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五十嵐久枝による保育園「ファミリア プリスクール」

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五十嵐久枝Hisae Igarash / Igarashi Design Studioがインテリアデザインを手掛けた保育園「ファミリア プリスクール」。ベビー用品で知られるファミリアは、戦後間もない1950年に女性達によって、当時の古い日本式育児習慣を大改革しようと、神戸にベビーショップを開いたのが始まりだ。

 ファミリアは新たに保育事業に参入するにあたり、港区白金台に建つオフィスビルを保育園としてコンバージョンした。
プログラムには "レッジョ・エミリア保育"を取り入れ、創造活動を通して自律を促す保育を実践する。


 外観は既存のまま。無機質なカーテンウォールの外観に、温もりのある木の囲いで覆われたベビーカー置き場を設えた。


 エントランスは丸みを帯びたディテールで、子どもたちを優しく包み込んでくれる。


 各クラスルームは年齢発達に合う色と、ファミリアカラーとも調整を加え選定した。
右側、1歳児の部屋はライトブルーで「優しさ・爽やかさ・清潔」がテーマ。
左側、2・3歳児の部屋はオレンジで「快活・情熱・自発」がテーマ。

 両部屋を分ける壁には丸窓が点在し、異年齢の子ども同士のコンタクトが可能になる。


 また壁の一部はマグネットが使用でき、制作物などが煩雑にならないように掲示することができる。



 上部の丸窓は保育者の “目” を増やすこともでき、空間に圧迫感を与えない働きもある。



 4・5歳児の部屋はパープルで「芸術・思いやり・インスピレーション」がテーマ。


 調理室にも丸窓を設えた。自分たちが食べるものが作られる様子を見ることも大切な食育でもあり、作る側と供される側を結ぶツールでもある。


 アトリエはブルーに加え木調を強調し「青空・知性・冷静」がテーマ。
各フロア共にコルクフローリングだが、アトリエでは色をダークにし落ち着きのある空間になっている。



 図書コーナーには切り株をイメージした書架があり、周囲やうろの中に子供達が自然に集まる。


 ライトテーブルを使い表現や創造の幅を広げる園児たち。



 地下の踊り場にはギャラリーを設け、子どもたちの制作物を展示、待合や交流の場になっている。


屋上には人工芝を張り、山型に切り取られたフェンスにより、街中でも自然を感じられるよう工夫した。

「子どものための空間ではありますが、子どもの好みに寄せすぎず、大人にとっても居心地の良い雰囲気をつくりだすことを心掛けました。」
「子どもたちの生活や行動、活動によって、家具のレイアウトや壁面の装飾が変えられ、その表現をやさしく包み込む場となることや、ファミリアの保育とデザインに対する取り組みなど、実直な姿勢を感じとり、成長するためのベースとなる空間をつくりたいと考えました。」と五十嵐久枝さん
(photo: Nacasa & Partners


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篠崎弘之、五十嵐淳、エマニュエル・ムホーらが参加の「AnyTokyo 2015」

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10月24日から東京・増上寺光摂殿で開催されるAnyTokyo 2015のプレスビューに行ってきました。

 恒例の蛍光カラーで演出されたゲート。

今年は屋外会場があるので、エントランスピロティー脇の階段を上がると、、、

 本殿と東京タワー、そしてエマニュエル・ムホー〈1坪の100色〉というシュールな組合せが現れる。

 100色を使ってまちの様々な空間に展開する「100 colors」の最新作は、1坪の小さな空間に凝縮された100色。

茶室のような小さな舞台に上がって思い思いに色を体感できる。

見上げたり、中に顔を埋めれば見たことのない世界を体験できるかも知れない。

エマニュエル・ムホーさん。「今回は色を凝縮しひとつの塊のようですが、一度風が吹けば柔らかく色がなびき、その様子が一変します。」 

 ピロティーと屋内会場には10数組の作品が展開する。


〈7 COOL ARCHITECTS〉
Fritz Hansen(フリッツ・ハンセン)が製造する、アルネ・ヤコブセンの名作「セブンチェア」の60周年を記念したプロジェクトとして、7組の建築家に、座面のデザインは変えずにセブンチェアの新しい解釈を依頼した。その後ヨーロッパを巡回してきた「7 COOL ARCHITECTS展」が、遂に日本にも上陸。
本展示エリアのインスタレーションを篠崎弘之が担当した。

中央〈ザハ・ハディド〉Zaha Hadid
構造とサポートをダイナミックかつシームレスな形で表現。二本のスチール棒で構成された彫刻的なベースは、流れるように地面に達し、成型合板のアイコン的フォルムのシート部を取り囲みむように伸び上がる。

〈五十嵐淳〉Jun Igarashi
地震による建物の倒壊で、多くの建材が廃棄される。今回のセブンチェアのコンセプトは、廃木材を収集、着色し、家具への使用が可能なボードにすること。

〈ジャン・ヌーヴェル〉 Jean Nouvel
対象式な色使いと横並びの配置 - これはジャン・ヌーベルのデザインの好例だといえる。それぞれの椅子は白と黒で区切られていながらも、フェミニンとマスキュリンという流れで調和。この調和は座面とシェルの背面の曲線を強調している。

〈BIG/ビャルケ・インゲルス グループ〉Bjarke Ingels Group
デザインのインスピレーションは、椅子の構成要素です。積層合板という内部構造とスタッキングという機能性。これらをふまえ、セブンチェアの象徴的なフォルムを幾重にも巧みに重ねた椅子が誕生した。

〈カルロス・オット&カルロス・ポンセ・デ・レオン〉Carlos Ott & Carlos Ponce de León
コンセプトはテクノロジカルキャンパスであるソナメリカの旗艦ビルCelebra。使用されるレストラン空間に馴染むもの、地階のオープンルーフ壁面に有機的に成長するバーティカルガーデンと同じような存在にする必要があった。

 〈スノヘッタ〉 Snøhetta
このセブンチェアは固定されているように見えながらも、シェルを軽く押すだけで斜面に、屋外に持ち出すことができる。椅子を束縛から解くことで、多くのプロジェクトにおいて使用することができると考えた。

 〈ネリ&フー〉 Neri & Hu
バリエーションやリメイクといったアイデアは、オリジナルと再設計の二重性に左右される。二重性という考えを完全に受け入れ、実際に「ダブル(二重のもの)」を作成。オリジナルのチェア2脚が互いに向き合うことで新しいバージョンの椅子となっている。個人が複数で社会になるように、椅子も一脚から複数になっている。

篠崎弘之さん(右)と五十嵐さんはこの瞬間が初対面。
「今年ミラノサローネで発表した、12mm角のアッシュ材を使って小屋を組み上げたインスタレーションを基本としています。それぞれの作品の特徴を引き出せるような展示にしました。」と篠崎さん。


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谷口吉生による「ホテルオークラ東京 新本館ロビー」の意匠

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建て替えによる解体工事がはじまったホテールオークラ東京の本館は、建て替え後旧本館に息づく「日本の伝統美」を新本館においても体現すべく進めるという旨のリリースが発表されました。

〈リリースより〉
今般の本館建替計画では、最新の設備、機能への刷新を図りつつ、ホテルオークラ東京が育んできた「日本の伝統美」を継承する為に、旧本館を設計した谷口吉郎氏のご子息であり、東京国立博物館法隆寺宝物館等を手がけた谷口吉生氏を設計チームに起用し、旧本館に息づく「日本の伝統美」を新本館においても体現すべく進めております。
ロビーをはじめとした旧本館のインテリア、装飾などにつきましても、可能な限り新本館に移設、再現をすべく、現場調査を重ねながら設計作業を進めてまいりました。今般新本館ロビーの設計・デザインが概ね固まり、また、現場調査の結果、下記のインテリア、装飾を再利用、再製作した上で、継承していく方針になりました。
ホテルオークラ東京の象徴とも称される照明具「オークラ・ランターン」や、満開の花のように見立てた「梅の花のテーブルと椅子」、六大陸各都市の時を刻み世界の賓客をお迎えしてきた「世界時計」、そして「行燈」などを再利用する予定です。また、色絵磁器の人間国宝 富本憲吉氏がデザインし、西陣の純絹のつづら錦に仕上げた「四弁花紋様の装飾」や「麻の葉紋の木組み格子」などは、再利用が出来ない為、再製作する予定です。その他、夢の架け橋というコンセプトで設計された「メザニン」(中二階)や天井のデザインなども新本館に再現する予定です。なお、新本館のロビーの面積は旧本館ロビーよりも二割ほど大きくなる予定です。
2019年の新本館の開業時には、これまで皆様に愛されてまいりました旧本館のデザインが継承されたロビーにて皆様をお迎えいたします。

ホテルオークラ東京新本館の設計者の一人、谷口吉生氏より
 ホテルオークラ東京の建て替え計画も旧本館と同様に設計者が共同で担当する予定です。
私は、ホテルオークラ50年の歴史を継承すると同時に、次の50年、100年も生き続けることができるデザインを目指します。具体的には、ロビーの中に現在の本館ロビーを復元しつつ、現代にふさわしいロビーとして生まれ変わらせます。また、ロビーの前には、ホテル2棟とランドマークとなる大倉集古館によって構成する新しい広場を設計します。

ホテルオークラ東京の歴史について
ホテルオークラ東京は1962年に、東京オリンピックに向けて「西洋の機能性を取り入れていくと同時に、日本の伝統美を生かしたホテル」を目指し、東宮御所、東京国立近代美術館等を手がけられた谷口吉郎氏を設計委員長として建設されました。同ホテルの建築美としては、派手づくりな桃山様式よりも藤原時代の洗練された優雅さを基調とし、装飾については、同じ日本風装飾画の伝統ながら、光琳の豪華絢爛さではなく、光悦、宗達に見られる優美追求の精神を汲んだものにするというコンセプトのもと、伝統的な和の意匠や素材を館内随所にあしらい、その日本的な華麗さや優美さは各界より評価をいただいてまいりました。

