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河野有悟による集合住宅「CON-FLEX」

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河野有悟 (Hugo Kohno Architect Associatesによる品川区の集合住宅「CON-FLEX」の内覧会に行ってきました。
京浜東北線大井町駅から10分程の場所。

 敷地面積138m2、建築面積83m2、延床面積152m2。木造2階建て、3住戸のメゾネット型長屋。
周辺は古くからの住宅が密集しながら建ち並ぶ。


 L字型の敷地なので、3つの住戸をL字に配置せざるを得ないが、Lの “角” 部分にも出来るだけ日照を得られるように工夫した。


 グレーの部分を構造体のコアにして中に水回りやバルコニーを設け、白い部分を居室にして両側のコアで支えるような構成だ。


 通り側の1号室。外観で見えたコアのグレーは、室内ではOSBをグレーに塗装した仕上げで連続しさせた。コアの中にはキッチンが納まるのが見える。
床はモルタル仕上げ。


 3住戸のうち一番南向きの開口が広く、アプローチとの接触も多い。


 2階。天井から十字型の木製フレームが吊り下がっているが、ここにカーテンを取り付けて空間を仕切っても良いし、インテリアの手がかりとして活用しても良い、というアイデア次第で使い方が広がる自由なフレーム。


 奥に見えたコアの中は小さなスペースになっており、シングルベッドが納まるくらいの大きさなので、寝室、ワーキングスペース、クローゼットにしても良いユーティリティースペースだ。


 横のドアを開けるとバルコニー。開口の先には昭和の風景が。


 "L字の角” 部分。コアは扇型に配置されている。


 2号室。台形の平面で奥に向かって広がっている。奥の角は敷地に坪庭的にスペースを取っているので、外構の壁に光が反射し室内に光を導いている。




 3号室。西向きなので一日の多くは間接光の優しい光が差し込む。
コアは各室様々なリズムで開口している。

 3号室のバルコニーから。
賃料は1号室が55m2で¥175,000とのこと。


河野有悟さん。「 "4つのコアに支えられた3つの住戸” というイメージです。密集した住宅地の地域性を投影したような、新しくも違和感がないようにしました。こちらで住まい方を決めるのではなく、自由でニュートラルな生活空間になるよう心掛けました。」

この作品の模型が見られます。


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菅原大輔による「ゆたか幼稚園」

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菅原大輔/SUGAWARADAISUKEによる埼玉県三郷市の私立幼稚園「ゆたか幼稚園」の内覧会に行ってきました。
Yutaka Kindergarten
(設計:菅原大輔・原田勝之・上赤坂典幸・楢原弘志/SUGAWARADAISUKE

 敷地面積2,650m2、建築面積812m2、延床面積802m2。木造+一部鉄骨造、1階建て。


 正方形に近い敷地に以前の園舎はL字型に建っていたが、その園庭にほぼ正方形の園舎を新築した。取り壊された旧園舎のL字型部分が新しい園庭になった。


 この幼稚園では子ども自身が疑問や学びを確立する自発的な教育を目指している。そのために経験や体感を誘発する自由で多様な場が設計されている。


 幅約30m。フラットな平屋の園舎が地面と空の間に建っている。平屋にすることで内と外の動線がスムーズに展開し活動的な生活を生み出す。
広々としたこの園庭は「動の庭」。人数や運動量や激しさの違う遊びを誘発する3種類の庭が連続する。

 正面入口側の園庭にはこの後芝生が敷き詰められ、自然に生えてくる雑草も子どもたちへの体験として利用していく。
こちらは「静の庭」。「動の庭」に対して運動量が少なくなる。

 雨が降れば樋から滝のように雨水が流れ落ち、「雨」という自然を感じられる。
その下には植物が芽を出したような形の水栓。

 エントランス。右側の奥へと、左側に教室が並ぶ。


 中央の遊戯室は所々にトップライトが設けられた「屋根の庭」。


 遊戯室は各教室に面しており、日常の情報伝達や遊びの発信基地となる。


 遊戯室には冷房用のダクトが並ぶが、なるべく冷暖房に頼らない生活が出来るよう配慮されている。
トップライトは開閉式で通風も可能。

 この建築の機能的にも意匠的にも象徴するのが山型の壁。耐力壁としての構造も兼ね、仕切りながらも開放的にする相反する作用を両立する。


 山型壁は教室の仕切りや、


 園庭や各クラスの仕切りにも使われ、連続する遊び場を、接続・切断、管理・自由、不変・変化といった矛盾を調停する。



 園児たちの目線からは空間は仕切られるが、


 先生(大人)の目線からは各スペースが見渡せる。


 トイレにも。


 そして “谷” の部分から覗く景色は、光沢のある天井に反射しその色を映し出すよう演出されている。


 そ3月に行われた芝生張りワークショップの様子。
(photo: SUGAWARADAISUKE)

(※図面はクリックで拡大)

菅原大輔さん。「ゆたか幼稚園の教育理念である『環境を通して行うことを基本とする』ということを建物や園庭のハード面にそこはかとなく埋め込むように設け、子どもの目線に合わせて建物や園庭が一体化し、また子どもの生活や遊びを通しての学び、学び合いが『可視化』するように試みました。」

【関連記事】
(この建築の模型が見られます)


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永山祐子建築設計「新事務所お披露目会」レポート

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永山祐子建築設計 (Yuko Nagayama & Associates) 「新事務所お披露目会」に行ってきました。場所は東京都杉並区、中央線荻窪駅から徒歩15分程の場所。
2014年の年末に移転したが、ようやく落ち着いたので開催した。

 駅から少々離れているが120m2のスペースを借りることができた。
入って中央の島に永山さんやスタッフのワークスペース、左に模型制作スペース、右がミーティングスペース。

 天井を剥がし、元の天井高の位置に収納を設けた。デスクはそのまま流用だが、床置きと壁面の棚を合板で新しく作った。


 写真では分かりにくいが、棚、柱・梁、天井と三段階にグレーが濃くなっている。


 模型制作スペースはこの日はDJブースに。


 ミーティングスペースはワークスペースとガラスで仕切られ、新しく作ったテーブルが収まる。


 オフィスの窓側は円弧を描いており、窓際は全周棚を作り付けた。


 パーティーのウェルカムドリンクには〈豊島横尾館〉のある豊島で採れた柑橘にスパークリングワインが注がれた。


 フィンガーフードも豊島や、〈木屋旅館〉のある宇和島から届いた食材で作られた。


 さらにエゾ鹿肉ミートソースのペンネ、猪肉のシチューなどなどケータリング(ピースデリ)に調理してもらい用意された。

現在手掛けているプロジェクトの模型がいくつか並べられていた
 長野県松本市で計画中の住宅。


 山梨県小淵沢で計画中の企業のホール。


 東京都代官山で計画中のテナントビルと、左奥には広尾で計画中の住宅。





パーティも佳境を迎えた頃、モエのマグナムボトルを開ける永山祐子さん。
「事務所はまだ発展途上の状態で少しずつ完成させていきます。海外のプロジェクトも動き始め、これからも頑張っていきますので皆さま宜しく願いします!」

【関連記事】
店舗兼住宅「勝田台のいえ」
「永山祐子展 建築から始まる未来」レポート

 (豊島横尾館や木屋旅館の展示が見られます)

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木下昌大による住宅「ダンダンイエ」

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木下昌大 (Masahiro Kinoshita / KINO architects) による東京都練馬区の住宅「ダンダンイエ」を見学してきました。西武池袋線 石神井公園駅より徒歩12分程の住宅地。

 敷地面積82m2、建築面積41m2、延床面積81m2。木造2階建て。西面が段々にセットバックし切妻のボリュームが3つ雁行している。


 建ぺい率の低い地域で、一昔前の手前のような住宅ではそれによって広い敷地に庭を持ち近隣との距離を保つことが出来たが、近年の世代交代による土地の分筆は、壁一枚で街路に接するという奥に続く住宅街の風景を生み出してきた。


