキップフロア。上面には畳が張ってあり、子どものプレイスペースであり、読書スペースになる。


中2階にはパントリーとトイレ。ニコ設計室では色を積極的に使う。


2階へ。


2階中心にDK一体の居間。壁は内-内で2.5mしかないため、キッチン部分の両側に出窓を設け幅を確保した。


これだけ細長いと耐力壁による空間遮断の問題が出てくるが、大学で構造の教員である施主は、自ら構造設計を行った。


上棟時のカット。右は120角ながら左(接道側)の柱を240×120とし、さらに梁成600の強力な合板重複梁を3本掛けた。
これにより梁方向に耐力壁がなく、すっきりした空間をつくることができる。


キッチンからそのまま繋がる居間ダイニング。大きな梁が見えているが空間を遮断することはない。


居間を抜けるとスロープで畳間へ。


畳間を抜けるとバルコニーへ。1階から伸びたシマトネリコがいずれここに大きな傘をつくることになる。


バルコニーから。畳間は吹き抜けで3階に開口が見える。
ちなみに上部のルーバーは、建設中、大工さんが資材置き場として使っていたものを「吹き抜けが少し抜けすぎるのでこれいいな」と現場で決めたアイデアだとか。


中3階には水回り。


3階へ。


3階は手前に書斎兼クローゼット、奥に寝室。高い梁成を利用しスキップさせ、空間の仕切りに利用した。


外部に対して刻んだギザギザ屋根は、内部では表情豊かな空間を生みだしている。




施主の廣石さん一家(前列)と西久保毅人さん(右)、後列にニコ設計室のスタッフの皆さん。
「17mも道路と接しているので無防備な環境であるともいえます。そこで、その薄くて長い状況を、奥行きのある立体的な体験に変換し、街に接している状況を楽しみながらも、守られた暮らしを実現できのではと考えました。3階建てですが、半階毎に暮らしが展開しながら、立体的に回遊できる住まいです。」と西久保さん。


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「芸術家の棲む家 – 建築家と芸術家のコラボレーション」

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「芸術家の棲む家 – 建築家と芸術家のコラボレーション」文化庁新進芸術家海外研修制度50周年記念展覧会のオープニングに行ってきました。
出展・参加するのは建築家17名、美術家8名、音楽家3名、舞踏家2名。開場には建築家と芸術家がコラボレーションしたインスタレーションが展開される。会期中は様々なゲストを迎え、トーク、シンポジウム、コンサート、パフォーマンス等のイベントが多数開催される。
開場はこの3月一杯で閉鎖される横浜のBankART 3階。


概要:「文化庁新進芸術家海外研修制度が始まってから50年。新進芸術家として海外で研修を行った建築家と芸術家のコラボレーションによる展覧会「芸術家の棲む家」を開催致します。建築家、画家、彫刻家たちによる作品の展示があり、バレエの部屋があり、ピアノによる演奏や様々なパフォーマンスが繰り広げられる展覧会場は、建築家と芸術家のコラボレーションによる祝祭空間となり、展覧会場全体が芸術家の棲む家となります。」


開場は大きく3つに分かれ、はじめのギャラリー1は建築家による近作の建築模型の展示。


左奥にはイベントスペース。

黒川智之さんは2008年スイスに派遣。ヘルツォーグ&ド・ムーロンの元で研修した。



細海拓也さん。2010年、スペインのアンサンブル・スタジオで研修した。




原田真宏/マウントフジアーキテクツ


長田直之/ICU一級建築士事務所


霜田亮祐/HUMUS landscape architecture


田辺雄之/田辺雄之建築設計事務所


平瀬有人/yHa architects


古谷誠章/NASCA


西森陸雄/西森事務所


堀川秀夫/堀川秀夫造形建築研究所


戸室太一/戸室太一建築設計


ギャラリー2からはアート作品が並ぶ。

堀川秀夫さんは、本展実行委員のひとり。



田辺雄之、山岡嘉彌、林寛治らの作品も。



田辺雄之さん。


ギャラリー3。


古谷誠章は安東陽子とのコラボ作品。


今永和利は、磯崎新の妻で彫刻家の宮脇愛子(2014年没)とコラボ。




【芸術家の棲む家 – 建築家と芸術家のコラボレーション】
会期:3月8日〜3月31日
開場:BankART Studio NYK 3F


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小山光/キー・オペレーションによる「神田テラスビル」

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小山光/キー・オペレーション(KEY OPERATION INC. / ARCHITECTS)による千代田区の「神田テラスビル」を見学してきました。場所は千代田区神田錦町、新御茶ノ水や小川町駅から数分の場所。


敷地面積155m2、建築面積117m2、延床面積986m2。S造+一部RC造、地下1階、地上9階建て。
靖国通り、本郷通りから1本入った、周囲は大小のオフィスビルと路面に店舗が点在するエリア。


施主からは飲食店が多く入居するレストランビルを依頼された。各階にテラス(バルコニー)を設け、ガラス張りの外周と合わせ、店の賑わいが街にも現れる仕掛だ。


日が暮れるとテラスの天井が暖かく照らされる。


夜空に浮かぶテラスはかなり目を引く。側面には店舗のサインが入れられるよう行灯が用意されている。


1階以外は裏手のエントランスよりアプローチする。地下1階にはスポーツ用品店が既に入居している。


地下1階「ロンドンスポーツ」もキー・オペレーションがデザインを担当した。


細長い建物だがエントランスは裏手に寄せ、人通りのある前面道路側を積極的に街に関わりを持たせるようにした。


9階。2面(先端部は3面)の全面開口から東京の街並みと同化するような雰囲気だ。隣はガソリンスタンドなので上階では視線が抜ける。
グリッド状のサッシュはテナントが大面積のPOPを出しにくくし、ある程度のデザインコードとする効果を持たせた。


7階。外観から見えた屋内・屋外二つのテラスを持つフロア。


贅沢な屋外個室を楽しめる。


テラスの間からは下階の様子も伺える。ほかの店も見えることで「次回はあちらの店に行ってみよう。」といったリピート効果を狙った。


一つ下の6階からはキャンティレバーで3.6m突き出すテラスがこのように見える。広いテラスではプランターで植栽も設え、ガーデンテラスの雰囲気だ。


天井は燻製ホワイトアッシュ張り。


フロア毎で完結しない、立体的な関係性。
今まで幾つものテラス(バルコニー)を持つ建物を手掛けた小山さんは、広すぎず、狭すぎずの絶妙な広さに設定した。広すぎるのは裏を返せば室内が狭い、狭すぎると活用してもらえないという。


4階、3階ではでは隣のガソリンスタンドの看板が "借景"となり、都市のアウトドア空間として敢えて楽しむことができる。
なお、スタンドは日曜は休業で、平日も20時には閉店し消灯されるそうだ。


大通りから見ると「何かあるぞ」と人を吸い寄せいるようなキャッチーなファサードがよく分かる。
「飲食テナントビルの設計では、それぞれ全く異なる個性のテナントをどのように集合させて、どのように街並みに関わらせていくべきか考える必要があると思います。レストランが集合した建物のイメージをビルとして作り、このビルに来れば、いつも異なる食事ができるというアピールができるようにしました。」と小山光さん。


【神田テラスビル/Kanda Terrace】
東京都千代田区神田錦町1-14-13


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石井秀樹による世田谷の「尾山台の家」

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石井秀樹(石井秀樹建築設計事務所)による世田谷区の住宅「尾山台の家」を見学してきました。


敷地面積618m2、建築面積277m2、延床面積459m2。RC造+一部S造、2階建て。
重厚な外壁に雲のような模様が見えるのは、還元タイルを張った後グラインダーで削って表情を出したものだ。
なお、門扉の幅は7mあるのでスケールを想像していただきたい。


人の出入りは側面の玄関から。
植栽はSOLSOが担当。世田谷区の風致地区の「緑化地域制度」適用建築であるため植栽に細かな規定がある。この敷地規模では例えば中木(1m〜2.5m)7本を植えなければならない、など。


塀の内側に一枚鉄扉が付き、開けるとポーチが現れる。


ポーチから玄関ホールへ連続するブリティッシュストーン張りの床。右にガレージ、正面にピロティが伸びる。


玄関ホールの見返し。右にシューズクローゼット。


ピロティーの突き当たりに半透明の壁が見える。


ガラスアート作家に作ってもらった雪花ガラスのオブジェだ。


玄関ホールから右に抜けてガレージへ。3台分のスペースと広場を挟んでもう3台駐車できる。
左の開口はホビールーム。


ガレージにはスーパーカーが何台か納まる。ホビールームからはそれらを愛でられるピクチャーウィンドウを設えた。


両翼のガレージには手動と電動のガラス引戸が付く。ヨーロッパのスーパーカーが映えるよう、床は全面ピンコロ石仕上げだ。


ピロティを挟んで中庭には植栽と水盤。その左にはプールへと連続する。


中庭には低木と舎利木。この舎利木は山火事に遭った森から運んできたそうだ。


玄関横の階段室から室内へ。ステップの隙間から水盤が覗き、夜にはライトに照らされる。


プール。長さ20m、幅2m、水深は1.2mある本格的なサイズ。


片側は全面開口で中庭に面する。ガラスは全てフィックスで出入りはできない。




2階へ。


階段室の大開口はルイス・バラガンを彷彿させる。中庭や渡り廊下のダイナミックな構成を眺められる。


階段を上がるとギャラリーが現れる。奥へ進むと主寝室や子供室に通じる。
天井はウォルナット、床はイペ。


ギャラリーからプライベートゾーンである寝室や水回りへ。


プライベートとパブリックを分ける、結界の役目でもある吹き抜けの中庭を渡り廊下が繋ぐ。


主寝室。全面開口だが、ギャラリーの壁が水平方向のプライバシーを守り、上下に異なる眺めを享受できる。
出入りの引戸の板は、躯体のコンクリート型枠の杉板と幅を合わせてある。右はウォークインクローゼット。