新本館ロビーイメージパース

継承される代表的な本館ロビーの意匠、装飾について
【切子玉型】(オークラ・ランターン)
古墳時代の飾り玉に見られる切子玉型をデザインしたもので、五角形の板を10枚つなぎ合わせて切子型とし、五連つなげて一つとしています。ランターンは別館ロビーでも同じように見ることが出来ます。 

 【梅】(テーブルと椅子)

輪島の漆仕上げのテーブルを梅の花の芯、その周りの五つの椅子を花弁に見立てて、満開の梅の花に見えるよう趣向を凝らしました。椅子は花弁をかたどったデザインとしています。

【四弁花紋】(つづれ織りの壁画)
色絵磁器の第一人者で人間国宝の富本憲吉氏がデザインした四弁花紋様を、京都・西陣の龍村美術織物に依頼して純絹のつづれ織りにしたものです。蘭を見事なふくれ織りで、屏風風に仕立てています。蘭は大倉喜七郎が好んだ花でした。

【麻の葉紋】(木組み格子)
二等辺三角形の組み合わせによって作られた四方連続紋様で、単純でありながら極めて巧みな構成紋様です。釘を一本も使わずに組まれた芸術品。館内の随所に麻の葉のデザインが施されています。

【世界時計】
ホテルオークラ東京を設計した谷口吉郎氏が晩年、当時の社長 野田岩次郎所有の古いオランダ製の海図をもとに考案し、丹青社ならびにセイコー(株)服部時計店の協力のもと、当時としては、最新機能と種々の趣向を凝らして製作されました。


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USM50周年記念レセプションと長谷川豪参加のプロジェクト展示

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スイスを代表する家具メーカー、USMモジュラーファニチャーは今年50周年を迎えた。その記念レセプションとプロジェクト「Rethink the Modular」の展示が丸の内の直営ショールームで開催された。

 スイスから来日したCEOのアレキサンダー・シェアラー氏と、USM U.シェアラー・ソンズ株式会社代表取締役社長の秋山百合子氏。


 特別ゲストとしてスピーチをしたモノクル編集長のタイラー・ブリュレ氏。
「1983年にUSMの製品を初めて見た時、なぜか記憶に残り、10年後にまた見た時に、これは"大人のレゴ"だと分かりました。自宅、ロンドンのオフィス、各国の支局でも使っています。しっかりしていて長く使えますし、USMと一緒に成長することが出来るので、投資という意味でも特にビジネスオーナーにお薦めです」

USMハラーの正規取扱代理店、インターオフィス代表取締役社長 梅 秀行氏による挨拶も。
「これからも、60年、100年とお客さまを魅了してくれると思います」

階段脇のスペースには、USM50周年を記念したワークショップを軸とするプロジェクト「Rethink the Modular」に日本から参加した、建築家の長谷川豪氏と東京工業大学の大学院生の作品の展示。
※Rethink the Modular=世界で活躍する若手の建築家・デザイナー7人をフランス・ボアブッシェに招聘し、“モジュラー”というコンセプトをそれぞれが独自に見直し新たに表現した作品をつくるというもの。参加チームのプロジェクトの集大成はミラノサローネで発表され話題を呼んだ。日本からは、長谷川豪氏と東京工業大学の大学院生が参加した。



ミラノサローネ展示作品「Colomun in Milano」の1/5モックアップ。


ボアブッシェで見出したパラメーターのコンセプトと土という素材を利用した作品。展示室の空間を特徴付けている列柱にインスピレーションを受けた、身体、集団、環境という3種類のスケールを併せ持つ土の柱。ロープをとぐろ状に巻き上げてその中に土を絞め固める工法で制作された。

長谷川豪氏。
「一貫した製品でいて飽きを感じさせない、USMのようなブランドは日本にはないように思います。普段から、USMの考え方に学ぶことは多いです」


「Rethink the Modular」展
会期:2015年10月23日〜未定(11月13日迄は開催決定)
場所:USMモジュラーファニチャーショールーム

※長谷川豪さんのトークは11月3日開催(終了しました)


槇事務所創立50周年展 レポート/ヒルサイドテラス

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10月17日より代官山のヒルサイドテラスで開催の「Fumihiko Maki, Maki and Associates 2015: 時・姿・空間―場所の構築を目指して」展にオープニングに行ってきました。
槇総合計画事務所創立50周年を記念し、代表作であるヒルサイドテラス内の3会場を使っての大規模な展覧会だ。

ヒルサイドテラスF棟・ヒルサイドフォーラムの会場。こちらでは近作や完成予定の作品をメインに展示。
展覧会概要。「建築家槇文彦の主宰する槇総合計画事務所は、今年2015年には創立50周年を迎えます。 それを記念して開催される今回の展覧会では、モダニズムの建築家としての槇文彦の半世紀にわたる活動の軌跡を、 そのデザインチーム槇総合計画事務所との作品の模型、図面、スケッチ、映像などを通して紹介します。 また、この展覧会は半世紀にわたる設計活動の背後にあって、何を重要視し、何に関心をもってつくってきたか、 その結果生まれた数々の作品の成果だけでなく、その後、どのような社会性を獲得してきたかの記録でもあります。」

※会場内は撮影禁止の箇所もありますが、会場にて槇さんより特別に撮影・掲載の許可をいただいております。
 ギャラリー1
〈名取文化会館多目的ホール 希望の家〉2012、〈孤児の家〉アンビルト、〈パラオ海洋研究所〉、〈浮かぶ劇場〉1996。

 ギャラリー2
〈スカイライン・オーチャード・ブルバード〉シンガポール/2015
高さ147m、33階建ての高級レジデンシャルタワー。居住部を地上から20m持ち上げ、低層部の住居にも見晴らしの良さを確保。緑豊かなランドスケープとともに、タワーのバルコニーも緑で取り囲まれた、森の中にそびえ立つタワーを意図。

 〈海上世界芸術文化中心〉深圳/2016
蛇口の海上世界エリアの業務・商業・住宅開発計画の核をなす、美術館、劇場、多目的ホール、商業施設を含む複合文化施設。形態は周囲の海や公園、山との力強い繋がりを示唆するような構想。外部との連続性をもつ内部のヴォイドに回遊動線が巡り、多様なプラグラムを楽しむことができる。

 〈シンガポール・メディアコープ〉シンガポール/2015

 ギャラリー3

〈東京電機大学 東京千住キャンパス Ⅰ・Ⅱ期〉足立区/2012・2017
100周年記念キャンパス。低層部とセットバックした高層部からなる3つのタワーの集合体で、公共性の高い空間と統合し、特色ある街並みの創出を目指した。塀のないオープンなキャンパスのため、人々の多様な活動が街の風景を生み出している。

 ギャラリー4


〈長野市第一庁舎・長野市芸術館〉長野市/2015
通り沿いの軒の高さを抑え、ファサードの分節化によってヒューマンスケールの街並み形成を目指す。緑豊かで落ち着きのある「現代の境内」として建物周囲を整備。

 〈津田塾大学千駄ヶ谷キャンパス〉渋谷区/2009
敷地のコーナーには30年ほど前に槇事務所が設計した津田ホールが隣接し、津田塾が都市部の拠点として新たにキャンパスの整備を行った。千駄ヶ谷特有の文教的な景観に配慮し、高さを抑えた3層と5層のコンプレックスで構成され、駅前ながらヒューマンスケールのキャンパス。

フォーラム


 〈ビハール博物館〉インド/2015
ビハール州は釈迦の生地。周辺に伝わる貴重な仏像等を中心に収蔵される博物館で、国際コンペによって勝ち取った。他のコンペティターがマッシブでアイコニックな凝塊建築であったのに対し、槇案は長さ500mの敷地全体を活用し、要求プログラムをキャンパス的に展開した。

 〈4 ワールド・トレード・センター〉ニューヨーク/2014
約300m、64階建ての超高層ビル。上層のオフィス部分は徹底した「ガラスの彫刻」を目指した結果、時々刻々と表情を変化させながら周辺のスカイラインの中で鋭いアイデンティティを確立している。時に周囲を映し込み存在を消し、虚しい相を呈することがあるが、それは短命におわった旧WTCへのオマージュとして理解することもできる。

 〈アガ・カーン ミュージアム〉トロント/2014
設計に先立ちアガ・カーン自身から送られた手紙には、イスラム建築で如何に自然光が重要であるかが述べられていた。その意を受け、最も白色に近い花崗岩としてブラジル産の特定のものを採用し、自然光に対して鋭敏に反応できるようにした。2層の建物を一層目で屈折させ異なった陰影を外観に与える。

 中庭の周囲に吹き抜け空間を設け、それを囲むガラススクリーンにイスラム的パターンを与え、周辺の内壁に様々なパターンの影を落とす。この空間には異なる性格や用途を持たせ、美術館として最もインフォーマルな情景が常に展開している。

 〈新国連ビル〉
国連は施設の拡大充実を図るため、現キャンパス南側の隣地に施設の提案を、プリツカー賞受賞者に限定された国際コンペによって求めた。多くの選考行程の後、槇案が採択されたが諸事情により直ちに実現はしなかった。しかし他施設の改修計画に伴って改めて槇案の最適性が確認され、現在国連総会にて承認を得るための具体案が進行中。国連の中立と平和を象徴する色として、マンハッタンのスカイスクレーパーの中で最も白さを感じさせる建物を目指している。