 そのような風景に逆らわずゆとりと採光を得るためのアイデアだ。
左から階段室、リビング、バルコニーへと広がっていきながらセットバックする。

 セットバックした部分は駐車スペースと、その上に床面積に算入されないバルコニーを設け活用できるようにした。(手摺未施工)
中央の引戸が玄関で、右の扉は後ほど。

 玄関を入って左が階段室。右が寝室。


 1階寝室。将来的には主寝室と子供室に分割することも計画。


 駐車スペースから見えた扉の内側は光庭になっていた。
しっかりとした玄関扉を流用し自転車なども入れられる。


 寝室の奥にはもう一つの階段室。


 さらに後ろに下がると奥の個室(子供室)。左の窪みには造り付けのデスクがある。
将来分割され出来た子供室と、こちらの子供室へは2階のリビングを通ってこの階段で降りてこないとアプローチできなくなる仕組みだ。


 玄関横の階段室から2階へ。


 2階LDK。上がると「なるほどこうなっているのか」と思わず言ってしまう。


 バルコニーの奥行きは80cm程だがグレーチングを張り、1階へ光を導く光庭としては十分な効果がある。


 このようなちょっとした内と外を繋ぐ緩衝帯設けることで、アクティビティの幅が広がる。

2階の奥は水回り。その上はロフト。


 センターにはキッチンとダイニングを一つの島にした。ジャスパー・モリソンの〈Pipe Chair〉に合うテーブルはオリジナルで製作した。(後に天板は椅子の座面に合う木目にする)
梁にはダウンライト用にライティングレールが付けてある。


 西を向いた妻面は表情が豊か。
施主からは明るく白い室内を求められたという。床はアッシュ材、天井はラワン合板に半透明の白を塗装し真っ白にはせず、床、壁、天井のコントラストのバランスを取った。

 バルコニーに出てみると景色は路地の先に連続することが分かる。妻面に開口を設ければ視線は遠くに抜けるが、逆に遠くから見られるほど室内の奥まで見通されるというネガティブさもあるためここでは開口しなかった。



木下昌大さん。「建築はその内部と外部を程よく繋ぎ、程よく切り離すためにあります。ここではだんだんセットバックで程よい距離をつくり出し、高密度な都市に住まう一つのプロトタイプとしました。」

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猿田仁視/CUBOによる住宅「Green Wall」

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猿田仁視/キューボデザインHitoshi Saruta / CUBO design architectによる世田谷区の住宅「GREEN WALL」を見学してきました。

 敷地面積79m2、建築面積31m2、延床面積62m2。
名称は "GREEN WALL” であるにも関わらず真っ白だが、蔦を這わせ緑に覆われたところで完成とのことだ。

 風致地区のため、前面2m、周囲1mの厳しい壁面後退が求められている。
トップライトのフレームが煙突の様に突き出ている。トップライトのサッシュはどうしても出っ張るので、それなら思い切って突き出し意匠にした。

 玄関を入り左を向くとホールになっている。左に寝室、突き当たりに水回り、右にスタディーコーナー、上にはロフトが見える。

 階段は集成材のロッドによる吊り下げ。
北側にはたくさんの開口。その向こうは外壁に挟まれた光庭がある。

 スタディーコーナーは勉強や、読書、趣味と使い方は自由。
床はナラ材。

 デスク横にビンテージのスイッチを発見。つまみを回転させ照明が点灯する。

 水回り。洗面と浴室の間に抜けが出来るよう開口を設けた。

 浴室から見た光庭。ここにも日影に強いツル植物を選んで植える。

 2階へ。開口からは一面にGreenが見えるようになる。

 2階LDK。南側(右)の開口は抑え、北側の外壁に反射した間接光でメインに採光。
ファサードの妻面がシンメトリーになるように、棟が折れ曲がっているのが確認出来る。

 間接光メインの中にトップライトの強い光を通す。煙突の様なトップライトからは刻々と表情が変わる光を楽しめる。

 反対側にはキッチンとトイレ、書斎が並ぶ。左の下り階段はロフトへ通じる。
(世田谷区ではロフトへは開口の横から進入してはいけない為)

 キッチン横の開口は出窓にすることで作業台にできた。

 北側に多くの開口を設けたのは間接光を取り入れるほか、「北側は順光で空が青く見えるから」と猿田さん。

 物干しのバルコニー。そして美しい青空だ。

 ロフトへ。

 ロフトはL字型に広がるかなり大きな空間だった。

ご主人のレコードコレクションが並ぶ趣味の空間になる予定。

 編集関係の仕事をされている施主が内覧会の案内ハガキを作ってくれた。

猿田仁視さん。「お施主さんは外観・内観について、超ミニマルで、 最小限の要素でデザインされることを望まれました。そして白い外壁は何年も掛けて緑で覆われて完成形となります。日々変わっていく住まいの姿を楽しんでもらえればと思っています」

関連記事
猿田仁視による自邸「cnest」と住宅「SOL」


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「藤本壮介展 未来の未来」レポート/TOTOギャラリー・間

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4月17日よりTOTOギャラリー・間で始まる「藤本壮介展 未来の未来」の内覧会に行ってきました。
Exhibition [Sou Fujimoto: FUTURES OF THE FUTURE] 

 「建築をつくるということは『未来の種』を蒔くことではないでしょうか。
僕たちが設計する建築は、敷地の条件やクライアントの要望、地域社会の文化的歴史的な背景などに耳を澄まし、さまざまな要因と対話をする中からインスピレーションを得て現実の場所をつくり出すものです。それは現実社会の潜在的な可能性に形を与える作業だと言えるかもしれません。そして可能性が顕在化するこ とを未来と呼ぶとするなら、そのきっかけとなる小さな建築的な提案は『未来の種』なのです。
それは未来を予想することとは違います。また未来を決めつけることとも違います。完成された未来図では なく、むしろ未来の無数の断片とでも言うべき、可能性と予感の『種』を蒔いていくこと。」(展覧会コンセプトより抜粋)

 会場には大小様々、形も様々な模型が注に浮いている。


 時系列、プロジェクト毎に並んでいるわけではなく、アイデアの森を自由に散策するような趣向。


 具体的なもの、抽象的なもの、リアルなもの、予感めいたもの、これらが混ざり合いながら並ぶことで、実現したプロジェクトに対しては「これはどんなアイデアから生まれたものだろうか?」、逆に何か分からないようなものは「これはどんな建築になるのだろうか?」と想像しながら見て回る。


 3階展示室から中庭まで連続するように模型は果てしなく続く。その数111個。
アイデアは一本の道を辿るのではなく、枝分かれしながら別なアイデアが生まれ、他のアイデアと融合しながら別のプロジェクトの形として生まれ変わることもある。そんなことに気付いてもらえるように展示してある。

模型を一部紹介
 〈house NA〉
「東京でもっともエクストリームで、もっとも根源的で、もっとも東京らしくて、もっとも原初的な家の一つにちがいない。」

 集合住宅〈tokyo apartment〉の初期案。
「もっとも東京らしい家の “集合"はこんな感じではないだろうか? そこに階段が巡り、この家の積み重ねは新しい都市の地形となり、路地となる。」

 〈house N〉の断面模型。
「この建築は空気の厚みによって出来ていると言えないだろうか? あるいはまた、無数の重層する窓によって作られた家だと言ってもよいかも知れない。」

 〈台湾タワー〉先頃、市長が代わったことにより計画が一時中断されてしまった。
「それは塔というよりも、場そのものだ。300mの上空まで伸びる “場”。」
「意地で展示しました。」と藤本さん。

 〈台南に提案した美術館〉
「日差し雨を遮る大屋根が、光のフィルターとなり、光の抑揚としての都市空間をつくり出す。透明と不透明の間に様々な領域をつくり出す。」

 〈台北に提案した集合住宅〉
「これからの建物は毛が生えたようなものになるかもしれない。日差しを遮るルーバーが同時に空間も規定する。」

 〈ベオグラードのコンペで一等に選ばれた都市施設〉
「都市の広場と交通のハブ、そして商業・文化施設。渦巻き状のパスの途中にはカフェやショップが点在する。求心性と流動性。」

