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黒川彰による目黒のオフィスリノベーション「AAR Office interior」

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黒川彰(Sho Kurokawa architects)による目黒にあるAAR Japan(NPO法人難民を助ける会)と、社会福祉法人さぽうと21のオフィスリノベーションの内覧会に行ってきました。

 1970年竣工のビルのワンフロア177m2のリノベーション。黒川さんのデビュー作だ。


 はじめに紹介すると、黒川彰さんは黒川雅之さんのご子息、つまり黒川紀章さんの甥にあたる。


既存状態ではオフィス什器が雑然と並び、必要な物が単にフロアに置いてあるというような印象。
(photo: Sho Kurokawa architects)


 既存の什器は今回刷新はできないので、そこからコンテクストを拾い上げ、"壁"を作った。


 壁により、事務スペース・多目的スペース・打合せスペースとのゾーニング、資料棚や書庫スペースの確保、ロッカーなど大型什器の目隠し、展示・掲示スペースとして多機能、そして秩序を持たせることができた。

 拾い上げたコンテクストを壁の材質、サイズ、色、掲示用フレームの高さ等に落とし込んだ。


 掲示用フレームは立て掛けても、磁石による掲示も可能で、ピッチはA3の高さに。


日本語の学習支援もしていることから、50人ほどが集まることもあるため窓際には机も設えた。

 壁の一部には地雷やクラスター爆弾の信管や炸薬が抜かれた本物が展示されている。
紛争地域・元紛争地域にはこれらの対人地雷が大量に埋設されており、誤って触れた市民がその犠牲になる。しかも命を取り留めながら足や腕を失うといった生活困難者になることが多い(命は奪わず生活や自由を奪うのが対人地雷の目的)。そういった人々を支援するのもAAR Japanの活動の一つだ。

 日本もかつては対人地雷を製造・保有していた。
説明パネルはグラフィックデザイナーの岡崎真理子が手掛けた。




 黒川彰さんを挟んで、"AAR Japan” と、姉妹団体 “さぽうと21” の方々。
AAR Japanでは、先のネパール大地震での緊急支援や、シリアからトルコに逃れた難民の支援、東日本大震災での復興支援などもしており、その活動は60以上の国と地域に及んでいる。
さぽうと21では、日本に定住するインドシナ難民、条約難民、中国帰国者、日系定住者及びその子弟などの自立を支援している。

 ちなみに今回のオフィスが入居するミズホビルは、INA新建築研究所による設計で1970年に竣工した建物。


 エレベーターシャフトと階段が円弧に納まっている。



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建築家の意見をお聞かせ下さい - - 新国立競技場について

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迷走を続ける新国立競技場問題ですが、先日安倍首相により「白紙」に戻すことが決まりました。

当ブログでも再三に渡って取材や、各ニュース、建築家の意見や考えを拾い上げ紹介してきました。そして現在もTwitter、WEB、新聞・雑誌などで意見、インタビューを目にしますが、それぞれが散り散りに発信されているのが現状です。

そこで当japan-architectsブログで建築家の皆さんの意見を広く募集し、こちらでまとめて見られるようにしたいと考えております。

建築家には政治家、役人などにはない独特の職能や知恵があるはずです。建築家の皆さんは今後このプロジェクトをどのように進めれば良いとお考えでしょうか?

批判や中傷ではなく前向きな意見をお待ちしております。
(暫くしましたらJSCにも見て頂くようにしてみます。)

投稿はこちら>> contacts@japan-architects.com





新国立競技場はザハ案(修正案)で着工。整備費約2,520億円
槇文彦グループより新国立競技場プロジェクトへの提言
新国立競技場 "当初は"屋根なし・規模縮小で建設
磯崎新による意見書「ザハ・ハディド案の取り扱いについて」全文
槇文彦、内藤廣らが登壇 シンポジウム「新国立競技場の議論から東京を考える」レポート
「ザハ・ハディド展」レポート/東京オペラシティ
安藤忠雄のコメントや質疑応答/新国立競技場計画に関する説明会
新国立競技場基本設計案の画像と概要
新国立競技場コンペ審査委員 内藤廣のコメント全文
宮台真司が新国立競技場について東京新聞に寄稿した記事の全文
文部科学大臣、都知事らに提出された「新国立競技場に関する要望書」の全文
槇文彦「新国立競技場案を神宮外苑の歴史的文脈の中で考える」シンポジウム レポート
新国立競技場ザハ・ハディド案が最優秀案に選ばれる

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建築家からの意見:新国立競技場について

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新国立競技場について建築家からの意見が届いています。新しい投稿は随時更新していきます。

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【相坂研介】
相坂研介設計アトリエ

僕は2012年7月(コンペ開催当時)、国立競技場のコンペ要項が出たときから、「おかしい」と言ってきました。https://goo.gl/2G76j1
たまたまそれをまとめてましたので、改めての意見としてお送りいたします。

■コンペのあり方に関して
①デザインコンペなら高い受賞歴なんて不要。
(現に高名な受賞者3案とも全て予算超過。) (どうせ実務は組織事務所が下支え予定だった) (ので極論すれば小学生の夢の絵でも良かった)

②要綱に規模・環境・景観の条項明記は必須。
(国際コンペなら主催者側から事前周知すべき) (槇さんは要綱発表時に批判して欲しかった。後続の各団体などガヤ芸人。川上に参入せねば)

③審査委員会および実行委員会の権限の明示。
(設計見積と施工見積の比較査定、裁量権など) (情報も権限もない師匠を吊るすのは単に私怨)

■コスト縮減とこれからに関して
④過剰な発注者の要求条件削減が最重要。
(固定席は8→5万。デパート級の付帯施設、3階分のvip席、座席モニター設備等カット) (音楽用途=遮音対策=競技部屋根を諦め、純粋な運動用途に絞った収支計画に転換)

⑤敷地選定の見直し(晴海か新木場等湾岸へ)
(招致は済んだし海風対策次第で可能では?) (割高な都心での運搬、仮設、近隣費カット) (景観論争も騒音対策も減り、屋根も不要に)

⑥施工者とは決して随意契約しないこと
(2520億は施工者の言い値。頼まれた側は強気) (「デザインビルド=設計施工」なんて絶対NG) (設計施工ではつまらん箱物に金が消えるだけ)

以上、④発注者⑤敷地⑥施工者が高額の原因。
生贄にされた建築家やデザインの非はほぼ0。
「奇抜なデザインがコストアップの原因」と、知らないのに声や力は大きい政治家側の言訳を市民は今も今後も決して真に受けてはダメだし、僕ら建築家も今こそ黙ってちゃいけない。

■私見 まとめ
①デカくて高くてヤバいこと分かったんだから、敷地を変えるなら変えるべきだが、変えないまでも、「施主が発注内容見直し→設計はザハと現行設計者JVで縮小案作成 → 複数施工者に競争見積→きちんと査定」で決まり。

②本気でコンペやり直すんなら発注者が今度こそ条件と要項練り直し、2020年は諦めること。(そんときは僕も"デザイン案"出します。)

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【三浦 慎】
有限会社 三浦慎建築設計室


ザハ氏も白紙決定になるまでは、自分の意見を公には言えなかったはずである。
内部に於けるやりとりがどのように有ったのかはわからないが、契約のもと発注者が信じてくれるのであれば、第三者へ対しては自分たちの設計の良い部分を発信していくのが設計者の仕事でもある。
ザハ氏ほどの設計者にとって、巨大なアーチのみが自信の設計の魅力であるはずはなく、発注者側がきちんと優先順位をつけることができれば、より魅力在る造形をより安価に創ることが出来ると考える。また、コンペ後の設計変更において、都市との関わり方は切られており、アーチの断面形状も変わっている。それらの設計変更において、本来の造形の魅力が失われたことを、ザハ氏本人が一番理解していたはずである。しかし、その時点での発注者側の意見にきちんと従ったものと想像する。

そもそもの日本の人件費の高さは世界的にみても大変に高い。その上に、震災後の施工費の高騰、円安による材料原価の高騰は、現在自分の仕事でも40%程度の数字で跳ね返ってきてる。また今回しっかりした競争入札が行われたとは考えられない。国際コンペ自体がその犠牲になってしまった。一度日本の建築コストが世界的に見てどれだけ非常識になっているのか、北京オリンピックの”鳥の巣”を、日本で見積りをしてみたら良いと思う。

オリンピックという国際文化イベントに対し、コンペは、非常に高い参加条件の下に行われており、世界を代表する設計者の方々が参加された。また現在までザハ事務所に瑕疵はない。諸条件を改訂して、再度ザハ事務所へ発注し、その中でしっかり自由に設計してもらうべきだと思う。

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安藤忠雄氏が先頭に立って、このような迷走状態になったことを憂慮します。
建築家のコストコントロールに関する信認が大きく毀損されました。
昨今の時流である設計施工(デザインビルド)の流れがさらに加速する事を危惧 します。




建築家の意見をお聞かせ下さい - - 新国立競技場について

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ザハ・ハディドの新国立競技場に関する声明:和訳

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The Huffington Post | 執筆者: HuffPost Newsroom)

「建設費が高騰したのはデザインのせいではない」

日本とイギリスの我々のチームは、日本の新国立競技場のザハ・ハディド・アーキテクツ(ZHA)によるデザインが問題になっている件に関して、誤解を正す必要があると感じます。また、日本の国民が、建設の予算が膨れ上がっていること、2020年東京オリンピックの開幕式が5年後に迫っている中で、建設の開始が遅れていることのリスクについて懸念していることは、もっともなことです。

2012年に、ZHAは新国立競技場のデザインを決めるコンペティションで、建築家とその他の専門家で構成される審査員によって、46の候補の中から選ばれました。この新国立競技場とは、2019年のラグビー・ワールドカップと、2020年の東京オリンピックで、世界中からの観客を迎えることになるものでした。我々は、この2つのイベント後も、50年から100年にわたって、国内外を問わず多くの用途で利用されることになるこのスタジアムを、柔軟性のあるデザインにするという日本のビジョンに惹かれました。

デザインは、日建設計が指導する日本の主要なデザイン事務所とZHAの監修による合弁によって進めました。我々のチームは、クライアントであるJSCの予算や要求に沿ったデザインにするために何千時間もの時間を費やしてきました。2年間の工程における全ての段階で、デザインと予算の見積もりはJSCによって認可されていました。ZHAはコストを削減するため、隅々まで、積極的に突き詰めていきました。