クローゼットはリンクスヒンジドア。壁をフラットにするためのこだわりで、いくつかのドアに採用している。


一度ギャラリーへ出て子供室へ。渡り廊下の先で二部屋に分かれる。


一室は主寝室とバルコニーを共用する。


リビングダイニング。左に造り付けの薪ストーブ。右手から正面に回り込む壁は外壁と同じ、還元タイル・グラインダー仕上げ。その上にハイサイドライトを設け、大屋根が軽やかに乗っている。
タイルの仕上げは、陶器二三雄が手掛けた森鴎外記念館を参考にしたもので、石井さんはいつかやってみたいと思っていたそうだ。


ダイニングとリビングはレベルを変え、緩やかにゾーニングした。



美術館かと見紛うカット。


キッチンはシンクと作業台をアイランドにしてレンジフードが空間に出ないようにした。


天板は美しいグリーンが特徴のイギリス産バーリントンストーン。


キッチンの裏へ廊下が伸び、パントリー、物干し、家事室、水回りが続く。


家事室を抜けるとサウナ、洗面、浴室へ。浴槽の周囲は十和田石で仕上げた。ここを抜けると主寝室へ通じる廊下に繋がるという、プライベートエリアは回遊性のある動線だ。


最後に広場を囲むバルコニーへ。リビング側は大きくせり出した庇を持つ。


向かい側はテラス状に広がる空中ガーデン。


オリーブや柑橘などの果樹やハーブを植えた。正面の部屋はコンパクトな客間。


石井秀樹さん。「スーパーカー6台の駐車スペース、20mの屋内プールというのが基本要件でした。プールの位置はあまり選択肢がなかったのでそこに決めました。スーパーカーは生活の中心ではなく、時折存在が感じられるようにとのことだったので左右に振り分け、中心に広場を設けました。通常の個人住宅のスケールよりはるかに大きな住宅なので、間延びしないようオブジェ的な要素を散りばめながら、繊細なディテールを積み上げ密度をあげていきました。そしてプライベートエリアとパブリックエリアのゾーニングと回遊性など、ドラマチックな生活が演出できるよう動線も工夫しました。」

【尾山台の家】
設計:石井秀樹建築設計事務所
構造:大賀建築構造設計事務所
施工:アーキッシュギャラリー
植栽:SOLSO



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番場俊宏/abanbaによる世田谷区「桜新町の集合住宅」

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番場俊宏+番場絵里香+仲田裕貴/abanba(エイバンバ)による世田谷区「桜新町の集合住宅–SAKRAS」を見学してきました。
東急田園都市線 桜新町駅から徒歩8分程の場所。


敷地面積241m2、延床面積500m2。WRC造4階建、12住戸からなる共同住宅。


敷地の中央に小径を通して棟を分け、大きなコンクリートの塊が住宅地に立ちはだからないようにした。敷地がちょうど扇型に開いた形状をしていることから生まれたアイデアで、文字通り街に対して開いた印象を持たせながら、内外を繋ぐ接続機能を併せ持つ。


側面から見ると、奥の北側にもう一つ2層の棟がある。斜線制限をクリアしながら計画した様子が伺える。


エントランスにはエキスパンドメタルを張った鉄扉が付く。開けると迷い込みたくなるような小径が現れた。


小径の奥から見返す。ほの暗い廊下の先に道路沿いの植栽が鮮やかに見える。
左に階段、右にエレベーターも備わる。


抜けると一度中庭へ出た。


ここでは3つの棟が合わさる様子がよく分かる。


奥の2層の棟、2階住戸へは専用階段でアクセスする。


3層の棟の階段室。限られたスペースで踊り場が設けられないため、複雑な型枠設計が求められたようだ。


102号室。1階住戸では通り(外)とは接触を遮断するのではなく、植栽越しに見え隠れしながらの連続的な接し方だ。


204号室。タイル、フローリング、乾式壁の塗り分けなど、仕上げを変えながらゾーニングされている。




302号室。通りに面する外壁の開口は掃き出し窓と、開閉は縦すべり出しを基本とする
門型の開口に門型の袖壁・垂れ壁でゾーニング。


この住戸は奥行きのあるプランで、門型をくぐりながら奥へ続く。
照明はスライドレールにスポットを備えた。


廊下状の空間に水回りと、


ハイデスクが作り付けられたユーティリティースペース、


そして寝室へと連続する1LDK。右には小さいながらもウォークインクローゼットも。
半分天井が低いのは北側斜線をかわしたためだが、結果変化のあるおもしろい空間になっている。


303号室。大きなT字型の壁は、住まい方を刺激しそうだ。


404号室。最上階には1住戸のみのペントハウスのようだ。


室内は門型仕切り壁の現れ方がかなり大胆。クローゼットは容量のある大きなものだが、足元を浮かせ圧迫感を軽減している。


奥に水回りとルーフバルコニーへのアクセスができる。




屋上の一部がプライベートルーフバルコニー。建設中の渋谷の高層ビル群も見通せる。


番場俊宏さん(右)と、担当の仲田裕貴さん(左)。
「アパートの収益性も考慮しながらもボリューム一杯に建てるのではなく、街に対する建ち姿も考慮しました。住み手には住まい方の幅が広がるようなきっかけ作りと、外部が内部に取り込まれてくるような、建築を楽しんでもらえるデザインを心掛けました。」

【桜新町の集合住宅 – SAKRAS】
建築設計:エイバンバ(番場俊宏+番場絵里香+仲田裕貴)
構造設計:ハシゴダカ建築設計事務所
施工:栄港建設


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NUNOを率いる須藤玲子による展覧会「こいのぼりなう! 」展レポート/国立新美術館

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国立新美術館で4月11日より開催が始まった「こいのぼりなう! 須藤玲子×アドリアン・ガルデール×齋藤精一によるインスタレーション」展の内覧会に行ってきました。


NUNO率いるテキスタイルデザイナーの須藤玲子と、フランスの展示デザイナーのアドリアン・ガルデールのコラボレーションは2008年のジョン・F・ケネディ舞台芸術センター(ワシントン)、2014年のギメ東洋美術館(パリ)についで3回目。


今回の東京でのインスタレーションでは新たにライゾマティクスの齋藤精一が加わった。


国立新美術館の最も大きい展示室(2000m2、天井高8m)のほぼ全体を使って設置されているのは約300匹のテキスタイルこいのぼり。デザインにはNUNOのメンバーが参加し、色柄は一つ一つ異なる。日本各地を巡って職人の手によって仕上げられた布ばかりだ。


会場に入ると一瞬どのように見ていけばよいか迷うが、エントランスの白い鯉のぼりの群れに沿って歩けば、その姿は少しずつ色味と鮮やかさを増し、中心で8の字を描くように一回りして、最後黒い一群が出口へと導いてくれる。


群れの流れが交差する部分。


輪の中へ


輪の中心部には大きめのクッションが用意されており、鯉のぼりが泳ぐ姿を座りながらゆったり眺めることができる。


見上げると、齋藤精一(ライゾマティクス)による軽やかな布、照明、ファン、を用いた水の中にいるような演出。
「布の雰囲気を大事にしたかったので、敢えてプロジェクションはしませんでした。展示室に入っても最初は気づかれないくらいの存在感を目指しました」と齋藤氏。




鯉のぼりは頭上を泳いでいるものもあれば目線の高さにくる鯉のぼりも。しっかり布のドレープや質感までも感じることができる。


静止しているインスタレーションだが、300以上の音源を用いたというsoftpadによるサウンドが会場を包み、水面の揺らぎと呼応しながら、あたかも水中にいるような幻想的な世界を生み出している。


会場奥の部屋では、布を製造する工程を撮影した映像や、鯉のぼりに使われている319種類の布を手に取ったり、ミニこいのぼり作りを体験するコーナーも用意されている。

卓上サイズのこいのぼりなう!も購入できる。

【こいのぼりなう! 須藤玲子×アドリアン・ガルデール×齋藤精一によるインスタレーション】
会場:国立新美術館 企画展示室2E(東京都港区六本木7-22-2)
会期:2018年4月11日(水)〜5月28日(月)

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土田拓也/no.555による茨城の保育園「こばと夢ナーサリー」

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土田拓也(no.555一級建築士事務所)による茨城県牛久市の保育園「こばと夢ナーサリー」を見学してきました。JR常磐線牛久駅から、水戸街道を北へ2kmほど行った場所。


敷地面積1,782m2、延床面積463m2。木造、一部2階建て。
郊外型の広大な幼稚園の敷地の一画に保育園を新築した。


既存のこばと幼稚園。1971年の開園以来4回ほど増築を重ねながら、園庭を囲むように軒下のある、幼稚園の原風景とも言える佇まいを継承しているものの、所々に無理が見られる。幼稚園や保育園は、園児の増加はもちろん、その時々のニーズやカリキュラム、或いは法律の変更によりそれぞれに適応した増改築がしばしば必要となるためだ。