 「こんなベッドで寝たい。こんな家に住みたい。こんな街に住みたい。」



 〈サーペンタイン パビリオン〉の初期スタディ。
「思考の様々な形。」

 屋内から屋外へも鏡の壁面は連続しアイデアの森の拡がりを演出。


 模型は中庭の隅々まで並ぶ。

中庭の模型を幾つか紹介。
 「半透明のエーテルのような建築というのは、たぶん永遠の夢だろう。いつか実現するだろうか?」


 「こんな高層ビルがあったらいい。」


 〈コンペで勝利したブダペストの音楽堂〉
「木々の中に揺らいだ大屋根には無数の開口があいており、その開口を樹木が貫通する。木々の下を歩いているうちに、知らず知らず建築の体験が始まっている。」

 「この網の向こうに未来の建築を見ることができるだろうか?」


 「建築をささえるとてもシンプルなフレームが、揺らぎ、増殖し、枝分かれして樹状に成長していく。その端部から樹木が枝を伸ばす。このハイブリッドな高層住宅を考えたい。」



 4階展示室は、一転整然と並んだ20個の模型と壁面を覆う大型パネル。
このフロアのタイトルは〈Architecture is Everywhere〉=建築はどこにでもある、どこにでも生まれうる。
プログラムの綿密なリサーチや分析などとは別に「これが建築だったらどうなるんだろう?何がおきるのだろう?」という建築とは全く異なるものと建築を結びつけ、新しい場所、新しい建築の思考を常に行っている。


 これら「種」である模型と、そこから芽を出し、実現或いはもうすぐ実現するプロジェクトを壁面に並べ、建築が生まれるときの自由や楽しさをここで表現している。


 松ぼっくりのような建築は確か見たことがあるが、


 そう、左のフランス・モンペリエで進行中の集合住宅〈L’Arbre Blanc〉か。
各住戸には複数のバルコニーが付き、最大で8×5mのものもあるというバルコニーに住むような住宅だ。建設前だが、100数住戸のうちほとんど売約済みで残りは5住戸程だという。

 内覧会が始まると観覧者は模型の周りを彷徨うように楽しんでいた。


 展覧会に合わせて刊行された〈Sou Fujimoto Architecture Works 1995-2015〉。107のプロジェクトが網羅された作品集だ。
また作品とは別に藤本さんが20年間で気になったキーセンテンスが12収録されており、

 それらが会場のそこかしこにさりげなく展示されているのを探すこともできる。


藤本壮介さん。「タイトルの “未来の未来” とは、建築には長い歴史があって今に結びついています。特にここ数年、過去、現在、そして未来に対する責任を強く感じていて、現在設計しているものは未来にインスピレーションを与えるような、受け渡していくようなものだと考えています。それを “種” のかたちで未来に投げ掛けていくという意味です。」


【藤本壮介展 未来の未来】
会期:2015年4月17日 〜 6月13日
会場:TOTOギャラリー・間

【関連記事】


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若手建築家5名による倉庫リノベーションの提案「MAKE ALTERNATIVE TOWN」

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若手建築家5名による倉庫リノベーションの提案「MAKE ALTERNATIVE TOWN」のフォーラムと展覧会に行ってきました。
2014年中﨑隆司を中心に、幹事企業イーソーコ、プラス、リソーコと共に「倉庫リノベーション研究会」を発足。
その後隈研吾や、妹島和世、西沢大良などを講師にトークイベントを開催しながら、若手建築家(畝森泰行、中川エリカ、久保秀朗、松井亮、中村真広)と共に「倉庫リノベーション」「ウォーター・フロント新世紀」「品川・田町エリア再生」をテーマにについて研究を進めてきた。
そして今回、今までの研究を発表するフォーラムと展覧会(4月22日まで)が
田町の建築会館開催された。
展覧会の会場構成を西沢大良が担当した。

 フォーラム・展覧会開催主旨
「世界とつながる羽田空港と日本全国につながる東京駅の中間に位置する品川駅・田町駅周辺地域は日本全体のターミナルライン、ターミナルエリアの核となるポテンシャルを持つ地域。
山手線の新駅、リニア中央新幹線ターミナル駅、アジアヘッドクオーター特区などの計画があり、さらにウォーター・フロントを挟んで2020年東京オリンピック・パラリンピックのベイ・ゾーンと向かい合う。このエリアを構成する芝浦地区はリノベーションの可能性を秘めた倉庫が残る地域。
倉庫という既存インフラを活用しながら、10年後、20年後の芝浦地区、品川駅・田町駅周辺、及びウォーター・フロントの未来を豊かに創造していくためのデザインとビジネスモデルを考える場を共有するために、展覧会とフォーラムを開催。」

 建築会館ホールでのフォーラムにおいて、株式会社リソーコ代表取締役社長池田浩大による講演のほか、出展建築家5名によるアイデアのプレゼンテーションが行われた。


 建築会館ギャラリーでの展覧会(4月22日まで)。
大きな展示台に芝浦地区の模型と、その周囲には参加メンバーの紹介を兼ねた著書や掲載雑誌が並ぶ。

 芝浦地区の模型(西沢さんが教授を務める芝浦工大の学生達による制作)。
芝浦はその殆どが埋め立て地で、運河、産業道路、東京モノレール、首都高速などの物流インフラが網の目のように張り巡らされている。その中にイーソーコが扱う倉庫が多数あり、さらにその中からいくつかの倉庫をピックアップして「この倉庫をリノベーションするならどうする?」といった投げ掛けに、若手建築家が答えるといった展開だ。

 特に表現方法の決まりはなかったが、皆大きめの模型で微細に作り込んできた。


 〈LOFT FIELD shibaura〉by tsukuruba design(中村真広 + 柴山修平 + 日高海渡)


 ドローンの愛好家は今後益々増えると予想されるが、安全に楽しむ場所が限られる。
そこで倉庫のフロアの下層と上層の間にネットを張り、物資上部の未利用空間を有効活用し、倉庫の収益性を上げようという提案。

 〈Shibaura Library〉by 畝森泰行建築設計事務所


 倉庫を「ものを保管する」から「情報を収集し、発信する」図書館へ変える。
薄暗い倉庫内の一部をスキップフロア化によって光や動線のアクティビティのある空間にし、従来の図書館像を拡張した新しい公共の場と運河沿いの遊歩道が織りなす水のネットワーク。

 〈パブッリック・ポータビリティ〉by 松井亮建築都市設計事務所


 芝浦の中でも高層住居誘導地区に指定されたエリアは居住者も多い。
周辺住民がエンドユーザーとして利用できる工房の提案。セルフリノベーションの推進やマーケット、スクールなどの公共性も担いながらモノ作りの拠点として街と繋がる。

 倉庫内に設置された大型の貨物用エレベーターに収まるサイズをモジュールとして、屋台、陳列棚、階段状座席などを組み合わせて様々な用途に可変出来る。


 〈Open-Traffic SOHKO〉by 久保都島建築設計事務所


 選定倉庫の北側には年間利用者が8,800万人の東京モノレール、南側の首都高速は年間3,600万台の車が走る。これらへの潜在的な広告効果を利用するため倉庫の2階部分を三角形の区画にしたショールームにする。


 〈まちを知りたいなら、まずは外に出よう〉by 中川エリカ建築設計事務所


 屋上はその建物に属していながら、ランドスケープでもあり、地面から切り離されているため建物単体のスケールを超えた周辺環境に属した存在になる。芝浦には「外である」という価値を謳歌できる屋上がたくさん在り使われるのを待っている。


 ここで提案するのは三角形のフレーム状「工作物」。床面積も屋内も持たない工作物が、様々な展開へのきっかけとなり、開放的であることから身体とまちのスケールを縫合できるのでは、という試み。


左から中川エリカ、松井亮、久保秀朗、西沢大良、中﨑隆司、池田浩大、中村真広、畝森泰行の各氏。
「これはオリンピック後まで続く息の長いプロジェクトです。東京の新しい顔として変わっていくであろう芝浦エリアにこれからも注目して下さい。」と中﨑さん。