初めて日本で公の建物を建設した際、予算の概算が出る前に建設業者が選定されるという、危うい手続きが取られました。ZHAはこうした手続きに関して経験があったので、JSCに対して、完成の期日を固定するよう助言しました。東京で建物を建設する際のコストが跳ね上がっていること、建設業者に国際的な競合がいないことが、受注獲得のための競争を妨げると判断したからです。

しかし、「十分な価格競争がなく、早い段階で建設業者を決定することにより、建設費が過度にをつり上げられるだろう」という我々の警告は留意されませんでした。

また、ZHAはJSCに対して、このような競争のない状況を考慮すれば、スタジアムの仕様書の規模を縮小することによって建設費を下げれば良いと提案してきました。どの段階でも、ZHAは、より低価格な代替案を持っていました。しかし、予算とデザインは日本政府によって7月7日に認可され、それ以降、より低価格なスタジアムをデザインして欲しいという要求はなかったのです。

建設業者が提示する高額な建設費について、ZHAとプロジェクトチームは、JSCと協力して、デザインの変更などを含む多くのコスト削減のための努力を行ってきました。我々は、スタジアムの材質や、建設に必要とされる技術について具体的な手引きを提供しました。我々の経験から言って、高品質な計画を低価格で実現するのにベストな方法とは、選定されたデザイナー、建設業者、クライアントが一丸となって一つの目標に向かって協力することです。しかしながら、我々は建設業者と共に働くことは許されませんでした。繰り返しますが、これは不必要な建設費のつり上げ・完成日時の遅延といったリスクを高めるものです。

7月7日に、スタジアム諮問委員会に提出されたJSCによる報告書の中では、建設業者によって提示された数字を使って、予算の膨れ上がりのほとんどはデザインのせいだという、不正確な主張がなされました。ZHAはこの声明が出されることを前もって知らされておらず、我々は即座にこの不正確な主張に対して、JSCに抗議しました。報告書は主に、デザインに含まれる鉄製のアーチについて焦点が置かれていました。このアーチは、複雑なものではなく、基本的な橋の建設技術が使われています。軽量で強度の高いポリマー膜の屋根が全観客席を覆う構造です。これに加えて、将来的に多くの国際的な競技やイベントに使用できるよう、高スペックの照明と機能が備えられていました。

アーチ型の天井構造は、日本の他の主要なスタジアムと同等に効率的です。競技場本体の建設と並行して、屋根を造ることができます。これにより、競技場本体が屋根を支える構造に比べて、建設にかかる時間を著しく短縮することができます。競技場が屋根を支える構造では、競技場本体の建設が完成してから、屋根の建設を始めなければならないため時間がかかるのです。日本のデザインチーム及びエンジニアチームは、アーチ型構造にかかる費用が230億円であると確認しました(見直し前に承認されていた予算2520億円の10%以下の金額です)。

予算が膨れ上がったのは、確かに東京の建設コストの上昇によるものですが、それだけではありません。入札への制限が多く、競争がないまま建設会社を指名したこと、プロジェクトチームと建設会社の協力がなかったことが原因です。デザインのせいではありません。

東京の建設ラッシュが建設需要を呼んだこと、労働供給が足りなくなったこと、円の急落により輸入資材が高騰したこと、こうしたことが重なって、建設計画とオリンピック・パラリンピック招致があった2012年、2013年から大きく状況が変わり、建設費の増大につながりました。2013年7月から2015年7月の間に、東京の建設コストは平均で25%上昇し、これから4年、同じ割合で増えていくだろうと予想されます。

白紙見直しにあたって、こうした建設費が膨れ上がる基本的な問題はなにも解決していません。事実、こうした問題が、着工の遅れにつながる可能性があります。5年後にやってくる開会式という動かせない締め切りに向け、建設コストは上がり続けるでしょう。

東京の建設コストの上昇に加え、建設会社の工期の遅れ、拙速なデザイン作業により、デザイン費と建設費はさらに高くなります。このことは、将来、新国立競技場が質の低いものになるリスクがあるということです。世界の事例からもわかるように、質の低いスタジアムでは2020年の大会後、長期間使用するためにさらなる投資を必要とします。

国民と、政府、そしてデザインチームが尽力し、よりよい資材調達プロセスと、建設会社と協力できていれば、予算内に2019年ラグビーワールドカップに間に合わせることができたはずです。

私たちはこれまでも、そして今も、私たちの経験と知識を動員し、JSCとも協力して、低コストのデザインを作り上げる用意があります。

デザインが最終決定された10日後、ZHAは報道を通じて、計画の白紙撤回と、2019ラグビー・ワールドカップに間に合わせることを断念したと知りました。その後で、JSCから正式な契約解除の通知が届いたのです。

ZHAは、柔軟性がありコスト効率の高く、数世代にわたって日本のスポーツのよりどころになる新国立競技場を、2019年ラグビーワールドカップに間に合わせることができると今も考えています。日本国民、日本政府、そして日本とイギリスにある私たちのデザインチームは膨大な時間と労力を費やしながらも、シンプルで予算に合うデザインを作り上げることができるはずです。

さらなるコスト増大のリスクを避けるため、そしてオリンピックに間に合わせるため、質の低いスタジアムになることを避けるため、安倍首相の見直し案は、すでにこれまで積み上げられた知識を活かし、私たちのチームと建設会社の協力体制を構築することに注力すべきです。

私たちは安倍首相に書簡を出しました。見直し案の作成に私たちが協力できるという内容です。ZHAには、これまで労力を費やしたデザインの作業を通じて、どうやったら最もコスト効率が良く、この先50年、100年と日本の人たちのためになる新国立競技場を建設できるかの道筋が見えています。

数週間のうちに私たちは、そのプランを日本と世界のデザインコミュニティに公開します。見ていただければ、数年かかった仕事の結果として、新国立競技場のデザインに革新的な解決策が込められていることがお分かりいただけると思います。


ソース:The Huffington Post


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黒川智之による「北千束の集合住宅」

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黒川智之建築設計事務所による大田区の「北千束の集合住宅」を見学してきました。東急目黒線・大井町線 大岡山駅から5分程の場所。

 敷地面積146m2、延床面積490m2、RC造6階建て。
1階にオフィス、2階にシェア住居、3・4階に賃貸、5階に社宅、5・6階にメゾネットのオーナー住居という構成。


 オーナーの出身校であり、現在は非常勤講師も務める東京工業大学は目と鼻の先という立地。
シェア住居と賃貸は、東工大の学生もターゲットにしている。偶然にも黒川さんも同校出身で、設計にあたり周辺環境をよく知っていることはプラスに働いたようだ。


 特徴的な切り取られたようなバルコニーは、縦方向に繋がる半屋外空間として白く塗装されている。街に開いたり、住人同士のコミュニケーションを促す。


 建物の名称は「Nefrock Lab Ookayama」。”黒船"を逆さにしたもの。


 エントランスホールは引戸を開放すれば街へ連続する。レクチャーなどのイベントや商店街のお祭の際にも活用してもらうなど、学生や地域に広く開放していく多目的スペースという位置づけだ。フロアに置かれている箱は黒川さんがデザインしたスツール兼収納。中央奥の扉からはオフィス、左の扉からは住戸とオフィスにアクセス出来る。


 1階オフィスにはオーナーが経営するITベンチャーが入る。
独自に開発したソフトウェアで電力を制御するなど「建物自体をソフトウェアから制御したい」というオーナーの要望に応え、配線の仕組みから特別に変えていく必要があったという。
照明デザインは岡安泉さん。


 階段室やエレベーターホールなどの共用部は街路をコンセプトにしている。


 街路灯のような照明も岡安泉さんによるデザイン。無垢のアクリルに光を拡散する素材を混合してあるので、全体が美しく発光する。


 2階の踊り場から階段にかけてもコミュニケーションを生むスペースとして綿密にデザインされている。ウッドデッキがそのまま住居内へと続いているのも、入りやすいオープンな雰囲気を出すためだ。
左の隣家に面した開口部にはツル植物のグリーンウォール。

 2階「超会議室」と名付けられた3人で住むシェア住居。オーナーの家賃補助付きだ。
ワークショップや学生達との活発な議論の場になることが期待されている。そのため壁の一部はホワイトボード塗装されている。


 階段下のデッキがめくれ上がったようなベンチ付きのトンネルは談話スペース。壁はもちろんホワイトボード塗装だ。


 トンネルを抜けるとキッチンが現われ、居住エリアへ。


 各部屋は約7畳。


 3階へ上がる途中、水栓も備わるニッチはベンチとして腰掛けることが出来る。


 3階、4階には、大きめと小さめの住戸が2つずつ。こちらは大きめの301号室で約43m2。
球体ボイドスラブを採用し梁のない空間にしている。


 正面から見えたバルコニー開口部の見下ろし。2層3住戸が面し、それぞれを立体的に繋ぐ共用空間のように機能している。


 階段の造形も見所の一つ。
ステンレスネットは、黒川さんが在籍していたヘルツォーク&ド・ムーロンも使っているもので、今回スイスから取り寄せたそうだ。


 402号室。バルコニーとの関係性で採光が良い。

 5階踊り場。スタッフ宅の玄関と、メゾネットのオーナー住居の玄関がある。


 4人家族のオーナー住居、5階部分。長い廊下を挟んで子供室と書斎があり、階段下がトイレや収納になっている。


 階段の踏み面と蹴込みの仕上げ。
複合フローリングの表面板だけを残して、側板の収まり部分を削り取ってある。扉や窓の枠も同様に仕上げられており、非常にフラットな表情の廊下になっている。


 子供室。斜線制限のため右の壁が少し傾斜している。


 バルコニー(3枚目の写真に見えた部分)


 6階LDK。最上階のため収束してくる斜線と室内プランの取り合いに苦労したそうだ。


 奥からキッチン方向を見る。フロアの中央からずらした位置に水回りを置き、回遊型の動線をとっている。
右側の窓から眼下に広がる街並みを眺められるダイニングスペース。
左は主寝室。

