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佐々木龍一 + 奥村梨枝子による「米洲ギャラリー」

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佐々木龍一(佐々木設計事務所)と奥村梨枝子(ATELIER O)が手掛けた「米洲(BEISHU)」の新しいギャラリーを見学してきました。場所は台東区の二長町、御徒町の近く。

 '70年代に建てられた米洲ビルの1階。米洲は無形文化財(人間国宝)である人形師、原米洲によって明治44年に設立された雛人形や五月人形を扱う会社である。


 イーソーコ総合研究所のプロデュースで、元々4階にあったショールームを1階に移転し、新たにエントランス、ショールーム、ギャラリーの3つの複合的な機能を持つ空間としてリノベーションされた。


 近付くとファサードのガラス面にはドットの濃淡で模様が描かれている。
模様は金雲や朽木雲を現代的に再解釈したもので、昼間は柔らかく透過した光が店全体を柔らかく包み込む。

光の加減で浮かび上がる朽木雲。


 ギャラリーは全体で81m2。取材時は原米洲の特別展覧会期間中であったが、今後一般のアーティストや街に開かれた場所として使われていくそうだ。右奥のスペースが15m2ほどの常設ショールームになる。


手前は可動式の什器が置かれる"動”の空間、右奥が壁付什器が連なる"静"の空間。異なる性格を持つ2つの空間が同様のシルエットを持つ展示台でシームレスにつながる。


 ショールームスペース。
スチールの無垢板で組み合わされた展示棚は、たなびく金雲のイメージ。壁は白ではなく、黄色味のあるカラーを使っている。

 展示棚は一架数100kg。中央のものでは790kgあるため、3架共壁面内の鉄骨に支持されている。


 照明は永島和弘(CHIPS)が手掛けた。壁や天井からの拡散光で、可愛らしい表情の人形をやわらかく包み込み、全体として幻想的な広がりを演出している。



 ショールームを歩きながら、雛人形を様々な角度から眺めることができる。


 浮遊するような人形たち。



 右から佐々木龍一、奥村梨枝子、照明デザイナーの永島和弘の各氏。
「歴史ある米洲のお人形のための空間をつくるにあたり、あらためて日本文化を勉強しました。屏風絵や絵巻物の金雲の向こうに垣間見える物語に入り込むような感覚をぜひ体感しに来てください。」と佐々木さん


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岸和郎展「京都に還る_home away from home」レポート

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1月28日よりTOTOギャラリー・間で始まる岸和郎の個展「京都に還る_home away from home」のプレス内覧会に行ってきました。
ギャラリー・間では2000年以来2回目の展覧会になる。
[
WARO KISHI:京都に還る_home away from home]

 今回のテーマは「京都に還る」。
‘80年代(30代)、現代建築家を標榜していた頃、京都にとらわれず、どう京都と距離を取るかを考えていた。しかし周囲には「自分の建築は何てちっぽけなんだ」と打ちのめされるような名建築が立ち並ぶ京都。そんな中、自分では現代的と思って設計した〈日本橋の家/1992〉が、ヨーロッパの人々に「日本的だね」と褒められ愕然としたという。
それを期に「もがいてもしょうがない、京都に還ろう」(=京都を受け止め関わる)と決心した。
「この展覧会はそんな『京都』から時に逃げたり、時に利用したりしながら建築に関わり続けてきた私の現在であり、作品を展示するだけではなく、私という建築家のアクティビティの有り様全てをここに持って来ようとした。」

 3階展示室には大きな3つの島と、壁面に小さな模型とドローイングなど、過去の作品が並ぶ。
建築家であり、教育者であり続けた岸和郎。左から教鞭を執ってきた京都芸術短期大学(現京都造形芸術大学)、京都工芸繊維大学、京都大学という3つの大学内に設計した建築が並び、それぞれの大学の岸さんと縁の深い研究室が制作協力を買って出た。

 左の壁面には、京都工芸繊維大で助教も務める市川靖史によ撮り下ろされた岸建築の4K映像が流れる。
ちなみに会場には作品名も作品の解説も掲示されていないので、受付でリーフレットをいただいて、それを見ながら回ることになる。

 〈京都芸術短期大学高原校舎〉 京都府/1982年


デビュー作としてはかなり大きな建築を手掛けた。


 京都造形芸術大学 城戸崎和佐研究室、大阪工業大学 朽木研究室が担当。
校舎でのアクティビティの様子を伝える写真や、ディテールの図面などで構成されている。

 〈京都工芸繊維大学 KIT HOUSE〉 京都府/2010年
食堂や生協が入る建物。

 学内のレーザーカッターを駆使して精密な模型に仕上がっている。


 京都工芸繊維大学 木下研究室が担当。
「いつも見慣れた学食でしたが、図面を見ると中には非常に工夫された構造があることが分かり、このような架構模型を作りました。」と木下昌大さん。

 〈京都大学 北部グラウンド運動部部室棟〉 京都府/2014年
景観条例により勾配屋根であることや、屋根・壁の形式、素材、色まで限定されている。

 さらに、地下には埋蔵文化財もあるため既存建築と同じ位置、同じ深さの基礎にしつつ、床面積を広げるための工夫が見られる。


 京都大学岸研究室が担当。
スチレンボードで精密に再現されたH型鋼。

 〈日本橋の家〉 大阪府/1992
前述した「京都に還る」決心をするきっかけになった住宅。

 手描きのオリジナルの階段詳細図。


 〈下鴨の家〉 京都府/1994
近代住宅の標準化を目指し、平面計画と架構を重視し設計した。

 美しい手描きのアクソメ図。


和紙に描かれた〈和歌山の家(松が丘の家)〉  和歌山県/2002年


 中庭は京都の碁盤を模した展示。
アクリルキューブに焼き込まれた作品は、概ね京都での所在地に配置されている。
中央には京都御所を苔で表し、右奥の石を比叡山に見立て、その向こうに配置されたキューブは滋賀県の作品を表す、言わば枯山水になっている趣向だ。

 旅先の土産物でよくアクリルキューブを買い求めるそうだ。


 プラズマ切断機で精細に作られたアルミ製の模型は〈京都大学 北部グラウンド運動部部室棟〉 。


 3階展示室は最近の仕事の数々。


 空間を仕切るように吊り下がる〈テキスタイルウォール〉 は岸さんの教え子で現在はストックホルムに拠点を置くテキスタイル作家 森山茜による。
岸さんが敬愛する倉俣史朗へのオマージュとして森山さんに依頼した。

 壁面にはかつて旅した様々な風景を切り取ったポジフィルムが並ぶ。"建築家としてこのようなものを経験しながら歩んだ” という足跡だ。
昨年自身が監修した展覧会「丹下健三が見た丹下健三」を彷彿させる。

 〈京都市美術館新館計画案〉 2015
2015年のプロポーザルコンペでのプレゼンテーション模型。地下部分に増床するプロジェクト。
(※採用案は青木淳・西澤徹夫設計共同体)

 竹中工務店によって開発された〈DESKRAMA〉。〈京都市美術館新館計画案〉の図面上でタブレットを動かすと、建物内部の立体的なイメージを見ることができる装置。
ゴーグルを装着してバーチャル映像を見ることができるものがあるが “酔う” 方が多いため開発された。実際会場で自由に体験でき、地上、地下、平面、断面がどんな角度からでも見ることができる。

 奥には、東京のとあるところに設計した茶室を1/1で再現。壁にはその書院の様子が一面に貼られ、岸さんデザインの立礼卓(りゅうれいじょく)が鎮座する。
(※正面の発光部分は西日が当たっているため)


 この日は、裏千家 茶道芳心会を主宰する木村宗慎(きむら・そうしん)によってお茶が振る舞われた。
木村さんは2月14日開催のギャラリートークのゲストだ。

 2000年以降の住宅を中心としたプロジェクトが図面と共に並ぶ。


 展覧会に協力した卒業生達の作品がタブレットで閲覧できる。
岸さんから協力者達への感謝は絶えなかった。

岸和郎さん
「展覧会は私自身の展覧会であると同時に、私に関わった人達の協働の成果でもあります。」
2016年3月をもって京都大学を退官する氏の講演会が1月29日に開催されますが、これが京都大学最後の講義という位置付けだそうです。