そして現在は「幼保一体」という時代のニーズに応えるため保育園を新築した。


園へのヒアリングや検討の結果、今後も様々にニーズが変わっていくことが避けられないことから、大きなボリュームの建物を建てず、いくつかのボリュームに分節し、“予測不能な将来” に対してフレキシブルな対応をできるようにした。外観は既存園舎の切妻を継承しながら “家” をイメージし、園児にとって違和感のない親しみの湧く存在を目指した。


今回の計画では保育園として3棟、幼稚園付属の屋内遊戯場と、調理室の2棟の計5棟を建てた。しかし計画中も少しずつニーズが変わり、竣工段階で早くも次なる計画が上がっているという。そのため外構ももう少し計画が固まってから仕上げるそうだ。


保育園エントランス。土間は真砂土で、植栽や水飲み場まであり小さな公園のようだ。19名と少人数の保育園にとって大きなエントランスだが、保護者にとって送り迎え時のストレスフリー化に多いに役立つ。


“公園” の周囲には縁側の雰囲気。内と外を繋ぐ緩衝地帯として働きながら、幼稚園で見られる軒下でのコミュニケーションの場としても機能するのだ。
左には下足入れや、主に保育士が使う多目的室やトイレがあり、上に施設唯一の2階となる事務室となる。


植栽はちょうどトップライトの下になるように。


2階事務室。保育中はほとんど人がいないので、必要最低限のシンプルな作りに。
天井の垂木梁はLVLを用いた。


エントランスから右に進むと2歳児保育室のある棟へ。棟同士は短い渡り廊下で接続される。


2歳児保育室。左のロッカーの反対側から保護者が着替えやオムツを入れ替え、保育室側から取り出すことができる。


テーブルはオリジナルデザインで制作。組合せにより様々に変形できる。


エントランスから左側は0・1歳児の保育室、さらに奥は一枚ドアを介して幼稚園付属となり、調理室と屋内遊戯場へ接続する。
この渡り廊下も幼稚園での軒下・渡り廊下という一つのアイデンティティーとして継承した。


渡り廊下はt=10mmのポリカ板段で外の気配を感じることができる。
一見簡易的ともいえる仕上げだが、前述の “予測不能な将来” に対する備えといえる。


外からはこのように。


0・1歳児の保育室。構成は2歳児保育室と同じ。
保育園の建築では大開口を設けることが多いが、昼寝時にはカーテンで閉める必要があることや、窓に近寄ったときに外が見える、といった視界に緩急をつけるため、また "家っぽさ"を演出するためにもこのようにした。


掃き出しの開口からはテラスを介してそのまま外に出られる。


幼稚園付属の屋内遊戯場。この場所には以前屋外プールがあった。夏期にはこの空間にプールが展開できるよう、排水可能なデッキ張りとなっている。
子どもたちが大好きなプール「夏、雨天や気温が低い時にプール遊びをさせてあげられないのが心苦しい。」という理事長の強い思いで、どんなときでもたっぷりと水遊びができるようにと屋内型にした。


そのため片隅には大口径の水栓が備わり、温水も供給できる。


スパン9.1m、高さ7.6mの切妻ボリュームを無柱で実現するために、厚さ50×梁成400を2枚抱き合わせ、金物を挟み込んだ垂木梁とした。(KES構法/株式会社シェルター)
壁は仕上げ用ラーチ合板、天井は構造用ラーチ合板。床は樹脂製デッキ材を選んだ。滑らない・ささくれない・腐らないといった幼児にとっては重要な要素を優先した。


それぞれの垂木梁はタイバーで引っ張り、開きを抑制している。これにより軒桁や壁をコンパクトに保つことができた。


土田拓也さんと、担当の佐久間悠さん。
「将来的に読み切れない変化に対応すべく、意図的に規則性を排除しました。規則性が、予測できない変化の足かせになると考えた上であり、建物のサイズ、平面的な角度、屋根の角度などをバラつかせることで、将来計画されるものがどのようなものであっても、この『バラツキ』が吸収してくれるという逆転側の発想です。」

【こばと夢ナーサリー】
建築設計:no.555一級建築士事務所
構造設計:シェルター
施工:高塚建設工業
こばと夢ナーサリー:https://kobato.ed.jp/nursery/

【関連記事】
平塚の住宅「SUKIMA」
土田拓也の自邸「YAMATE APT.」


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黒川智之による横浜の離れ「三ツ池の蔵」

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黒川智之(黒川智之建築設計事務所)による「三ツ池の蔵」を見学してきました。横浜市鶴見区にある大きな敷地を持つ住宅の、ガレージ・物置・ワーキングスペースとして利用する離れの建て替え。


敷地面積197m2、延床面積89m2。木造2階建て。
四方を異なる、しかも恵まれた環境が囲んでいることから、4つの正面を持つ蔵として計画されている。


広い敷地に、よく手入れされた庭。母屋には施主と奥さまが住んでおり、時折訪ねてくる娘さんが仕事をしながら滞在もできる場所が今回の離れだ。(左手の見事な桜は分筆して譲渡した敷地側)


「外壁と屋根の区別をつけず、できるだけシームレスで、蔵のような塊感を出したかった。」と黒川さん。方形屋根と切妻屋根が合わさったような特徴的な屋根だ。


接道側。1階にはシャッターの付くガレージ。接道との境界にはこの後門扉などがつき、外構も整えられる。


シンボルツリーである右手の椎の木を包むように「く」の字に折れた外壁。


庭いじりなどの際、休憩に使える東屋の雰囲気にした玄関ポーチ。


ガラス張りの玄関扉を開けると、南北に抜ける二層吹き抜けの玄関ホール。視線の先には前出の桜が借景で現れる。


2階。階段を上がって奥まで進み見返すと東西方向に抜けるトンネル状の空間と、南北(右左)に抜ける開口。それを強調するようにパネル梁が力強く存在し、井桁状の空間の方向性を演出している。


南を向くと、引戸の先に桜。


北側は左から収納、ミニキッチン、そしてバルコニー越しに母屋。


東は庭と崖地の上から遠くまで街並みが望める。


天井はLVL積層面(木口面)を現しにした材で仕上げた。
中央にはパネル梁の溝に照明が埋め込まれているのが見える。


南北に引戸で連続する開口。


西側には林の深い緑が見える。
右のガラスケースには飛行機の模型などが飾られるそうだ。


バルコニーは袖壁と角度を付けた開口により、母屋との視線の重なりを調整している。


バルコニーはL字に展開し贅沢な眺めを享受できる。

「高台に位置していて、どこからも見られる建物なので、家型の蔵としての構えを四方に向けた建築としました。四方への開口はそれぞれ性格を変え、シンプルな平面と断面ながら変化のある環境が生まれるよう計画しました。」と黒川智之さん。

【三ツ池の蔵】
建築設計:黒川智之建築設計事務所
構造設計:木下洋介構造設計室
施工:新都市建設株式会社

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北千束の集合住宅


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「建築の日本展:その遺伝子のもたらすもの」レポート/森美術館

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森美術館で4月25日から開催される「建築の日本展:その遺伝子のもたらすもの」内覧会に行って来ました。


世界中から注目されている日本の建築。本展は、日本の建築を読み解く鍵と考えられる9つの特質で賞を編成し、機能主義の近代建築では見過ごされながらも、古代から現代までその底流に脈々と潜む遺伝子を考察するというもの。貴重な建築資料や模型から体験型インスタレーションまで100プロジェクト、400点を超える展示物で日本建築の過去、現在だけでなく、未来を考える。

《1. 可能性としての木造》
国土の70%が森林である日本。木の文化は近代どうやって活かされたか、木造建築が見直されている今、日本の木造建築の技と思想、その未来の可能性について思考する。

北川原温《ミラノ国際博覧会2015日本館 木組インフィニティ》2015





《2. 超越する美学》
日本の建築にある意匠や構成の簡素さには「シンプル」という言葉を超えた存在感がある。木造にも打放しコンクリートにも通底する超越する美学の系譜は、これからも永遠に更新されていく。





《3.安らかなる屋根》
日本建築は屋根である、と言われる。伝統的な日本建築の屋根が近現代の建築家にいかなるインスピレーションを与えてきたかを考察する。


《4. 建築としての工芸》
自然を抽象化する意匠のセンスと高度な匠の技を駆使して、「部分」が説得力ある「全体」を織りなす工芸としての建築が構築されていた日本。そのような工芸性は遺伝子として近現代の建築にも脈々と流れている。



千利休作の作と伝えられ、現存する茶室建築としては日本最古の国宝〈待庵〉を原寸で再現。


ものつくり大学の50名ほどの強力のもと、実測図や文献を紐解きながら、釘一本から手作りし、土壁や小舞、掛込天井など忠実に再現した。

《5. 連なる空間》
日本の伝統は、厳密に空間を分け隔てなくても、建築が私たちの暮らしを豊かにすることを世界に示した。実用性が見た目の美しさにもつながる、開かれた空間の理想像は今も日本建築に生き続けている。



丹下健三の自宅
1/3スケールで再現した模型


〈Power of Scale〉ライゾマティクス・アーキテクチャー 
3Dで体感する体験型インスタレーション。最新の技術のレーザーファイバーと映像を駆使し、日本建築の空間概念を大小さまざまなスケールで原寸再現している。

《6. 開かれた折衷》
明治期に大工棟梁が手掛けた擬洋風建築や、世界的視座で日本建築を模索した伊東忠太の挑戦を紹介。


《7. 集まって生きる形》
伝統的集落を実測した調査や雪害に苦しむ農村問題など、建築が社会に向き合った例を紹介。


《8. 発見された日本 》
来日したフランク・ロイド・ライトやアントニン・レーモンドから、現在第一線で活躍する建築家まで、国外の建築家が創造的に捉えた日本像を紹介。
「発見された日本」の遺伝子は、海外に建設された日本人建築家の作品にも見出され、これからも未来の日本像を広げていく。