別棟の会場であるヒルサイドプラザ

 こちらの会場では、過去50年間に完成した単体の建築から、大学キャンパスの計画を含めた集合体が、どのようなコンセプトの元で実現されたかを、またそこから生まれた数々の情景を紹介。



 〈シンガポール国立科学技術専門学校〉シンガポール/2007

〈ヒルサイドテラス Ⅰ-Ⅵ期〉渋谷区/1969-1992

※Aギャラリー(A棟)は時間の都合により取材できませんでしたのでご了承下さい。

 懇親会の一コマ。左から山本理顕、植田実、北山恒、松隈洋、槇文彦、原広司の各氏。

 最後に筆者が記念撮影の大役を仰せつかり、皆さんで一枚。

展覧会に合わせ、鹿島出版会より刊行された「槇文彦+槇総合計画事務所2015」/槇文彦:編著

【Fumihiko Maki, Maki and Associates 2015: 時・姿・空間―場所の構築を目指して】
会期:2015年10月17日 - 11月29日
会場:Aギャラリー(ヒルサイドテラスA棟)
ヒルサイドプラザホール(ヒルサイドテラス)
   ヒルサイドフォーラム(ヒルサイドテラスF棟)


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黒崎敏による港区の住居兼オフィス「TERMINAL」

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黒崎敏/APOLLOによる港区の住居兼オフィス「TERMINAL」を見学してきました。
住居部には建物のオーナー家族が住まい、オフィス部には設計したアポロ自身が入居している。

敷地面積128m2、建築面積87m2、延床面積273m2。RC造地下1階、地上3階建て。
1階と地下が賃貸のオフィス。2・3階が住居になるが、土地柄からオフィスライクなシンプルでクールなファサードに。

 コンクリートの型枠には幅40mmの杉板を使い、比較的細かい目がでるようにした。
2階のルーバーと1階のファサード、支柱には溶融亜鉛メッキリン酸処理されたスチールで重厚感を演出。
手前が住居用、奥がオフィス用のエントランス。

 オフィスのエントランスは1階と、地下へ降りるドライエリアに設けられている。


 1階はギャラリーとしても使える。今のところオフィスと言うより、ミーティングなどに使えるフリールーム。隅には水栓やシンクも備わっており、このスペースをどのように活用していくか検討しているそうだ。


 天井はウォールナット、右の壁はコンクリートの杉板型枠、左の壁と床は大判のタイルによってそれぞれ仕上げられている。


 細部に丁寧な仕上げと納まりが見て取れる。


地下。アポロは奥の半分を使用しているが、スペースに余裕があるので他に2社とシェアしている。
1階からは右に見える扉から出入りする。

ドライエリア。スペース効率を考えた場合螺旋階段を設えるのが妥当だが、降りてくる人に心地良い作法を求めるような階段になっている。また日光がちょうど良いこともあり、開口に切り取られたこのスペースが小さいながらも一つの建築のように成立している。

ドライエリアの横は黒崎さんの執務スペース。
水回りやタイルなどを扱うFONTE Tradingが、ショールーム的に同居するかたちでディスプレーされたバスタブやシャワー、水栓がユニーク。(もちろん使えません)

一度地上へ出て住居部へ。

1階は玄関のみで、大容量の収納と、奥に納戸。

 2階は子供室や予備室。左の開口からルーバーを内側から見た様子が分かる。


 振り返ると昇ってきた階段がガラスケースの中に入っているようだ。左に1階から吹き抜けになった中庭。右に主寝室や水回りに通じる。

 水回り。


 主寝室へはシンメトリーにレイアウトされたウォークインクローゼットの間を抜ける。


 主寝室。西側の開口からちょうど緑の借景が望める。


 先に紹介した吹き抜けの中庭に面したバルコニーは、階段室の裏側へ通じ回遊動線を形作っている。
今後中庭にはシンボルツリーを植えるそうだ。

 3階へ。階段室は1階から屋上のペントハウスまでを貫き、光の通り道になっている。


 3階は階段室を中心に、2階同様回遊動線を持つ大きなワンルーム空間。


 南側のダイニングには壁一杯のスチールシェルフを設え、東西に大開口で開放的にした。
左のガラスは通り側でハーフミラーなので外からは見えにくくなっている。

 ダイニングからキッチン側を見る。


 キッチン上部にはトップライト。「日中は全く照明なしで作業ができ、キッチンに立つのが毎日楽しいです。」と奥さま。


 キッチンからはリビング越しに借景を切り取るピクチャーウィンドウ。




 リビングスペースは他より40cmほど天井を高くし3mある。緩やかなゾーニングとゆったりとした気積で寛ぎの空間に。




 中庭を介した開口は2階ではプライバシーを確保しながらも採光し、この3階では思い切り開放しフロアによるシーンの切り替わりを楽しむことができる。いずれ成長したシンボルツリーがここからも見えるようになるかも知れない。


 黒崎敏さん。「敷地のポテンシャルが高いので、お施主さんからは住宅だけでななく、賃貸スペースを設け家賃収入も得たいと望まれました。そして計画段階からまずはアポロに入居して欲しいとお願いされていましたので、自社オフィスとしても考慮しながら進めることができました。」
「上の住居部では中央にレイアウトした階段と構造壁によって、回遊性と緩やかな分節が生まれ家族の程よい距離感と親密感を作り上げられたと思います。」

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安部良によるロス・ミクブライドの住居兼オフィス「ノーマルビルディング」

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安部良による渋谷区の住宅「ノーマルビルディング」の内覧会に行って来ました。日本在住のアメリカ人プロダクトデザイナー、ロス・ミクブライトさんの住居兼オフィスだ。
(※新建築 住宅特集最新12月号に掲載されている作品です)

 敷地面積123m2、建築面積60m2、延床面積142m2。RC造+木造、地下1階、地上2階建て。
東と南に面する角地に建つ。地下がオフィスで、1・2階が住居。

 ガルバリウム鋼板の素地と、モルタル仕上げの箱がずれながら交互に配されている。


 ずらした箱型が軒下空間や、バルコニーを作り出している。


 まずはオフィス「nomal」へ。nomalはミクブライドさんが2006年に立ち上げた時計ブランド。国内外で発売されている。
元々SOHOで業務を続けてきたが、今回は住居と玄関が別であることを条件だった。「一旦外に出ると気持ちが切り替わるし、気分が上がりますからね。」と話すミクブライドさん

 ミクブライドさんを含め計3名が働くには十分な広さ。
奥にミニキッチンやトイレがあり、更に奥は倉庫になっている。

 エントランス方向の見返し。今後窓にディスプレイなどをする予定。
右のデスクは高めに設置し、立って作業をすることもできるようにした。

 時計を組み立てるミクブライドさん。リリースする腕時計の中にはこだわりのデザイン追求のため、独自開発した技術が盛り込まれているものもある。そのため工場での組み立てができず自社で組み立てるモデルもある。


 オフィスからぐるりと回って住居への階段をあがる。


 引き戸の玄関扉を開けると、右手に主寝室。階段をあがったところがリビングだ。


 玄関の窓際にグエナエル・ニコラさんが作った香水 "CURIOSITY ESSENCE” を発見。ミクブライドさんは日本に来て25年。ニコラさんは同じ日本在住の外国人デザイナーとして大切な友人の一人だそうだ。


 1階主寝室。


 2階リビング。
この空間に合わせてニコラさんにデザインしてもらったというオリジナルのソファが映える。様々なシーンに合わせてレイアウトを変え楽しむことができる。シャンデリアや絵など、これから飾るものをご夫婦で決めていくそうだ。

 リビング奥から振り返る。
左手に水回りと、子供室。半階上がった2.5階にダイニング・キッチンがある。

 水回り。浴室の右側に小さなバルコニーがあり、子供室とも連続する。


浴槽は唯一国産で鋳物ほうろう浴槽を作っている大和重工の ‘Castie’ という商品。「肌触りも見た目の質感も特別で、ミニマルなデザインと本物の質感は今回の建物のコンセプトにもぴったりでした。」と安部さん。


 子供室。一見コンパクトに見えるが、、、


 ベッドに上がるとさらに上のフロアが現れた。アスレチックさながらの空間だが、7歳のニコちゃんには余裕。この部屋を大変気入っているそうだ。

 秘密基地のような遊び場。左から屋上へ通じるので3階の高さにあたる。


 次にダイニング・キッチンへ。


 ダイニング・キッチンは天井も高く、掃き出し窓と4面のハイサイドライトで明るく開放的。
右に少し見えているが、エアコンは全て天井埋め込み型を選択しているので壁がすっきりしている。

 リビング方向を見ると下にも外にも視線が抜け、都心の住宅とは思えないほどの伸びやかな空間。


 ダイニング南側にはバルコニー。その上部のL字型ハイサイドライトも効いている。


 バルコニーは三角形で最大2.5m以上キャンティレバーで突き出していて、下がエントランスの軒になっている。
屋上からは子供室にも連続するので、子供にとっては高低差のある大きな回遊型動線が取れる。


 週末は友人達を招いてBBQをしたりと活用しているそうだ。
周辺のビルには広告やデザイン会社などが入っていて、良い刺激を受けることができる環境。

 屋上からダイニングの見下ろし。


安部良さん(右)と、ロス・ミクブライドさん(左)。
以前から友人関係にあった安部さんとミクブライド夫妻。それぞれ拘りのある三者が意見を出し合い、練り直しながら、完成まで5年の歳月を要したという。「設計は何度も変わったので、初めはどうだったかあまり覚えていません。」と笑いながら話してくれた。



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土田拓也/ナンバーファイブスによる平塚の住宅「SUKIMA」