【岸 和郎:京都に還る_home away from home】
会期:2016年1月28日 ~ 3月20日
会場:TOTOギャラリー・間


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エマニュエル・ムホーによる表参道のインテリア雑貨店「CORAZYs」

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エマニュエル・ムホーが店舗デザインを手掛けた「CORAZYs(カラジー)」の内覧会に行って来ました。
場所は青山通り沿いの国連大学近くの路地を入ったカフェやショップで賑わうエリア。

CORAZYsは、「色」が主役のホームインテリア雑貨専門店。食器・タオル・文具など、すべて"Made in Japan"の商品は約600点に及ぶ。より深く色と関わって欲しいという想いから、取り扱う商品を4色のみとしている。外観もその4色を際立たせる構成とした。

コンセプトは「図書館」。本棚のような4色の什器に、それぞれの色にカテゴライズされた商品が陳列されている。
図書館でお気に入りの一冊(物語)を探し出すように、お気に入りの雑貨に出会う。

棚に入っている本は実際の本と同じように一つ一つ装丁された本物。奥行き感を出すため、手前から淡い色、奥にいくほど濃い色とグラデーションになっている。


オレンジ=太陽(光を感じる色)


ピンク=心(気持ちを感じる色)


グリーン=自然(草木など自然を感じる色)


ブルー=海(生命を感じる色)


まったく同じ商品が異なるカラーで奥へ奥へと続いていく様子はトリックアートのよう。
この店にはレジカウンターは存在せず、商品を購入する際には添えられているカードを店員に渡すシステムをとっている。

什器と一体になっているこの椅子は、そのような商品を持つあいだの時間にも腰掛けることができる場所として用意された。





カラジー株式会社代表取締役社長の鈴木聡氏とエマニュエル・ムホー氏。
第一号店の表参道店を皮切りに、世界進出を狙うという。色を使ったデザインをお手の物とし、すでにグローバルに活躍するムホー氏とのコンビで、その日はそう遠くないかもしれない。

【CORAZYs】
東京都渋谷区神宮前 5-51-3GALERIA-artsビル1F
http://corazys.com


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河野有悟による世田谷区のギャラリー兼住宅「BEAMS」

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河野有悟 (Hugo Kohno Architect Associates) による世田谷区赤堤のギャラリー兼用の住宅「BEAMS」を見学してきました。

敷地面積64m2、建築面積49m2、延床面積121m2。木質ラーメン構造3階建て。
1階がギャラリーで、2・3階が住居になる。

建物のテーマは「集成材+スチールトラスの合成梁が構成する棲まい」。
分からなければ単なる意匠にも見える円やトラスはあえて意匠化された梁だ。

1階は施主が経営する現代アートのギャラリー。このスペースが全面開口で、できるだけ広い空間、かつ住居部へのエントランスを決して広くない間口に木造で実現するにはどうするか? ということから計画がスタート。(床の仕上げは未完)

ギャラリーの右側に住居のエントランス。基礎から一部RCの壁が立ち上がり、上層の柱の全長が少しでも短くなるように工夫してある。


エントランスからはすぐに階段で2階へ。左側一面、階段の形状に合わせた収納。


2階は低く抑えたキッチン・ダイニングから天井高を上げたリビングへシーンの切り替えをする。


合成梁。トラス状のスチール梁を、集成材の梁で上下から挟み、高剛性の大きな梁を形作る。
これにより柱が細くても耐力壁が不要なラーメン構造が可能になり、狭い間口を最大限に活用することができた。

柱を細くしたことで梁高が増すが、スチールトラスと合成する事で、抜けのある圧迫感のない梁にできる。
バルコニーの手摺部分には汎用のパイプを輪切りにしたものを利用。接点側で見れば「X」字で、トラスになっているという訳だ。

振り返ると3階のスラブに開口が設けてある。


奥の水回りでは欄間のような扱いにしている。これらも全て集成材との合成梁だ。


シンプルにし過ぎずに、目線の留まる部分が散りばめられている。

梁高があるのでキッチンには床下収納を備えることができる。

3階へ上がり振り返るとバルコニーへ連続する階段が見える。


3階寝室。左の壁に接してベッドが置かれる予定で、上に収納、右側には大きな書棚やデスクが造り付けられている。
左奥に縦型ルーバーがあるが、カーテンが納まるためのちょっとした配慮。その裏にはバルコニーへの出入り口がある。

そしてにデスクに切り込みが入っているのはカーテンをきっちり閉めるため。河野さんは窓際にカーテンレールを設えることを勧めたが、施主はバルコニーの出入り口までを1枚のカーテンで覆うことを望んだためだ。


寝室の反対側にももう一つデスクが。上部には「欄間」越しに収納が見える。


合成梁は建物全体で9本あり、ここからが最も多く見える。今回のアイデアにより街路樹まで望める抜けが可能になった。


河野有悟さん。「合成梁は要件をクリアするために取り入れたアイデアでしたが、梁位置の自由度が高くなることが分かったので、空間を決めてから梁の位置を決定することができました。またトラスの形状はお施主さんがアート好きなこともあり、特徴的な構造を様々な形状で意匠可し、建物の顔になるようにしました。」


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中佐昭夫による相模原の集合住宅「TRAYS」

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中佐昭夫/Naf Architect & Designによる相模原市の集合住宅「TRAYS」の内覧会に行ってきました。小田急相模原駅より徒歩5分程の場所。

 敷地面積321m2、建築面積215m2、延床面積396m2。木造2階建て。12住戸の共同住宅。


 集合住宅では通常、四角いトンネル状の空間が縦横に連続するイメージだが、ここでは上部が開いた箱=トレー状の空間が連なる。


 人と比べると2階建てにしては随分高さがあると分かるが、高さ10mの2階建てになっている。
1・2階共に、内部はロフトを持つ二層になっているためだ。

 木造でありながら、外階段がRCで出来ている。


 階段下を覗くと、階段と建物は途中から接していないことが分かった。この階段は基礎が大きく立ち上がったもの、ということだ。


 1階共用廊下。


 101号室。入って見上げるとすぐにロフト空間が見え、2階かと見間違う。27m2+ロフト13m2。(賃料73,000円)


 居室内から “トレー” という印象は受けない。


 振り返るといくつかの開口が切り抜かれた仕切り板のような壁。


中佐さんのコンセプトスケッチ。上部が開いたトレー状の空間を仕切り板で区切ったような構成だ。

 ロフトは、広い。
8帖ほどもあるので使い道が広がるだろう。


 バルコニーは外壁を高めにし、周囲からの視線が入りにくい。


 106号室。こちらは玄関から直ぐにロフトへの階段が現れる。
しかし、ロフト(天高1.4m)であるはずなのに男性が立っている。これは渡りを含め、2段下の「階段」に立っているためだ。

 一度ロフトの手前でほぼ立てる状態が得られる為、どうしても前屈みで下に目線がいくロフトをこのように、立ったまま引きで一望できる仕掛け。


また多くの場合、ロフトへのアプローチは隅に計画されるが、ここでは中央に置き、広いロフト内の動線を短くすることで「ロフトを使おう」という気にさせてくれる。耐力壁が間仕切りの役割もしている。


106号室は、前述の101号室の1.5倍、42m2+ロフト19m2。(賃料:84,000円)「使えるロフト」のお陰で事実上60m2の住戸は、二人暮らしにも十分対応できる。


 賃貸では、どのようにしても上階の入居が先に決まるため、中佐さんは1階をどうするかを先に考えたそうだ。

 206号室。2階はバルコニー側に道路斜線が現れるが、トップライトを設けそのデメリットが緩和されている。(賃料:86,000円)

独特の袖壁により自室の前にプライベート感が生まれ、ポーチと呼んでいる。
このポーチ、住戸、バルコニーまでを一つのトレーにまとめた空間というわけだ。



 中佐昭夫さん。「お施主さんは初め、『RC造3階建て』を望まれましたが、合わない諸条件や窮屈な3階建てにするより、豊かで付加価値のある木造2階建てを提案しました。プライバシーの確保、使い勝手のいいロフトにより空間を最大限に活用してもらえると思います。」


担当  :中佐昭夫、天野徹平/ナフ・アーキテクト&デザイン
構造設計:堀江聡/堀江建築設計事務所
設備設計:遠藤和弘、杉山容子/EOS plus
賃貸管理:プリズミック
施工  :ジェイホームズ