 屋上はキッチンの背後から外階段で上がる。
周囲には高い建物が少なく、東工大の本館を望むことが出来る。


 夕日に照らされる北西面。規模的に周囲から突出した建物となるため、外観に表と裏といった差を設けず、全方向に対して開口を配置している。設備用の配管や雨水管も外に露出しないように設計した。


黒川智之さん
「人と人の繋がりを大切にすることがテーマでした。大学、オフィス、住居、街など、様々な所属を横断し、積極的なコミュニケーションを促す建物です。」




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納谷建築設計による「井の頭の家」

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納谷学+納谷新/納谷建築設計 (NAYA Architectsによる東京・三鷹市の「井の頭の家」の内覧会に行ってきました。京王井の頭線 井の頭公園駅から10分程。
プロデュースはHOWS Renovation/リビタ

敷地面積198m2、建築面積147m2、延床面積157m2。RC造+木造2階建て。
敷地は玉川上水の緑道に面する風光明媚な場所。
(販売価格1億1800万円。7月31日現在

 築30年の住宅をリビタが取得、リノベーション計画を納谷建築事務所に依頼した。


 細長いアプローチのある旗竿敷地。ハナミズキをくぐると大きな庇を設けたポーチが現れる。


 玄関扉を開けるとゆったりとした玄関ホールはモルタル仕上げ。どの辺りで靴を脱ぐかは住み手に任せ、土間空間として半屋外的に使える雰囲気だ。左はトイレで、内側にもう一枚戸がある。


 土間を抜けると明るい空間が視界に入ってくる。


 中に入ると、吹き抜けを中心に階段を据え、上・前・左右と立体的に空間が広がっている。
既存では吹き抜け空間が中庭のようなサンルームになっていて、その1階部分4面をガラスとアルミサッシュが囲っていた。
1階の躯体は既存のままRC造だ。

 吹き抜けの右側。スタディールームのようなプレイルームのようなスペースの左右に、ガラス引戸で仕切られる個室のような空間がある。"のような"というのは、住み手が誰になるか分からないこの住宅では、特に “寝室” や “リビング” といった固有の名称を持たず、住み手によって自由に使ってもらえるように計画されている。




 吹き抜けに面した開口は全てガラス引戸。開けても閉めても大きなひとつの空間になる。


 2階へ。この吹き抜けがサンルームだった既存では、家の中心に在りながらひとの動きを遮るような存在であった。リノベにより階段をここに移し、動線の中心として生まれ変わった。



 2階へ上がり振り返る。ガラスを支えるスチールサッシュはきれいに補修した。またペアガラスに入れ替えると重量が増えるため、既存ガラスの外側にポリカで2重構造にした。


 2階は梁や柱を見直し、その分構造用合板でパネル構造にすることで強度を上げた。


 奥は水回り。右に覗くハシゴからはロフトへ通じる。


 水回りは、広い! ここも単に顔を洗ったり、用を足したりだけの用途に縛られないようにしたそうで、「ソファを置いて本を読んだりするのに使っても面白いですよね。」と納谷新さん。


 浴室を出た向かいはキッチン。


 こちら側は合板に半透明の白が塗装され柔らかい雰囲気に。


 キッチン側はいわゆるLDKとして活用出来そうだ。
天井は既存では左から右への片流れだったが、この広い空間を何となくゾーニングするように、手前から平、切妻、片流れと屋根形状で差を付けた。

 奥の片流れエリアには間接照明を設え、照明が当たる部分には塗装をせずオレンジ色の明かりが強調されるようにし、シーンの切り替えを楽しめるようにした。
右からはバルコニーへ出られる。

 バルコニーの手摺は既存では透過性の無い壁になっていたので、視線や空気の抜けも悪く、落ち葉も溜まりやすい状態だった。


 緑道から。三角のバルコニー部分は増築した。
夏場のきつい西日は木々が優しく遮ってくれる。

納谷新さん。「初めこの建物を訪れた際、大きなサンルームがあるにもかかわらず何故か薄暗い印象でした。また個性も強く住み手を選ぶような設計の建物でしたので、マイナスの作業を積み重ねてニュートラルな状態にし、どなたが住み手になっても気持ちいいと思ってもらえるようにしました。そして、この周辺環境による住宅地と別荘地との中間的な雰囲気も大切にしました。」


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藤本壮介による会場構成「ラース・ミュラー: 本 アナログリアリティー」展 レポート

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藤本壮介が会場構成を手掛けた「ラース・ミュラー: 本 アナログリアリティー」展のオープニングに行ってきました。場所は銀座のギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)。
[Lars Müller BOOKS Analogue Reality] space design by Sou Fujimoto

 グラフィックデザイナーであるラース・ミュラー (Lars Müller) はスイスを拠点にLars Müller Publishersを設立し、自身でも多くの装丁デザインを手掛け出版し、世界的に高い評価を得ている。
藤本壮介を取り上げた本も出版しており、ミュラーと親交もあることから会場構成を手掛け、春に京都dddギャラリーで開催された展覧会の巡回展となる。

 本展ではミュラー独自の世界を形づくっている作品の中から、テーマや形式へのこだわりを具現化する100冊を厳選して展示されている。


 京都会場では1フロアだったが、東京では1階と地下の2フロアが会場だ。


 思わず手に取りたくなる美しいデザインの数々。




 藤本さんの本を発見。丹下健三とイワン・バーンの間に。


 〈Sou Fujimoto Sketchebook〉
中を開くと藤本さんのスケッチやメモ。左は進行プロジェクトの都市名か、移動予定の都市名か、アジア、ヨーロッパ、中東、北米に渡る。

 台湾タワーと思われるスケッチも。これは2011年当時使っていた藤本さんのモレスキンの手帳をそのままスキャンして、ほぼ編集なしで本にしたもの。
「クライアントの個人名や会社名以外本当にそのまま。施工費の計算やちょっとしたメモ書きなどもあったりするので、少し恥ずかしい。」と藤本さん。

 会場で藤本さんが手にしていたモレスキンの手帳(右)と並べてみた。大きさや表紙、紙質、色などもそのままに再現した本だ。
手帳を開いてみると、本は実物と見分けが付かないほどの出来だと良く分かった。
ちなみにこの本のほか、展示中のいくつかの本がggg隣のmmmで購入可能だ。

 地下1階会場。京都で使ったオリジナル制作のテーブルを持ち込み、全く違う形に構成した。


 テーブルはいくつかのサイズがある。一つ一つが小さな島のようであり、全体的には大きな島となる。京都ではバラバラで動的、東京ではまとまり静的。それぞれの本ごとに居場所があり、落ち着いて閲覧することが出来る。



 
 手前は〈Zaha Hadid: Space for Art〉


 たくさんある居場所に、ひとが座ってもらって会場の完成形が見えてくる。



いくつか展示されている本を紹介。
日本では手に入りにくい本が多いので、この機会にぜひ手に取ってみたい。
 ミュラーさんの代表作。左より〈Neue Grafik〉、〈Helvetica Homage to a Typeface〉、〈Helvetica Forever〉
スイス人によって作られた世界で最も有名なフォントの一つHelveticaはラテン語で「スイスの」という意味だ。

 〈Peter Zumthor Works〉
(amazonで20万円で出品されていた)

 〈Herzog & De Meuron Natural History〉


〈Steven Holl Idea and Phenomena〉
〈Steven Holl Written in Water〉

 〈Steven Holl Scale〉


 スティーブン・ホールのスケッチ。


 〈Peter Eisenman the Formal Basis of Modern Architecture〉


〈Jasper Morrison Everything but the walls〉
〈Jasper Morrison a Book of Things〉

 〈Holocaust Mahnmal Berlin〉
ホロコースト犠牲者のための記念碑と同じセメントでできている表紙。下に敷いてあるフェルトは覆いに使われるセット。

 藤本さんとミュラーさんによるギャラリートーク。
例えばこんなトークがあった。

ミュラー:本作りで譲れないこと、読解性、明解さ。
本離れがすすんでいるが、本を読むことをやめてはいけない。本を読まずに聞くことばかりでは考えることができない。そして(本離れにより)ヨーロッパでは言葉が乱れてきていて、暗号めいた言葉が日常的に使われている。そういった危機を迎えている。建築ではどうだろうか?

藤本:建築はいい意味で鈍い。時代が変わってデジタル化がいくら進んでも物理的な空間をどうするかが建築。空間の認識の仕方、体験の仕方はデジタル化や技術で変わっていくと思うが、そこで広がっていく感覚と空間のギャップ、その間に新しい何かが生まれる余地があるような気がする。そこが面白いことであり、やりやすいことでもある。

ミュラー:建築が終焉を迎えるときは建築がその意味をなくしたときだと思う。優れた建築というのは、人間がどのように振る舞うべきなのか、プライベートな場ばかりでなく、パブリックな場、つまり内と外の空間のありかた、学びの要素がある物だと思う。ひとつの空間にひとつのドアしかないような場では、ひとは他の選択肢を与えられていないことになる。実際にはひとつのドアしか使わなかったとしても、同時に他のドアがあれば複数の選択肢もあり得るのが重要だと思う。本も同じように学びや選択、表現の道具として存在している。

藤本:非常に建築の本質を突く話でとても共感できます。建築はある意味恐ろしいもので、ひとの動きを制御し、ある一つの方向・生き方を押しつけてしまうこともあり得る。ひとが意識しても、また知らず知らずのうちにいつの間にかでも、楽しみながら選び取っていくのが幸せなのではないでしょうか。京都会場では大きさの異なるテーブルがランダムに置かれテーブルを選択でき、東京ではレイアウトは異なりながらも何となくいろいろな居場所があるのでそれを選択し、座ることができる。

【ラース・ミュラー: 本 アナログリアリティー展】
会期:2015年08月04日(火)~ 2015年08月26日(水)
場所:ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)


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「動きのカガク展」レポート/21_21 DESIGN SIGHT

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東京ミッドタウン内21_21 DESIGN SIGHTで6月19日より始まる企画展「動きのカガク展」のプレスビューに行って来ました。

本展は "動き" がもたらす表現力に触れ、観察し、その構造を理解し体験することで、ものづくりの楽しさを感じ、科学技術の発展とデザインの関係を改めて考えるというもの。
クリエイティブディレクターの菱川勢一が展覧会のディレクションを担当した。