《9. 共生する自然》
外と内との境界を曖昧にすることで自然を取り込むことを特徴としている日本の建築にフォーカス。



プレス説明会の様子。
登壇者 左から南條史生(森美術館館長)、藤森照信(本展監修)、倉方俊輔(本展企画)、前田尚武(森美術館建築・デザインプログラムマネジャー)

六本木ヒルズ・森美術館15周年記念展「建築の日本展:その遺伝子のもたらすもの」
会場:森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)
会期:2018月4日25日(水)~ 9月17日(月)
詳細:www.mori.art.museum/jp/exhibitions/japaninarchitecture/index.html

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藤原徹平による会場構成「岡本太郎の写真」展 レポート

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川崎市岡本太郎美術館で4月28日から開催の、藤原徹平(フジワラテッペイアーキテクツラボ)が会場構成を担当した「岡本太郎の写真-採集と思考のはざまに」展の内覧・レセプションに行ってきました。


展覧会概要:岡本太郎は若い日に留学したパリで、画家としての方向を模索するかたわら、自分の行く道への裏づけを得たいという切実な思いから哲学や社会学に関心を持ちます。そして人間の生き方の根源を探るべく、パリ大学で民族学・文化人類学を学びました。パリでは、画家だけでなく写真家たちとも親しく交流し、ブラッサイやマン・レイに写真の手ほどきをうけ、引き伸ばし機を譲り受けたり、たわむれに展覧会にも出品しています。しかし、岡本が猛烈な勢いで写真を撮りはじめるのは、戦後、雑誌に寄稿した文章の挿図に、自分が見たものを伝える手段としてこのメディアを選んだ時からでした。
こどもたち、風土、祭りの熱狂、動物、石と木、坂道の多い街、屋根、境界。岡本がフィルムに写し取ったイメージは、取材した土地、旅先でとらえられたものです。見過ごしてしまうようなささいな瞬間の、しかし絶対的なイメージ。フィルムには、レンズを通してひたすらに見つめた、岡本太郎の眼の痕跡が残されています。旅の同行者である秘書・敏子は「一つ一つ、いったい、いつこんなものを見ていたんだろう、とびっくりさせられるし、そのシャープな、動かしようのない絶対感にも息を呑む。一緒に歩いていても、岡本太郎の眼が捉えていた世界を、私はまるで見ていないんだな、といつも思った。」*と述べています。
本展では、岡本がフィルムに切り取ったモチーフ、採集したイメージを軸に、岡本太郎の眼が見つめ捉えたものを検証することで、絵画や彫刻にも通底していく彼の思考を探ります。カメラのレンズが眼そのものになったような、岡本太郎の眼差しを追体験してみてください。


会場にはゼラチンシルバープリントが224点、ベタ焼きを拡大したパネル4点、プロジェクターによるスライドショーに加え、油彩画11点、彫刻13点が並ぶ。


プリントは写真評論家の楠本亜紀によって、4つの章「道具」「街」「境界(さかい)」「人」に整理され、さらに18のテーマに分類し展示される。そして普段は小部屋をつくるためにパーティションとして使われる展示壁を、ぱらぱらとランダムに並べた。


展示の準備中に止まったような壁。ランダムに並んでいるように見えるが、一応順路が床に示されており、その通りに見ても良いし、気の赴くまま見て回っても良い。


路地や広場、交差点のある小さな街を巡るように太郎の世界に入り込むのだ。


時折、袋小路となり、はっとするような彫刻や絵画が眼前に現れる。


〈道具〉
「生活に密着した道具の美しさ。––芸術以前だろう。
しかし芸術ぶったものよりはるかに鋭い。」


〈市場〉
「民芸でも織物でも、菓子やパンのデザインに至るまで、アッと言うほど強烈で、濃厚な生命感にあふれている。無邪気でありながら、ふくらみ、ひらききってる。それはまさに人間性の根源の豊かさである。メルカド(市場)を歩き回ってそういう物や人々にふれていると、時間のたつのをわすれてしまう。」


取材中の太郎。未現像のもや、現像されてはいるがプリントされていないフィルムがまだまだ大量にあるそうで、研究が進めば新たな発見があるかもしれないという。
「写真というのは偶然を偶然でとらえて必然化することだ。」


太郎愛用だったカメラやレンズ。


本展に合わせてフジワラボでデザインされたベンチ。岡本作品を彷彿させる曲線で、様々形に組み合わせて使うことができる。


藤原徹平さん。「展覧会は疲れますよね。特にこういった写真展の場合、単調な見せ方になりがちですので、ここでは疲れないよう、風景として見える展示にならないかと考えました。彷徨いながら自由に見て回わり、太郎が写真に切りとったように、見ている人にも見つけてもらうような構成です。疲れないような会場にデザインしましたが、もし疲れてもベンチを沢山作りましたので、休みながらゆっくり楽しんでいただけるのではと思います。」


川崎市岡本太郎美術館。久米設計による設計で1999年竣工。太郎の生前から計画されていたが1996年に死去したため、完成を見ることはできなかった。


丘陵地のランドスケープと一体となるようなデザイン。




太郎から寄付された1800点余りの作品を所蔵している。


【岡本太郎の写真-採集と思考のはざまに】
・会期:2018年4月28日(土)~7月1日(日)
・会場:川崎市岡本太郎美術館(川崎市多摩区枡形7-1-5)
・詳細:www.taromuseum.jp/exhibition/current.html


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手塚建築研究所による千代田区の「番町教会」

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手塚建築研究所による千代田区の「番町教会」を見学してきました。四ッ谷駅から2分、麹町駅から3分程の場所。
[Bancho Church, Tokyo by Tezuka Architects]


敷地面積429m2、建築面積299m2、延床面積607m2。RC造3階建て。
1階にホワイエと礼拝堂、2階に集会室、3階に牧師館(牧師の住居)からなる。左奥に礼拝堂のボリュームが覗いている。右奥は職員用の階段棟で、2階の厨房や、3階の牧師館に通じている。


3層の建物は2階と3階にバルコニーを持つ。階段状のボリュームは北側斜線に沿ってというわけではなく、プロクラムに沿って必要以上のボリュームにせず、街に対して圧迫感を与えないようにした。さらに建物は新築にも関わらず、既に時間が経っているような、そして年月と共にさらに味わいを増していくような佇まいを目指した。


階段棟の最上部には十字架を新造した。プロテスタントの教会では必ずしも外部に十字架があるわけではないそうだが、手塚さんが「せっかくなので作りましょう!」と関係者に働きかけ、タイに金属加工工房を持つアメリカ人建築家に、ブロンズの鋳造で製作してもらった。


130年以上の歴史がある番町教会は、元は隣の四番町にあり、戦前はフランク・ロイド・ライトの弟子、遠藤新が手掛けた礼拝堂もあったという。近年の四番町周辺再開発により、ここ六番町に移転してきた。


前庭に植わるモミの木は前教会から移植。3台分の駐車場は洗い出し仕上げ。この日のようなオープンチャーチイベントや、バザー開催時には車止めを取り払い、テラスに変わる。


車止めを取り、ガラス扉を大きく開き、テラスからホワイエへと連続する。


ホワイエ。床はボルドーパイン張り。天井高は2.3mほどと低めで、不燃断熱材が吹き付けてある。


ホワイエからは前面扉とほぼ同じ開口面積の扉を介して、礼拝堂へとさらに連続する。


「礼拝堂内は見えないように」という声もあったそうだが、教会の「Open for all」のテーマからも中央部以外はガラス扉にした。
木の扉は外側と内側でデザインが異なる。外側は風雨や外敵から守る堅牢さ、内側は閂を掛ける構造が見えるという "本来"の姿を表現することでより教会らしい佇まいを出すことができた。


低く抑えられたホワイエから天井高9mの礼拝堂へ。


リズミカルに穿たれたトップライト。
内覧会が始まる前、右のピアノで手塚さんがピアノを弾いて、礼拝堂の響きを聞かせてくれた。



後部2階にはバルコニーがあり、現在ドイツで製作中のパイプオルガンが11月に据え付けられる予定。
パイプオルガンは本来ヨーロッパの石造りの教会のもの。木造や鉄骨造ではその音域を受け止めることができないためRC造とした。


礼拝堂の正面と、左右の壁はそれぞれ異なる傾斜が付いており、面同士で反響し合うフラッターエコーを軽減できるようになっている。写真は4度と最も傾斜した右の壁。


十字架は既存のもの。いつから使われているか不明だそうだが、丸太を二本使っただけのシンプルで味わい深い十字架だ。


天井を見上げると3ヶ所だけ色があるのに気付く。


ステンドグラス作家の井上千恵美による制作。ステンドグラスはその場の光と環境によって見え方が異なるため、試作しては現場で何度も確認を繰り返したという。
ちなみにステンドグラスの外側に防火ガラス、内側にアクリル板で保護と落下防止をしてある。


矩形のモチーフは壁面にも。照明が仕込まれている。


説教台や聖餐卓は手塚建築でデザインしたオリジナル。


礼拝堂脇の廊下には書棚・収納、奥にトイレ。


階段室にも井上千恵美制作のステンドグラスが納まる。大樹をイメージした作品名は〈いのちの光〉。
手塚建築では3作目の教会となるが、ステンドグラスを使うのは初めてだ。