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田井勝馬による「鎌倉腰越の家」

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田井勝馬/田井勝馬建築設計工房による「鎌倉腰越の家」の内覧会に行ってきました。

 敷地面積298m2、延床面積93m2、木造、地上2階建。
新興分譲住宅地で周囲にはハウスメーカーの家が建ち並ぶ。「く」の字型の不正形な敷地であったため注文住宅に決め、田井さんに依頼が来たという。

 若いご夫婦と子供が住まう、ワンボックスの住宅。
片瀬山と湘南海岸のエリアであることから、海と山の眺望を両方取り入れることが求められた。

 玄関アプローチ。キャンティレバーで大きくせり出したボリュームが出迎える。


 外観からはシンプルな箱型の建物に思えたが、見上げると "内部はどうなっているのだろう” と思わせる壁面とガラス面の複雑な構成が現れた。


 玄関を開けると室内から光が溢れ出してきた。
左右に収納が配され、右手はガラス越しに半階スキップしたフロアが覗く。

なんと収納が一つ可動し床下収納が現れた。


 玄関から右に折れると、左手にキッチン。右手のスキップフロアの下には収納が連続し、ニッチも設けられてるため使い勝手が増す。


 ダイニング・キッチンは二層吹き抜けで、外部のテラスまで連続する開放的な空間。
奥は主寝室。

 キッチンは建物の中心に配置され、この場所からすべてが見渡せる司令塔のような場所である。


 キッチンの右横から、主寝室裏側の水回りへアクセスする。
奥に見える緑は裏庭の植栽だ。

 6段上がりリビングへ。上に見える梁はH型鋼。

 リビングの奥から。天井と床は同じアッシュ材で連続性を持たせ、ひとつの殻のなかに用途ごとのスペースが緩やかに繫がっているのが分かる。
2軸の間接照明が見えるが、夜には全く異なる情景をつくり出すだろう。

 玄関アプローチから見えたキャンティレバーの部分はバルコニーだった。屋根も壁も持っているため、半屋内的な空間だ。


 写真では分かりにくいが、遠景に海が見える位置に開口を設けてある。


 2階へ。


 窓越しに力強い岩肌が覗き借景として取り入れている。


 2階に上がると左に大きな机が作り付けられたスタディスペース。奥に子供室がある。


 子供室の上部はガラスがはめ込まれているため、戸を開けると連続した空間の一部になる。


 子供室のベッドは両側からアクセスできるが、将来的には仕切って2部屋にできる。
バルコニーも両側からアクセスできるので、ベッドも含め回遊型の動線が生まれ、子どもが自由に活動出来る。

スタディスペースを振返る


 吹き抜けを見下ろす。異なるレベルで多様な居場所が生まれているが、どこにいても繫がっているという感覚が途切ることがない。
また各所に散りばめられた抜けは、床面積以上の感覚的な広さをもたらしてくれる。

 明るくオープンな施主だそうで、この開放的なテラスをも活かした暮らしが容易に想像できる。

田井勝馬さん。「規模(面積)としては大きな住宅ではありませんでしたが、鎌倉らしいロケーションを意識すること、家族の成長と共に家も成長変化できる家にすることを大切に設計しました。」

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松島潤平による会場構成 シャルル・フレジェ展「YÔKAÏNOSHIMA」

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2月19日より銀座メゾンエルメス フォーラムで開催の、フランスの写真家であるシャルル・フレジェの展覧会「YÔKAÏNOSHIMA」のレセプションに行ってきました。会場構成を松島潤平が担当した。
[
YÔKAÏNOSHIMA by Charles Fréger, Ginza Maison HERMÈS Le Forum]

フレジェは、世界各地の装束をシリーズで撮影し、それぞれの土地に潜む驚くべき多様な人間の営みを、人類学的、民俗学的にも興味深いポートレートとして収め続けている。

“Babugeri” Bansko(Blugaria), WILDER MANN series, 2010-2011 ©Charles Fréger
WILDER MANN seriesではヨーロッパ各地の伝統的な祝祭の儀式に登場する「獣人(ワイルドマン)」の姿を収めている。熊や山羊、悪魔や擬人的なキャラクターに仮装した、奇抜で恐ろしくも滑稽なワイルドマンたちは、自然と人間の営みから生まれた原始の物語をよみがえらる。

“Namahage" Ashizawa, Oga , Akita prefecture (Japan), YÔKAÏNOSHIMA series, 2013-2015 ©Charles Fréger
ヨーロッパ全土に残る冬の祝祭には、日本の歳神の文化とも共通点が見られることから、フレジェは日本を訪れて新たな展開を試みまた。
日本列島58ヶ所の取材から成り立つ本シリーズは、「YÔKAÏNOSHIMA」と名づけられ、田畑や山々、森林、海辺から現れた、日本固有の仮面神や鬼たちの姿を紹介するもの。日本人の恐怖や畏怖を象徴しながらも、私たちの生活の傍らに潜み、時に親しみを感じさせる存在である妖怪。そのルーツともいえる神や鬼たちの姿を、フレジェは写真に収めた。

 最初のスペースでは、起伏の多い日本のランドスケープを凝縮したような構成。
「農耕」、「島」、「海」、「洞窟」などのシーンが表現されている。

 これら妖怪が現れるのは整地されたような場所ではなく、凹凸のある荒々しい大地。それを緩衝用のスポンジで表現した。


 フラットで “綺麗に” 展示されることが多いフレジェの作品を、思い切って前後上下に抑揚をつけて展示した。



会場は2m程の高低差で実際に勾配がついている。山の中で妖怪に出会う趣向だ。


 コリドールの展示スペースを抜け、「Winter」セクションでは日本の歳神が並ぶ。
冬は夜が長く寒く厳しい季節、そのような時期春を待ちわびるように、我々日本人は様々な神や鬼たちを敬い畏れてきた。

 春の訪れを知らせる大地の芽吹きや蠢きを立体的なボックスで表現した。

 松島潤平さんと、シャルル・フレジェさん。
上の神様が何となくシャルルさんに似ているのは気のせいだろうか。
「初めのラフイメージをシャルルさんにお見せし、大変気に入っていただきました。その後は『完全に任せる』と言って頂き自由にデザインすることができました。」と松島さん

「YÔKAÏNOSHIMA」 シャルル・フレジェ展
会期:2016年2月19日 - 5月15日
会場:銀座メゾンエルメス フォーラム(入場無料)

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「神奈川県立近代美術館(本館・新館・附属屋)と周辺環境の一体的な保存に関する要望書」詳細

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2月5日、DOCOMOMO Japanより、神奈川県知事・鶴岡八幡宮宮司へ「神奈川県立近代美術館(本館・新館・附属屋)と周辺環境の一体的な保存に関する要望書」が提出されました。
2015年9月現在、保存が決定しているのは本館のみです。

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DOCOMOMO Japan(ドコモモ・ジャパン)は、20 世紀の建築と環境遺産の価値を認め、その保存を提唱することを目的の一つとする、国際的な非政府組織DOCOMOMO(Documentation and Conservation of buildings, sites and neighborhoods of Modern Movement=モダン・ムーブメントに関わる建物と環境形成の記録調査および保存のための組織)の日本支部です。
このたび、神奈川県立近代美術館の閉館に際し、「神奈川県立近代美術館(本館・新館・附属屋)と周辺環境の一体的な保存に関する要望書」の提出いたしました。その内容は以下の通りです。

1.保存活用が決定している「本館」ひとつを単体として残すのではなく、周辺も含めた一体的な環境の全体性を、良好な形で継続できる方法を検討していただきたいこと。

2.そのことを実現する上で欠かすことのできない重要な価値を持つものとして、取り壊しの方針が出されている「新館」と「附属屋」についても、その保存活用の可能性について、再度検討していただきたいこと。


DOCOMOMO Japan

代表 松隈 洋
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要望書原文




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「新しい建築の楽しさ2015:後期展」レポート

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2月27日まで東京 京橋のAGC studioで開催の「新しい建築の楽しさ2015:後期展」に行ってきました。
畝森泰行、青木弘司、吉村靖孝、弥田俊男、中山英之 + Ido Avissar、永山祐子の6組の若手建築家による、進行中や計画中の建築模型が展示されている。

前期展では浜田晶則、中川エリカ、ツバメアーキテクツ、細海拓也、萬代基介、仲建築設計スタジオが展示)