作品は "動き"という視点で作家や学生、企業との協働によって制作されたものばかり。様々な動きの醍醐味を感じ取れるよう体験型作品がメインで遊ぶことができる。子供にも興味を持ってもらえるような工夫として、作品ディスプレイと動きの原理を解説したイラストやアニメーションがセットになっているのが特徴だ。
会場構成は宮崎晃吉/HAGI STUDIO。


 図工室をイメージした会場。
「学校では以前より図工や音楽の時間などの創作の場が少なくなっています。子供の頃のものづくりの喜びや大切さを感じてもらいたい」という菱川氏の想いが込められている。


 <124のdcモーター、コットンボール、53×53×53センチのダンボール箱>
スイスのアーティスト、ジモウン/ZIMOUNによる作品。作品タイトルは使用したマテリアルそのもの。


 作品の内部。積み上げられた段ボール箱にモーターが内包され、そこに吊された小さなボールの付いた振り子が揺れながら音を立てる。創作の原点は音楽というジモウンは、身近な素材を用いた作品で知られており、日本での作品展示は今回が初となる。


各作品には、有孔ボードと単管パイプを使ったパネルが用意されている。作品タイトルに加え、作家が使用した道具やマテリアル等作品の背景となるようなもの、ポストイットには展覧会ディレクター菱川氏による手書きコメントが光る。



 <アトムズ>
岸 遼 
子供の頃に吹いて遊んでいたもの。きちんとプログラムしたらどうなるか、という作品。

体験型作品には、このようなガイドがあるので遊び方は一目瞭然。
参加作家でもあるパンタグラフによるイラストだ。

 <統治の丘>
ユークリッド(佐藤雅彦+桐山孝司) 
黒い絨毯を歩いて円形の台の上に立つとセンサーが働き、白い円錐たちが一斉に自分の方を向いてくれる。


素直に指示に従ってくれる動きは正に領主と領民の関係。突然皆が言うことを聞いてくれなくなる=影響力を失うという、味わったことがない瞬間を味わう面白さも。


 <森のゾートロープ>
パンタグラフ
まわる虫眼鏡で見ると、森の中のアニメーションが動き出す。

 <セミセンスレス・ドローイング・モジュールズ #2(SDM2) - レターズ>
菅野 創+やんツー 
来場者の書き込んだ文字を人工知能が収集、解析し、モジュールの先端に取り付けられたボールペンが文字のようなかたちを描くインスタレーション。展覧会はスタートしたばかりであり、ほぼ真っ白な壁。展示期間中、成長し、どのような線が表れるかが注目される。


書き込み用のノート。



 <動くとのこる。のこると動く。>
藤元翔平
LEADモーションセンサーで手の動きを記録し再生する。


 <変幻灯>
NTTコミュニケーション科学基礎研究所
動かないはずの静止画が動く錯覚の現象。動きの情報が投影され、揺れて見えるという全く新しい技術を体験することが出来る。


 <プロジェクト・モーション/サイクル>
東北工業大学 クリエイティブデザイン科 鹿野研究室
メカニカルな仕組みをメカニカルを使わずに動きをつくった。
鹿野護(WOW)によるワークショップも予定されている。


 <シックスティー・エイト>
ニルズ・フェルカー
ドイツ人アーティストによる作品。プログラミングされたポンプを使い、68枚のポリ袋が波のように伸縮し呼吸するような動きを見せる。因みにドイツではこの青色に加えてグレーのポリ袋が主流とのこと。


 作品の動きの原理は、パネルに取り付けられたアニメーションでチェック。


 <ロスト #13>
クワクボリョウタ
LOSTシリーズの新作。


 <水玉であそぶ>
アトリエオモヤ


 <リフレクション・イン・ザ・スカルプチャー>
生永麻衣+安住仁史


<そして、舞う>
鈴木太朗


 <ベンツ・パテント・モトールヴァーゲン(レプリカ)>
メルセデス・ベンツ日本株式会社 
1885年に制作された世界初のガソリン自動車(会期中、試乗イベントを予定!)

会場は、モーター音や不思議な動き、大人も子供も皆わいわいと楽しめる仕掛けでいっぱいだ。

【動きのカガク展】
会期:2015年6月19日〜9月27日
場所:21_21 DESIGN SIGHT
詳細:www.2121designsight.jp/program/motion_science/



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「単位展 」レポート
「日本のデザインミュージアム実現にむけて展」レポート



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落合正行/PEA...によるリノベーション「ワカミヤハイツ」

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落合正行/PEA... /ピー(Masayuki Ochiai / PEA...) による足立区のアパートリノベーション「ワカミヤハイツ」の内覧会に行ってきました。
都営日暮・里舎人ライナーの谷在家(やざいけ)駅から3分程。

 敷地面積410m2、建築面積139m2、延床面積278m2。木造2階建て、二棟。
オーナーとPEA...によって立ち上げた「あだち農まちプロジェクト」の一環として、 "農がつなぐコミュニティライフ"をテーマに地域コミュニティの創生を目指していく。
棟を繋ぐ看板はそのまま流用。

 築39年、8住戸のアパートは近年空室が目立ってきていた。建て替えや、土地の分譲なども検討したが、オーナーのご家族が大事にしていた建物・土地を残しながらリノベーションすることを選択した。
そして賃貸住居として6住戸、1住戸分にシェアオフィスと、1住戸分のラウンジを設けた。

 1階は2階と同様に腰壁がついたバルコニーになっていたが、腰壁を取り払い前庭と連続させテラスのようなロッジアのような空間が生まれた。
前庭には既に畑が耕され様々な野菜が植え付けられており、今後入居者と手入れをしていきたいそうだ。
またオーナーは近所に農場も所有しており、そちらを本プロジェクトの第二段としてソーシャルファーム(貸し農園)としてコミュニティに活用していく。

 1住戸分をコミュニティの中心となるラウンジとしてコンバージョンした。ラウンジは定期的な収益を上げられないリスクを伴うが、付加価値スペースとして期待される。


 棟と棟の間には “路地庭” を設け、単なる通路から住人たちの出会いの場に。


 建物の周りにはランドスケープデザインのLIデザインアソシエイツにより20種以上の草木が植えられ、その多くは食べられる実を付ける。


 ラウンジ内はコンクリートタイルによって半分以上が土間になっている。
小上がりのデッキスペースではプロジェクターの投影も可能。左奥にはキッチンも備わり、様々なイベントで活用されるだろう。

 このラウンジは、住戸・シェアオフィス入居者の利用は、制限内で自由に利用できる。


 裏側に回って各戸へ。階段は老朽化していたので補修し、踏面をグレーチングにすることで暗くならないように配慮してある。


 1-Bシェアオフィス。
桧フローリング部分に4席のデスクと、モルタル部分にミーティングスペース。
欄間や砂壁、柱、敷居、鴨居はそのまま残されている。

 モルタル部分は床を下げ天井高を取り、土間のような雰囲気に。


 1-Aの住戸。1階の各戸は同様に土間仕上げになっているが、サッシュもそのまま使う事を選択したので、掃き出しで外部に連続はしていない。


 キッチンの位置はいくつかのタイプがある。


 2階へ上がって2-B。
左に見えるのは下足入れ。奥に洗面台と洗濯機置き場。左奥に浴室。中央に見える扉は右の居室の扉。

 リノベ前の写真では、下足入れの位置は同じ。洗面台が無く奥に和式水洗トイレが覗いている、、、ということはトイレがどこかに移動したことになる。(写真:PEA...)


 居室へ入って奥から見返す。1階とは異なり天井を梁まで上げ、天井高を取っている。
キッチンは床の間だったスペースに収まり、右の押し入れを開けると、、、

トイレが現れた(!)
リノベ前は洗濯機が外置きだったが、近頃はそうもいかないので室内に置くことになる。すると建具は基本現状維持であることから、こうならざるを得ないタイプが生まれる。位置的にはなくもないだろうが、引き違い戸と天袋で一気にユニークな存在へ。

 天井を剥がすと出てきたやんちゃな施工跡はそのまま “味” にした。
建物全体は要所要所に構造用合板でパネル式の耐震補強してあるのでご安心を。

 2階同志は路地庭を挟んでこのような雰囲気。


 1-D。
1-Aでは土間がキッチンだったが、ここではリビングに。旧家の広い玄関のようにも見えるし、農家の土間にも見える味わい深い空間だ。そのまま残した砂壁も各戸に。

落合正行さんは日本大学理工学部まちづくり工学科にも勤める。「農を通じて住人同士、ご近所同士、そして地域が互いに補いながら緩やかに繋がる。そんなことを目指すプロジェクトのスタートです。」


【あだち農まちプロジェクト】



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松島潤平+青山文吾によるマンションリノベーション「Text」

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松島潤平(Jumpei Matsushima / JP architects)+青山文吾による、世田谷区のマンション1室をリノベーションした「Text」を見学してきました。
築40年以上を経過したマンションで、玄関を入ると一直線の廊下を挟んで左側に個室が3室、右側に収納や水回りが配された典型的な3LDKレイアウトだった。(82m2)

 施主はリノベに当たって寝室や将来の子供室を、と考えてしまうと既存と変わらなくなってしまうので、大きな1K空間にしたいと望んだ。


 既存の仕上げを剥がし現れた躯対は水平垂直が大きく歪み、壁や天井も波打ち、、、


 それはあたかも洞窟のようだったという。


 コンクリートの中には施工時の “忘れ物” 、何かのビニール片やタバコの吸い殻が40数年の時を超え姿を見せた。
型枠の大きさも材質もまちまちで、住宅供給が急がれていた頃の様子が伺える。

 玄関から上がり左を見る。全体を白く塗ることも検討したが、ベッドスペースとの境界を示すための塗り分けに留めメリハリを持たせた。


 ベッドスペースから。


 室内奥から見返す。
奥さまはグリーンコーディネーターで、夫婦揃って植物が大好き。部屋の中央にはフィスカ・ウンベラータの株分け用の親木が存在感を出している。天井に付くスポットライトの多くは植物の為に設置したもの。