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土田拓也/ナンバーファイブス (no.555) による神奈川県平塚市の住宅「SUKIMA」(TSC)を見学してきました。

 敷地面積116m2、建築面積56m2、延床面積87m2。木造2階建て。
敷地に黒い箱が二つレイアウトされており、手前は物置でアウトドア用品などが収まる。

ドローンで撮影された上空からの画像でよく分かるが、整形の敷地に変形平面の建物が建つ。
駐車スペースは2台分あるが一方には大きなアメ車が停まれるようにファサードを後退させた。しかしこの変形が内部に変化をもたらし豊かな空間にしてくれる。

 外壁の仕上げはガルバリウム鋼板の下見張り。右手のもう一方の変形させた部分に庭を設けハーブなどを植えた。

 玄関扉を開けるとをモルタル仕上げの土間になっており、そのまま居室に連続していく。
左は納戸で、右上の開口からは南側の明かりが入ってくる。

 大きな玄関ホールはギャラリーのような空間に仕上げていくそうだ。玄関扉は透明ガラスでギャラリー感が増している。
壁や天井は土田さんの作品ではお馴染みの木毛セメント板。

 玄関ホールを抜けると隙間(SUKIMA)のような空間が現れた。

 別角度から振り返ると大きな吹き抜け空間に、床に着いて上が開いた箱と、床から浮いて下が開いた箱二つある構成が分かった。

 一番日当たりのいい場所にソファーを置き庭を愛でたり、読書を楽しむ。
床暖房が備わっているのでそのままラグに座ることも多いそうだ。
 モルタルの床は土間のような雰囲気に。少し段差を設けた右がダイニングとキッチンになる。


箱の内側は天井高を抑え、吹き抜け空間の開放感をより高める演出がされている。

 階段の奥が玄関で、その右に水回りがある。

 水回りも、木毛セメント板とラワン合板で統一。

 2階へ。
上がった正面がトイレ、右側が子供室、左側が主寝室になる。

 階段を上って見返す。両側の箱がそれぞれ下が開いたものと、上が開いたものというのがよく見える。

 子供室。小さめの正方形の開口がいくつか設けられている。左は屋外に開閉し、右の二つは吹き抜けに対して開閉するので、子供室の気配を下に感じさせることができる。

 一度出て主寝室へ。

 主寝室は2面ガラス張り。子供室では、物やモデルさんが小さいので分かりづらかったが、こちらでは天井が低い様子がよく分かる。


 最近よく目にするトグルのスイッチパネルは、土田さんは10年以上前から使っていて、長年使用してもへたりがこないこだわりの物をがあるそうだ。

土田拓也さん(右)とお施主さん家族。
「箱の高さを抑え、その中の空間や建物自体の高さも低く抑えていますが、箱の隙間空間は十分なボリュームを取ってあります。そのことで場所によって広さや高さの感じ方が変わるメリハリのある空間となり、実際の面積よりも広く大きく感じられる住宅になっていると思います。また建物の高さを抑えることで工費も抑えられるメリットもあります。」


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永山祐子による「西武渋谷店」のリニューアル

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永山祐子 (Yuko Nagayama & Associates) がインテリアデザインを手掛けた、西武渋谷店5階のファッションフロアに行ってきました。8年ぶりにリニューアルしたファッションフロアは、A館5階婦人服フロアと、B館5階紳士服フロアを永山祐子が、A館3階婦人服フロアを佐藤オオキ/nendoが担当した。

 〈A館5階婦人服フロア/モードプラス〉
テーマは「宮殿」。40〜50代をターゲットにしたエレガントな雰囲気だ。

 レースカーテンのように見えるのはきらびやかなリングメッシュ。柱や梁をさりげなく視界から消している。


 カーテン越しに見える隣の「部屋」と緩く仕切られながら連続し、床の色を変えゾーニング。



 リングメッシュは大きなドレープが出るように波形のレールに固定されている。

 構成はシンメトリー。ハンガーラックや什器も、商品の陳列もシンメトリーに揃えられ、美しい秩序でレイアウトされている。


 宮殿のシャンデリアを思わせるの照明はワーロン紙でできている。


 均質なグラデーションが表現されるよう、内部の光源は微妙に調光されている。


 壁紙はELITIS。フランスから取り寄せた。






 次にA館から渡り廊下でB館へ。渡り廊下のリニューアルも永山さんが担当した。
売り場と同じ色味を使ったパーケットフローリングが、ミラーのグラデーションフィルムが貼られたガラスルーフに反射し万華鏡のようだ。
ちなみにこのパーケットフローリングのパターンはエカテリーナ宮殿にも使われている。

 壁面のワイヤーメッシュもグラデーションに染め上げ、奥行きが出るようになっている。


 上部にはガラス作家に吹いてもらったオリジナルのペンダントライトが並ぶ。


 〈B館5階紳士服フロア〉
廊下を渡り終えると髙石優真のアート作品(商品)が出迎える。

 紳士服フロアのテーマは「博物館」。


 什器やショーケースには商品が展示物のように陳列されている。




 標本ケースのような什器。


 外縁にはアーチ型の陳列棚。


 壁面の肖像画に見えるのは、動物や鳥の「肖像画」が描かれている。
博物館の雰囲気を醸し出す商品として、インテリア雑貨や、オブジェなども多く並べられている。



 期間限定、ピニンファリーナのポップアップショップが展開。
左の自転車は240万円也。

 永山さんがセレクトしたガラス工芸作家 松村潔の精密な作品。こちらも期間限定のポップアップショップ。


 男性より女性の方が買い物時間は長いのが常だが、ここでは逆に男性の方が時間が掛かりそうだ。


 ブリーフがビーカーに入れられている。





永山祐子さん。「レディースはルーブル美術館のように、宮殿の部屋ごとに展示スペースを歩いて回るような中で、カジュアルでドレッシー、大人の女性にいつもと違う時間を体験していただけたらと思います。」
「メンズは男心を刺激するようなものを沢山並べてありますので、ゆっくりと博物館を回るように楽しんでください。どちらも時代が変わっても強く、ポップさではない長く愛着を持ってもらえるようにデザインしました。」
A館3階、nendoが手掛けたフロアも公開しますのでお楽しみに。



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黒崎敏による港区の住居兼オフィス「TERMINAL」

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黒崎敏/APOLLOによる港区の住居兼オフィス「TERMINAL」を見学してきました。
住居部には建物のオーナー家族が住まい、オフィス部には設計したアポロ自身が入居している。

敷地面積128m2、建築面積87m2、延床面積273m2。RC造地下1階、地上3階建て。
1階と地下が賃貸のオフィス。2・3階が住居になるが、土地柄からオフィスライクなシンプルでクールなファサードにした。

  コンクリートの型枠には幅40mmの杉板を使い、比較的細かい目がでるようにした。
2階のルーバーと1階のファサード、支柱には溶融亜鉛メッキリン酸処理されたスチールで重厚感を演出。
手前が住居用、奥がオフィス用のエントランス。


 1階はギャラリーとしても使える。今のところオフィスと言うより、ミーティングなどに使えるフリールーム。隅には水栓やシンクも備わっており、このスペースをどのように活用していくか検討しているそうだ。


 天井はウォールナット、右の壁はコンクリートの杉板型枠、左の壁と床は大判のタイルによってそれぞれ仕上げられている。


 細部に丁寧な仕上げと納まりが見て取れる。


地下。アポロは奥の半分を使用しているが、スペースに余裕があるので他に2社とシェアしている。
1階からは右に見える扉から出入りする。

ドライエリア。スペース効率を考えた場合螺旋階段を設えるのが妥当だが、降りてくる人に心地良い作法を求めるような回り階段になっている。また日光がちょうど良いこともあり、開口に切り取られたこのスペースが小さいながらも一つの建築のように成立している。

ドライエリアの横は黒崎さんの執務スペース。
水回りやタイルなどを扱うFONTE Tradingが、ショールーム的に同居するかたちでディスプレーされたバスタブやシャワー、水栓がユニーク。(もちろん使えません)

住居部の玄関へ。1階は玄関のみで、大容量の収納と奥に納戸を備える。
(Photo: Masao Nishikawa)

 昇ってきた階段を振り返るとがガラスケースの中に入っているようだ。左に1階から吹き抜けになった中庭。右に主寝室や水回りに通じる。


 2階子供室。右の開口からルーバーを内側から見た様子が分かる。将来二部屋に分割も可能になっている。
(Photo: Masao Nishikawa)


 主寝室へはシンメトリーにレイアウトされたウォークインクローゼットの間を抜ける。そして西側の開口からちょうど緑の借景が望める。
(Photo: Masao Nishikawa)


 主寝室から見た吹き抜けの中庭に面したバルコニー。階段室の裏側へ通じ回遊動線を形作っている。
今後中庭にはシンボルツリーを植えるそうだ。

 3階へ。階段室は1階から屋上のペントハウスまでを貫き、光の通り道になっている。


 3階は階段室を中心に、2階同様回遊動線を持つ大きなワンルーム空間。


 南側のダイニングには壁一杯のスチールシェルフを設え、東西に大開口で開放的にした。
左のガラスは通り側でハーフミラーなので外からは見えにくくなっている。

 ダイニングからキッチン側を見る。


 キッチン上部にはトップライト。「日中は全く照明なしで作業ができ、キッチンに立つのが毎日楽しいです。」と奥さま。


 キッチンからはリビング越しに借景を切り取るピクチャーウィンドウ。




 リビングスペースは他より40cmほど天井を高くし3mある。緩やかなゾーニングとゆったりとした気積で寛ぎの空間に。




 中庭を介した開口は2階ではプライバシーを確保しながらも採光し、この3階では思い切り開放しフロアによるシーンの切り替わりを楽しむことができる。いずれ成長したシンボルツリーがここからも見えるようになるかも知れない。