 会場構成は山田紗子が担当。企画は中﨑隆司。
またこの日開催されたデザインフォーラムも聴講してきました。

 〈須賀川市 市民交流センター〉 畝森泰行
福島県須賀川市。被災地の市民活動の復興を目指す市民交流施設。

 図書館、公民館、キッズパークなど様々な機能が複合した賑わいの拠点。外周部を低く圧迫感を抑え、床をずらしながら積層させ多数のテラスをつくり、テラスで活動する人々の姿がまちに現れることで、まち全体が活気づくことを目指す。


畝森泰行さん
「行政が中心になるのではなく、様々な活動をしようとする市民がサポーター的に参加し、チームを作りながら運営する新しいかたちの市民センターになってもらえたらと思います。」

 〈福増幼稚園〉 吉村靖孝
千葉県市原市の幼稚園の増床計画。

 既製の鉄骨テント倉庫を使って外皮をつくり、その内側に木造2階建ての空間をつくる。2階の壁は折れ曲がりながら内外をつくり出す。また補強のための火打梁が掛けられているが、子どもにとっては少し意味の分からない物となり、物事を考えるきっかけになることも意図した。


 〈小淵沢のホール〉 永山祐子(デザインアーキテクト)+竹中工務店(設計施工)
山梨県北杜市の企業のイベント・研修施設

 700人収容のイベントホールを主に、多目的スペース、研修室、カフェなど複数のプログラムを遊歩道状の廊下で繋ぎながら、外部へ視線が抜けるよう工夫し、内と外が入り混じったような空間となっている。


永山祐子さん
「建物の周囲にはエリアによって彩りの違う植物を多数植え、春になるとピンクになるエリア、夏には青や紫、秋には赤や黄金色といった具合に敷地全体がカラーパレットのようになります。」

 〈春日大社宝物殿 増改築〉 弥田俊男
奈良市の春日大社境内の美術館

 既存の宝物殿は’73年に谷口吉郎の設計によって建てられた。棟どうしの間の中庭部分に既存屋根から連続するように片流れの屋根を掛け、既存の佇まいを継承しつつ、穏やかに境内に開かれ連続する「だ太鼓」の展示空間を新設。屋根はスパン18mのスチール製門型フレーム4本で支持する。


弥田俊男さん
「世界遺産の境内なので規制が厳しく、 “人工物” が表に出てはいけないことから、ファサードにガラス面を直接あしらうことができず、木製のルーバーを一層設けています。今まで担当した美術館の経験を活かしながらも、今回異なるのは神の領域での美術館ということを意識しました。」



 〈Project M〉青木弘司
北海道伊達市のパン工房・ 就労支援福祉施設

 生産プロセスが見える工場というプログラムを、建築の成り立ちに翻訳すべく、壁の裏、天井の懐などを可視化し、様々な部材が建築の成り立ちに寄与していることを想像させる。モノが主役になる工場であるこの計画では、人間中心主義的な美学ではなく、ヒト・モノ全ての関係性の総体として建築を捉える試み。


 〈Printmaking Studio/FMC〉 中山英之 + Ido Avissar / LIST
ベルギー カステルレーのアーティスト・イン・レジデンスのスタジオ増築

 建物の塊にケーキを切り分けるように内部空間を考慮しながら形を決めていった。切り口に切妻型が現れるので、この切り口を煉瓦造りにすることで、周辺の田園地帯に建つ民家のシルエットを思わせる様々なプロポーションが並ぶ。


 山田紗子による会場構成は2015前期展の記事に詳しいです。

【新しい建築の楽しさ2015】
前期:2015年11月4日 ~ 12月25日
後期:2016年1月5日 ~ 2月27日
会場:AGC studio(東京都中央区京橋2-5-18 京橋創生館)

詳細:www.agcstudio.jp/project/pdf/project15th.pdf
【関連記事】
・新しい建築の楽しさ 2014 前期展後期展
・新しい建築の楽しさ 2013 前期展後期展

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蘆田暢人による渋谷区の「折板屋根の家」

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蘆田暢人(蘆田暢人建築設計事務所)による渋谷区の「折板屋根の家」の内覧会に行ってきました。

敷地面積124m2、建築面積85m2、延床面積430m2。RC造、地下1階、地上5階建て。
1階にガレージとエントランス、地下と2階をテナント、3~5階が家族4人のための住居。

 外観は緑に馴染むよう、着色した防水塗料を塗布。大きく開いた4階と、5階の折板屋根が目を引く。
徐々に上階に上がりながら紹介。

 1階接道部分には奥からテナント出入り口、ガレージ、住居用エントランスと並ぶ。


 エントランス。様々な表情の素材がコントラストを作っている。


 エントランスはガラス越しの階段室を囲むようにL字型。
左の壁はスタッコ仕上げ。

 階段室は地下から5階まで6層を繋ぐ(2階はテナントのため接続していない)。
筆者の背後にはエレベーターも備わる。

 3階子供室。二人のお子さんはまだ小さく「将来的に壁で二部屋に仕切ることも可能」という子供室が多いが、ここでは初めから間仕切りを据え付けてある。


 主寝室。姿見にもなる引戸を開けると大容量のウォークインクローゼットが現れた。
壁は子供室共に調湿材を左官仕上げ。

 浴室。


 4階LDK。2面の大開口が街と向かい合う。恵比寿でも特に緑の多いこのエリアを思い切り借景として利用。


 天井から床に延びるワイヤーは外付けブラインド用で、ドイツのヴァレーマを選んだ。
引き渡しに訪れた施主のお子さんが、ここでの生活を待ちきれないようだった。

 開口部は5階の床を支えるために柱を1本立てた。無柱にすることも考えたが、その為だけに梁が太くなったり、構造に無理が出たり、コストが上がるのは良しとしなかった。「5階をコンクリートで作りきることにこだわった。」と蘆田さん


 開口は両サイドからスチールサッシュの引戸が二枚ずつ。干渉部の納まりはこのように。


 インテリアに目を移すと、天井はスギ、床にチーク。周囲は黒とシルバーで引き締められている。
ソファーはカッシーナ。

 キッチンから。この日はあいにくの曇天だったが、渋谷や新宿、青山方面の景色を眺めることができる。


 キッチンのベースは、エントランスにも見られたスタッコ仕上げ。


 5階へ。塔屋かと思って上がっていくと、、、


 しっかりと居室になっていた。当初は塔屋の予定だったが、客間や予備室にできるよう居室として求められた。
そのため平均2.1mの天井高を取れるよう北西方向に屋根が高くなっていった。

 日影規制の斜線が下がっていく側は倉庫にして平均値の妨げにならないようにした。


 そしてバルコニーから見るとこのように。日影規制と法定最低天井高という二つのパラメーターを満たすべく、シミュレーションを繰り返した結果生まれたシンボリックな折板屋根。


 綺麗に仕上げられたエッジ。サッシュの納まりには苦労が伺える。


 夕暮れ、室内の明かりが目立ち始めるとまた違った形態が浮かび上がってきた。


ちなみに2階テナント部分は全面に緑が見える最高のロケーションだ。

「都心でありながら、緑豊かで広い空と都市の風景を捕まえるよう大開口を設けました。また街の雰囲気を無視したような外観ではなく、適度な表情を持たせた住居のあり方を提案しました。」と蘆田暢人さん。

建築:蘆田暢人建築設計事務所
構造:村田龍馬設計所
設備:EOSplus
施工:栄港建設

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5組の建築家が参加したコンペ「Bicycle street Design competition Aoyama」公開審査

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千葉学、手塚貴晴、谷尻誠、ツバメアーキテクツ、山口一紀らが参加の指名コンペ「Bicycle street Design competition Toyama 2015」(BDA)の公開審査会に行ってきました。
東京・青山は2009年に「自転車に優しい街」を宣言。2012年に青山に相応しい駐輪スペースのアイデアを公募によるコンペを実施してきたが、4回目の今年は上記建築家5組を招聘し指名コンペのかたちを取った。
対象エリア・テーマは、「青山通り(青山1丁目から外苑前まで)と周辺の区立公園を「自転車に優しい街」にふさわしい環境にするにはどうすればいいか。駐輪ラックのデザインも併せて提案。」