2階、礼拝堂のバルコニーへ。壁・天井は総左官で久住有生が手掛けた。RC壁のままではパイプオルガンの反響が強すぎる。程よく吸収させるために壁は粗い仕上げとなっている。
継ぎ目が出ないよう、一つの面は1日で仕上げた。10人近い職人が休憩無しで一気に作業したそうだ。


「天使の梯子」が現れた。
手塚さんが20年以上前、エジプトの神殿で見掛けたイメージを「いつか実現したい」と温め続けていたデザインだ。


2階集会室。礼拝の後の食事や、イベントなどに使う。
手塚建築お得意の全面引戸は採用しなかった。全開口はいささか労力を伴うので、高齢者も利用する教会では通常の引戸とした。


1階にもあったが、オリジナルで製作したスタッキングチェアは桐材で非常に軽くできており、こちらも高齢者に配慮したもの。


礼拝やイベントの後に皆で食事会をするため、集会室の一画には厨房も備わる。
厨房の仕上げと合わせるために、天井のエアコン筐体がステンレス張りされているのに注目。手塚建築ではオンドルを備えることが多いが、ここでは階高をあまり高くしたくないことから2階・3階ではエアコン、1階のみオンドルを採用した。


開口に沿ってL字のバルコニー。軒も深く教会だということを忘れてしましそうな雰囲気だ。


パイプの雨樋では興ざめ。コンクリートで作り付けた。もちろんパイプを隠す方法も可能だが、雨が降れば水が流れるという自然のあるべき姿を見せることとした。


この樋は階段棟でも確認できる。


この日は「オープンチャーチ」と銘打って、見学会のほかオルガンコンサート(演奏:茂呂淳子)やトークイベントも開催された。


トークイベントにて左から担当の島田真弓さん、手塚貴晴さん、手塚由比さん。
島田さんは「"Open for All"というコンセプトのもと、優しい光で満たされる明るい礼拝堂と、通りに面した開放的な広いホワイエ、みんなで食事をする集会室とオープンキッチンなど、素材の選び方から家具に至るまで、人が集うこと、人よりも長く建築が生きていくことを大切に設計しました。」と話す。

手塚さんは「今回の設計にあたって最大のテーマは歴史です。日本におけるキリスト教の歴史は浅いので、番町教会の130年の歴史は特別な意味があります。そして100年200年先のひとに残すこの教会を、どのように設計するか責任のある仕事でした。歴史は演出することができないので、ここに集い使う方々が日々の中で未来を作り上げていっていただけたらと思います。」


【番町教会】
建築設計:手塚建築研究所
構造設計:オーノJAPAN
音響設計:永田音響設計
照明計画:ぼんぼり光環境計画
施工:佐藤秀


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高野保光による世田谷区の住宅「代沢のスタジオ」

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高野保光(遊空間設計室)による世田谷区の住宅「代沢のスタジオ」を見学してきました。田園都市線 三軒茶屋駅から徒歩10分程の場所。


敷地面積93m2、建築面積47m2、延床面積124m2。木造3階建て。
前庭には駐車スペ−スと植栽だが、小さな公園のような雰囲気に演出されている。


1階に横一面の開口を設けつつ駐車スペースを確保するため、1階部分を斜めに後退させた。結果、表情豊かで人を呼び込むような玄関ポーチが生まれている。
ポーチは洗い出しと鉄平石の仕上げで、そのまま土間へ連続する。


土間は吹き抜け。施主は写真家で、ここを “ギャラリー” と呼び活用していくそうだ。2階とは垂直に連続し、3階の奥まで見通せる。
1階奥は仕事場である写真スタジオ。


スタジオは半地下に掘り下げ、天井高を3m取った。土間の床下は収納に。


2階への螺旋階段に合わせ、壁をハーフパイプ状に造形。
左の収納は下足入れ。”玄関” としての存在は曖昧だ。


2階に上がると坪庭が現れた。向かいからの視線を遮りながらも、光、開放感、緑を享受できる装置といえる。


模型を見ると、ベースはシンプルな切妻ボリュームで、サクッと切り取ったような箇所が効果的な開口と視線の抜けを作りだしている。


吹き抜けはガラス引戸で仕切ることができる。


2階LDK。隣家が迫るため2階側面には殆ど開口を設けず、トップライトやハイサイドライトを多用した。曇天でも十分な自然光が得られている。




ダイニングの椅子は施主のものではなく、高野さんがデザインし「遊座」と名付けられた椅子。


2階の和室から坪庭を眺められるという、この規模の住宅ではなかなかない贅沢な設えだ。
庭は人工土壌で重量を抑えてある。




3階へ。光が降り注ぐ吹き抜けで2階と3階を繋ぐ。


ハイサイドライトは南向きで幅4.4mの出窓になっており、際にはプランター用に防水された溝が設えてある。


3階。造り付けのデスクを中心としたフリースペース。前庭まで視線が抜ける。
3階奥には寝室やクローゼット、手前には水回り。


浴室は先ほどの出窓と植栽が空間を演出してくれる。


寝室。コンパクトで小屋裏のような落ち着く空間。そしてここでも吹き抜けへ視線が抜ける工夫がされている。


振り返ると曲線で切り抜かれた開口。現場で高野さんがフリーハンドで描いた。


くぐると半ヴォールトのもう一つのフリースペースへ。住まいながら使い方を考えていくそうだ。


高野保光さん。「昔の自転車屋さんのように、1階は街に開いて外から中の様子が見えるように、、、というお施主さんの思いがあります。街に開きながらも上階は生活の場としてプライバシーを守られるよう工夫されています。都心の限られた敷地ですが視線はできるだけ抜け、光に包まれながら緑を身近に感じられるよう計画しました。」

【代沢のスタジオ】
設計:遊空間設計室/高野保光・小林敏
構造:正輝構造研究所
施工:江中建設
造園:青山造園


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大田聡による横浜の複合施設「Tinys Yokohama Hinodecho」

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大田聡(office OTA.)による横浜のトレーラーハウスを用いた複合施設「Tinys Yokohama Hinodecho(タイニーズ横浜日ノ出町)」を見学してきました。
動産・タイニーハウスのメディア運営や企画・開発を手がけるYADOKARIと、京浜急行電鉄が連携し、高架下でタイニーハウス(ちいさな家)を活用し展開する複合施設で、カフェ・イベントスペース、ホステル、水上アクティビティステーションからなる。
大田聡さんは、成瀬・猪熊建築設計事務所へ務め、2015年に独立した。

 日ノ出町駅から数分の京浜急行の高架下を利用。

 Y-GSA飯田善彦スタジオと、SALHAUSが協働で手掛けた「日ノ出スタジオ」の隣だ。

高架下左から、水上アクティビティ「Paddlers+」、カフェ・イベントスペース「Tinys Living Hub」、ユースホステル「Tinys Hostel」が並ぶ。

 目の前には大岡川が流れる。水上アクティビティを楽しむ場合はこの桜桟橋からSUP(スタンドアップパドル・サーフィン)などで繰り出すことができる。

高架下に納まるタイニーハウス。

 タイニーハウスは全てトレーラーハウスで、車台に既製の貨物コンテナを載せて造られた。つまりトレーラーハウスが “駐車” されている状態なので、建築物には当たらず建築確認を必要としないのだ。

 Tinys Living Hub(タイニーズリビングハブ)。カフェ&バーであり、イベントスペースで、タイニーズ横浜日ノ出町の中心となり、街に開かれたコミュニケーションスペースとして誰でもご利用できる。

 またトークセッションやワークショップ、マルシェなどユニークなイベントを開催。
5月24日には世界中で展開している「ペチャクチャナイト」の横浜版、「ペチャクチャナイト横浜 vol.10」も開催され、設計者の大田聡さんも登壇し本件についてプレゼンする。
https://www.facebook.com/pkyokohama/

 オフィス兼厨房兼バーカウンターも、コンテナの側面をくり抜いて作られている。

 Tinys Hostel(タニーズホステル)。バーカウンターと同じコンテナの反対側がフロントになっている。

宿泊用のタイニーハウスは3棟(台)で、それぞれ異なるデザインとなっている。1棟につき4人宿泊できる。

 1棟目はウロコ張り。

 20フィートサイズのコンテナは6m×2.4mだが、断熱や仕上げで内寸は2.2m。ドミトリータイプで2段ベッドが2台。
男性だけ、女性だけの4名でシェアするか、仲間や家族だけで1棟を借り切ることもできる。

 反対側にはミニキッチン、トイレ、シャワー。切妻屋根の小屋のような雰囲気だ。

 コンパクトな空間であるため、各棟は両サイドに大きめの開口を設けた。隣も見えるが互いの雰囲気が分かり楽しい。もちろんロールスクリーンも降ろすことができる。

 2棟目は下見張り、3棟目は焼き杉の縦張り。

 こちらは両棟がデッキで繋がっているのでグループで借りると面白そうだ。

 明るくカジュアルな雰囲気と、、


 ダークで落ち着いた雰囲気だ。



左から京浜急行電鉄の小林雄大さん、大田聡さん、YADOKARIの相馬由季さん。
「トレーラーハウスでの宿泊施設は法的なハードルがある一方で、外装材が自由になるといったメリットもあります。木や砂舗装などの素材を多く使用し、樹木を配置することで、高架下の独特な雰囲気を変え、地域にひらけたスペースになるように設計しました。」と大田さん。

【Tinys Yokohama Hinodecho(タイニーズ横浜日ノ出町)】
設計監理:office OTA.
施工:DDD inc.
URL:http://tinys.life/yokohama/