【MAKE ALTERNATIVE TOWN 展】
日時:2015年4月16日〜4月22日
場所:建築会館ギャラリー


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西久保毅人/ニコ設計室による「マシューズさんの家」

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西久保毅人/ニコ設計室 (Taketo Nishikubo / Niko Design Studioによる「マシューズさんの家」のオープンハウスに行ってきました。中央線国立駅から徒歩10数分の場所。
[Matthews-san’s House]

 敷地面積192m2、建築面積88m2、延床面積132m2。木造2階建て。敷地は共有私道の突き当たり、斜めに跳ね上がった屋根が「ここだよ!」と手を上げているようだ。


 近付くと敷地が私道に対しL字型に接し、左下に三角形が出来ているのが確認出来る。このちょっとした部分が北側斜線を緩くし三角の屋根を生み出した。


 設計依頼を受けたときから敷地には赤松、椿、紅葉などが残されていた。


 玄関は洗い出し仕上げの土間と踏み石。円弧を描いた板の間は、上がり框を用いず切り放しの仕上げ。


 玄関からは納戸とトイレが収まるコアを設け、その裏にファミリールーム。


 納戸の引戸には奥さまが用意した戸車が存在感を示す。


 トイレはドラマチックに。


 ファミリールームは廊下から三段降りて畳み敷き。低い視線から庭の木々を楽しむことが出来る。
左側に見えるのは子供室で、鏡の引戸と、棚付きの引戸になっている。


 2階にあるリビングとは別の家族でテレビを見たりする部屋。左の奥さまが立つ場所が納戸で、玄関の方へ通じている。


 娘さんの部屋は黄色。


 息子さんの部屋は青。


 両部屋とも上に登ることが出来、2階の書斎へ通じている。


 主寝室。一角には奥さまが瞑想(ヨガ)スペース。白樺の丸太もご自身で用意した。


 浴室には何と富士山のモザイク。そしてバスタブではなく、ヒノキの縁をつけた浴槽。
ご夫妻は結婚前静岡に住んでいたことがあり、その思い出にということだがしっかり静岡側からみたシェイプになっているそうだ。

 2階へ。ニコ設計室のオープンハウスではよく見る光景だ。


 開口に囲まれたリビング。手前は土間のような仕上げの家事動線でキッチンとユーティリティを一直線に結ぶ。


 キッチンと、筆者背中側がトイレ・洗濯・作業をするユーティリティ。
3連のペンダントライトの下にはダイニングテーブルがくる。


 キッチンの奥へ進むと跳ね上った屋根部分が見えてきて、高くなった天井の最上部からトップライトの光がグラデーションを作りながら注ぐ。


 キッチンの奥からは2階の殆どが見渡せる。


 リビングからキッチンはこのように。


 ユーティリティと奥にトイレ。子どもたちは工作が大好きでここで色々作ったり実験を楽しむ予定で、壁には工具が吊り下げられるように有孔合板が張られている。アメリカのガレージのような感覚だ。
それにしても作業台が高い。120cmはあるだろうか?

それもそのはずマシューズさんの身長は192cm。斜線制限が厳しい中でできるだけ天井も高く設計した。


 アメリカで買って個人輸入したガス暖炉。これも随分高さがあるなと思ったが、マシューズさんが肘を掛けてパイプをくゆらす(パイプは吸わないが)ポーズにぴったりの高さなのだとか。
ちなみに同じガス暖炉は日本でも売っているそうだが価格はアメリカの3倍する。


 暖炉の裏は書斎。マシューズさんは大学の先生(言語心理学)であることから蔵書が多い。
書棚の塞がっている部分に暖炉の煙突が通る。
左下は子供室に通じている。


 リビングの東側は大開口でそのままバルコニーへ連続する。


 前回OHレポートをした「小川さんの家」の赤ん坊が来たので子守りをする西久保さん。


 バルコニーへ出てみる。後に頭上1/3位はパーゴラを付けて藤棚にでもしようと計画している。
左には階段が見える。

 少し降りて物干しスペースで、さらに地面まで降りることが出来、裏庭を囲むようにデッキが張られて寝室側と回遊できる。




 基本設計が終わった後、奥さまは素材や雰囲気を伝えるために自ら詳細なイメージ模型を作った!


ご家族全面協力の取材。
「用途毎に部屋を細かく分けるご要望でした。するとどうしても空間がどん詰まりになってしまうので、横へも縦へも回遊できるよう工夫しました。また奥さまの思いが詰まった模型のイメージに近付けるよう努力したつもりです。」と西久保毅人さん(前列右)


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藤原徹平による専門学校「AOI Medical Academy」の新校舎

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藤原徹平/フジワラボ (Fujiwara Teppei Architects Labo) の設計による医療福祉系専門学校「AOI Medical Academy」の新築プロジェクト (A-School Project) の内覧会に行ってきました。JR高崎線 深谷駅から徒歩2分程の場所。

 敷地面積491m2、建築面積384m2、延床面積1,907m2。S造6階建て。
AOI Medical Academyの母体は地元の医療を支える病院の一つで、以前専門学校はその病院に隣接していたが、今回駅前に新築移転してきた。


 深谷駅からの眺め。深谷市長を務めたことのある理事長は「深谷を活性化してくれるランドマークのように。」と望んだ。
医療福祉系専門学校として成立させるには学生数の確保はもちろん、必要なカリキュラムのための設備が文科省などの基準が定められている。そこに建築基準法や消防法なども絡んでくると、なかなかまとまらずに困っていたところ藤原さんに声が掛かった。


 フジワラボでは徹底的にプログラムを検証し、不要な要素を圧縮・統合していった結果「室」と「上下の動線空間」それらを取り巻く「中間領域」という空間組成にたどり着いたという。
そして館内を1・2階が事務やパブリック、3・6階に教室、間の4・5階に実習室を挟むような構成にして学生が上下に動くようにした。


 内部階段やエレベーターもあるが、上下の移動を容易にするため外部の避難階段も設けた。特徴的な階段は、二つの敷地を合わせた計画地の奥側が旗竿敷地だったため竿の部分を利用した。


エントランス。 ファサードは高さ7mのガラス面をスチールサッシュが支え、そこに独立した構造の風除室が勘合している。


 風除室を抜けると正面にシンボリックな回り階段が現れる。


 1・2階は吹き抜け。教員・事務室はオープンにし、学生との風通しを良くした。


 オープンライブラリー。奥には講堂。


2階にもサロンのようなオープンライブラリー。
1階の動線部分に柱が出ないように2階の床は梁から吊られている。梁のH鋼は一番大きい物で650mmを使用。
各フロアの床は色が異なる。


 階段から隙間から見下ろすと、フロア毎に色分けがされているのが分かる。


 2階オープンライブラリー。国家試験に向けて学生はとにかく良く自習をするそうで、出来るだけたくさんの自習スペースを求められた。
机はこのスペースの床形状を模したデザインになっている。


 無垢の鉄サッシュによってフレームが細くなり開放的だ。


 3階教室。


 4階実習室。これらの教「室」と実習「室」を学生は常に行き来するが、


 廊下は移動のためだけの空間であることから、面積を取ることはできなかったので、これらを圧縮し、


 延床面積に算入されずに移動と寛ぎを両立する「中間領域」のバルコニーを設け、


 建ぺい率に算入されない屋外階段を「上下の動線空間」として積極的に利用してもらう、


 それにより外部を活発に活動する若者の姿が街に現れることになる。


 バルコニーから南の深谷駅方面を見る。眼下は都市計画道路で市役所に繋がる通りを整備している。そしてこの学校と通りを往来する学生(=若者)が起点となり街の活性化に繋がることが理想だ。


 ちなみに、深谷は渋沢栄一生誕の地として知られる。渋沢は深谷に煉瓦工場を創設し、東京駅建造のための煉瓦を供給した町でもあったことに因み、1996年に改築した深谷駅舎は東京駅をモデルにしたデザインになっている。しかし既に煉瓦産業はなく駅舎にはタイルが使われているそうだ。