 会場は南青山にあるシマノが運営する「ライフ・クリエーション・スペース OVE(オーブ)」


 審査委員4名、右から、宮内忍(八重洲出版 チクリッシモ編集長/審査委員長)、松下計(東京芸術大学教授/グラフィックデザイナー)、佐藤博史(港区赤坂総合支所 協働推進課長)、坂本力氏(青山商店会連合会 理事長)の各氏。

クジで決めたという発表順に各案を紹介
 手塚貴晴さん(手塚建築研究所)
この日手塚さんはインフルエンザでSkypeからプレゼンテーションを行った。
学生の頃自転車部にも所属していた自転車好き。車道の左側で車に2度巻き込まれる事故を経験しているという。

 道路の端を時速5km以下の低速レーンにし、子どもなどが安全に自転車で走れるようにし、中央分離帯を使って時速30km程度の高速自転車レーンにする。
そして歩道側には駐輪禁止にして、中央分離帯側に立体的な駐輪場を設ける。

 自転車の種類によって様々なタイヤ幅が問題になるが、、、


 板に何種類かのタイヤサイズに合わせた切り込みを入れた自転車ラックを提案。


 フィンランドの設計事務所OOPEAA(オーピエ)に在籍する山口一紀さん。
フィンランドやデンマークの自転車事情などのリサーチから紹介。

 街中でよく見掛ける “単管バリケード”。エリアを仕切ったり、交通整理にも使われるこれに注目。


 都心では「○○専用」といった常設的なゾーニングは難しいと考え、単管バリケードに駐輪ラックの機能を持たせながら、両方の機能を持たせ、フレキシブルに対応させるというアイデア。


 これによりイベント等の際、自転車レーンを作ったり、駐輪場としてその都度活躍できる


 千葉元生さん、山道拓人さん、+西川日満里さん(ツバメアーキテクツ)
対象エリアのフィールドワークにより平日251台の路上駐輪自転車を確認。

 対象エリアの歩道橋下、交通インフラの脇、店舗等の軒先、公開空地などを活用し駐輪場を設置。


 自転車のみならず、ベビーカーや車椅子なども鑑みたアイデア。


 さらに運営組織をつくり、官・民・スペースの持ち主らとコストを負担し合い、利用料や広告料などを得ながら持続可能な事業とする。


 【優秀賞】(次点)の谷尻誠さん(サポーズデザインオフィス)
以前からダウンヒルが大好きで、自転車を続けるためにフリーランスになったとか。
「こんなのがあったらいいな、というちょっと夢のようででありながら、不可能ではないギリギリの提案になりますが。」と前置きしながら、、

 平面的ではなく、立体的な思考で街の機能・可能性を広げる。
歩行者は野山を散策するように、目線の高さがの変わりながら街を楽しむ。立体にすることで生まれた高架下を駐輪スペースに。

 目的の場所へ移動するだけの青山通りに溜まり場が生まれるれ、人・自転車・街が一体となる。


 そして自転車と人との距離感を縮めることができるラック。

 【最優秀賞】の千葉学さん(千葉学建築計画事務所)
自称 “バカ” が付くほどの自転車好きという千葉さん。本コンペ発起人の一人であり、1回目からの審査員である氏は4年間温めてきたアイデアを披露。

 左端を自転車レーンにする試みはあるが、バス停、タクシーの乗降、荷物の積み卸しなど障害が多い。


 手塚さんも提案した、中央分離帯を自転車専用道にする「バイシクルハイウェイ」。



広くは都心に繋がる幹線道路に設け、都市を自転車で走る楽しさを象徴する。

 新たに駐輪場を設置するのは難しいので、既存の設備を有効活用する「リーフラック」。


 パイプ型のガードレールに巻き付ける。


 素材はカーボンで、弾力性があり、様々なタイヤサイズに対応でき、ホイールを傷つけにくい。ボルトで簡単に取り付けられる。
後輪保持には、地面にゴム製の凹みを設置する。


 審査委員からは「非常に説得力があり、現実的なアイデア。かつ都市の新しい姿を描いている。」といった講評が相次ぎ、満場一致での最優秀賞だった。

谷尻さん設計の “Onomichi U2” に千葉さんも行ったことがあるそうで、自転車談義が尽きない二人。
「自転車環境の整備が、都市をサイクリストにとってだけでなく、誰にとっても住みやすく、楽しく、生き生きとしたものになって欲しい。」千葉さん


(※紹介した全ての作品は、出品者がその知的財産権を保有しており無断で模倣することはできません)
[Each designer retain the intellectual property rights in all the works introduced here. Reproduction or imitation of these works without written permission is strictly prohibited.]

【第4回 BDA】

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エマニュエル・ムホー会場構成の「WOOD FURNITURE JAPAN AWARD 2016」

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3月4日と5日の2日間のみ開催される「WOOD FURNITURE JAPAN AWARD 2016」展に行ってきました。会場は東京・表参道のスパイラルホール。

WOOD FURNITURE JAPAN AWARDは森林資源の循環利用への貢献と日本の木製家具の魅力を国内外にアピールすることを目的とするアワードとして、林野庁補助事業として実施。本展は2016年1月にパリで開催された展示の凱旋展である。

スパイラル1階のエレベーター前には、パリ展でもアイキャッチとなっていたという様々な樹種の文字を使ったモビール。

会場に入ると鮮やかな色彩が一気に目に飛び込んでくる。ヨーロッパ展示と同じく会場構成はエマニュエル・ムホー氏。コンセプトは「bunshi(分枝)」。色とりどりの小枝たちは様々な樹種の木々を表現しており、一つひとつは小さいオブジェのようだが、集まると森のように包み込む空間を作り出す。デザイナーや職人と出会い、それぞれの道へと枝分かれしながら、新しい姿へとかたちを変えていくというイメージも表現されている。2万個の小枝が作り出す圧巻の空間。

森の中はS字のトンネルになっており、応募作品の家具が並ぶ。トンネルは奥に行くにつれ黄色からピンク、緑、青へとグラデーションで変化する。


展示されているのは、木材、技術、デザインの3つのポイントで審査員によって選ばれた日本の木製家具20点。公募には34のメーカーから61点の応募があったという。審査員は各分野で活躍する面々。小泉誠氏(家具デザイナー)、谷尻誠氏(建築家)、エマニュエル・ムホー氏(建築家・デザイナー)、山田遊氏(バイヤー・監修者)、木田隆子氏(『ELLE DECOR』ブランドディレクター)。合計6つの賞が贈られる。※受賞した家具は展示会場にてご覧下さい


会場奥からエントランス方向を振返る。


アワードのもう一つの部門として実施されているのは、これからの家具のための「これからのデザイナー」と「デザインを求めるメーカー」を応援するマッチング部門。今回そのマッチングから生まれた2点の試作を見ることができる。
手前は⾶騨産業株式会社と貝山伊文紀氏による「Kinoe」。材料としては無価値と考えられていた枝を家具に用いるという実験的な取組み。奥は木村木品製作所と亀井隆昭氏による「Ringo」。りんごの木とひばを使用したりんごのスツール。

若手フランス人木工職人による家具のコーナーも。
左二つは一本の木からの削りだしで出来ている。一番右は、素材にアメリカのクルミ、金箔、ラテックスを用い、ポンプで空気を送りこくむと膨らむ。

壁に貼ってあるキャプションもbunshi(分枝)。





【WOOD FURNITURE JAPAN AWARD 2016】
会場 スパイラルホール(スパイラル3F、東京都港区南青山5-6-23)
日時 2016年3月4日(金)11:00-18:30
   5日(土)11:00-18:00



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「木下昌大展 最適化する建築」 レポート

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KYOTO Design Lab 東京ギャラリーで開催中の「木下昌大展 最適化する建築」とギャラリートークに行って来ました。

「"最適化する建築"とは、建築が内包する空間とその建築を取り巻く環境を、人間が活動するために最適な状態にかえる行為の過程全体、あるいは一部のこと。また、そのような行為によって作られた構造物そのものを指す−−−木下昌大」(展覧会概要より抜粋)

本展覧会は、「最適化する建築」を求めた結果実現した木下さんのプロジェクト6点と、京都工芸繊維大学の木下研究室で学んだ学生の卒業制作のうち3点が展示されている。木下さんにとっては初の個展でもある。