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森ビル×チームラボの「teamLab Borderless」開業前レポート

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6月21日開業の、森ビルとチームラボの共同運営によるデジタルアートミュージアム「MORI Building DIGITAL ART MUSEUM: EPSON teamLab Borderless」の制作中の館内をめぐるプレスツアーに参加してきました。


場所はお台場パレットタウン。観覧車の下で、元々ゲームセンターやボーリング場であった場所をリノベーションしたプロジェクトである。施設面積10,000m2の空間に、世界初公開作品を含む約40作品を展示する。チームラボによる東京初の常設展示であり、フラッグシップ施設となる。

「チームラボ ボーダレス」という名称にも採用された今回のコンセプト=Borderlessという言葉には、「作品と作品」「作品と鑑賞者」「自己と他者」の境界をなくし、鑑賞者も作品の一部となって溶け込んでいくという想いが込められている。森ビルとチームラボが専門領域をかけ合わせたかたちでタッグを組むことで、2020年とその先に向けて、世界に類の無い新たなデスティネーションとなることを目指す。


プレス受付
工事中のため全員ヘルメット着用

報道陣がまず通されたのは流れる滝と色鮮やかな花に埋め尽くされた、新作の空間。


こんもりとした丘をステージに挨拶するチームラボの猪子寿之氏。
「3年ほど前にプロジェクトチームをつくりました。他の作品とコミュニケーションし、影響を受け合い、時には混ざり合います。そのような作品群による、境界のない1つの世界が『チームラボボーダレス』です。6月開業に向けてブラッシュアップしていきますのでご期待下さい」 

ちなみにこの華やかな作品の施工風景はこちら(シンプル!)

ツアー開始。
あらかじめ渡されていた番号をもとにいくつかのグループに分かれて進む。teamLab Borderlessは5つのゾーンで構成されており、普通の美術館と異なり決められた順路というものはない。

【花の森、埋もれ失いそして生まれる Flower Forest: Lost, Immersed and Reborn】(制作中)
紫陽花やひまわりなど季節の花がひろがる世界。いくつか小部屋があり迷路になっている。




階段で上階へ。


【EN Tea House】
肥前でつくられた新しい茶「EN TEA」が注がれた茶器の中に、花が咲いていく作品を体験できる空間。


お茶のイメージ

本施設の目玉といえるゾーン「チームラボアスレチックス 運動の森」へ。
「身体で世界を捉え、世界を立体的に考える」をコンセプトと様々なリサーチと実験のもと、脳の海馬を成長させたり空間認識能力を鍛える新しい創造的運動空間を提供するチームラボ肝いりのプロジェクト。

【ポヨンポヨン宇宙】
チームラボが開発した特殊な布が張り巡らされた空間。自分がいる場所が沈んだり、近くの人が飛ぶことで跳ね上げられたり、トランポリンのように遊ぶ。宇宙の星々の一生をテーマにした映像が楽しめる。


【グラフティネイチャー 山々と深い谷】
3mほどの高低差のある斜面で創られた立体的な大空間に、来場者が描いた様々な生きものたちが出現し一緒に戯れることができる。


すり鉢状の起伏は歩いているだけで脳が刺激される気がしてくる。


さらに奥へ


【光の立体ボルダリング】
輝く玉石が空中の3次元上に配置された空間。参加者は固有の色に輝くバッジをつけて、その色に輝くホールドをルートに両手両足を使って進む。人々の位置は検知しているので、ルートはリアルタイムに更新され、互いに交差しないように新しいルートが生まれていく。 


完成イメージ図


【 色取る鳥の群れの空中吊り棒渡り】
ロープから吊られた棒が連結され立体的に空中に浮かんでおり、他の棒からの影響を受けながらも落ちないように渡るというもの。実際には鳥の群れが自由に飛び回る映像が映し出される。


【裏返った世界の、つながる!巨大ブロックのまち】


特別公開されたPCルーム
これは使用されているコンピューターのごく一部。館内には520台のコンピューターと470台のプロジェクターが設置されている。 


【ランプの森】
人がランプの近くで立ち止まりしばらくじっとしていると、最も近いランプが強く輝き音色を響かせる。ランプの光は最も近い二つのランプに伝播し、伝播していく光は必ず全てのランプを輝かせ、1 度だけ通る一本の光のラインとなり、最後に起点となった最初のランプで出会うという仕組みになっている。




鑑賞者も作品の一部となって溶け込んでいるボーダレス感。


【untitled 】制作中
身体ごと没入して様々なインタラクティブが起きるBody Immersive作品。今回は緑の棚田が永遠に続いているかのように感じられる演出であったが、秋には黄金色の稲穂になるなど、訪れる季節によって異なる風景を愉しむことができるエリア。


高低差を付けているので、このような棚田の下に潜るような非日常な体験も。


最後には、最初に見たあの花と滝の風景を上から望むことができた。
作品を鑑賞する他者の存在もポジティブに捉えた境界のないアートでできた世界。


現場チェックに来ていた浜田晶則さん(浜田晶則建築設計事務所)。
チームラボアーキテクツのパートナーとして、本施設の会場構成、作品の空間設計を担当している。「リノベーションなので大変な部分もありますが、地形を丁寧につくり、各作品の垣根を越えた非言語の表現=ボーダーレスを空間にも落とし込んでいます。建築の概念を拡張した展示になると思います」

今回紹介できたのはほんの一部。その他にも公開NGの制作中エリア(輝く前のWander through the Crystal Universeにも対面できた!)をノンストップで見てまわり時間にして2時間ほど。実際に体験もするとしたら倍の時間を要するかもしれないが、圧倒的なスケール感と唯一無二のコンテンツで、想像以上のマインドブローイングな1日を過ごせること請け合いだ。


MORI Building DIGITAL ART MUSEUM: EPSON teamLab Borderless
所在地:東京都江東区青海1-3-8(お台場パレットタウン)
開業日:2018年6月21日(木)
料金:一般/高・大学生3,200円子ども(4歳~中学生)1,000 円
チケット発売:2018年5月下旬より発売予定
運営者:森ビル・チームラボ有限責任事業組合
プロジェクションパートナー:エプソン販売株式会社
URL :http://borderless.teamlab.art/jp


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「平田晃久展 Discovering New」レポート/ギャラリー・間

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5月24日からTOTOギャラリー・間で開催の「平田晃久展 Discovering New」のプレス内覧会に行ってきました。


展覧会概要:私たちの建築は、建築やその背後にある人間の営みを、広義の生命活動として捉え直すところから始まる。そのとき、公共建築すら、多様な人びとを異なる「生物種」と読み替えたある種の「生態系」となるだろう。
そのためには、手がかりとなる何らかの考え方、生命の営みと建築をつなぐ、新しいラインを見つけなければならない。この展覧会では、そのような思考のラインとその交錯を、模型を含むさまざまな事物の立体的配列で体験的、博物学的に示す。
新しいことは、生命の本質にある何かである。生きていることとは、変化し続けることだからだ。生命力は、常に更新されるものにこそ、宿るだろう。
とはいえ、ここでいう新しさとは、過去と断絶した完全な見知らなさ、ではない。むしろ、既にそこにあるが、未だ隠されたものを、顕在化させる何かだ。だから私たちは、何もないところから創造したり、発明するというよりは、何かを発見=discoverすることを通して建築をつくりたいと思うのだ。


会場に入るとまず驚かされる。
無数のパイプが縦横に構築され、その間に建築模型が埋め込まれるように設置されている。


それは一見無秩序かつ、思いつきと感覚で構成された "インスタレーション"のように見える。
この展示は一体どのように見ていけば良いのか、たまらず平田さんや、担当者に尋ねるとこうだ。


会場には「Discovering New Form」、「Discovering New Nature」、「Discovering New Commitment」という3本の仮想軸がある。


その3本の仮想軸に、それぞれ4つずつの概念キーワードが仮想面として付随している。
1= 側、ひだ、ライン、階層
2= 生の度合、動物的、創発的、発酵・浸食
3= 汎ローカリティー、土、他者、履歴
これらの、面と面がからまったところに造形が生まれているということだ。


平田さんが直筆で壁面に記した、上記の12の概念キーワードと実作を線で結んだダイアグラム、軸と面を解説した図。


そして左右の壁面に12のキーワードが色分けされながら説明されている。
「生物学者にもなりたかった」という平田さんならではのキーワードとその解説。


構成される仮想面には、よく見るとキーワードのプレートが付いているので、、


プレートの延長にある面を想像する。


これらを踏まえてもう一度パイプのからまりを眺めると少しずつ面が見えてくるが、写真でそれを伝えるのは非常に難しい。
3階展示室は作品を時系列で見るのではなく、作品同士の関係性を概念キーワードの中で見ることができる「抽象と思考」の世界なのだ。


例えば近作である〈Tree-ness House〉は「ひだ」「階層」「発酵・浸食」の面がからまる辺りに分布している。


時折、概念の中に入って見ることもできる。
同じ作品でも検討段階と、最終型では異なる交点に存在していることがある。


概念と模型はそのまま中庭まで連続する。


設営中は雨が降らなかったが、模型に防雨したところでちょうど雨が降ったこの日。


数時間後、ゲストを招いた内覧会ではこの中庭でレセプションを行ったが、その時になると雨はぴたりと止み、終わるとまた降り始めるという奇跡を起こした平田さん。


見上げると雲のように浮く模型たち。下から見えるように逆さまに設置されている。


4階は「現実と体験」の世界。
〈Timber Form+〉なるオブジェは、長さは6.1m、直径2.1mの構造体。


原型となったのは2011年台湾のコンペで次点となった〈Foam Form〉。数10〜数100m規模の建築であるが、、


それを縮小したようなかたちで、平田さんの概念を現実化した "建築"に入って空間を実体験できる。
木の3次曲面NC加工ができるシェルター社の協力によって製作。アカマツの集成材を72のパーツに分け切削し、組み立てた後繋ぎ目を滑らかに仕上げた。