 ハンモックを吊すためにアンカーボルトを打たなければならいかなと思ったが、天井にはなぜかピンが打てる孔が幾つもありそれを利用した。


 キッチンはIKEA製で設えた。
壁の中央の開口は浴室へ。

 浴室は全面FRP防水に作り替えた。
開口は既存では開閉し換気窓として機能していたが、浴室乾燥機を取り付けたのでFIXとした。

 テレビは無く、天井に設置したプロジェクターで映画などをみることが多いそうだ。


 食事はカウンターテーブルで。


 躯体にはC型セパレーターが沢山頭を出していたので、グラインダーで滑らかにしたところ(左)、マグネットを使って自在にディスプレーができるようになった。


 照明スイッチパネル。最近トグルスイッチは珍しくないが、美しい削り出しのオーディオ用つまみを調光に流用した。



松島潤平さん(左)と、施主ご夫妻であるグラフィックデザイナー/アートディレクターの青山文吾さん、グリーンコーディネイターの中口昌子さん。
「 “Text” とはお施主さんのお名前一字からの引用でもあるのですが、『仕上げ=テクスチャー』をレイヤードするのではなく、新たに手を加えながらも『原本=テクスト』への回帰、テクスチャーの前の世界『テクストの空間』になるようデザインしました。また躯体の歪みが激しいため、歪みを均すように仕上げをした場合かなりの気積が喪失してしまいます。仕上げが無いことで気積は約1.15倍になり拡がりを持たせることが出来ました。」

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前田茂樹によるノルトロック・ジャパン新社屋

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前田茂樹 / ジオ-グラフィック・デザイン・ラボ (Shigeki Maeda / GEO-GRAPHIC DESIGN LAB.) が手がけた、ノルトロック・ジャパンの新社屋の見学に行ってきました。

敷地面積 2016.32m2、建築面積 448.83m2、延床面積 441.37m2
木造平屋

西側ファサード

ノルトロックグループは、スウェーデンに本社を持つボルトやワッシャー等の製品を扱う国際企業です。今年4月より、ノルトロック・ジャパン本社が大阪市内から、スウェーデン本社のようなより自然の多い環境の大阪府箕面市彩都へ移転。移転してきた理由は、ノルトロックが今後非常に大きな製品を扱うことになるため、倉庫のスペースを拡張する必要性があることと、働く環境をビルからより人間性を持てる環境にしたいということから。

東側ファサード / 正面エントランス
あたかも段々状の敷地に大屋根を掛けたかのような印象。

計画地である箕面市彩都(さいと)は、国際文化公園都市、北部山間部に現在開発中のニュータウンがある。彩都と同じ大阪モノレール路線には、万博記念公園や大阪大学があり、大阪都市圏のベッドタウン、高級住宅地として発展している。ノルトロック・ジャパンの新社屋は、その新興住宅地に計画された、敷地の緩やかな傾斜を利用して、地形に沿った伸びやかな建築だ。

正面エントランス
家のような落ち着きのあるエントランス。ガラスをセットバックして控えめに。

内部エントランス / 受付 (撮影:繁田諭)
建物の中央に中庭が配置され、内部は優しい自然光に包まれた空間に。


土地の勾配が3〜4度ほどあり、過度な造成を行わず小さな居場所造りをし、地形に合わせて物が流れやすい回廊式配置に。

車庫→試験室→作業室→会議室→オフィス→社長室
エントランス→オフィス→社長室→会議室→作業室→試験室→車庫

少し進み左を向くと奥にはスタッフのオフィス。

通路を奥まで進み、エントランスの方を振り返って見る。
左の部屋は作業室。

エントランス奥の長い通路。右手の扉は、手前か試験室、会議室、キッチンと並ぶ。通路の最奥には社長室が配置されている。



(撮影:繁田諭)
更に奥へ進み、振り返る。中庭は植栽やベンチが設置され、職員の休憩場所に。

グラフィックデザインは、永易 直樹/ FARVEが手がけられた。
字体の色はノルトロックのロゴの色と合わせている。

会議室
パーティションで二部屋に別けることが出来る。
窓から見えるのはモノレールの線路とマンション群だが、これらを"借景"にして日が落ちると『銀河鉄道の夜』のような景色に変わるそうだ。

キッチンとダイニングルーム
キッチンとダイニングルームは必須項目として注文があったそう。欧州ではほとんどの会社にキッチンが設置されており、スウェーデンの企業であるノルトロックも例外ではない。朝と午後にフィーカと呼ばれるコーヒーを皆で飲む習慣があり情報交換の場となっているようだ。
ダイニングには薪ストーブがあり、パイン材で組んだ製品箱の廃材を燃料に活用させる。キッチンの外にはデッキと植栽が加わる予定で、季節の良い時期には外でも食事が愉しめるようになっている。


キッチンから内を見る。奥はオフィス。
照明は、ライティングデザイナーの永冨 裕幸 / NEW LIGHT POTTERY によるもの。

社長室

オフィス
働く場所は大らかな空間になるように一人1つの窓を配置。元々のオフィスのイメージよりよく配置出来るように一人一人のワーキングスペースを広く提案した。これは、前田氏自身がパリの事務所で働いていた時の環境や経験が活かされているようだ。

什器は合板の造り付け。一人一人スペースを持ちつつ、隣同士の気配を感じとれるように壁となる本棚に開口を造り、立つと全体が見渡せコミュニケーションがとれるように什器の高さは1.2mに抑え、窓枠高さなどとも揃えている。

昼と夜とで使い分けが出来るように2種類の照明を設置。

オフィスから見た通路

扉奥は更衣室やトイレ。

空間構成と天井の高さや通路の幅から落ち着きのある凛とした空間。前田氏に伺ってみると、南仏プロヴァンス地方のル・トロネ修道院の中庭を回遊するような感覚を思い出しながら設計したとのこと。

前田茂樹氏
『必要とされる用途を、出来るだけその敷地の中の時間(地形が持っている居場所の豊かさ、南北に抜ける卓越風や自然光)に添わせる形で、美しくかつ最小限の建築操作で造ることは、都市や地域のインフラを造るようなものだと感じています。風景として美しい土木構築物やインフラは、都市地域に新たな地形を創り出すようにも思います。』


設計監理:ジオ-グラフィック・デザイン・ラボ(前田茂樹 木村公翼)
照明計画:NEW LIGHT POTTERY (永冨裕幸)
サイン計画:FARVE (永易直樹)
構造計画アドバイザー:満田衛資構造計画研究所
施工監理:新名工務店

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川辺直哉による目黒区の「上目黒の住宅」

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川辺直哉 (Naoya Kawabe Architect & Associatesによる目黒区の「上目黒の住宅」のオープンハウスに行ってきました。

 敷地面積89m2、建築面積51m2、延床面積90m2。木造2階建て。
一見3階建てに見えるが上部は2.5階。
前庭には自転車置き場が施工中。

 細く続く路地の突き当たり。隣と同時に分譲された敷地だが施主はこちら側を選択。


 玄関を入るとホールが2/5を占め、右側3/5が居室になるような構成だ。
右手前の鏡張りの戸が下足入れ、次に子供室、主寝室、水回りと続く。

 子供室。お子さんは男の子2人。造り付けの家具がシンメトリーに設えられている。


 階段より先も土間のように洗面台、浴室へ連続する。
子どもたちの遊び場になることが想像できる。



 路地がそのまま土間に連続する様子がよく分かるカット。

 2階へ上がると正面にバルコニー。建物裏側は外壁を設け隣家からの視線を遮り、左と上からはたっぷりの採光。
床は1階と同じタイルを用い半屋外的な空間を表現。


 振り返ると1階土間から高さ6.4mの大開口があるように解釈できる。さらに右に高めの開口、トップライト、居室への大きな開口(左)などが軽やかに仕上げられ開放感はたっぷりだ。


 施主はこの抜けを望み敷地を選んだ。当初ハウスメーカーに設計を依頼したところこの抜けは全く考慮されず、「もっと大きな窓を付けて欲しい。」と頼んだところ、「防火やサッシュの問題で “無理” です。」と言われたそうだ。しかし現実には目の前に無理であるはずのものがクリアされ存在している。
ちなみにハウスメーカー2社に依頼した設計はほぼ同じ計画が上がってきたとのこと。

 居室へのシーンの切り替えは高さ3mの門のような開口を介して行われる。
ホール側の壁面にはピアノが置かれる予定。


 居室側は北側斜線による屋根勾配も相まって包まれるような空間に。
奥はキッチンで、その上はロフトスペース。

 振り返るとリビングスペース。(幅約2.5m)


 キッチンにもホールに向けた開口(右)が小さく設けられており、手元が明るくなるし、1階の子供の気配を感じることが出来る。



 2.5階は書斎やホビースペースとして。左はロフト。
路地は100m以上見通せる。逆に言えば100m先からでも室内が見えるということだが、それは十分理解した上で、遠くから我が家を眺めながら帰ってこられる楽しみがあるそうだ。


川辺直哉さん(前)とお施主さん。
「ご覧の通り建物に向かいの路地がそのまま入ってきたような計画です。土間・ホールと居室を明確に分け生活のシーンをアクティブに切り替えられます。」と川辺さん。


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新国立競技場はザハ案(修正案)で着工。整備費約2,520億円

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(日経新聞電子版より)
関係機関トップが集まる調整会議が29日開かれ、下村博文文部科学相は大会のメーン会場となる新国立競技場の整備費を約2520億円とすることを報告した。7月上旬にゼネコン側と契約し、着工は予定通り今年10月とする一方、完成は当初予定より2カ月遅い19年5月とした。