  
 9つのプロジェクトには、それぞれに異なる与件があり、その与件から導かれた姿がある。与件がどのように「建築」へと昇華されていったのか、「建築」がどのようにその内外の環境を最適化しているのかという点が見どころだ。

  
ファクタープロット (C) KINO architects
最適化のプロセス。4つの象限に与件となる要素を収集・プロットし、要素を抽出。プロジェクトごとに重要な項目を強調した上で、要素から原型を生成し、型を与件にあわせて変形する。

  
〈カナエル神奈川西支店〉 2015年
LPガス会社のショールーム&オフィス
内覧会レポート>>

  
〈AKASAKA BRICK RESIDENCE〉 2014年
内覧会レポート>>

  
〈一橋大学空手道場〉 2012年

  
〈JFEケミカル・ケミカル研究所〉 2009年
木下さんのデビュー作

9枚の吊り下げ展示のうち手前3枚が学生の卒業制作展示。木下さんは2014年より京都工芸繊維大学の助教を務めており、今回初めて教え子が卒業する。
「学生という媒体を通して出てきたものは、ある意味ノイズが取り払われていてエッセンスが凝縮されています。僕の作品と並列に展示してみても良いと思える近さがありました。」と木下さん。

内藤佑〈KURASHIKI HUBー倉式駅前再開発による観光促進〉
獅子島啓太〈架ける建築ー木密地域再生計画〉
額田奈菜子〈afterschool townscapeー放課後をつなぐ街中立体公園〉

 展示の紙は、映像コーナーとの仕切りも兼ねている。


実際の空間に近い体験をしてもらうため、視界から映像の端が入らないくらい、あえて映像と椅子の距離は短くしてある。


会場は基本的にこれ位の薄暗さ。映像の光の強さや色味によって、展示物に様々な陰影が作られていく。


ギャラリートーク「それでも建築をつくる。」の様子。
登壇者は同じ年代の建築家3名と建築に関わる編集者2名。左から山崎泰寛(KYOTO Design Lab)、外山暁啓(KJ編集長)、菅原大輔(SUGAWARADAISUKE)、山﨑健太郎(山﨑健太郎デザインワークショップ)、木下昌大(KINO architects)の各氏。

「建築は、建てても永遠に使われるものではないと認識してしまった僕らの世代ですが、それでも建築はなお、かなり具体的な力(影響力)を持っていると言えると思うし、そう信じたい。」と木下昌大さん。

【木下昌大展 最適化する建築】
日程 :2016年2月27日(土)〜3月27日(日)
休廊 :月(3月21日をのぞく)・火
会場: 京都工芸繊維大学 KYOTO Design Lab 東京ギャラリー
住所:東京都千代田区外神田6丁目11-14 アーツ千代田3331, 203号室
詳細:京都工芸繊維大学KYOTO Design Lab

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MoMAで開催中の「A Japanese Constellation: Toyo Ito, SANAA, and Beyond」

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3月13日より、ニューヨーク近代美術館(MoMA)で始まった日本の建築家にフォーカスした展覧会「A Japanese Constellation: Toyo Ito, SANAA, and Beyond」のレポートが、japan-architects.comの姉妹サイトであるnewyork-architects.com担当のジョン・ヒル(John Hill)より届きましたので日本語にしてお届けします。
・・・・・
紹介されている建築家は、伊東豊雄、SANAA(妹島和世+西沢立衛)と、藤本壮介、平田晃久、石上純也ら。本展では、日本の建築家のあいだにある師弟関係や共同などの独特の関係性が、世界でも評価される建築を生み出す土壌となっているという考えをベースに、90年代以降の日本の現代建築の革新を紐解く。

模型、ドローイング、写真など40点以上が展示されている。展示されている膨大な模型の中からいくつか紹介したい。


 伊東豊雄、SANAA、藤本壮介、平田晃久、石上純也それぞれのエリアを吊されたスクリム布が分けている。


布に投影された作品が淡いため、模型に焦点が合うようになっている。

本展の主役は伊東豊雄。「今回展示されているSANAAをはじめとする建築家たちは皆、彼の建築に対するアプローチから影響を受けています。」とキュレーターのペドロ・ガダーニョ氏。
〈多摩美術大学図書館 2004-2007/伊東豊雄建築設計事務所〉

広範囲にわたり、伊東氏が生み出してきた来た多様な建築を展示している。
〈瞑想の森 市営斎場 2004-2006/伊東豊雄建築設計事務所〉

〈台中メトロポリタンオペラハウス 2005-/伊東豊雄建築設計事務所〉

〈金沢21世紀美術館 1999-2004/SANAA〉

SANAA、妹島和世、西沢立衛、それぞれの作品がフィーチャーされているが、やはりSANAAとしてのプロジェクトがメインに展示されている。
〈グレイス・ファームズ 2012-2015/SANAA〉

大型の模型も展示されており、中をのぞいてスーパーミニマル建築の空間を感じることが出来る。
ツォルフェラインスクールドイツ2003-2006/SANAA〉

〈武蔵野美術大学美術館・図書館 2007-2010/藤本壮介〉

〈サーペンタイン・ギャラリー・パヴィリオン 2013/藤本壮介〉

〈神奈川工科大学KAIT工房 2005-2008/石上純也〉

〈Tree-ness House, Tokyo, 2009-/平田晃久〉

【A Japanese Constellation: Toyo Ito, SANAA, and Beyond】
会期:2016年3月13日(日)~7月4日(月)
会場:ニューヨーク近代美術館

関連記事

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納谷建築設計事務所による中野の集合住宅「PROTO passo」

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納谷建築設計事務所が設計を手掛けた集合住宅「PROTO passo(プロトパッソ)」の内覧会に行って来ました。場所は西武新宿線新井薬師駅から5分程の場所。
敷地面積144m2、建築面積101m2、延床面積397m2。RC造、地上4階。全8住戸。

 敷地間口は約6m、奥にいくに連れ約9mまで台形状に広がっており、且つ斜めに接道している周囲の建物は敷地に対してファサード面を敷地のどの角度を基準にするかで様々に向いているのが分かる。

建物の名称にあるパッソとはイタリア語で「ステップ、足音」という意味。大階段で2階まで上がり、その先の吹き抜け階段がさらに4階まで続いている。「奥行きのある細長い敷地であるため、前面道路から連続してヴォイドに導かれ、ヴォイドが自由に空間を導いていきます」と納谷学さん。
街と建物が連続しているようなイメージだ。
PROTO PASSOは納谷建築設計事務所が手掛けてきた集合住宅PROTOシリーズの3棟目に当たり、すべて近隣に位置している。

大階段の見返し。
デザインされた郵便受けがアクセントになっている。

階段の左右にそれぞれ部屋がある。


201号室へ。
見上げると吹き抜け状の共有部は半屋外空間だ。

201号室。玄関を入って直ぐの開口からは大階段の先まで見通すことができる。左側に見えるのはLDK。
壁はOSBに半透明の白を塗装し仕上げられている。壁の仕上げは各住戸で変えている。

202号室の壁はシナ合板。
目の前には小学校があり、グラウンドの木々が借景となっている。

3階は吹き抜けの階段室に浮かぶような渡り廊下を挟んで、筆者背後の301号室と、302・303号室が向かい合う。

301号室は4階とのメゾネットタイプ。壁はOSBにクリア塗装。

上階はダイニングキッチンとバルコニー。

302号室。杉板型枠の木目を現したコンクリートの界壁で303号室と隔てられている。
入居者は可動式の収納を自由にレイアウトできる。

ダイニングと寝室を分ける間仕切りとして使うことも出来るし、壁に寄せてワンルームにもすることもできる。


間口一杯の大開口。

玄関方向を振返る。303号室と空間を融通し合うため壁が折れ曲がっている。

303号室は開口側に外部大階段の上を利用した1.5層分の高さを有し、上にスキップしたロフトを持つ。間口2mの細長い住戸。

段差で生まれる多様な居場所。

2.5階部分。階段の上にキッチンが見える。

4階は401号室の一住戸のみ。北側斜線の屋根がいかにも影響ありそうな住戸、一体室内はどうなっているだろうか。

401号室。斜線により傾斜した天井にはグラデーションのラグを張ってあり、柔らかい雰囲気に。

黒系のグラデーションも(寝室)