周囲や中に数台のタブレットが浮かんでおり、様々な画像が見られる。例えば写真家 阿野太一が〈太田市美術館・図書館〉をプライベートで撮った写真や、、、


本展設営の様子なども。


4階奥には、写真家 市川靖史が撮影した〈太田市美術館・図書館〉と、〈Tree-ness House〉の動画が壁一面に映し出され、その空間に入り込んだような体験ができる。


平田晃久さん。「この展覧会は今まで考えてきたことの相対です。考えてきたこと『からまりしろ』を初めて整理し可視化してみようと思いました。すると複数の概念がからまったところに作品が生まれていることが見えてきて、それぞれの作品の関係性も見えてきました。とても複雑なものに見えるかもしれませんので、じっくり見て頂くのもいいですし、『こんなものもあるんだな 』とさらっと見て頂いても良いと思います(笑)。」
「今、どこまでいったら建築ではなくなるのか、どこまで他者を受け入れたら自分ではなくなるのか、そんなことにとても興味があります。建築のあり方は固定されているものではなく、これがなくてはできない、これがあってはいけないということもなく、これからはもっと、あらゆる分野・あらゆる階層の人が多様に関わってつくられていくものになるのではと思います。そんな中で建築家がどのように関わっていくことが出来るのか、ほとんど建築とは言えないものが生まれるのではないか、そんなことにチャレンジしていきたいです。」


〈Akihisa HIRATA Discovering New〉展覧会に合わせてTOTO出版から刊行された平田さん待望の作品集。内容は展覧会とリンクしており、それぞれの作品がどのような概念のからまりから生まれているか詳しく記されている。


A4変形の280ページ。3つの書き下ろしテキスト「Discovering New Form」「Discovering New Nature」「Discovering New Commitment」を収録。これまで建築における新しい「かたち」や「自然」を追求してきた平田さんが、〈太田市美術館・図書館〉で市民とのワークショップを通して新しい「コミットメント」の在り方を提示。
https://jp.toto.com/publishing/detail/A0373.htm

【平田晃久展 Discovering New】
・会期:2018年5月24日~7月15日
・会場:TOTOギャラリー・間(東京都港区南青山1-24-3)
・詳細:https://jp.toto.com/gallerma/ex180524/index.htm


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黒川智之による横浜の「駒岡げんきっず保育園」

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黒川智之(黒川智之建築設計事務所)による横浜市鶴見区の「駒岡げんきっず保育園」を見学してきました。
(新建築 2018年6月号 "保育施設特集"掲載作品)  


敷地面積481m2、建築面積240m2、延床面積279m2。木造、2階建て。定員60名の保育園。
分節された反り屋根と、暖かみのあるレンガ色の外壁が特徴的だ。


南側に回ると敷地が傾斜地だとわかる。
巨大な屋根に見えないように分節し、ボリュームも分けることで周辺の住宅スケールへと近付けた。


地域に忽然と現れがちな保育園、地域の一員として馴染むことも大切な要素として考えた。
開口は東西・南北に抜け透けて見えるようにすることなども、圧迫感のないよう配慮されている。


右手から玄関を抜けると1.5層の高さのホールが広がる。
右奥に2歳児保育室。左に0歳児と1歳児保育室。


2階の保育室や屋上テラスの地窓がいくつもホールに向かって開口している。つまり1階・2階の保育室、玄関、園庭全てがこのホールに接続しているのだ。


ホールからテラス化された園庭へレベル差のないまま連続する。ホールを拡張したような使い方もでき、地域住民を交えたイベントなどの開催も考慮している。また園庭は敷地の傾斜を利用したスキップガーデンとしたのは、背景に見える雛段状の住宅地と呼応させる狙いもある。


階段で2階へ上がると正面に手洗い場。少し高台で開けているので北側は見通しが良い。


振り返ると階段ホールの左右に幼児の保育室。廊下の左は子ども用トイレと、右奥に給食の昇降に使うダムウェーターが備わる。


4・5歳児保育室。様々な大きさ、形、高さの開口がそこかしこに設けられ、視線があらゆる方向に抜け、且つ見えるもが全て異なる刺激的な空間。


こちらは屋上テラスに面した開口。


3歳児保育室。波打つ天井は屋根形状のまま。


こちらもバラエティに富んだ開口。1階ホールのピアノが見える。このように、ホールを中心とした各室の配置で、園児からはホールで他の園児がしていることや、迎えの保護者が見えたり、またホールからも保育室の気配が伺えることで安心感がある。


左の引戸からは屋上テラスへ。


軒を大きく出して生まれたダイナミックな空間。
デッキはアフゼリア材。


複雑に展開する屋上テラス、とスキップフロア、そしてホールに見えていた開口はここのものだ。


片隅に離れのような相談室を設けた。プライベートな相談をしたい保護者に配慮したスペース。


この保育園は、敷地の特性上十分な園庭を確保することができない。緩和要件を満たすことで、必要とされる園庭面積を最小限にしながらも、園児にはできるだけ屋外での活動が可能となるよう、立体的なテラスを最大限設け、園庭からも階段で連続するようにした。




スキップで上がったテラス。燃え代設計された現しの梁が徐々に近くに見えてくる。
大梁の断面は180×360mmある。


左手にはワイヤーメッシュが張られ園児の転落防止をしている。


地窓からホールや保育室が覗く。そして最上部のテラスへ。


ぽっかりと口を開けたようなテラス。園児からはこのように見えないが、おそらく四角く切り取られた空が見えるだろう。
3歳児保育室から見えた開口は、穿たれたテラスの断面そのままだ。


黒川智之さん。「住宅地の中にある保育園ということから、地域に親しまれる建築であることが大切だと考えました。木造であること、大きなボリュームで立ちはだからないこと、イベントなどで近隣との接触を可能にすることなどを実現しながら、狭い敷地であるネガティブな条件を反転して、段上のテラスという方法で活動領域を拡張させ、子どもたちの感覚を刺激するような保育園を目指しました。」

【駒岡げんきっず保育園】
・設  計:黒川智之建築設計事務所
・設計協力:平林政道アトリエ
・構造設計:江尻建築構造設計事務所
・設備設計:EOS Plus・ジーエヌ設備計画
・施  工:新都市建設


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中川エリカによる「新宿パークタワーラウンジ」

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中川エリカ(中川エリカ建築設計事務所)による「新宿パークタワーラウンジ」を見学してきました。
新宿パークタワーは西新宿三丁目に位置し、リビングデザインセンターOZONEや多くの会社、ホテルなどが入居する東京ガス所有の超高層ビルで、丹下健三による設計で有名だ。
その新宿パークタワー8階に新設した、テナント入居者専用ラウンジを手掛けた。


ビルには約1万人近くが務めており、ランチタイムに過ごす弁当派のスペースが圧倒的に不足しているという。
ラウンジは入居者専用のため入室にはIDカードが必要。手前のエントランスにはベッド3台分はあろうかというベンチが置かれている。


532m2のラウンジには、大小、長短、高低様々なテーブルが配置されている。
既存では雑壁で仕切られた会議室や、OZONEのセミナールームなど幾つかの部屋があったそうだ。それらの雑壁を全て取り払い、天井も剥がし大きなワンルーム空間を作った。


1994年の竣工以来初めて雑壁を取り払うという、新宿パークタワー初の “大工事” を行ったという。
そうしてできたワンルーム空間に、同じテーブルをただ並べただけでは空間が間延びし、オフィスと変わらないし、喫茶店のように二人掛けの小さなテーブルを配置しても一人で座るときには二人分を使ってしまう。
そこで基本大きめで様々なサイズ・高さのテーブルを島のように配置し「水平のパーティション」に見立て、集まる人を緩やかに分節、或いは繋げるよう建築的なアプローチを取った。


12種類の椅子と座席で220席を設定。1人当たりの面積は通常の喫茶店と変わらないはずだが、 “むら” を作りだしていることでゆったりと低密に見える。
床はサペリ材。


奥行きは30m近い空間のため、内側と外側で空間の質を分けた。
(※画像をクリックで拡大)


内側(エントランス側)は「セミナーゾーン」と呼び、イベントやセミナーなどに対応。テーブルは動かせるよう分節可能で、プロジェクターが投影できる白い壁、そしてカーテンで仕切ることもできる。照明はダウンライトのみ。


窓側は「リフレッシュゾーン」と呼び、グリーンも置かれ、個別の席がありながらも大きな島が目立ち、スポットライトのほかペンダントライトも備わる。
ちなみにハイチェアには男性が多く、通常の椅子には男女共同じ、低い島型ベンチには女性が集まる傾向があるという。