 黒崎敏さん。「敷地のポテンシャルが高いので、お施主さんからは住宅だけでななく、賃貸スペースを設け家賃収入も得たいと望まれました。そして計画段階からまずはアポロに入居して欲しいとお願いされていましたので、自社オフィスとしても考慮しながら進めることができました。」
「上の住居部では中央にレイアウトした階段と構造壁によって、回遊性と緩やかな分節が生まれ家族の程よい距離感と親密感を作り上げられたと思います。」

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「新しい建築の楽しさ2015:前期展」レポート

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11月4日から開催の「新しい建築の楽しさ 2015:前期」に行ってきました。会場は東京・京橋のAGC studio。
4回目の今年は前期展に浜田晶則、中川エリカ、ツバメアーキテクツ、細海拓也、萬代基介、仲建築設計スタジオ。
後期展に畝森泰行、青木弘司、吉村靖孝、弥田俊男、中山英之+Ido Avissar、永山祐子の計12組の若手建築家が参加する。
企画は中崎隆司。

 毎回会場構成にも若手建築家が起用され、その会場デザインも見所のひとつ。
今回は山田紗子が担当。展示台の高さを1.3mと高めに設定し、来場者が目線の高さで模型を見られるようにした。

 〈綾瀬の基板工場〉 浜田晶則
神奈川県綾瀬市の基板工場の増床計画。

 準工業地域であり、住宅と工場が共存するため地域の人が多用途に利用できる柔軟性・開放性が求められた。可変性を高めるため仕切りを構造から独立させつつ、独自性も担保できる独特な軸組構成を持つ。


 〈ライゾマティクス 新オフィス移転計画〉中川エリカ
テーマは「様々な個性が集まっていること自体が面白い状態をつくる」。


 RC造9階建ての1階にある倉庫空間で、大きな柱が林立する躯体と天井高を活かして「ビッグテーブル」と表現した木造の中2階を幾つも配置。プログラムでゾーニングするのではなく、働く人が運用しながら自分たちの場所にしていく。

取材したこの日は会場2階でデザインフォーラムが開催された。

 中川エリカさん。
「オフィスの引越後伺うと、私の予想もしない使い方をされていて、正に自分たちの場所を作っていっていただいていました。」

 〈ローライフカフェ〉 山道拓人+千葉元生+西川日満里/ツバメアーキテクツ
銀座にある、ローフード(火や油を使用しない)に特化した料理教室とカフェの複合空間。

 コンセプトは「可変は構築である」。田の字型のグリッドに合わせて引戸で仕切ることで、カフェ、料理教室、レクチャーなど様々に可変できる。時間と構成の関係を重要視し、時間帯による人の集まり方の変化に、空間的な変化で対応する。


 〈Housing Complex Niigata Ⅱ〉細海拓也
新潟市の9階建て集合住宅の計画。

 4方向にそれぞれ異なる風景が望める敷地。4つのボリュームを回転させながら積層し複雑な空間構成を生む。入居者は好みに応じて、例えば4階北側に海の見えるバスルーム、8階南側に山の見えるリビングをというように1棟の中に別荘があるような住まい方ができる。複雑な動線で予期せぬ空間が生まれることを想像している。


 細海拓也さん。
「提案段階ですが、集まって住む新しい試みだと思います。隙間の共用部がどんな使い方をされるのか自律を目指す建築です。」

 〈鮎川浜の番屋〉萬代基介
宮城県石巻市に計画中の漁師のための番屋(作業場兼休憩所)。

 東日本大震災で被災した町で、漁業の6次産業化を支援する機能を持たせるプロジェクト。大部分が半屋外の建築で井桁状に組んだ鉄骨の梁と屋根の下に緩やかな場所を作り、建築・環境・人とが重なり合う。漁師の独立と協働を拡張し、漁業と観光を繋ぐ復興拠点を目指す。


 萬代基介さん。
「まだまだ津波の爪痕が残る場所で、道路もないし、敷地の境界も曖昧な場所ですが漁師さん達は自活を始めています。」

〈 “小さな経済” の住宅群〉仲俊治+宇野悠里/仲建築設計スタジオ
1階に工房と2住戸の賃貸、2階にオーナーの住居と事務所を配したプロジェクト。

 通りに面して、工房、テラス、スタジオが開いており、そこは通りと居住空間を繋ぐ中間領域であり、仕事や趣味を居住空間を延長する空間になっている。異なる性質を持つ環境がグラデーショナルに織り込まれ、地域と繋がる感覚を失わずに生活できる。


 展示台は配管用の真ちゅう製パイプとコネクターが用いられ、模型によってフレキシブルに対応できる。




「金色の背の高い展示台は遠くから見るときらきらと輝き不思議な存在感を放ちながらも、中に入ると存在感が薄れ透明度が増すような、環境的なものとなることを期待しています。」と山田紗子さん。


 展示台の下にはAGC旭硝子の新商品 “グラシーン” が使われ、透明なガラスでありながらプロジェクターの映像を映し出すことができる。
(特別に会場の照明を落として撮影させていただきました)

【新しい建築の楽しさ2015】
前期:2015年11月4日 ~ 12月25日
後期:2016年1月5日 ~ 2月27日
会場:AGC studio(東京都中央区京橋2-5-18 京橋創生館)
   11/9、12/3、1/14、2/18に建築家3組ずつによるデザインフォーラム有


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イタリアの国際建築賞「デダロ・ミノッセ」日本巡回展 レポート

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イタリアの国際建築賞「デダロ・ミノッセ」日本初となる巡回展が、横浜ランドマークタワーで開催中だ。
主催はALA-ASSOARCHITETTI、アーキテクツ・スタジオ・ジャパン、イタリア文化会館。

デダロ・ミノッセは、北イタリアのヴィツェンツァで1997年に設立された国際建築賞で、「優れた建築には良き発注者と素晴らしい建築家の双方の存在が必要である」という理念のもと、選ばれた作品には建築家だけでなく発注者にも賞が授与されるという世界でも類稀な賞である。
ギリシア神話に登場する建築家ダイダロス(伊・デダロ)とそのクライアントのミノス(同・ミノッセ)に由来する。

本展では、2013-2014年度の大賞の4作品をはじめ特別賞の8作品、佳作の12作品と優秀作を含め計82作品を見ることが出来る。

窪田勝文の〈くらさこ保育園〉。

 賞は、現在世界の国々で様々な建築主(政府、個人、企業、財団等)によって、どのような建築がなされているかという広義の概要を知らせるという意義があるそうだ。


大賞の4作品


その中のひとつを日本からエマニュエル・ムホー巣鴨信用金庫シリーズで受賞している。

受賞作品だけでなく、応募に興味がある人には参考になりそうな賞に関するデータも公開されている。
「受賞した建築主の国籍」=39%がイタリアだが日本も14%と高い。
「受賞作品のカテゴリー」=トップは公共建築で33%、そして住宅26%、複合施設12%と続く。

賞のハイライトは受賞した建築主と建築家とで出席する表彰式。世界遺産であるヴィチェンツァにあるパラディオ設計のテアトロ・オリンピコで開催される。
※厳かな雰囲気は会場の映像でご覧ください。


受賞作品集(1000円)も購入することができる。

会場の奥では、北川原温が建築プロデューサーを担当したミラノ万博日本館のパネル展示や、カッシーナとアルフレックスのインテリア展示などもあり、デダロ・ミノッセ建築賞 日本巡回展を含めた"イタリアを楽しめる展示会"という位置づけだ。




12月11日には、イタリア文化会館 東京で「原点から思考する」と題したデダロ・ミノッセ建築賞講演が開催される。講演者は、窪田勝文、前田圭介、岡田哲史、マルチェッラ・ガッビアーニ。

【第1回 デダロ・ミノッセ建築賞 日本巡回展】
会期:2015年11月27日(金)~12月13日(日)
会場:ASJ YOKOHAMA CELL(横浜ランドマークタワー31F)
詳細:http://www.asj-net.com/events/dedalo_minosse.php




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三浦慎×アトリウムによる赤坂の「Hotel Resveglio(リズベリオ)」

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12月1日より赤坂に開業の「ホテルリズベリオ赤坂」の内覧会に行ってきました。
プロデュースはアトリウム、設計を三浦慎 (Miurashin Architect+Associates) が担当。

建築面積270m2、延床面積1,902m2、地上10階建。客室数71室、収容人数145名。
旗竿敷地というホテルとしては不利な条件だが、竿部分にアプローチとレストランを一体化させ、視線を路地の奥に誘導する。すると路地の奥にランダムな窓が散りばめられた目を引くファサードの建物が現れる。

日が落ちるとこのように。
デッキ張りの路地に小さく淡い照明が灯り、奥のホテルのファサードに地球儀のシルエットが映し出されている。

ホテルのコンセプトは以下のとおり、
「Resveglio(リズベリオ)はイタリア語で『目覚め』を意味します。人は、未完成で未知なものについ心が惹きつけられ、美しいと感じるものです。私たちは、完成を刺激する『未完のデザイン』を散りばめることで、お客様の感性を研ぎ澄まし『目覚め』のきっかけをご提供します。」

ロビー。
設計担当の三浦慎のほか、インテリアデザインに関家具とアライブプロデュース。アートやグラフィック監修に川上シュンらも参画している。
正面奥の「R」は〈kizuki〉と名付けられたインスタレーションで、天気予報を反映して青や赤など様々に色が変化する。