整備主体の日本スポーツ振興センター(JSC)は7月7日、新国立競技場に関する有識者会議を開き、総整備費の細かな内訳などを示す。
調整会議には、大会組織委員会の森喜朗会長、東京都の舛添要一知事、遠藤利明五輪相らが出席した。
森会長は会議の席で五輪招致活動に触れ、「他の候補地と比較して(開催を)獲得できた大きなポイントは、新国立競技場のあの姿だったはず。日本が示せる大きな力だった」と述べた。
工期短縮と工費圧縮のため、全天候型の開閉式屋根の設置を大会後に先送りし、スタンドの約8万席のうち電動の「可動式」を予定していた約1万5千席は仮設の「簡易着脱式」とすると説明された。
文科省は都に対し整備費の一部として500億円程度の負担を要請する方針だが、この日の会議では話は出なかった。
調整会議後、記者会見した森会長は「大変苦労して、努力してよくまとめてもらったのではないかと思う」と下村文科相をねぎらった。「(19年9月のラグビーワールドカップ開幕までには)十分時間を織り込んでもらったので間に合うと思います」と話した。
競技場のデザインは、JSCが12年に実施した国際コンクールで、イラク出身の建築家、ザハ・ハディド氏の作品が採用された。コンクールの応募条件は整備費総額を約1300億円としていたが、斬新なデザインに対し当初から予算オーバーを危惧する声があった。
JSCは、13年に行った試算で整備費が3千億円を超すことが判明したために設計を見直し、14年、規模を縮小して1625億円とする計画を発表。しかし、14年末の段階で施工予定のゼネコンなどから再び3千億円を超すとの試算が示された。
JSCや文科省などは費用を抑えるため、ゼネコン側と設計の見直しなどの協議を進め、6月下旬に総額を約2500億円とすることで合意していた。

新国立競技場、国内外で群を抜く高額に
新国立競技場の整備費2520億円は、近年開催された夏季五輪のメーン会場や国内の主要スタジアムと比べて群を抜く高額となる。
整備主体の日本スポーツ振興センター(JSC)などによると、近年開かれた夏季五輪のメーンスタジアムの整備費は、2008年北京が約530億円、12年ロンドン大会が約950億円(いずれも現在のレート)だった。収容人数はそれぞれ9万1千人、8万人(仮設席を含む)となっている。
収容人数は同規模の8万人(同)とされている新国立競技場でコスト高の要因となっているのが、長さ370メートルの鋼鉄製の「キールアーチ」2本で屋根を支える特徴的な構造。加えて、文部科学省の担当者は「東日本大震災からの復興需要などに伴う原材料費や人件費の高騰、消費増税といったやむを得ない事情がある」と説明する。
ロンドンのスタジアムは五輪後、サッカーチームの本拠地に改修する工事が行われ、約530億円の追加費用がかかる見通し。JSC幹部はこうした点を踏まえて「過去の大会のスタジアムなどとの単純な比較はできない」とする。ただ、新国立競技場でも、五輪後に設置を先送りする開閉式屋根の工事などで費用はさらに膨らむ可能性がある。




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横浜の新たなクリエイティブ拠点「YCC ヨコハマ創造都市センター」内覧会レポート

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新たなクリエイティブ拠点としてオープンした「YCCヨコハマ創造都市センター」(YCC=ワイシーシー)内覧会に行って来ました。
YCCは、横浜市が推進する「クリエイティブ・シティ構想(創造都市構想)」の拠点施設の一つ。建物は同じだが、約5年ぶりに変わった運営団体による、あたらしいコンテンツが注目される。
クリエイターとしてオンデザイン、トラフ、ノイズ、ノザイナーらが参加している。

 YCCが入るのは、1929年に竣工した歴史的建造物、旧第一銀行横浜支店。
カフェ&ギャラリー、コワーキングスペース(シェアオフィス)、ファブラボなどの常設機能と、展示・トークイベント等のプログラム、スペースレンタルなどで構成され、性別、年齢、職業等々関係なく様々な人が利用できる "開かれた施設” を目指す。


 昨年公募で6団体の中から選ばれた「特定非営利活動法人YCC」出席の記者会見。
館長・代表理事の長田哲征は現代美術のコンサル業、代表理事の広瀬郁はプロデュース業、理事の伊東祥次はプロダクトデザイン業と、それぞれ異なるジャンルと個性を持つ3人が運営に携わる。"多様性” を掲げ、横浜のあるべき姿の発信に意欲を見せる。


 横浜を拠点に活躍するNDC Graphics(デザイナー:中川憲造)が手掛けたロゴは、YCCが位置するY字の交差点=出会いや交流をイメージしている。


 1階ホール。Café Omnibus(カフェ オムニバス)
Omnibusとはラテン語の「全ての人のために」が語源の、英語で乗合馬車の意味。
街の広場のようにアートやデザインを知らない人も気軽に入れるカフェとして利用してもらい、YCCの知名度アップや、閉鎖的な建物のイメージを変えていく。


 窓が高く外からのアイコンタクトが無い空間であることから、座席に段差を設けてある。店内の家具や什器は可動式だ。
ホール内に点在するフードカートは5組のデザイナーや建築家が手掛け、市民参加型DIYワークショップにより制作した。


 カートデザインを担当した面々。
左よりトラフ建築設計事務所、B6studio、noiz、オンデザイン、POINT。

 〈ウェルカムカート〉 B6studio


 〈サラダバーカート〉 トラフ建築設計事務所


 〈ウォームミールカート〉 noiz


 奇妙な脚は3階のファブラボと協働で作ったそうだ。


 〈シャルキュトリーカート〉 オンデザイン


 〈ドリンクカート〉 POINT


 2階 Coworking Space Canvas(コワーキングスペース キャンバス)
クリエイター、起業家、さまざまな創造的な活動を行う市民などに開かれた会員制のシェア・オフィス。
働くことをアップデートしていく場所として、ユーザー自らが席周りの仕様を変更したり、座布団や椅子の柄変えなどを上階のファブラボで試作するなど、働く環境に対する実験的取組みを行っていく。


 自由な席で働けるフリーアドレス型スペース


 プロジェクトルームは、複数の人がグループで活用するブース型スペース


 3F FabLab β Bashamichi(ファブラボ・ベータ・馬車道)
ものづくりを通して地域コミュニティーの輪を広げるきっかけをつくる場として機能する。
揃えられた機材は3Dプリンターやレーザーカッターの他、家庭用ミシン、業務用刺しゅうミシン、昇華プリンター等、デジタル加工の中でも親子の参加を想定した "やわらかい素材"に注力していく。

 昇華プリンターで制作していたのはソフトなYCCバッジ。


 3階展示。〈クリエイティブ市民のための6つの手引き〉 NOSIGNER


 訪れた人が「6つの手引き」を見て感じたことや都市に対して思うことを、ポジティブな意見を青で、ネガティブな意見を赤で書き込んでいく参加型インスタレーション。


 赤いメガネをかけるとポジティブな意見が、青いメガネをかけるとネガティブな意見が浮かび上がる仕組みだ。


 すっかり横浜のデザイナーというイメージが定着したNOSIGNER。



予定通りであれば、2020年同じ北仲通南地区に横浜市庁舎が移転してくる。YCCが今後重要なハブとしての役割を担う場所になっていくことは間違いない。


【YCC ヨコハマ創造都市センター】

場所:横浜市中区本町6-50-1
詳細:http://yokohamacc.org




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レベルアーキテクツによる中野区の「沼袋の住宅」

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出原賢一 + 中村和基/レベルアーキテクツ (Kenichi Izuhara + Kazuki Nakamura / LEVEL Architects)  による中野区の「沼袋の住宅」を見学してきました。場所は中央線中野駅から10分程の住宅地。

 敷地面積50m2、建築面積31m2、延床面積73m2。RC造3階建て。
防火地域のため耐火木造と比較検討しRC造を選んだ。

 敷地は狭いT字路の角。3階の傾斜は道路斜線によるもの。
外断熱が施され、外壁はブラウンのジョリパットで仕上げられている。

 上階を支える壁柱はキャンティレバーにして無くす、或いはもっと細い柱にすることも考えられるのではと思ったが、隅切りの位置に周辺住民が週に何度かどうしても出さなければならないものの定位置だそうだ。


 駐車場は所有の車MINIがぴったり納まるぎりぎりサイズ。駐車すると動線が塞がれるため横に開口を設け、玄関も引戸になっている。


 玄関を入ると直線的な構成の中に曲線も見え、柔らかさを演出している。
左手前から書斎、水回り。右側には収納が並ぶ。

 書斎。ご主人が趣味のギターを弾けるように、小さいながらも個室を求めた。


 水回り。玄関ホールに見えた円い壁はこの部分だ。


 2階LDK。


 施主は室内に打ち放しのコンクリート壁と木の質感を望んだので、外断熱になり、材質感のある家具や床(オーク)に加え、左壁面は杉板型枠を使用。


 ダイニングテーブルは置かず、カウンターキッチンで食事。
(ペンダントライトのケーブル長さは調整前)

 キッチンは総ステンレス。奥には冷蔵庫と並んで洗濯機も納まる。
隣家が迫るため両壁面の開口はハイサイドに。


 バルコニーは “使える広さ” になるよう、開口左側の縁を室内に引き込んでいる。


 これでテーブルと椅子を出してちょっとした楽しみに使えるようになった。


 3階へ。


 3階は右側にトイレ、子供室、主寝室と続く。


 振り返ると物干し用のバルコニーへの開口があるが、北側斜線の影響で小さな開口に。



 主寝室。3階もハイサイドライトで設えた。正面の開口は非常進入口も兼ねる。


 クローゼットは設けずに収納を設置することになる。右はベッドボードのニッチ。


 出原賢一さん(左)と中村和基さん。「コンパクトな住宅のため、壁や開口の位置が少し変わるだけで他に影響が出てくる要素が多く、随所に工夫や細かな検討が必要でした。そんな中、手間を掛けた仕上げにより狭小住宅とは思えないような素材感のある雰囲気を出せたのではないでしょうか。」


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「フィールドオフィス・アーキテクツ展」レポート/TOTOギャラリー・間

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7月10日よりTOTOギャラリー・間で始まる「フィールドオフィス・アーキテクツ展 - Living in Place」の内覧会に行ってきました。
[Fieldoffice Architects Living in Place]

 フィールドオフィス・アーキテクツは台北中心から50kmほど離れた台湾北東部の地方都市、宜蘭(イーラン)を拠点に活動する設計集団で、黃聲遠(ホァン・シェンユェン)によって設立された。


 黃聲遠(ホァン・シェンユェン)さん。1963年台北市生まれ。台湾東海大学を卒業後に渡米し、イェール大学大学院修士課程を修了後、エリック・オーウェン・モスの事務所に勤務。1994年の台湾帰国と同時に宜蘭へ移住し、フィールドオフィスを開設した。台湾TOTOより強い推薦がありギャラ間での展覧会に至った。
「建築でイーランを理想の町にしたい。しかし建築自体は重要ではありません。健康で安全で豊かな生活が送れるための要素です。」