窓辺には展望席。鉄板で仕上げられていた柱はタイルに張り替えた。内側からテーブルが延長しL字になったタイプや、、


ベンチが延長しそのまま展望席になる箇所もある。


窓からは遠くに明治神宮と代々木公園の緑越しに渋谷方向が見渡せる。
やはり昼時はこの席から埋まっていくそうだ。


高低差のある席は目線が直接交差しにくく他者が気にならない工夫だ。当日見学に訪れていたMARU。architectureの森田祥子さんと高野洋平さんや、、


針谷將史さん、藤奏一郎さん(元中川事務所)などにご協力頂いて撮影。


ラウンジはランチタイムはもちろん、フリーアドレスのワークスペース、打合せにも利用できる。


今回もう一つの建築的なアプローチとして特注の家具がある。
テーブルの天板は厚さ24mm、島型のベンチは30mmのシナ合板で、かなり大きなものばかりなので、曲げモーメントを小西泰孝さんに計算してもらいながら脚の位置や数を決定。それだけでは揺れるので、揺れ止めに様々なデザインのもを用いた。
例えば、低い天板が、高いテーブルの膝元に入り込み荷物置きになっているが、高いテーブルの振れ止めとして低い天板が作用している。(厳密には接続していないテーブル同士だが)


揺れ止めは足掛けでもあり、人が集まる “くくり” の目安でもある。


トラス状に交錯したもの。


スチールと木の脚を混在させ、曲線で繋いだもの。


林立する脚と揺れ止めを兼ねた荷物置きや、足掛けを兼ねた木板のタイプ。


足を逃げた脚などもある。普段入れない場所なので何かの機会に訪れることができたらぜひ天板の下にも注目して欲しい。


中川エリカさん。「このビルはもうすぐ竣工25年を迎え、ビルとしての価値を再構築していく必要があることから、手始めにラウンジを設けることを始めました。ワンルームで開放的であり、できるだけむらを作った人の集まり方を設計しました。そして毎日使っても飽きないデザイン、言うなれば皆が大好きでなくても、皆が嫌いではない空間を目指しました。」

【新宿パークタワーラウンジ】
・設計:中川エリカ建築設計事務所+リビングデザインセンターOZONE
・什器構造:小西泰孝建築構造設計
・施主:東京ガス都市開発株式会社
・施工:東亜ビルテック株式会社(建築)
    株式会社ウェイズ 東京支店(建築)
    株式会社関電工(強電)
    多摩川電気株式会社(弱電)
    新菱冷熱工業(機械)
・什器施工:株式会社E&Y


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伊藤暁「具体的な建築」展レポート

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6月8日より始まった、伊藤暁(伊藤暁建築設計事務所)初の個展「具体的な建築」展に行ってきました。会場は南青山のプリズミックギャラリー。
[Satoru Ito solo exhibition at Prismic Gallery]

 本展は、伊藤さんがこれまで設計してきた建物と、その合間に撮りためてきた観察の写真を展示。牧歌的で素朴な被写体が多いが、これらは近代の「設計」や「計画」といった行為の外側にある人々の営みだ。

 伊藤さんはなぜこれらを撮ったのかということを考えるようになったが、現時点で理由が明らかになったわけではないし、その理由もまた変化し続けている。しかしこの観察を通して現代的に建築を考える手がかりを多く得ているという。

 会場には「気候・風土」、「地形」、「振舞い」、「素材」、「時間」、「技術」、「機能」、「小屋」、「架構」といったキーワードに分類された "抽象的ではない""具体的"な建築要素が並ぶ。

 近代化や、経済論理から取り残されたようなものたちは、我々を日常取り巻く変化とはタイムスパンが異なるだけで、ひとつひとつは様々な時間への応答の結果だということに気付かされる。

 各々に素直さ、工夫、切実さなどががある。


 じっくり観察すると、それらは具体的で、その場所で生活を持続させるための営為の現れであることが見えてくる。

 「神山町のように、近代から取り残された場所に身を投じると、近代が何を外側に追いやってきたのか、何を見落としてきたのか、何をなかったことにしてきたのかを点検することの有効性が気になってくる、、

 そこには、地形や植生、気候風土、手に入る素材やそれを加工する技術などといった、実に具体的なものが転がっている。近代という、社会を抽象的に捉えることをエンジンとしていた時代には扱いきれなかったこれらの具体的なものたちを改めて引き寄せることで、時代の刹那にからめ捕られない建築を見出すことができるのではないかと考えている。」と伊藤さん。


伊藤暁さん「建築を考えるヒントはそこかしこにあると考えています。建築の設計を、こうした工夫や切実さの延長線上として取り組むことができるのではないか、という思い共有できれば嬉しいです。」

【伊藤暁 – 具体的な建築 展】
・会期:2018年6月8日~7月23日
・会場:プリズミックギャラリー(東京都港区南青山4-1-9 1F)
・詳細:www.prismic.co.jp/gallery

【関連記事】
en [縁] ―ヴェネチア・ビエンナーレ帰国展
伊藤暁自邸「横浜の住宅」
菊名の家


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井上洋介による世田谷区の「下北沢の家」

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井上洋介(井上洋介建築研究所)による世田谷区の住宅「下北沢の家」を見学してきました。


敷地面積162m2、建築面積81m2、延床面積298m2。RC造(一部S造+木造)、地下2階、地上2階建て。
門状の1階に見えるボリュームが地下1階、その上に実際の1階と2階のボリュームが乗るようなかたちだ。


ファサードは半割した浅間石を石垣のように張り込んだ壁と、根気いる作業が想像できる全面の小叩き仕上げ。


植栽はSOLSOが担当した。玄関横のガスメーターが見えないほど鬱蒼としている。


中に入ると玄関ホールが奥まで続き、右手のガレージは車が4台、バイクが3台ほど停められる。


玄関ホールを進むと地下2階への階段と、奥にギャラリースペースが現れる。


ギャラリースペースは2層の吹抜け、そして同じ高さの大開口。見上げるとこちらにも植栽が。そして地下2階まで掘られたドライエリア。


施主はアパレル会社の経営者。お気に入りのポップアートに囲まれながらここで静かに過ごせるようにした。


もちろん大好きな車やバイクも直ぐに眺めることができる。ガレージの天井にもライティングレールが見えるとおり、こちらもギャラリー化することができるようだ。


地下2階は8畳程のゲストルーム。ドライエリアに光が落ちてきている。


1階へ。不均質であり素材感たっぷりのそびえるコンクリート壁が印象的だ。
よく見るとこのカット、小叩き、洗い出し、杉板出目地、ラワン、モルタル+クリア塗装とコンクリートに5種類の仕上げが施されているのが一目できる。


この建物のメインキャラクターとも言えるコンクリート壁は、井上さんこだわりの杉板出目地仕上げ。型枠の杉板は3種類の幅を使用し、目地の影とともに複雑な表情を生みだしている。
壁に掛かるオブジェは、イームズがデザインし、昔軍隊で使われていた足用ギプスだそうだ。そして横のコンセントはギプスの裏から照明をあてるためのもの。


1階LD。スレート、コンクリート、スチールの梁、木の小梁と天井、木サッシュ、そして山西黒石のキッチンカウンター、素材の持ち味を活かしながら高度なバランスで調和する空間。そしてスレート床はそのまま南側のテラスに連続する。


キッチンカウンターもテラスのカウンターに連続し内外を繋ぐ。


ダイニングテーブルはアルフレックス。その奥にリビングとの間仕切りでもあるテレビ台兼シェルフ。


鉄の部材にはリン酸処理亜鉛メッキの部材が多用されている。大梁、柱、シェルフの引戸。


シェルフ下側の引戸はダイニングとリビングを間仕切ることができ、飼い犬の侵入を制限できる仕掛け。右に見える四角い穴はペットドアでテラスに出入り出来る。


リビング。ダイニングより天井が低くより落ち着いた雰囲気。スタルクによるカッシーナのソファ、奥にイームズラウンジチェア。


できるだけ無柱のロングスパン空間を作るために、大梁をH鋼で渡し、無垢ベイマツの小梁を掛けた。
テレビ台兼間仕切りは、リビング側に大画面のテレビが設置される。




テラスにはL字型に面しており、リビングからもエントリーできる。


リビングの一番奥にはアルコールストーブ。背後は地窓のように開口させ外構から石の角柱でオブジェが覗く。


どこかの洒落たカフェかと見紛うテラス。コンクリートで作り付けられたベンチの背もたれ、腰壁も小叩き仕上げだ。ベンチの後ろはガレージ横のエントランスから直接上がってこられる階段。


両隣家ともに植栽が豊か。互いに借景利用できるような関係として深い緑となる環境が生まれた。
SOLSOが手掛けた植栽は南西テラス側や、北西、北東の各坪庭でそれぞれ植生変え、異なる雰囲気を楽しめる。正面にシンボルツリーとしてスノーインサマーを植えた。




ここにステンレスのレンジフードが付けるわけにはいかない。コンクリートで作り付けた。


2階。階段室はトップライトと、通気もできる開口を東西に設けた。
水回りと、主寝室+ウォークインクローゼット、子供室が3室。北側に面した個室の廊下が非常に明るい。


水回り。洗面台や浴槽回りは人造石研ぎ出し仕上げ。




主寝室。クローゼットの裏はウォークインクローゼットになっている。


主寝室のバルコニーから。


3室ある子供室のうち、2室は連続し、1室は独立している。


どこを切り取ってもの絵になる見事なディテールと素材同士の取り合わせ。そして陰影。








井上洋介さん。「建物の外側を4枚のコンクリート壁が取り囲み、その隙間から方々に緑が望めます。コンクリート、鉄、木が構造として役割を果たしつつ、そのまま素材の表情を見せながら仕上げとして存在しています。ごく一般的な素材を再構成し、力強くも豊かさを感じさせる空間を目指しました。」

【下北沢の家】
設計:井上洋介建築研究所/井上洋介・渡邊裕香
構造:田中哲也建築構造計画
施工:栄港建設
造園:SOLSO


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