 4階理学療法科実習室。


 そのバルコニーは東と南面のL字型に。


 冬季は北側から赤城颪(おろし)が強く、開口は北面には設けなかった。


 体育も必修のため屋上は運動場に。






藤原徹平さん。「専門学校というプログラムを成立させるぎりぎり最小限の "室" 内面積であると同時に、最大限の "中間領域"を獲得できるように設計しました。」
「最小限の "室"内面積から必然的に生まれるプログラムの共有、単純すぎる構成を調停する新たな建築言語の必要性など、専門学校という施設をプログラムからうまくドライブさせ、生きた場の集合に変質させることを試みました。」


 (この建築の模型が見られます)


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岩間直哉/博報堂プロダクツによる「フコク生命ご当地キティーミュージアム」

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岩間直哉/博報堂プロダクツ (Naoya Iwama / Hakuhodo Product's Inc.) が展示空間を手掛けた「フコク生命ご当地キティーミュージアム」に行ってきました。会場は内幸町の富国生命ビル一階エントランスホール。
[Fukoku Life - Local Hello Kitty Museum]

 フコク生命のイメージキャラクター “ハローキティ” を日本各地の名産品・歴史・人物等とコラボレーションさせた、全国62支社のフコク生命オリジナルご当地キティの展示空間だ。


 入口にはキティを家紋のようにあしらった暖簾を掛け、日常としてのオフィス空間から非日常としての本展への境界としている。スーツを着たビジネスマンばかりの環境にキティのコントラストが際立つ。


 床には抽象化した日本地図が描かれており、その地図上に各地域の個性を身にまとったご当地キティを浮遊させ、空間全体で日本列島を表現している。 


 会場の見取り図。 東京には支社が多いためより多くのスペースが確保されている。


 訪れた人はまるで日本を旅するような感覚で会場内を巡ることができる。


 キティと同様、黒いアウトラインの強弱で描かれた日本地図。




  ちなみに東京は7支社あり、そのうち右から日本橋(東京支社)、矢切の渡し(東京東支)、リス(町田支)が各モチーフになっている。


 会場の奥まで行くとお気に入りのご当地キティに投票し、抽選で展示作品のレプリカがプレゼントされるキャンペーンを行っていた。(注:既にキャンペーンは終了)


「ハローキティのもつシンプルで構成的なデザインを空間に翻訳することを目指し、余分な装飾を極力排除しました。全国に広がるフコク生命のネットワークを理解するとともに、個性溢れるご当地キティを通して日本各地の伝統や地域性を体感しに来てください。」と岩間直哉さん。
 
【フコク生命ご当地キティミュージアム】
会期:2014年12月8日〜2015年6月30日(予定)
会場:富国生命ビル1Fエントランス(東京都千代田区内幸町2-2-2)
詳細:www.fukoku-life.co.jp/kitty


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京都工繊大「KYOTO Design Lab東京ギャラリー」オープン&修了作品展レポート

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2014年、京都工芸繊維大学に発足したKYOTO Design Labは、今年4月に東京ギャラリーをオープンさせた。こけら落とし的な第一弾イベントとして、「2014年度 建築学専攻・デザイン学専攻修了作品展」を開催。ギャラリーと展覧会のオープニングに行ってきました。

 場所は千代田区外神田にある “3331 Arts Chiyoda” 。


 3331 Arts Chiyodaは元中学校をリノベーションしたアートセンターで、アートギャラリーやスタジオ、工房など様々な団体が運営するスペースのほか、飲食店、ショップ、イベントスペースなどもある。
3331とは江戸一本締めの手締めのリズム。

 2階の1室に4月22日にオープンしたばかりの「KYOTO Design Lab 東京ギャラリー」。
KYOTO Design Lab (D-lab)のコンセプトは、「デザインによる社会変革のために、デザインの実践に直結する方法論を考究する場。世界中から招いた一流のデザイナーや研究者が文化都市・京都に滞在し、さまざまな視点からプロジェクトに協働するパートナーとともに、成熟した都市の再生や、成長する都市の持続可能性、超高齢社会における快適な暮らしの設計のための課題の発見と解決に取り組む。」

 東京ギャラリーはそれらの取り組みを発信する広報機能を持つ。
ちなみに隣には多摩美術大学の「アキバタマビ21」が入居している。

 修了作品展には建築学専攻・デザイン学専攻から選抜された優秀作品が展示されている。


 建築では修了制作5点のほか、卒業制作2点の計7作品。


 〈河渠の累箋/堀子川の河渠とそれに付属するヴォイドと空家の再解釈〉by 吉田卓巨
京都市壬生地域の堀子川。生活や産業に使われなくなった川と、その川辺に点在する空き家を繋ぎ、堀子川を街並みに溶け込む新たな都市モニュメントとして組み替える。

 〈霊園という場の更新〉 by 差尾孝裕
都市では墓地が不足し自らが望む場所で眠るのは困難になっていく。既存の墓地を更新することで次世代に受け継がれる終焉の場を提案。

 〈土木構築物拡張による尾道都市空間再考〉 by 伊藤祐紀
山と海に挟まれた尾道市は海と並行に水平方向に開発されている。消失してしまった山と海を繋いでいた参道を拡張しながら面的ネットワークを構築。

 〈Odoi Hotel〉 by 本岡一秀
豊臣秀吉によって京都に築かれた御土居。現在わずかに残る御土居を観光資源として捉え、御土居の存在を顕在化させる宿泊施設を提案。

 〈円環の風景〉 by 岡本淳樹
大阪府の京大農業跡地は縄文時代から近畿で最初の農業集落遺跡が眠る。ここに古代の農業と未来の農業の風景を繋ぎ止める円環の建築を提案。

 〈Building scape〉 by 倉岡泰大(学部卒業制作)
いち地方都市である鈴鹿市の都市空間の特徴を建築に落とし込み、身体的三次元空間からこの街の人々の記憶や歴史を保全する建築を提案。

 〈畏の坂に実る/葡萄と自転車を通じて自然災害に触れる道の駅〉 by 東琢哉(学部卒業制作)
地滑り等の自然災害が起こりやすい計画地に、人々の自然災害に対する認知を高め、防災・減災できるように意識を浸透させる空間を提案。

 デザインでは修了制作4点。


 〈fliprack〉 by 橘温希
紙と磁石を使ったシステムラック。数年で引越を想定するような生活に於けるテンポラリーな家具だが、十分な強度と利便性を備え、リサイクル(或いは廃棄)も容易。

 〈ビリビリジョウギ〉 by 久山格
紙を裂いて楽しむ工作セット。紙を裂くときのビリビリという感触を楽しみながら、型に沿って裂かれた紙を様々に組み合わせて工作を楽しめる。

 〈Geoph〉 by 三田地博史
3Dプリンターによる立体地図とGPSを組み合わせた登山用デバイス。立体地図データを元にプリントされた地形とGPSを組合せ、登山の際立体的に現在地を把握できる。

 〈視覚に刺激を与える表現方法/ “プロッタ画” の開発〉 by 深地宏昌
デジタル操作でアナログ質感を生み出す “新領域” の開拓。デジタルデータをペンプロッターによって直筆描画するという、デジタルからアナログに変換する新領域の視覚表現。

(※紹介した全ての作品は、出品者及び京都工芸繊維大学がその知的財産権を保有しており無断で模倣することはできません。
Each designer and Kyoto Institute of Technology retain the intellectual property rights in all the works introduced here. Reproduction or imitation of these works without written permission is strictly prohibited.)