 ギャラ間の運営委員でもある内藤廣さんもイーランにある事務所を訪問した。事務所名の漢字表記「田中央」の通り、事務所は田んぼの中にある。
会場で内藤さんに聞くと「建築家の本来在るべき姿、やるべき事をしている。それは非常にエネルギーの必要なことで、今の我々にはなかなかできない。」と話した。

 イーランは太平洋に面したデルタ地帯。事務所はデルタのほぼ中央にあり、その活動は極めて地元密着型で、殆どのプロジェクトが半径15km・車で30分程以内で進行している。


 展覧会は4つの “気づき” をテーマに構成されている。


 会場に入るとイーランを象徴するような台湾の原風景が展示されている。日本のそれによく似ている。


  展示会場に入ると、特殊な展示台に大分使い込まれた感のある模型が幾つも並ぶ。
壁面にはプロジェクトの系譜が掲示されているが、プロジェクトの当初に考えられたテキストではなく、20年経過したのち振り返って書き起こしたもの。というのも、一つのプロジェクトがスタートし、多発的に複数のプロジェクトが重なり合いながら、数年、十数年掛かって進行しているからだそうだ。

〈1st Vascular Bundle〉
町外れのあるエリアの複数の公共施設などの整備プロジェクトで、13年のうちに5つのプロジェクトが少しずつ重なりながら進行した。
周囲には住宅も多く、住民との対話、合意を常に大切にしながら進めるという。
フィールドオフィスは主に公共プロジェクトを請けるので、首長が頻繁に変わる台湾ではその度に計画の変更もあるので苦労が絶えないという。

 こちらでは点在するプロジェクトをまとめて展示。
模型の詳細が壁面パネルで紹介されている。

 〈Shinpai Jinmian Scenic Platform〉


 〈Jiaoxi Civic and Public Health Center〉
礁渓生活学習館。「川と渓谷により、外界と遮断しがたい市民空間を確保した。」

 〈Landscape Public Lavatory by Dong-Shan River Sluice Gate〉
川沿いにある漁村の公衆トイレ。

 〈Revitalization of Kamikaze Aircraft Shelter as War Time Museum〉
員山神風特攻機掩体壕ランドスケープ博物館。
「住民合意の元、特攻機を格納していた掩体壕の保存に成功した。ねじれながら上に延びる歩廊は、特攻機が飛び立つ軌跡を表しす。旋回しながらダイナミックな軌跡を描いて、二度と戻ることはない天空に向かう。」
(photo: Fieldoffice Architects)

 ユニーク展示台は、無数の曲げられたアルミパイプが金具で結合されできている。


 金具は、台湾で一般的に使われる農業用ハウスのフレームを固定するものを流用し、多くの人が手作業で加工し組み立てた。「学生や先生が自主性を持って曲げ、組み立ててくれたもの。コンピューターばかりではなく、皆で力を合わせれば何かが出来る、手作業の大切さを表現した。」と黃さん。


 中庭ではイーランの風景を再現した。
「中庭にある石は、イーラン沖に浮かぶ亀山島に、奥の植栽や背景に立ち並ぶビルはイーランの山々に見える。」

 イーランはとても雨が多い。展示台でも使ったアルミパイプで雲や雨を表現。
展示設営中も、内覧会当日も雨。「イーランそっくりです。」と黄さん。

4階展示室へ。
 手前側はキャノピー(天蓋)をテーマにした展示。
「キャノピーの実質的な機能は、意識的につくられた「空白」であり、民主的で階級のない社会を暗示している。ほどよい高さに基準となる線が引かれることで、見慣れた風景もまた美しく見えるだろう。」

 〈Luodong Cultural Working House〉


〈Camphor Historical Park Revitalization〉




展覧会のクライマックスは、
「ただ自分の身体に意識を向け、いつしか時を忘れる」というテーマで〈宜蘭県立櫻花陵園〉が紹介されている。
「いずれ自分たちもお墓に入る。そして何もなくなる。イーランの自然、音、皆さんの好きな風景を好きな角度から見ていただきたい。」と黄さん。

 これも10年以上前から続くプロジェクトで、霊園の納骨堂やアプローチブリッジ、サービスセンター、展望台などの整備計画。


大きなパーティションは納骨壇(お骨が納まる箱)の実寸モジュールを組み上げたもの。

鉄製の箱同志はボルトや溶接ではなく、角パイプとアングルだけで接合されている。

そして箱に収まるのはアプローチブリッジ〈櫻花陵園入口橋〉の部分断面の数々。CTスキャンの輪切りがいくつも連続しるようなイメージで、展覧会のために鋳型を作ってアルミで制作した。

〈櫻花陵園入口橋〉(photo: Fieldoffice Architects)

会場には黄さんのご家族も訪れた。右側3人が奥さまと娘さん。
左から4人目は黄さんの友人、黄俊銘(ホァン・チュンミン)さん。藤森照信さんに師事し長年日本に滞在した経験があることから、通訳やその他のサポートを買って出た。

【フィールドオフィス・アーキテクツ展 - Living in Place】
会期:2015年7月10日 〜 9月12日(日曜も開館)
会場:TOTOギャラリー・間
詳細:www.toto.co.jp/gallerma/ex150710/index.htm


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オンデザインによる五反田の「コーポラティブガーデン」

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西田司+岩崎修/オンデザイン+中川エリカ/中川エリカ建築設計事務所による東京・五反田のコーポラティブハウス「コーポラティブガーデン」(東五反田桜テラス)を見学してきました。
プロデュースはアーキネット
(中川エリカさんはオンデザイン在籍中から当プロジェクトの主担当で、独立後もパートナーとしてプロジェクトを担当していました。)

 敷地面積177m2、延床面積624m2。RC造地下1階、地上9階建て。
10層に8住戸が入るコーポラティブハウスだ。

 北側から。施主それぞれの要望に応えられるよう、柱や梁(フレーム)を工夫し、各住戸を構成する外壁が雑壁になるようにした。
手前はエレベーターシャフトで、太い柱と梁が外側に露出しているのが分かる。


 敷地は五反田駅から3分。駅前にこんなに緑が豊かな場所があったとは。植わっているのは桜で品川区100景にも選ばれている路だ。
オーナー達は自ずとこの周辺環境をどのように捉えるかが個性になってくる。

 エントランスは3階(法令上は2階)に。
10層8住戸は下から上へA室、B室、、、とH室と呼んでいく。

右を見るとオーナーが各々選んだポストが並ぶ。(取材時一つは未設置)

(アパートと違い、8住戸全てデザインが異なるので写真が多くなります)
 A室は1LDK。カーブした壁が大胆に切り取られたようなデザイン。
正面がキッチンで、左が寝室。

寝室は将来的に二つに分割が可能。廊下の先が玄関で、その左が水回り。

 1階A室(法令上地下1階)。かなり高低差がある敷地のため高い擁壁が見える。しかし都心でこれだけの専用庭を持てることからか、この住戸にまず申し込みがあったそうだ。
正面に見える階段はB室の非常階段で普段は使用できないが、A室の住人だけは右側の門扉から出入り出来る。

B室は2階と3階半分のメゾネット。2階部分を3階へ上がる階段から見る。
この階段は部屋の中央に位置し、背後にリビング、前にはロフト付きの多目的ボックスが鎮座する。ボックスは収納のほかエアコンが付いたり、洗濯機が納まる。

 3階部分のDK。窓の外、目の前を桜が覆う。

C室は4階と3階半分のメゾネット。
玄関周り、扉も各住戸でデザインが異なる。

 C室は二世帯で住まうそうだ。



 B室と同じアングル。この南東側の開口の取り方が各住戸毎に個性がある。


 バルコニーもあったりなかったり、広かったり狭かったりと様々。


 西側の共有階段。
建物の規模の割には900mmと太い梁は2層毎に通っている。柱も1,160mmと太いが4本に留め、住戸デザインをフレキシブルにした。

5階D室は共有階段と連続するコートを設けた。左にベンチが設えてあり、花壇には木を植える予定。

 DKの天井にはプロジェクターやスピーカーが設置されているオーディオ好きな家庭。


 共有階段に向いた開口と、折りたたみの机。階段室が構造コアになっていないのでできるワザだ。


 リビング兼寝室。桜に向かって机が作り付けられている。


 6階E室は玄関を入るとすぐに広めのDK。キッチンや水回りの位置も各住戸ばらばら。


 そしてリビング兼寝室。6階まで上がってくると桜と街並みが見えてくる。

 F室は7階と8階半分のメゾネット。この住戸は唯一東側に水回りを配置し、浴室を全開にしている。


 LDK。南側に上階への階段がある。
7階になると南側は目線の高さに桜はなく、五反田の街並みが開ける。


 階段は吹き抜け。上下層を連続する開口もこの住戸だけ。


 8階の寝室はウッドシャッターパネルを設え光量を調整する。


 寝室側から東西を貫通する3つ目のバルコニーへ出られる。右には水栓も見える。
右側はG室との界壁で開口はない。

 G室は9階と8階半分のメゾネット。LDを広く取りヨガスタジオを営むそうだ。
奥の柱の裏にキッチン。1,130mm角の柱は壁のように大きい。

 8階へ降りて寝室。


 そして最上階10階のH室はワンルーム。


寝室スペースは可動式のパーティションで間仕切る。
天井も構造ではないため、希望により最上階の特権であるトップライトを設けた。


 「同じ敷地で在りながら、10層それぞれ外部環境がかなり変わってくる建物です。そこへ個性豊かなお施主さん8組の思いが加わってきますので、異なる10の敷地に見立て、それらが立体的に連続するたてものとして考えました。集まって住むからこそ、ひとりひとりではとてもつくれなかったような大きな価値を見つけられることを期待しています。」と西田さん、岩崎さん、中川さん。

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SALHAUS建築展「共有される風景」レポート

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8月21日よりプリズミックギャラリーで始まるSALHAUS建築展「共有される風景」のオープニングに行ってきました。

展覧会概要:
『これまでの7年間につくってきた建築のことを振り返ると、それらは私たち3人が共有でき、またその建築に関わる多くの人々が共有できる風景をつくりあげるプロセスであったと思います。様々な規模・ビルディングタイプからなるいくつかのプロジェクトの展示を通して、これまでに実現した、そしてこれから立ち上がる、「共有される風景」を表現します。』 