三面採光で明るい。左はバルコニー。

1階には2室あり、こちらは102号室。木毛セメント板で仕上げ。事務所利用を想定している。

階段の下は駐輪場になっていた。

「このエリアはいわゆる画一的な一人暮らし用部屋がすでに飽和状態です。8住戸あれば、8通りの生活があるはず。この集合住宅には同じ部屋はありませんので、様々なライフスタイルを送ってもらえると思います」と納谷学さん。

建築:納谷学+新/納谷建築設計事務所
構造設計:かい構造設計
施工:江中建設 株式会社


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佐々木龍一+奥村梨枝子による集合住宅「Modelia Days Nakanobu」

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佐々木龍一 (佐々木設計事務所) + 奥村梨枝子 (ATELIER O) による品川区の集合住宅「Modelia Days Nakanobu」の内覧会に行ってきました。東急大井町線 中延駅から2分程の場所。

 敷地面積134m2、建築面積87m2、延床面積338m2。RC造4階建て。全12住戸の共同住宅。
不思議なスケール感に見えるのは、1階が数十センチ埋まっていることと、上階に行くに従って開口が大きくなっているためだ。

 人通りの多い商店街に面し、街に住まうことを積極的に受け止める住宅。
とは言え、セットバックした空地部分にはプランターを置いて、少し背の高い木を植えるそうだ。
(photo: Sasaki Architecture)

 スクエアをモチーフにした開口に合わせ、アプローチにもスクエアが。


 上の写真、突き当たりの開口から見たアプローチは、商店街から一歩入った路地のようだ。


 幾何学的な表情を見せる階段室。


 4階。ここにもスクエアのモチーフが。


4B室。約24m2のワンルームは各住戸とも大体同じ広さ。
キッチン手前はIHヒーター。


 造り付けのクローゼットを設え生活のきっかけになるようにした。

 スクエアの開口の向かいに偶然スクエアの開口。こちら側はサッシュが見えないような納まりに。


 二住戸にのみ設えた亜鉛メッキのフランジは街に対するリアクションであり、街を映し室内に取り込む、街とそこでの生活を媒介している装置ようだ。


 4C室。B室とは向きが異なるので玄関を開けると東側から光が入ってくる。


 こちらのキッチンには調理器具は設置せず、事務所利用やライフスタイルに対応できるようにした。


 埋め込みの器具がない分テーパーを取って軽やかな作業台ができた。


 造り付けのクローゼットがあるのは共通。


1B室から。

「ここは駅から続く商店街です。人通りも車も多く、目の前はコンビニで近隣の建物も迫っています。利便性を求めて住まう、或いは事務所を構える方むけになると思いますので、如何に街と共に暮らすか、この四角いファインダー越しに街を切り取って生活に取り込んでもらえたらと思います。」と佐々木龍一さん、奥村梨枝子さん

設計:S.A.A.O設計共同体
株式会社佐々木設計事務所(Sasaki Architecture) / 佐々木龍一 + ATELIER O / 奥村梨枝子
PRODUCE: 株式会社モデリア
施工:株式会社マゴメ工務店建物
管理:株式会社アルファーマネジメント&パートナーズ
施主:株式会社秀光建設



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建築コンペの仕掛け人 新井久敏講演会&勇退記念パーティー

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代官山蔦屋書店で開催された新井久敏による講演会と、氏の群馬県庁勇退記念パーティーに行ってきましたのでその様子をお伝えします。
まずは新井久敏さんのプロフィールを紹介。
'79年より群馬県庁職員。建築確認、営繕、自然環境、高崎市出向など建築行政に携わる傍ら、公務とは別に十数年前から群馬県内の公共建築設計コンペを企画支援。「上信越高原国立公園鹿沢園地自然学習歩道施設」で2007年日本建築学会賞( 業績)、2009年度土木学会デザイン賞優秀賞を受賞。2016年群馬県高崎土木事務所次長を勇退。

 講演会のテーマは「僕がコンペをする理由」。モデレーターには橋本純さん。
入札が一般的で、一番低い金額を見積しただけで設計を手掛られるという、公共建築事業に疑問を抱き、群馬県内で25件もの建築設計コンペを仕掛け、数々の名作が生まれる機会をつくった。
その為非常に多くの建築家と親交があり、新井さんが仕掛けたコンペで作品が発表できたことで、その後の建築家人生が大きく変わったひとも少なくない。

 講演の内容は、
 官公庁施設の設計業務でコンペ・プロポーザルによる設計者の選定は、都道府県・政令都市で21%。市町村ではわずか7.5%に留まり、依然として入札による選定が大半を占めている。」といった実態の説明や、
 「(入札による選定よりも、良いものができるのに)なぜ自治体はコンペをしないのか?」といった数々の理由。
 ほかに、コンペの仕掛け方や仕組み、審査委員の立て方、問題点や裏話など多岐に渡り、会場を埋めた多くの設計関係者はメモを取りながら聞き入っていた。


 新井さんはコンペを仕掛けるといっても県庁職員としての仕事ではなく、あくまでも休日や時間外でのボランティア活動だ。
群馬県庁にはそのような部署もなければ、県内の市町村のコンペを支援する業務など存在しないのだ。
「 『余計なことをするな』、『建築家が係わると面倒だ』、予算内に収まっているのに『高そうに見える』」などと怒られたりすることも多々あったという。

 当初より新井さんへの助言や、コンペの審査委員を務めてきた中川武さんや、古谷誠章さんからも解説があった。


 講演会後は場所を移し勇退記念パーティーが開催された。
パーティーの発起人は中川武、内藤廣、石田敏明、渡辺真理、古谷誠章、妹島和世、橋本純たちだ。



 司会進行をつとめるのは群馬県高崎に事務所を構える生物建築舎の藤野高志さん。
自身 “新井コンペ” で二度ファイナリストまでいった。

(photo: Ikimono Architects)

 (photo: Ikimono Architects)


 (photo: Ikimono Architects)


 この日はご夫人とご息女も訪れ、新井さんに花束を贈られた。
「休みの日も殆ど家に居ないで全国を飛び回っていました。こんなに多くの方に祝ってもらえるようなことをしているとは思わなかった。」と驚きと喜びの奥さま。


 会場のギャラリースペースには新井さんが数十年前に撮ったという写真が展示されていた。


 展示作品は記念に綴じられたフォトブック「遙かなる煙の記憶」として出席者に配られた。
日本の風景に溶け込む蒸気機関車の写真。全て中高生の時に撮影したものというから驚きだ。

県庁職員のサインに並ぶ建築家たちという画がほかにあるだろうか(!)

新井さんは一度県庁を定年退職したものの、春から群馬県富岡土木事務所の再任用職員と、NPO法人GSデザイン会議に籍を置く。引退はまだまだ先のようだ。
(photo: Ikimono Architects)

【コンペ一覧】  
2012 富岡市新庁舎, 2011 沼田市生方記念文庫, 2011 上州富岡駅舎, 2010 前橋市美術館(アーツ前橋), 2010 共愛学園前橋国際大学4 号館( 共愛コモンズ), 2010 元総社県営住宅, 2010 精神医療センター医療観察法病棟, 2009 敷島公園バスターミナル, 2009 中央児童相談所, 2009 農業技術センター, 2008 道の駅よしおか温泉, 2008 赤城森林公園施設整備, 2008 ぐんま総合情報センター, 2007 さくらの里施設整備, 2006 高崎市桜山小学校, 2003 平標山の家, 2003 安中環境アートフォーラム, 2003 鬼石町多目的ホール, 2002 邑楽町庁舎+多目的施設, 2001 富弘美術館, 2000 中里村庁舎, 2000 吉井町庁舎, 2000 鹿沢園地自然学習施設整備, 1999 万座公衆トイレ, 1998 妙義山公衆トイレ

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岸本和彦による世田谷の「等々力の曲がり屋」

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岸本和彦/acaaによる世田谷の住宅「等々力の曲がり屋」の内覧会に行ってきました。

敷地面積114m2、延床面積111m2。木造2階建て。
切妻のボリュームを台形に切り取ったような造形で、外側はガルバリウム鋼板の横葺で、切り取られた部分は焼き杉張りで仕上げられている。