KYOTO Design Lab 所長(ラボ長)の小野芳朗教授。
「京都工繊大が遂に東京へ進出です(笑)。ようやく東京にも発信拠点を持つことが出来ましたので、ここから全国へさらに世界へと発信していきたいと思います。」
「京都という都市は、伝統を継承しながらも新しいものを呼び寄せ、イノベーションを誘発する多様性に富んでいます。本展での作品はそれぞれが問題意識を持って取り組んだ意欲作ばかりです。地球規模で考えながら京都という場でしか掴み得ない能力を磨く、私たちの実践の成果をじっくりとご堪能ください。」

【2014年度 建築学専攻・デザイン学専攻修了作品展】
日時:2015年4月22日〜5月24日/12:00〜19:00(月・火休廊)
場所:KYOTO Design Lab 東京ギャラリー/3331アーツ千代田203号室


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浅利幸男による目黒の住宅「八雲の家」

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浅利幸男/ラブアーキテクチャー (Yukio Asari / Love Architecture) による目黒区の住宅「八雲の家」のオープンハウスに行ってきました。

 敷地面積132m2、建築面積66m2、延床面積158m2。RC造+木造、地下1階、地上2階建て。 
手前の外壁には左奥に積んである石を貼り込み、建物との間に屋根を付け自転車置き場になる。 


 ファサードの仕上げにはモルタル補修材を使用し、エイジングが進行したような風合いに工夫した。
南向きだが開口は控えめ。内部への採光はどのようにしているだろうか。


 玄関扉を囲む庇は、鉄板にリン酸処理亜鉛メッキが施されている。


 玄関に入ると、足元にはモルタルに埋め込まれた御影石。不均質な石を選んでいるが、こういった “味” のある石は通常不良品扱いで出回らないので、見付けるのに苦労したそうだ。


 奥へ進むと建物の中央に中庭。ここを中心に各部屋へ採光し、北側に水回り、西側に主寝室。 


 中庭に面したの南側には子ども室が二つ。
見上げると斜めの天井の奥に、スリット状の開口が覗いていて中はピアノ室に。


 北側の床には地下室への明かり採りが開けてある。
右の引戸内にはエレベーターが納まる。


 水回り。


 主寝室。


 主寝室から中庭を見る。植わるのはシャラ。先ほど見えた斜めの天井は上が階段になっているのが分かった。


 地下へ降りて見上げる。階段室の奥側(頭上)にも明かり採りがある。


 地下はホビールーム。筆者の背後に納戸が続く。


 2階へ上がると前出の階段が目の前に現れるが、こんなに大きな階段だったとは。


 そして振り返るとこんな所に腰掛け。
地下室へはトップライトから光が導かれているのが分かる。


 屋上へ。


 屋上はT字型で様々な植物が植わっている。右には腰掛けが設えてあり、その背後が建物の正面だ。
(植栽はモダンリビングによるコーディネート)


 屋上はリビング側にも通じておりここにも腰掛け。回遊しながら沢山の居場所がある。


 右の階段を降りてきてリビングダイニングを眺める。壁はすさを混入させた土壁で仕上げられている。
ソファはミノッティだ。


 奥に最初の階段。回ってきたのがお分かりだろうか。


 ダイニングテーブルは造り付け。最初の写真の左側に見えた縦スリット窓がこのダイニングと連続している。左にキッチン、トイレ、ピアノ室と続く。


 キッチンは外観正面から見えた出っ張りの部分で、東西に開口してあり手元がとても明るい。
家事がまとめてできるよう洗濯機も納まる。

キッチン側から見た中庭。
「日本の住宅設備や建材はとてもきれいで良いのですが、経年や素材感からくる風合いを出すのは非常に難しくいつも苦労します。」
「子どもが豊に暮らせる空間を目指しました。立体的な回遊性を持たせ、ドラマチックな光の変化が時間毎、日毎、季節毎に変わり、そして植物も姿を変えていくそんな多様性のある住宅です。」と浅利幸男さん。

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三鷹の店舗兼集合住宅「楼庵」

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魚谷繁礼による寄宿舎「西ノ京のシェアハウス」

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魚谷繁礼(Shigenori Uoya) によるシェアハウス「西ノ京のシェアハウス」の内覧へ行ってきました。場所は京都市中京区、JR二条駅より徒歩9分。
企画は、フラットエージェンシーによる。

鉄筋コンクリート造 3階建、6個室
延床面積 172.28m2、建築面積 70.21m2、敷地面積 114.31m2


北西側外観
外壁は、吹付け,コンクリート打放し
条例により角敷地では車両が安全・円滑に通行できるように道路隅部を隅切りしなければならないが、直角にすると周辺の建物と壁面線がそろわなくなるので円弧にカットしている。右側の庇は隣の町家に高さを合わせることで、街並に馴染ませている。


北側外観
高い壁の横からは吹き抜けのバルコニーが見える。

エントランス
内の様子が伺える玄関。

玄関を入ると共用部のリビングと東側に中庭。


右方に目を向けると、階段を少しの段差を上がってキッチン・ダイニング。共用スペースは広々とし、利用者が愉しく集う空間に。


奥に進んで玄関の方を振り返る。
階段下の空間に、入り口。奥へ進むとバスルーム。

バスルーム。
奥には小さな竹庭。上部だけが空いており、雨が降ると雨が入ってくる。

キッチン・ダイニングの方へ進むと、個室へと向かう扉が右手に。
扉の上に2つの小窓が見えるが、左側はバスルーム、右側は個室のロフト部屋と繋がっており、このような小窓から住人それぞれの気配を感じとることが出来る。

扉を開けて進むと、階段。階段は建物の中央に配置されており、少し階段を上がると個室が現れ、また少し上がると共用部分の水回り、また少し上がると個室と、階を造らずに段差を使って様々な空間を構成している。

ROOM1
個室はそれぞれ個性が違う部屋が6室。どのような景色を見せるかを考え、それぞれの部屋の配置と窓の配置を考えられている。
この部屋からの景色は、バスルームから伸びている竹と、円弧に隅切りされたバルコニーから古い街並を望むことが出来る。

階段の段差で出来た空間をロフトスペースに。梯子を使って下へ降りる。

ロフトスペース


窓からは先ほどのキッチン・ダイニングスペースが見える。

階段室に戻って、更に上へ登る。次はどんな空間が現れるか、ぐるぐると上に登っていく愉しさを作ることを意識して共用フリースペースが現れるタイミングなどを考えたそうだ。

共有部分の洗面所1
気持ちよく歯磨きが出来るように、ベンチを配置。奥には東向きに配置された広めのバルコニー。


バルコニーを出て、方形屋根を見上げる。


キャンティレバーにより、飛び出した個室が印象的に見える。また、キャンティレバーにすることで、窓からの視線を外している。

ROOM2:キャンティレバーの部屋
正面(南向き)窓からは隣のトタン板壁がグラフィカルに見えるように意図的に開口を作っている。左側(東向き)の窓からは1階の庭が見える。


ROOM3:近隣の町家が見える部屋
この部屋ではバルコニーの外側に壁を設けられており、壁が分厚く見えることで守られているような感覚になる。

振り返るとこの部屋にはロフトスペースが付いている。
ドアは開け放しにしても邪魔にならない引戸を採用。

更に上に登ると、2つ目の共用スペース。バルコニーからは、京都の街並を望むことが出来る。

階段室最上部にはトップライト。

最上階まで登り、階段を見下ろす。

『建築に人間が住みついているような感じにしたかった。また、階毎の居住者のまとまりではなく、建物全体での居住者のまとまりのようなものをつくりたかった。そのために階をつくらず、段差を使った空間を構成した。外観からは窓が少なく閉鎖的に見えるが、開口やヴォイドを効果的にくりぬくことで、譲られつつも開けた内部空間となるよう設計した。』魚谷繁礼


設計監理:魚谷繁礼建築築研究所
構造設計:満田衛資構造計画研究所
施工:アムザ工務店
企画:フラットエージェンシー

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アトリエ・天工人によるシラスRCの住宅「R・トルソ・C」

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山下保博+水上健二+友寄篤/アトリエ・天工人Yasuhiro Yamashita / Atelier Tekutoによる渋谷区の住宅「R・トルソ・C」(読み方はトルソ)のオープンハウスに行ってきました。
シラスを混合するという新しいコンクリートの住宅。

敷地面積67m2、建築面積31m2、延床面積107m2。RC造、地下1階、地上3階建て。
矩形の角を面取りし、空に向かって積極的に開口するシリーズ第4弾。



見る角度によって姿が大きく変わる。これらの面取りは斜線制限や天空率によって生まれ、バランスを見ながら意匠に落とし込む。


下の開口は1階と地下の半分に、上の開口は2階と3階に面する。
前庭にはブラシノキが植わる。 

外構に敷き詰められたシラスの軽石。
シラスとは南九州の火山による火砕流堆積物の総称で、鹿児島県には県の面積の半分、東京ドーム6万杯という膨大な埋蔵量があり、土木用としては利用が進んでいるものの、建築では左官壁や瓦の利用に留まり、建築の構造体としてはほとんど実績がないそうだ。