客室フロアの廊下。シックなモノトーンで男性的なイメージだ。


客室は主に16m2で、バスルームのレイアウトが2種類ある。
どちらのレイアウトも特にバスルームと寝室の関係を工夫した。

寝室側に開放できるバスルームにより、数字以上の広さが感じられるようになっている。
そして各客室にはアーティストによるアートが描かれている。この客室は7階なので松島純が担当した。

客室清掃係へのサイン。「シーツ、ナイトウェアの交換は必要ありません」は「Save Our Planet」と書いてある。

こちらはダブルベッドの客室。片側一面がバスルームになっている。


左から、シャワー、洗面、トイレ。クローゼット程の奥行きに一列に配されて、半分はガラス張りなので広く感じられる。


2人で泊まったとき困るのが洗面台の順番待ち。横長の洗面ボウルを縦に配置することで、対面で同時に使えるようになりその問題を解決。




タブレットPCや加湿器も常備。タブレットではホテルの様々なインフォメーションが表示でき、インターネットも使用可能。(ちなみに外に持ち出すとアラームが鳴ります)

最上階(10階)の 〈Regged Twin〉 は倍の広さ30m2。


この客室のみトップライトが設えてある。周囲のビルから視線が入らないよう配慮され、電動スクリーンで遮光もできる。


バスルームから。


バリアフリー客室。車椅子で水回りにアプローチしやすいように、開口をより広く取ってあるのでワンルームのように開放的。


後ほどバスタブの足元には踏み台が設えられる。壁面のペインティングは川上シュンによる。


2階の “Atelier Suite” は最も広い64m2。




ゆったりとしたリビングを抜けると、外で見えた地球儀のオブジェがここに現れた。


コリドールはさながらアートギャラリー。アートはartless Inc.とhikaruが担当。


コリドールを抜けると寝室。壁には70インチはありそうなテレビ。奥にバスルームへと続く。




左からアトリウムの小川修佑さんと亀田竜生さん、三浦慎さんとプロジェクト担当の田中知博さん。
「まず特徴的で新しいビジネスホテルを求められました。外部では旗竿という不利な条件を逆手にとって、この雑多な赤坂の繁華街に魅力的な路地を生み出し、そこへ足が自然と向くような仕掛にしました。客室は平均的なビジネスホテルより若干広めですが、今まで閉ざしていたバスルームを開放できるようにすることで空間に余裕と、新しいスタイルが生まれたのではないでしょうか。」と三浦さん。

【ホテルリズベリオ赤坂】
開業:2015年12月1日
所在地:東京都港区赤坂3-18-1


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松島潤平個展「PRISM@IC PRISMIC」

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12月4日からプリズミックギャラリーで開催の松島潤平個展「PRISM@IC PRISMIC」のオープニングに行ってきました。
(当日はまだ展示制作中だったため写真は未完のものであることをご了承下さい)

キラキラした状態の意味だと思っていた「プリズミック」は実は造語で、「プリズマティック」がその意味に当たる。そして「プリズム」は角柱を意味することも知り、示し合わせたようにギャラリーには角柱が存在している。
「プリズマティックなプリズムのあるプリズミックギャラリー」として自分の誤解を本当のことにしてしまおうかと考えたのが今回の展覧会の趣旨だ。

既存状態。

既存の “本物” の柱と同じサイズの “偽物” の柱をもう一つ立て、細部を見るとこれまた “偽物” であるスケール感をもった階段などが刻まれているが、柱としては “本物” のスケール。


その意匠はネガ・ポジの関係。

 テクスチャーには金箔や銀箔に加工を施した “本物” の工芸品を、チープなスチレンボードに貼り込むというフィクション。
(柱にはこの後、全面に箔が貼られる予定)

さらに最新のプロジェクションマップにより、「プリズマティック」な世界もつくり出す。
箔は世界的な金箔アーティストであり経済産業省伝統工芸士でもある、裕人礫翔(Hiroto Rakusho)が制作した非常に高価なものを提供してもらっている。

裕人礫翔さん。日本橋三越で開催中の個展会場から駆けつけた。
(個展は12/8に終了)


 
展覧会のDMはホログラムの箔ををプリント。光のちょっとした変化で七色に変わる。
右から左へ、カットする前、カット後、組み立てて「プリズム」になる。


10月に京都市立芸術大学ギャラリー@KCUAで開催された〈タデウシュ・カントル生誕100周年記念展『死の劇場 カントルへのオマージュ』展〉の会場構成。この模型は会場でデザインコンセプトを説明するためにパフォーマンスで使われたもの。

 長野県飯田市の〈育良保育園/2014〉 の模型は、実際に使われる仕上げ材で作られている。

 松島潤平さん。まずは展示制作がオープニングに間に合わなかったことをお詫びしつつ
「事実と嘘、本物と偽物、現実とフィクション、リアルとリアリティの間をたゆたう世界をつくりだそうとしています。ややこしいコンセプトかも知れませんが、今とても興味のあることを形にして皆さんに見てもらいたいと思っています。」

【松島潤平 個展 PRISM@IC PRISMIC】
会期:2015年12月4 - 2016年1月22日
会場:プリズミックギャラリー


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廣部剛司による目黒区の住宅「Gray ravine」

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廣部剛司 (Takeshi Hirobe Architectsが手掛けた目黒区上目黒の住宅「Gray ravine(グレー・ラヴィーン)」の内覧会に行って来ました。

敷地面積79m2、建築面積47m2、延床面積87m2。木造2階建て。
外観は主張せず、周辺環境に馴染むようなグレー。

エントランスの扉を開けると、左に緩やかにカーブする壁面、そして奥の坪庭に連続する階段室が現れた。この階段室は、採光は勿論のこと、空間的な広がりや動線、空気の流れ、家族の繋がりなど様々な要件を、厳しい敷地条件の中で試行錯誤の末導かれたもの。


カーブした壁は、必要な寸法を調停するためでもあり、また外光をバウンドさせながら淡いグレーの壁に柔らかな陰影をつくり出す装置でもある。
この住宅では外壁、内壁、坪庭の壁、階段室などほぼグレーにしており、素材やものの振る舞いに合わせて微妙に濃度を変えている。


階段室は東西に抜け、日の光を敏感に映し出す「外部」に見立て、各居室はその「外部」に開くように面する。
この構成を考えたとき、かつて廣部さんが訪れたアメリカの世界遺産、渓谷の集落遺跡「メサ・ヴェルデ」を思い出したそうで、そこで名付けたのが「Gray ravine=グレーの峡谷」ということだ。


LDKの床レベルは36cmほど下げた。北側斜線の影響を受ける左側の天井高を取る目的でもあるが、同時に自然に座る場所となり、居場所ができた。
「こういった居場所が絶対的な空間の小ささを補完してくれます。」と廣部さん。

段差は境界の役割も果たす。間に見える耐力壁が丁度サッシュを隠してくれることもあり、坪庭から連続する階段室を不思議と屋外のように感じさせ、空間の広がりを生み出す。

リビング・ダイニングの壁沿いの段差は、手前側がダイニングのベンチとして機能し、そのまま延長された奥側でTV台として兼務する。

リビング・ダイニングの奥から。
天井のライティングは星空のよう。一見ランダムに見えるが、ソファー、ダイニングテーブルが置かれる位置の真上にくるよう計算されている。

坪庭にはヤマボウシが植わる。見上げると庭に面して様々な性格の開口が面しているのが分かる。
左下は浴室。


水回りもグレーのグラデーション。


浴室からはヤマボウシと、プライベートな空が望める。


2階から表情豊かな階段室を見る。右側が書斎、左側は寝室など。


書斎側にはトイレと奥に納戸も備わる。


書斎は一面が書棚。蔵書家のクライアントのために可能なかぎり書棚を設えた。


見上げるとグレーチング越しのロフトまで書棚が続く。


ロフト階。法定で可能な開口を設け、読書ができる籠もりスペースもある。右の開口は階段室に通じる。


階段室の見下ろし。まさに渓谷のようだ。


寝室側へ。手前から子供室、ウォークインクローゼット、主寝室へと続く。
床はカバの無垢材。

子供室は柱と長押だけを設えた軽めの間仕切りで、子どもの気配を感じられるように。
お子さんが二人いるので将来は分割も可能。

壁に合わせてカーブした書棚。


ウォークインクローゼットから。


主寝室。トイレと主寝室には有彩色でアクセントを付けた。奥のビンテージ照明は施主が用意したもの。

廣部剛司さん。路地を挟んで隣の家にいるように見える。
「グレーの空間は、見かけ上の光とは違う光で満たされています。そこに人が入り、大切にしているモノが置かれ、、としていくうちに、その光を受け止め、柔らかさが出てくるだろうと思っています」

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木下昌大による「カナエル」新社屋

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木下昌大の設計による「カナエル」神奈川西支店社屋プレス内覧会に行ってきました。
カナエルは横浜市に本社を構えるLPガス会社で、数年前より西澤明洋率いるエイトブランディングデザインによってブランディングの構築を行っており、50周年を迎えた今年、伊勢原と小田原営業所を統合し神奈川県西部の新拠点として秦野に新社屋を建設した。敷地の選定など不動産コンサルには高橋寿太郎/創造系不動産も携わる。

敷地面積1,253m2、延床面積408m2。鉄骨造2階建て。切妻のイエ型ボリュームが連続し、北側を向いた大開口が目を引く。

形態の発想は引きで見ると分かる。社屋の南側には住宅地域が広がるため、いわゆる社屋然とした箱型にはせず、"新参企業"として地域環境に配慮しつつも、地域コミュニティの拠点を目指すシンボル性とのバランスを取ったデザインとした。
また目の前の国道246号を境に手前は工業地域になっている。国道によって分断された地域の風景をつなぐ役割も担うことができるのでは、という発想も含まれる。