 エントランス壁面には手掛けたプロジェクトを取り巻く風景が切り取られた写真など。
SALHAUSの面々はしばしば「どのように3人でやっているのか?」と聞かれるそうで、「各プロジェクトで、3人でどういうものを作るか、進むべき方向や考え方を導くための、共有する風景や感じていることがあることを見て頂きたい。それらをしっかりと共有することで3人で大きくぶれずにアイデアを出しながら進めてくことができる。」とのことだ。

 展示室には本展の為に新たに制作した模型を含め5作品が並ぶ。全て1/50の縮尺に揃えてあるので比較しやすい。



 〈群馬県農業技術センター〉 2013年
2009年のコンペで勝ち取ったプロジェクト。様々な農業関連の研究が行われる施設で、研究の対象や研究者によって各室の要望は異なるという。そこで大らかな大屋根を被せ、中はいかようにも構成できるように提案した。

 メッシュ状に組み上げた垂木は最も長いもので23m。4mの角材をプレートで接続し、自然なたわみで屋根を形作っている。
アイデアの当初から構造設計の佐藤淳さんも携わり、佐藤さん自身も初めての試みとして今までにない美しい屋根を実現させた。

 〈陸前高田市立 高田東中学校〉 2016年竣工予定
2012年コンペで勝ち取ったプロジェクト。東日本大震災で被災した3つの中学校を統合し、高台に造成された敷地に新築する。
手前はグラウンド。

部分的な断面模型。地域住民を交えミーティングを重ね、設計を進めながら生徒達とのワークショップや計画説明会も度々開き、子どもも自分達の学校づくりに参加した。

 ごく最近の現場の様子では体育館の基礎を造っており、2016年の3学期の使用開始を目指す。生徒が少しでも早く新しい学校に通えるように工事は急ピッチで進められている。

 カーブを描いた大屋根は高田東中学校(奥)でも採用した。
農業技術センター(手前)での経験を活かし、新たな挑戦も試みている。

 エントランス裏側には3つのプロジェクト。模型とパネルが向かい合って展示されている。


 〈扇屋旅館〉 2012年
80年以上に渡り増改築を繰り返してきた駅前旅館の再生計画。

 既存の宿泊・宴会、新たに計画するカフェ・オーナー住宅といった様々な機能と種々雑多な建築群を、中庭を核にして一気に再編する。この地を訪れる人々と地域住民が出会い、地域活性化の起点となることを目指している。


 〈tetto〉 2015年
8戸の賃貸住戸と集会所からなる木造集合住宅。

 里山の面影を残す敷地に、重層長屋とすることで、北斜面の敷地で各住戸に南側の採光と北側の眺望を確保する。軒を大きく跳ね出した大屋根が、居住者全員で共有できる風景を内外に渡ってつくり出す。
>> 当ブログの訪問記事


 〈西麻布の集合住宅〉
10戸の賃貸住戸とオーナー住戸からなる集合住宅。

 全ての住戸が玄関先にメッシュスクリーンで囲われたプライベートテラスを持つことで、共用部に対して玄関を開放し、2方向からの採光と通風を確保している。共用部から住戸の隅々までを連続したひとつながりの環境としてつくり、居住空間を拡張するとともに、住戸と街の接続の仕方をよりなめらかなものに変えていく試み。
2014 住宅建築賞入賞作品 >> 当ブログの記事

 レセプションで用意されたケータリングのフィンガーフード。円形の器にはレンズ豆のパテ。


左から安原幹さん、日野雅司さん、栃澤麻利さん。
3人の師匠である山本理顕さんから会場に祝辞のメールが入った。「以前tettoを見学させてもらい、『ここに住みなさい』というこのとない、住み手の事を考慮した素晴らしい建築だと感じた。『(私の対極である)もう一方の建築家として』これからも頑張って下さい。」といった内容で会場の笑いを誘った。

【SALHAUS建築展 共有される風景】
会期:2015年8月21日(金)~ 2015年9月16日(水)
会場:プリズミックギャラリー

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山口誠によるラオスの住宅インテリア「House in Pakse」

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山口誠/Makoto Yamaguchi Designがインテリアを手掛けた住宅「House in Pakse」が完成しました。敷地はラオス第二の都市であるパクセの雄大なメコン川を眼前に望む場所。
[photos: Koichi Torimura]
 広大な敷地に宮殿を思わせる大きな建物が3棟あるが、あるファミリーの為に数年前タイ人建築家が設計したもので、正面のメイン棟は延床約8,000m2ある。今回依頼されたのは、右ウィングの建物のインテリアデザインだ。メイン棟を挟んでシンメトリーに左側にも同様のウィングがあるコの字型の建物。


 インテリアデザインを依頼された一棟は3階建て延床面積1,500m2で、そのファミリーの次女のための住居兼ゲストハウスだ。(今回の計画で一部スラブを抜いたので1,266m2に)
依頼された時には、元々の内装工事が少し始まったところでストップしていたという。
「初めはラオスに建てられているヨーロッパ古典風の外観の建物、というその組み合わせに強い違和感がありましたが、途中で外観が黄土色に塗られたことで、意外にもその場所に融合し、固有なデザインとして存在しているように感じられました。その印象を私達のインテリアデザインにも持たせたいと思いました。」と山口さん。



 エントランスを入ると、正面には滝をイメージして山口さんがデザインした、スワロフスキーの特注クリスタルガラスを使用した幅6m × 奥行1mのオブジェが迎えてくれる。


 街の郊外には手つかずの自然に無数の滝があることで有名なパクセ。今回デザインに取り入れた融合の一つだ。


 1Fリビングスペース。装飾的なアーチ窓のついた外壁との組み合わせが自然になるよう床には大理石を使用しているが、部屋の中央部の床や壁には貴重なラオス産のゴールデンチーク材を使用した。
壁は御影石で設え、パクセの森の合間を流れる川や滝の周囲にある荒々しい岩のイメージを持たせた。




 リビングスペースからダイニング方向を見る。左にエレベーター、右に階段。


1F ダイニングスペースは2階までの吹抜け。




 2Fはオーナーである彼女一人のプライベートエリアで、寝室、バスルーム、クローゼット、プライベートリビングなどがある。


 2Fバスルームのシャワーブースと右にサウナ。


 左を向くとゆったりとした空間にバスタブがそっと置かれている。


 3Fホール。ゲストルームが4つある。
床と同様に壁や天井にもチークを貼り込み、ローサイドからの少なめの外光でしっとりと落ち着いた空間だ。

 階段の見下ろし。階段は山口さんのデザインで構造設計を小西泰孝さんが担当。


 ゲストルームの一室。正面奥が入り口で、両側にバスルームとストレージ。手前の空間にはソファーやベッドが置かれる。
ミラー仕上げのステンレスやガラスが嵌められているが、それらは地域の伝統的で素朴な木造の建物にはもちろん使われていない素材。固有の風景をつくっている岩(石)という素材と、現代的と言える金属やガラスという素材が融合している。


 バスルーム

建物の施工風景。

「プロジェクト開始から3年半掛け、2014年の年末にようやく完成しました。ラオスでの建築工事は普段当たり前と思っていたことが当たり前でなく、何もかもケースバイケースでゼロレベルから調査し進めて行くという、凄まじくもかけがえのない経験をさせてもらいました」と山口さん。

プロジェクトのスタートから完成までを綴った特別寄稿記事が、architecturephoto.netの「東南アジアでプロジェクトをもつということ」でご覧頂けます。



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レベルアーキテクツによる「南房総の別荘」

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中村和基+出原賢一/レベルアーキテクツによる千葉県「南房総の別荘」のオープンハウスに行ってきました。

敷地面積567m2、建築面積161m2、延床面積120m2、木造1階建ての別荘だ。
(一部施工中で、斜面右にテラスが設えられる予定)

 敷地は内房の東京湾に面し、新規に造成された別荘地の一番端の角。


 造成地の海側の敷地では平屋のみ建ててよいルールで、敷地境界からもゆったりとしたセットバックが求められている。
造成地の内側(陸側)になるに従って2階建て、3階建てが順次可能になり、できるだけ内側の建物からも海が享受できるよう配慮されているそうだ。

 玄関扉は表とガレージ内にも付く。ガレージは施主好みでスカイブルーで仕上げられている。上部に木製シャッターも見える。


 表の玄関扉から入ると、左の戸と正面のガラス戸からLDKへ。廊下は湾曲し奥が見通せない。
床は大理石張り(CQストーン)。

 廊下を進むと左手に施主が選んだ青いガラス戸。それを透過した青い光に包まれる。
更に奥には寝室と水回りへ。

 水回り。


 寝室。天井が低くなっている箇所は上部がロフトになっており、屋上への出入りにも利用する。


 LDKへ。白い空間に白いキッチン、その向こうに青い海が広がる。


天井高3.4m、海に面した大開口は西と北西を向き、遠くに富士山を望みながら夕日を眺められる。
大理石の床に反射し、景色が2倍に広がるようだ。


視線を下げると堤防が消え、水盤のような床と海が連続して見える。

 塩害を考慮し、サッシュは樹脂製を採用した。
ちなみに、遠景の入江の反対側には廣部剛司さんによる “Villa SSK” と、"海辺のシェルハウス”が見える。

ドイツのSCHÜCO(シューコー)製の引戸とサッシュ。
上部が内倒しでき通気が可能。この状態では戸はこれ以上開かないので防犯に適している。ハンドルを回しロックが外れると手前に動き、引戸として開く。


 廊下で見えた青いガラス引戸はRaiki(ライキ)製。
左には白いレンガタイルを貼り込んだガス暖炉。

 屋上へ。後方に広がる造成地は50〜60棟分ほどの区画があり、まだ空地もある。


 右から出原賢一さん、中村和基さん、担当の小山麻美さん。
「お施主さんは、二面を海に接する最高の敷地を満喫できるよう、広いリビングと全面の開口を求められました。青いガレージや廊下から、リビングへ足を踏み入れると真っ白な空間へ、そして外はまた青い世界へ。塩害の問題もあるので開口は全開にはせず、海風を直接感じたいときはテラスに出られるようになります。」
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