 近付くと前庭に駐車スペースとシンボルツリーのモミジ。その間にはアプローチが中へと続いている。

 アプローチを伝って、ピロティガレージへ。ガレージの床はコンクリートの小叩き仕上げ。
駐輪されているベスパは施主のもので、バイクいじりなどが大好きだそうだ。

 ピロティを抜けると中庭が現れた。



平面を見ていただくとこの先分かりやすいが、このように建物がクランク型をしている。

 中庭を進んで振り返る。少し時間が経てば竹の緑と焼き杉の黒が美しいコントラストを見せるだろう。


 ステップを使った居場所を生み出すのを得意とする岸本さん。表情豊かな玄関だ。


 座りながら庭を愛でることができる。
こういったデザインを岸本さんは「ベンチを作ったのではなく、座ることも出来る空間を作った。」と話す。

 階段の裏側は客間。床の間をいれて四畳ほど。左に三つ目の庭、坪庭が覗く。


 玄関脇からは土間の雰囲気で水回り、主寝室へ “路地” が続く。
よく見ると細かい凝った仕上げが随所に。

 客間から縦スリットで見えた坪庭は、浴室からでは横スリットで鏡と連続しながら見えるよう演出されている。


 主寝室。


 2階へ。


 上がると開口に面した造り付けのスタディデスク。右に小上がりで和室。



後ろを振り返ると角合わせの引戸。開けると子供室になっている。

 和室部分は天井をぐっと下げ、現しの垂木のような意匠。左側には小上がりで玄関のようにしてワンアクション必要になる。
これら手前側と奥に続くダイニング・キッチンとは空間の質も色味も異なりシーンが切り替わる操作がされている。

 中庭と自分の家も眺めることができる。


 和室の奥にはロフトと屋上へ通ずる階段があるが、1階の階段と周囲の配色が反転している。
階段の蹴込みには和紙が傷まないように幅木が当ててある。

 ダイニングスペース。左下に見えるのは蓄熱暖房器。


 "等々力の曲がり屋"。動線の変化だけで空間を緩く仕切っているのが分かる。


 曲げたことでキッチンを中心に様々に方向に開口している。


終点のリビングスペース。
前庭からアプローチを通って、小さなストーリーをなぞるような空間体験。

岸本和彦さん。「前面道路から敷地内を抜け、家の中まで延びていく路地空間、そこからぽんっと入り込むこぢんまりとした客間や寝室、 2階へ上がれば対照的に障子戸に囲まれた明るい和室や、白いシェルターに守られたリビングスペースなどがあり、日々の暮らしを楽しめる多様な空間が実現しました。」

設計・監理 : acaa
構造設計 : 諏訪部高広/諏訪部建築事務所
施工 : 渡邊技建株式会社


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廣部剛司による「代々木上原のリノベーション」

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廣部剛司/Takeshi Hirobe Architectsによる渋谷区のマンションリノベーションプロジェクト「代々木上原のリノベーション」の内覧会に行ってきました。
築30年の低層マンションの1室168m2。一度スケルトン状態に解体し、どのような可能性があるのか検証したうえで再構築を行った。


 落ち着いたトーンで構成された玄関。ペンダントライトは施主が使ってきたものを移設。


 縦格子に包まれたアプローチは、施主が所有する和箪笥の存在がヒントとなった空間。突き当たりにその和箪笥が置かれる。


 アプローチ、和箪笥と呼応する和室。


 結界とも言えるようなアプローチを抜けると40畳近くある洋のリビング・ダイニングへ。
無垢材のフローリングに床暖房も備わる。

 スケルトンにして現れた有無を言わさぬ存在であった柱梁のラーメン構造とアルミサッシュ。「その抗いようのない強さを別の文脈で再構成する事によって柔らかく繋ぎ直そうと考えた。」と廣部さん。


 具体的には、削り取られたような凹凸の端部に見付幅6mmのブラウンのエッジを設えることで、、、


 そのまま顕していくと状況からくる必然として出てしまったように見られる部分が、統一したシャープな仕上げによって、偶然出来たような「踊るライン」をつくり出すことができた。


 玄関脇から移動したキッチン。リビングダイニングに面した大きなカウンターテーブルを設えた。


 子供室は鮮やかな青で差し色をした。左にベッドが置かれ、正面壁の裏はクローゼット。


 1階住戸のため専有の庭がある。今回新たにテラスも作り外部との連続性も生まれた。


 洗面室と浴室。


 主寝室。



 この日見学に訪れたアポロの黒崎敏さん、バケラッタの森山善之さん、プラスタックの奥昌子さんと。


廣部剛司さん「お施主さんは欧米で暮らしながらアンティーク家具や和箪笥などをお持ちで生活の中に彩りを加えてきました。それら家族の歴史を刻んできたモノと新しい空間を “取り結ぶ” ことがデザインで常に意識され、道標でした。」

【関連記事】

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成瀬・猪熊建築設計による「経堂のカフェ併用住宅」

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成瀬・猪熊建築設計事務所による世田谷「経堂のカフェ併用住宅」の内覧会に行ってきました。小田急線経堂駅から1~2分の商店街から一歩入った場所。
企画はリビタ。

 敷地面積145m2、建築面積57m2、延床面積101m2。木造2階建てのリノベーション。大きくセットバックしながら建つ姿は都心ではなかなか見られない光景だ。


 既存状態はこちら。築50年以上が経過し数年間空き家だった。ご覧のように敷地と建物の関係、建物のシルエットもそのまま。
(photo: Narukuma)

 躯体は補強しつつほぼそのまま残し、1階がカフェになるように大きく開口。コーヒー焙煎機の煙突が延びるため、2階の開口位置を右にずらした。左のアプローチは住居用玄関へ。


 カフェ「FINETIME COFFEE ROASTERS」。カフェ部分は36m2程。一杯ずつ丁寧に淹れてくれるコーヒーとエスプレッソと、ちょっとしたフードメニューの提供のためこじんまりとした客席が10席と奥にプラスアルファ分。


 通りからもオレンジ色で存在感を示していたのがアメリカはDIEDRICH(ディードリッヒ社)の焙煎機。
このモデルは2リッタークラス乗用車位の値段で、重量は400kgあるとか。

 客席を奥に進むとスリット状の吹き抜けが現れた。2階との関係性を緩く繋ぐ装置であり、トップライトからの光も導かれる。
梁は強度アップのため大きく新しいものに組み替えた。

 壁に設置されているのは浄水器。各種機器がそのままインテリアとなっている。



 奥は南面でテラスを設えた。この奥のスペースは店舗とするか、住居として使うかは住みながら決められるようになっている。


 住居側のエントランスへ。土間空間が南北を通る。


 奥から振り返る。


 2階へ。柱や梁が軽快なリズムを作っており心地良い。
手摺は既存のもを流用した。

 2階LDK。既存では階段が反対側にあり、その横に廊下を配し、手前から洋室、和室、洋室と並んでいたようだ。柱の位置がかつての間取りを想像させる。
金物やブレースで各所を補強してあるのも見て取れる。


 ダイニングからは、冒頭の外観写真で見えた大きなヒマラヤスギを借景として利用。



リビングエリア。昔の住宅の小屋裏からよく現れる丸太のままの梁。強度を見ながら既存と新規の架構が入り混じる。


 先に述べたトップライトはこの位置に。カフェの一番暗くなる部分に開けてある。
右手壁面の “仕上げない風仕上げ” は吹き抜けを介して1階から連続する。

 ソファの背後が光と空間の通り道である吹き抜け。厳密にはアクリル板で遮断してあるので、カフェと直接通じてはいない。


 寝室。開口の位置を動かしたので柱が中央に現れた。


 新旧が入り混じる軽やかでありながら味わい深い空間。
左上に見えるスチールのレールにLED照明が仕込んであり、長手方向一直線に間接照明として貫いている。

 内覧会後オーナーの近藤剛さんが焙煎機を動かしながら機械を説明して下さった。
近藤さんはエアロプレスの日本大会第3位だという。

猪熊純さん(右)と、担当の長谷川駿さん。木造のリノベは今回で初めてだったという。
「お施主さんは、既存の雰囲気を残した佇まいを望まれたのでリノベーションを選択されました。住居とカフェという異なる要素を『切り分けつつ共存させる』というテーマのもと、全体の構成からマテリアルに至るまで拡張した空間設計を考えました。」

店舗名称:FINETIME COFFEE ROASTERS
設計監理:成瀬・猪熊建築設計事務所
構造設計:高橋建築工房
施工:山内工務店
コンサルティング:株式会社リビタ

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