7月10日よりTOTOギャラリー・間で始まる「フィールドオフィス・アーキテクツ展 - Living in Place」の内覧会に行ってきました。
[Fieldoffice Architects Living in Place]
フィールドオフィス・アーキテクツは台北中心から50kmほど離れた台湾北東部の地方都市、宜蘭(イーラン)を拠点に活動する設計集団で、黃聲遠(ホァン・シェンユェン)によって設立された。
黃聲遠(ホァン・シェンユェン)さん。1963年台北市生まれ。台湾東海大学を卒業後に渡米し、イェール大学大学院修士課程を修了後、エリック・オーウェン・モスの事務所に勤務。1994年の台湾帰国と同時に宜蘭へ移住し、フィールドオフィスを開設した。台湾TOTOより強い推薦がありギャラ間での展覧会に至った。
ギャラ間の運営委員でもある内藤廣さんもイーランにある事務所を訪問した。事務所名の漢字表記「田中央」の通り、事務所は田んぼの中にある。会場で内藤さんに聞くと「建築家の本来在るべき姿、やるべき事をしている。それは非常にエネルギーの必要なことで、今の我々にはなかなかできない。」と話した。
イーランは太平洋に面したデルタ地帯。事務所はデルタのほぼ中央にあり、その活動は極めて地元密着型で、殆どのプロジェクトが半径15km・車で30分程以内で進行している。
展覧会は4つの “気づき” をテーマに構成されている。
会場に入るとイーランを象徴するような台湾の原風景が展示されている。日本のそれによく似ている。
展示会場に入ると、特殊な展示台に大分使い込まれた感のある模型が幾つも並ぶ。
壁面にはプロジェクトの系譜が掲示されているが、プロジェクトの当初に考えられたテキストではなく、20年経過したのち振り返って書き起こしたもの。というのも、一つのプロジェクトがスタートし、多発的に複数のプロジェクトが重なり合いながら、数年、十数年掛かって進行しているからだそうだ。
〈1st Vascular Bundle〉
町外れのあるエリアの複数の公共施設などの整備プロジェクトで、13年のうちに5つのプロジェクトが少しずつ重なりながら進行した。
周囲には住宅も多く、住民との対話、合意を常に大切にしながら進めるという。
フィールドオフィスは主に公共プロジェクトを請けるので、首長が頻繁に変わる台湾ではその度に計画の変更もあるので苦労が絶えないという。
こちらでは点在するプロジェクトをまとめて展示。模型の詳細が壁面パネルで紹介されている。
〈Shinpai Jinmian Scenic Platform〉
〈Jiaoxi Civic and Public Health Center〉礁渓生活学習館。「川と渓谷により、外界と遮断しがたい市民空間を確保した。」
〈Landscape Public Lavatory by Dong-Shan River Sluice Gate〉川沿いにある漁村の公衆トイレ。
〈Revitalization of Kamikaze Aircraft Shelter as War Time Museum〉員山神風特攻機掩体壕ランドスケープ博物館。
「住民合意の元、特攻機を格納していた掩体壕の保存に成功した。ねじれながら上に延びる歩廊は、特攻機が飛び立つ軌跡を表しす。旋回しながらダイナミックな軌跡を描いて、二度と戻ることはない天空に向かう。」
(photo: Fieldoffice Architects)
ユニーク展示台は、無数の曲げられたアルミパイプが金具で結合されできている。
金具は、台湾で一般的に使われる農業用ハウスのフレームを固定するものを流用し、多くの人が手作業で加工し組み立てた。「学生や先生が自主性を持って曲げ、組み立ててくれたもの。コンピューターばかりではなく、皆で力を合わせれば何かが出来る、手作業の大切さを表現した。」と黃さん。
中庭ではイーランの風景を再現した。「中庭にある石は、イーラン沖に浮かぶ亀山島に、奥の植栽や背景に立ち並ぶビルはイーランの山々に見える。」
イーランはとても雨が多い。展示台でも使ったアルミパイプで雲や雨を表現。展示設営中も、内覧会当日も雨。「イーランそっくりです。」と黄さん。
4階展示室へ。
手前側はキャノピー(天蓋)をテーマにした展示。「キャノピーの実質的な機能は、意識的につくられた「空白」であり、民主的で階級のない社会を暗示している。ほどよい高さに基準となる線が引かれることで、見慣れた風景もまた美しく見えるだろう。」
〈Luodong Cultural Working House〉
〈Camphor Historical Park Revitalization〉
展覧会のクライマックスは、
「ただ自分の身体に意識を向け、いつしか時を忘れる」というテーマで〈宜蘭県立櫻花陵園〉が紹介されている。
これも10年以上前から続くプロジェクトで、霊園の納骨堂やアプローチブリッジ、サービスセンター、展望台などの整備計画。
大きなパーティションは納骨壇(お骨が納まる箱)の実寸モジュールを組み上げたもの。
鉄製の箱同志はボルトや溶接ではなく、角パイプとアングルだけで接合されている。
そして箱に収まるのはアプローチブリッジ〈櫻花陵園入口橋〉の部分断面の数々。CTスキャンの輪切りがいくつも連続しるようなイメージで、展覧会のために鋳型を作ってアルミで制作した。
〈櫻花陵園入口橋〉(photo: Fieldoffice Architects)
会場には黄さんのご家族も訪れた。右側3人が奥さまと娘さん。
左から4人目は黄さんの友人、黄俊銘(ホァン・チュンミン)さん。藤本照信さんに師事し長年日本に滞在した経験があることから、通訳やその他のサポートを買って出た。
【フィールドオフィス・アーキテクツ展 - Living in Place】
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