実績がないため構造体としての認定には多くの実証実験をこなし、ようやくこの1棟に限り国交大臣の認定を取得できた。しかし今後、個別に大臣認定を取得しながら実績を作り一般認定を目指す。というのもこのコンクリートは将来的に取り壊した後、粉砕しリサイクルセメントとして利用が可能だからだ。
「一説にはあと100年ほどでセメント原料は枯渇するといわれています。そのためにも今から都市にセメントをストックしておくということです。」と山下さん。



今回のコンクリートには前出の軽石が使われたわけではない。通常コンクリートに使われるのは水、セメント、石灰砕石、石灰砕砂、山(川)砂だが、トルソでは山砂をほぼシラスの細骨材に代えて混合されている。


玄関に入ると鈍い銀色の床になっている。亜鉛メッキに見えたが、ステンレスを研磨して仕上げられた特注。


1階。中へ入ると北面の三角窓から淡い光に照らされた黒い建具。MDFボードに墨を含浸させそれを磨き出すということを繰り返し行われたもの。
床はモルタルだが、ひびが入る可能性があったのでシラスは使わなかった。


玄関側を見ると4畳半の和室。引戸で仕切られ客間として使える。
右はトイレ。



地下へ降りると今度は建具が墨ではなく柿渋で仕上げられている。手摺は鍛鉄で仕上げられ、微妙な凹凸が手にしっくりと馴染む。(墨・柿渋、手摺は共に田中制作)
床は特注のシラスタイル敷き。
中央の扉の中は音楽好きのご主人のためのスタジオ。 

階段下の収納には熱循環システムの太いパイプが通っている。地下の冷たい空気と、3階の暖かい空気を季節によって循環させることができる。


2階へ。2階・3階は吹き抜け。


2階LDK。キッチン左の黒い扉を開けると水回り。
床はとAVボードは紫の木材、パープルハート材。鹿児島のシラスを使っているのでサツマイモ色にしたそうだ。

階段の上では構造担当の佐藤淳さんがキャンティレバーの具合を確認している。佐藤さんにとってもシラスコンクリートは初めての素材で、大臣認定取得のためのプロジェクトメンバーとして2012年から携わる。


振り返ると三角形の大開口から空。


キッチン周囲はステンレスにバイブレーション仕上げ、収納の扉はさらにキャンディーカラーのダークグレーの焼き付け塗装。
Dornbracht(ドンブラッハ)の水栓が付くキッチン前面のガラスの裏は浴室だ。

パンチングメタルの扉が1枚あるので開けてみると、外に小さなバルコニー状のヤードが設けてあった。


この住まい、施主の住まい方を考えた場合ゴミ箱が室内にあるべきではないと考えたため。


キッチン裏の水回り。


浴室から見たキッチンのガラス。階段が透けて見えている。


見上げると三角形の吹き抜けからトップライト。トイレの上はハイサイドライト。
3階の床が2階とは角度を変え壁に勘合しているようなイメージ。

3階へ。

3階寝室。収納を兼ねる腰壁で視線を遮る。開口には曇りガラス調シートを貼るかどうか、まずは住んでみて決めるそうだ。

ベッド頭上には間接照明。枠に沿ってある溝にはカーテンが付く天蓋へと姿を変えるので、寝ているところが外部から見えるわけではない。
ヘッドボード背後の開口は浴室へ通じる吹き抜け。

山下保博さん。「天工人が挑戦的な建築をつくることを良くご存じのお施主さんで、『今までにないRC造の住宅を建てて欲しい』と望まれました。その言葉を受け、『パンテオンに使用された古代コンクリートを現代の最新技術を用いて環境型コンクリートとして蘇らせる』というキーワードで始まったプロジェクトです。コンクリートばかりでなく、各部の仕上げも丁寧に作り込み工芸作品のような住宅が出来たと思います。」

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空を切り取る家


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岸本和彦による辻堂の住宅「House-H」

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岸本和彦/acaa (Kazuhiko Kishimoto / acaaによる辻堂の住宅「House-H」のオープンハウスに行ってきました。JR東海道線の藤沢駅と辻堂駅の中間で〈湘南T-SITE〉に近い住宅地。 (>>湘南T-SITE取材記事
60代夫婦の住まいで「岸本さんにお願いするならこんな敷地がいいですよね。」と依頼された。

 敷地面積122m2、建築面積35m2、延床面積93m2。木造2階建て。
正方形の傾斜地に対して立方体の建物を少し回転させ、2階の対角が東西を向くように配置した。そして東西にはコーナー窓を設け内部空間が貫通するようになっている。

 敷地の周囲は国有の売地で、美しい雑木林になっており今のところ非常に恵まれた環境だが、いつどのように変化するか分からない。


 敷地裏手より。2階西側にもコーナー窓が設けてある。
1階・2階のガルバリウム鋼板が張られた部分は居室を拡張してある。できるだけコンパクトなマッスで設計を進めるなか「もう少し部屋を広く」という施主の要望に応えたためで、内部ではこの突き出した部分を効果的に活用している。


 玄関から見るとホールが対面外部まで見通せるが、隣家があるためツバキが受け止める。


 見上げると2階までのボイドで、水平・垂直に空間が抜けている。


 玄関ホールの一直線の抜けは光沢のあるタイルで仕上げ、それを挟むように左右は床の仕上げも変え、黒いレイヤーを立てることでその抜けを強調しているのが分かる。
左奥は水回り。


 半地下の納戸へ降りる階段室の片面には大きな書棚。


 玄関横の障子を開けると寝室。右手前には床の間をイメージした腰掛け。


 寝室。紺色の和紙壁紙が貼られているのが外に突き出した部分。出幅の分上部にトップライトを設け表情が豊かになっている。


 床のタイル、障子の組子、書棚の棚寸法は全て同じ。


 浴室の奥から勝手口のように物干しテラスへ出られる。また、海から帰ってきてそのまま浴室へ入れることができる。


 2階へ上がって振り返る。
左下の斜めの壁が玄関ホールの角度で、上部の黒い壁が45度回転した東西を貫く2階の抜けの角度。


 (筆者のカメラの限界で撮った)東西のコーナー窓。北側のコーナーにはキッチンが納まる。


 西側を見る。この季節(5月)には太陽の昇り・沈みが良く見え、夕日が水平に対角を照らすそうだ。


 東側を見る。右の壁に見える開口は、上からエアコン、AVラック、吹き抜け。壁の裏側は和室。


 吹き抜けの見下ろし。


 和室の突き出し部分も寝室と同様に仕上げてある。


 和室奥から。


 トップライトを見上げると梁が見える。白い内側の壁と青い外側の壁を構造的に一つに繋ぐためだ。


キッチンの開口は1階階段室と同じような形状。


北側の角に納まるためホームベース型だ。


岸本和彦さん。「ここは熟年夫妻の終の棲家です。コンパクトで慎ましやか、法定建蔽いっぱいの建物は全く不要です。しかしコンパクトだからといって窮屈にならないように抜けを大切にしました。それにより夫婦のつかず離れずの心地良い距離感が保てるようになると思います。」


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新国立競技場は屋根なし・規模縮小で建設

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2020年東京オリンピック・パラリンピックのメイン会場となる新国立競技場は、計画していた開閉式屋根、80,000人収容という規模を見直して建設することが発表された。
一部を仮設スタンドとして収容人数をまかない、オリンピック後に50,000人規模へ縮小できるようにするという。
また工期が間に合わないことから'19年ラグビー・ワールドカップ、'20年のオリンピックの時点では屋根を設けず、大会開催後に設置する計画。


下村文科相は舛添知事に対して、建設費用1,692億円のうち周辺整備にかかる500億円の負担を要請したが、舛添知事は建築資材の高騰などで整備費用が膨らむことが予想されることから、「協力は惜しまないが、競技場の建設には不明な点が多い、もっと都民や国民に情報開示をしてほしい。」と情報公開を求めた。

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グエナエル・ニコラ作品集「CURIOSITY ESSENCE」出版記念レセプション