9つイエ型が集まり、前後左右に組み合わさり、、、

そのまま内部にまで影響し大小の空間を形作っている。

南側は採光のみの開口に抑え、住宅地域に対して開きすぎないよう抑えた。
(写真では写っていないが)北側の遠景に丹沢山系の山並みが望めるが、それらと社屋が重ね合わさるようにも感じる。奥から鍋割山、塔の岳、大山といったところか。

南側の設備機器はネットで囲われていて、いずれツル植物で覆われることとなる。これも地域住民への配慮だ。

表に戻るとファサードや看板に「カナエル iリフォーム」のロゴも見える。カナエルではLPガス供給だけでなく、リフォームも手掛けるため、社屋はショールームとしても機能する。ロゴ・マークはエイトブランディングデザインによって先にデザインされたので、マークを建築化したともいえる。

足元に目をやると、犬の足跡が続いていたので辿っていくと、、、


カナエルの「エルくん」がエントランスに入るところだった。


エントランス。四角い開口が受付でその上は2階のオープンスペース。大きな三角天井の吹き抜けを思わず見上げてしまう。


エントランスの左右にはイエ型ボリュームが重なることで生まれた、小さな白いイエ型が現れる。白いボリュームは北向きの開口から入る淡い光を反射させ空間の奥へ光を導く。
ちなみに足元に見えるエルくんはガスボンベと "L"字がモチーフで、こちらもエイトブランディングデザインでデザインされた。(クリスマス前につきオプションのトナカイの角を装着中)

右側のボリュームの中。リフォーム関連の展示スペースになっており、"トップライト"を設け内部に採光している。


奥に進むと広めの展示スペースにはキッチンも備わり "使えるショールーム"に。内覧会のために腕利きのケータリングユニット「つむぎや」が出張し、地産の食材を使った創作料理が振る舞われた。
このスペースは引戸で外に開くことができるので、オープンにして地域を絡めたイベントが計画されている。

背後の壁など、多くの壁面の仕上げには地元の木材が使われた。内部は資料室やトイレが収まる。
またこれら内のイエ型は耐力壁でもある。

屋根勾配や交点は90度なので、設計の際ちょっとした平面の変更を、角度で吸収することができなかったので苦労したそうだ。


外、内の外、内の内などが複雑に交錯し、内外の関係がグラデーションのようにつながる。


トイレ。
シーンに合わせたエルくんのイラストが各所に描かれている。

 事務所側から。


エントランスから左側も展示室。
奥には宿直室、更衣室、職員用トイレ、倉庫など。

北向きだからこそこの大開口ができたという。南向きでは日差しの影響が強くエネルギー環境が良くないためだ。
また屋根の表面積が多いため、地下の雨水タンクに水を溜め、夏場屋根を冷やしたり植栽への灌水にも利用するそうだ。

2階オープンルーム。2階にはこのスペースのみで、当日はレセプションが行われた。

イエ型同士の隙間からは採光や、排熱も行う。

向かいの建物の奥に丹沢の山並み。


木下昌大さん(左)、西澤明洋さん(右)
「カナエルさんは業界初のガス料金をオープンにするなどの、透明性のある新しいビジネスモデルを軸にブランディングをさせて頂き、2014年にビジネスモデル部門のグッドデザイン賞も一緒に受賞しました。そして実際ユーザーと顔を合わせる新社屋も完成し、益々消費者・地域と繋がる会社になって頂ければと思います。」と西澤さん。
木下さんは「民間企業で有りながら公共性の高い企業、かつショールームとしてある程度目立つ必要もありながら住宅地域に対して違和感のないようにする、という相反する条件が求められました。敷地周辺の環境や地域性を注意深く観察し、様々に "つなぐ"建築を目指しました。」と話す。


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2015年最も注目された記事ベスト25

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2015年、japan-architectsブログでアクセスの多かった記事ベスト25
The 25 most popular articles in 2015, Japan-architects Blog




1. 槇文彦グループより新国立競技場プロジェクトへの提言




4. 木下昌大による集合住宅「AKASAKA BRICK RESIDENCE」








12. 西田司/オンデザインによる鎌倉の「丘の上の住宅」





16. 若手建築家5名による倉庫リノベーションの提案「MAKE ALTERNATIVE TOWN」










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レンゾ・ピアノ参加の「ABOUT TREES」展/パウル・クレー・センター

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スイスの首都ベルン郊外にあるパウル・クレー・センターで開催中の展覧会「ABOUT TREES」に行って来ました。
パウル・クレー・センターは、レンゾ・ピアノの設計により2005年にオープンした美術館。ベルンで育った画家パウル・クレーの作品4,000点以上が所蔵されている。

 緑あふれる丘陵地から迫り上がるような波うつ屋根が印象的な建築。


3つの波状の丘のひとつであるノースヒル1階部分。奥にカフェテリアがある。
その他コンサートホール、セミナールーム、子供美術館など様々なエリアがあり、文化センターとして機能している。

企画展「ABOUT TREES」に展示されているのは、その名の通り"木"を題材にした作品で、日本人アーティストを含め34名が参加している。太古の時代より生命のシンボルとしてされ、神話やおとぎ話にも登場する木。そして現代においては木と人間は自然環境を語る上で切っても切れない関係にある。すでにそのフォルム自体が自然にできた究極の造形といえる木に対して、それぞれのアーティストがどのように向き合うかが見所だ。


レンゾ・ピアノ自身は、10本の新しい木を植えるというアクションにより展示に参加している。ピアノはパウル・クレー・センターを設計した当初から、もっと木を植えたいという想いがあったという。今回10年越しの願いが叶ったかたちだ。


植えられているのはオパールカエデや、フユボダイジュなど。
植樹は市民参加型プログラムとして行われた。

美術館までの道のりに植えられた新旧の木々。枝葉が大きく広がり小道を豊かに彩るようになる時こそ、レンゾ・ピアノが思い描いた真のランドスケープが立ち現れるのかもしれない。


ABOUT TREES展の本会場


入口には、アメリカを拠点に活動する日本人環境アーティストShinji Turner-Yamamotoによる〈upside-down hanging birch-tree〉。本展のために制作された。


展示室内には、写真、絵画、インスタレーションなど様々な作品が展示されている。





スイスの自然に溶けこむようなこの地に相応しい展覧会だ。


【ABOUT TREES】
会期:2015年10月17日〜2016年1月24日
会場:パウル・クレー・センター(スイス ベルン)
詳細:
http://www.zpk.org/de/index.html

N.A.S.A設計共同体による千葉県鋸南町の「道の駅 保田小学校」

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N.A.S.A設計共同体による千葉県鋸南町(きょなんまち)に竣工した「鋸南町都市交流施設・道の駅 保田小学校」の竣工式に行ってきました。
N.A.S.Aとは古谷誠章/NASCAを代表に、渡辺真理+木下庸子/設計組織ADH、北山恒/architecture WORKSHOP、篠原聡子/空間研究所の4者で構成されたユニット。
2014年度をもって閉校の町立保田(ほた)小学校跡地を活用した、都市交流施設のプロポーザルによって2013年に1位に選定された。
(新建築2016年1月号に掲載)

館山自動車道・鋸南保田インター出口から100メートルもない「保田小学校」。小学校の体育館然とした建物がすぐに見える。既存の小学校として備えている施設・設備・機能を生かしながら、町内・周辺・首都圏の利用者に開放し、交流客も町民も集まれる場所などの条件が求められた。

そのまま残された正門は歩行者のエントランスで、自動車用は別に設けた。

校舎1階には飲食店や物販のテナント、情報ラウンジ、管理事務所、貸しスペースなどが入り、2階には簡易宿泊施設、音楽スタジオが入る。正面2階には共同浴場、右手の体育館は市場になっている。建築家4者はそれぞれいくつかのパートを受け持ち、全体と調整しながら設計を進めた。


地産品市場 〈きょなん楽市〉は元体育館。下部の外壁2面をガラス張り、上部の外壁4面は40mmのポリカーボネートの中空板で仕上げた。(NASCA担当)


西面には竹を植え、夏の西日を遮る。

竹林の中はちょっとした遊歩道に。

当日は地元の人を招いたプレオープンということもあり、市場には既に沢山の商品が並び賑わっている。4面のハイサイドライトの他、トップライトも設けてあるのでとても明るい。

既存の鉄骨は劣化や強度をチェックされ、防錆処理と再塗装されている。強度的には殆ど問題がなく、一部補修や追加された部分に赤く差し色がされている。

かつて児童が使った備品は随所に活用されている。

市場を出ると様々な催しに利用できるイベント広場。正面には元職員室、右にトイレと共同浴場が増築されている。

職員室側の玄関はそのままに。中へ入るとカフェ、奥の授乳室やトイレへ通じる。


元職員室〈cafe 金次郎〉。(空間研究所担当)


既存の職員室の屋根に造ったデッキスペース。強度を考慮し定員280人とキャパを定めてある。浴場〈里の小湯〉は既存建物とは構造を別にしてある。
(空間研究所担当)

浴場は男女それぞれ10人ほどが利用できる広さ。


教室棟2階、南側全面は〈まちの縁側〉と呼ぶサンルームを増築。
教室棟と駐車場の間には 〈里の原っぱ〉 を整備し、芝が根付いた後子どもたちが遊べるようにし、小学校の風景を再現できる。

2階の窓からは黒い板が整然と並ぶのが見えるが後ほど。

〈まちの縁側〉の下はピロティになり、テナントがいくつか連なる。細長い建物の往来がしやすくなるような動線に。

 既存風に作られた手洗い場。


〈まちのコンシェルジュ〉。鋸南町の観光・宿泊・イベント・生活情報の提供の他、宿泊や浴場のフロントとして機能する。
architecture WORKSHOP担当)


テナントではない〈こどもひろば〉は幼児向けのスペース。壁面の立体迷路の裏が管理事務所になっており、丸窓から子どもたちの様子を伺える。architecture WORKSHOP担当)

中華料理〈3年B組〉。(ADH担当)

地元の人気中華料理店が出店。地元感そのままに演出。

物販・お土産〈快 鋸南百貨店〉。跳び箱を再利用したテーブルが見える。(NASCA担当)

元昇降口で、2階までの吹き抜けに、下駄箱、踊り場に設置されていた掲示板がそのまま残る。左の壁には剥がされた体育館の床がパッチワークのように組み上げられている。

イタリア料理〈Da Pe GONZO〉もNASCAが担当だが、ほぼテナント側のデザインと自主施工による。

〈里山食堂〉。地元の女性達が切り盛りし、おふくろの味が楽しめる。architecture WORKSHOP担当)

テーブルは学習机をリユース。

昇降口を利用した吹き抜けスペースに大テーブルも備わる。

2階に上がって〈まちの縁側〉。
縁側の長さは75m。訪れた人が自由に使えるほか、宿泊客の自炊スペースでもある。左側が既存のバルコニーがあった場所で、右に2.4mほどせり出して増築されているが、既存の建物には荷重をかけずに独立している。外から見えた黒い板は、室内側では白くなっていた。architecture WORKSHOP担当)

板は34枚の蓄熱板だった。冬場は黒い面で太陽熱を蓄え、夜間緩やかに放熱する。夏場は白い面を外に向け遮光板になるというわけだ。
この日はかなり冷え込んだが、温室のように暖かで上着を着ているとすぐに汗ばむくらい。

左の柱と一緒に見える銀色のパイプは、上部の暖かい空気を足元に循環させるリターンダクト。
咲き誇るのはブーゲンビリアで、水仙と並んで鋸南町の特産。今はここで育成されているが、春を待って1階の柱脇に植え替えられ、長大なブーゲンビリア棚にするそうだ。

簡易宿泊施設〈学びの宿〉。北側の既存廊下はほぼそのまま。元教室が客室になる。
地元の年配の方々が「自分たちが通ったときの校舎とは立替えられたが、学校が残って本当に良かった。」と口々に話していた。(ADH担当)

廊下の窓からは里山の風景。


客室は教室の面影たっぷり。
畳を敷いたベッドは共通だが、インテリアが各室少しずつ異なり、ここでは体育館にあった巨大な時計が掛かる(動いてはいない)。
客室からは縁側に連続しているので出入り出来る。

教室を半分に分け2室にしているため、後ろ側の部屋ではロッカーがそのままで、理科室にあった標本などが飾られている。

竣工式典と第二の人生を歩み始めた二宮金次郎。

N.A.S.A設計共同体。左から古谷誠章(NASCA)、渡辺真理(設計組織ADH)、篠原聡子(空間研究所)、八木佐千子(NASCA)、北山恒(architecture WORKSHOP)の各氏。

【鋸南町都市交流施設・道の駅 保田小学校】
所在地:千葉県安房郡鋸南町保田724(館山自動車道鋸南保田インター至近)
詳細:http://hotasho.jp/  
  (飲食店は比較的ラストオーダーが早いので要確認です)

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「フォスター+パートナーズ展 都市と建築のイノベーション」レポート

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六本木ヒルズの森美術館・東京シティビュー内スカイギャラリーで開催されている「フォスター+パートナーズ展 都市と建築のイノベーション」プレス内覧会に行って来ました。
Exhibition in Roppongi, Tokyo [Foster + Partners ARCHITECTURE, URBANISM, INNOVATION]

 フォスター+パートナーズは、イギリス人建築家ノーマン・フォスターによって1967年に設立。約1,500人の従業員を抱え、世界45カ国で300のプロジェクトを遂行している世界最大規模の組織設計事務所。
本展は、2009年から北米、南米、アジアなどをまわった巡回展を森美術館独自の視点で再構成したもの。代表するおよそ50のプロジェクトを模型、映像、家具、スケッチなど膨大な資料を通して、その半世紀に及ぶ設計活動を総合的に紹介する日本で初めての大規模展覧会。

 プレスツアーには、フォスター+アンドパートナーズのパートナー、トニー・三木氏(中)、パートナー兼コミュニケーション部門長のケイティ・ハリス氏(右)がアテンドした。
「Bloombergのロンドン本社ビルや、アップル新社屋など、今後完成するプロジェクトは特に見て頂きたいものです。最新情報としてはアフリカ・ルワンダにできるドローン専用空港(陸路では物資を得られない地域にドローンによって届けるためのハブ)が近い将来完成しますので、私たちの人道的な建築プロジェクトとして楽しみにしていてください」

 52階スカイギャラリー。眼下に広がる東京の絶景を背景に展示物が並ぶ。
まずアトリウムには世界的に知られるフォスター+アンドパートナーズを象徴する作品が並ぶ。香港上海銀行本店、ドイツ連邦議会新議事堂 ライヒスターク、大英博物館 グレートコート、ミヨー橋、北京空港。

 代表作品の年表「TIMELINE OF COMPLETED PROJECTS」プロジェクトの種類によって色分けされ、日本には6つのプロジェクトがある。

 プロジェクト数が断トツで多いのはやはりイギリス。


 本展は3つのセクションで構成されている。
■セクション1は「フォスター+パートナーズを支える建築思想」。
工学者・思想家リチャード・バックミンスター・フラーとフォスター氏との12年間に及ぶ交流を軸とし、共同プロジェクトや初期の作品が展示されている。フォスター+パートナーズのオフィスでは、今でもその多大な影響を受けたフラーの思想とスピリットが受け継がれているという。

 〈オートノマス・ハウス〉左、〈ウィリス・フェイバー・デュマス本社〉1975 右。その奥に〈セインズベリー視覚芸術センター〉1978。
フォスター+パートナーズ作品の中で最も人気のある建物と言われている。


 〈スタンステッド空港〉1991 手前、〈香港上海銀行〉1986 左奥、
〈ルノー配送センター〉1982 右奥。


 〈ドイツ連邦議会新議事堂、ライヒスターク〉1999。
戦争で失われたドームをガラスで再生した東西ベルリンの統一の象徴。大屋根を付けたコンペ案の模型もある。
かつて戦争でイギリスを攻撃した国の国会議事堂のリニューアルを、イギリスの建築家が担当するというヨーロッパの懐の深さを感じさせる。



 〈大英博物館、グレート・コート〉2000。


 ■セクション2「空間から環境へーフォスター+パートナーズのデザインプロセス」
エコロジー、サステイナブル、歴史、伝統、地域、国家といった各国が抱える課題に、最先端の技術で応えてきたフォスター+パートナーズの膨大なプロジェクトの中から厳選したものを展示。





 「スイス・リ本社ビル(中央)を筆頭に、"どうしてこういう形なの?” という質問を日常的に受けます。形状については10も20も理由があります。私たちが手掛けるプロジェクトには様々なスペシャリストが関わり一緒に仕事をしていますので、そのプロセスにおいて建物が発展し出来たかたちなのです。」とトニー・三木氏。


 夜になると東京の夜景を背景に、高層ビルの模型が立ち並ぶ様子が見られる。


 その国を代表する国際空港を手掛けられる設計事務所は限られてくる。
手前から〈クィーン・アリア国際空港〉2012、〈北京首都国際空港〉2008、〈メキシコシティ空港〉2014-。

 3Dプリンターを使った模型の数々。


 ■セクション3「都市と建築のイノベーション―未来のライフスタイルを発想する」


 〈西九龍文化地区〉2009 コンペ模型。


 〈ブルームバーグ ロンドン〉2015-、〈スラッセン マスタープラン〉2008 右奥、〈バタシー発電所 スカイライン〉2014- 中奥。


「伝統と未来」、「人間と環境」といった普遍的なテーマを追求し、革新的なアイデアで建築や都市をデザインしている。

 フォスター+パートナーズのフィールドは、もはや地球だけではない。ここでは近年彼らが目を向けている月や火星関連の研究が展示されている。手前は3Dプリンターでつくる生命のような構造体をもつ月面住居。

今話題のアップル新社屋〈アップル・キャンパス2〉はこの右壁面に展示されている。
敷地は700,000m2(六本木ヒルズの約6倍!)あり、敷地の70%以上が緑化、オフィスや駐車場ビルなどの屋根全体にソーラーパネルが設置され、「ソーラーパネルが設置された世界最大の事業所」になるという、サステイナブル建築に12,000人従業員が働く計画だ
※アップル関連プロジェクトは撮影禁止のため会場でご覧下さい。

 世界最大規模のフォスター+パートナーズオフィスと仕事風景。


 ノーマン・フォスターと愛用のモールトン社製の自転車。フォスターの趣味は自転車の他にも飛行機操縦、クロスカントリースキー等がある。
下のケースには〈テクノ・ノモス・テーブル〉1986 の各種パーツ

 ノモス・テーブルのパーツはラウンジカフェのディスプレーにも。同時期の香港上海銀行に通ずるデザインだ。


 〈ラウンジコーナー〉
映像、関連書籍あり。フォスター+パートナーズがデザインした家具で寛ぐことができる。毎週金曜日の19時からは映画「フォスター卿の建築術」も上映されている。


【フォスター+パートナーズ展:都市と建築のイノベーション】
会期: 2016年1月1日~2月14日
会場: 六本木ヒルズ展望台 東京シティビュー内スカイギャラリー
   (六本木ヒルズ森タワー52階)
詳細: www.mori.art.museum/contents/foster_partners/index.html



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