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グエナエル・ニコラ/キュリオシティ  (Gwenael Nicolas / Curiosityの作品集「CURIOSITY ESSENCE」がロフトパブリケーションズから刊行。出版を記念したレセプションに出席してきました。

場所は代官山T-SITE ANJIN。


作品集は、20年以上過ごしてきた日本からニコラさんが学んだデザインのエッセンスとなる6つの考え方(LIGHT&SHADOWS、CHOREOGRAPHY、RYTHM、SEI/DO、CRARTSMANSHIP、PAST&FUTURE)を作品を通じて紹介する内容となっている。


写真メインでプロジェクトの説明は少なめ。Louis Vuitton、Fendi、Berluti、Nissan、Lexus、Sony等との仕事も網羅した一冊。約1年半掛けて出版するに至った。


今回の出版に合わせ、オリジナル香水その名も"CURIOSITY ESSENCE"が発表された。
檜、ベルガモット、和菓子、緑茶、シナモンなどをブレンドした香りで本と同じ考えのもとにデザインされている。
浮遊しているかのような一滴(一瞬)を表現したボトルは、菅原工芸硝子が手吹きで制作したため一つずつ微妙に形が異なる。
香水発表はニコラさんにとって12年ぶり2度目となる。


会場ではキュリオシティTシャツを着たスタッフがフラグランスセットを持って回り、そこかしこで甘い香りが漂っていた。


桐箱に入れて販売される香水は1個2万円、300本限定。

ディスプレイされた香水の後ろに映るのは友人のビジュアルデザインスタジオWOWがこの日の為に手掛けたという香水のコンセプト映像。


香りが持つ和のイメージと、キュリオシティの削ぎ落とされたデザインや抽象的な世界観をベースに制作された。


グエナエル・ニコラさん
「作品集は普通過去をまとめたものになるけれど、これは "僕らのこれからを示すもの"という意識で作りました。本を通じて日本人に大切なものを思い出してもらい、そして海外へは日本の奥深さをわかりやすく伝えることが出来ればと思います。香水を作ることはデザイナーとして重要視しています。例えばこの作品集を読むには1日かかるけれど、香りは一秒で伝わりますからね。」


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成瀬・猪熊建築設計による住宅「スプリットハウス」

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成瀬・猪熊建築設計事務所による東京の住宅「スプリットハウス」を見学してきました。
[Split House / Naruse Inokuma Architects]

 敷地面積122m2、建築面積53m2、延床面積105m2。木造2階建て。
旗竿敷地に雁行しながら伸びるアプローチ。3方に隣家が迫るが、奥の西側は小学校・幼稚園があるので開けている。


 玄関前には大きな庇を出し、自転車置き場などに利用できる。


 玄関を入るといきなりLDKが広がり、頭上を覆うように階段がレイアウトされている。左には納戸とトイレ。


 LDK。天井高を3.1mまで上げ、ハイサイドライトを全周させることで3方を囲まれた旗竿敷地にありながら十分な光量を得ている。床は一面モルタル仕上げで床暖房が備わる。 


 中央には客間として使う和室と右に書斎、天井が持ち上げられた雰囲気がよく分かる。 


成熊事務所でデザインした大きめのダイニングテーブル。
ペンダントライトはフランス・ツェツェの陶器製。施主が用意した。



 ソファは家族が集まったり寛ぐ場所。テレビはここには置かないそうだ。


 柱にボルトが見えるが、外周の柱を二重に立てて固定しているため。


 別の角度から。右の表しになっている柱は2階を支え、壁の中にもう1本入っている柱が壁やサッシュを支えている。それによりハイサイドライトのサッシュが柱に干渉せずに外観ですっきりと見える。


 和室は三畳。上部は隣の書斎とガラスで仕切られている。ここでも柱の外側にサッシュがあるのが確認出来る。


 軸組のアップ。柱、梁、筋交を全て同じ太さの材で組んだ。
1階の明かりはスポットライトを天井に向けて間接照明に。

 2階へ上がる階段で振り返ると、架構が枝を伸ばす樹木のように見える。


 ハンモックスペースと呼ぶ2階。ここにハンモックを吊したりテレビを置く予定。
スキップで上がる2.5階へは、このハンモックスペースに切り込みを入れて作ったような開口で、シーンの切り替えができるようになっている。


 しゃがむと2.5階が浮いているように見える。
階段にはグラインダーの削り跡をそのままにクリア塗装してある。全体的に仕上げすぎない仕上げに。

 2階ハンモックスペースを見返す。施主は自宅でも仕事をするため1階には人の出入りが多い。そのため1階はオープンでパブリックなエリアで、2.5階はプライベートなエリア。それらの切り替えをする緩衝帯のようにこのハンモックスペースは作用する。


 2.5階はがらりと色が変わり、5人家族共用のオープンクローゼットを中心に、個室が3つ、そして水回りが配される。


 家具、建具、壁、天井はラワン合板でラフなデザイン。


 子ども室。1階で見えた外周側の柱はこちらの個室でも表しになっている。




「隣家の迫る旗竿敷地という不利な条件を、1階の天井高を上げ全周をハイサイドライトにすることで、光と開放感を得られるようにしました。結果水平力を受けるためのブレースが表れ、単純な校正ながら森のような空間へ変質させました。」と猪熊さん、担当の大田さん。

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前田圭介による店舗デザイン「王子サーモン銀座店」

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前田圭介/UID (Keisuke Maeda / UID architectsによって「王子サーモン銀座店」の店舗がリニューアルされたので見学に行ってきました。
プロデュースは広告代理店のサン・アドで、ブランディングプロジェクトの一環として、前田さんが店舗デザインを依頼された。
[Oji Salmon Ginza]

 王子サーモンは1967年に苫小牧で創業した老舗。銀座店は銀座3丁目、松屋通りに面した角地に在り、4月28日リニューアルオープンした。
前田さんにとって東京での初プロジェクトだ。

 雑居ビルの1階が店舗で、2階がオフィス。昨年(2014年)9月頃依頼を受け、今年1月初旬にデザインが決まり、内装・外装素材の手配、仕上がりの検討・調整、納品を4月の施工が始まるまでに揃える必要があったという。


 ファサードはアルマイト処理されたアルミに見えるが、近付くとステンレスのホット材だった。熱間圧延したままの材で滑らかな梨地が自然なムラを見せている。


 ヨーロッパ風の支柱から吊り下げられていた既存看板は、鮭のマークだけを抜き出し行灯にした。


 行灯は店舗両側の角についているので店は見付けやすい。


 店内に入るとウォームホワイトの空間中央に曲線を描く陳列台と、壁面に埋め込まれた陳列棚、そして右側にカウンター。
以前の店内は対面式のカウンターが横に長く設置され、客の動きは左右だけだったが今回は回遊型にし自由に店内を見て回れる。

 床はトラバーチン、壁はオリジナルの素焼き煉瓦タイル(国代耐火工業所)、陳列台の天板はステンレスで、側面と天井のルーバーはスタッコ仕上げ。


 サーモンのオレンジが映えるようシルバーと白のシンプルな空間に。しかし単なる白ではなく、複数の素材による温かみのある高級感漂う白。
陳列台にはサーモンに良く合うお勧めワインも並ぶ。


 存在感のあるオリジナルショーケースは思わず引き寄せられのぞき込んでしまう。


 カウンター背後の窓からは厨房が見え、サーモンを切り分けるライブ感を演出。


 外が内に連続する前田さん特有のデザインはここに。


 紅鮭、時鮭、キングサーモン、アトランティックサーモン、フィヨルドサーモンと、5種類の鮭で造り上げた銀座店限定のサーモン製品は今回サン・アドが手掛けたパッケージに収まる。


 手提げ袋のデザインも一新。銀座を持ち歩いてもステータスを感じられるようにしたそうだ。


 銀座の街並みを眺めながらイートインも可能。
筆者は "キングサーモンの西京漬けおにぎり” をいただいたが、これが鮭のおにぎりか、と思わず唸る重厚な味(!)

 2階のオフィスもリニューアルしたので少し紹介。レセプションと、奥にオフィス、右に会議やイベントに使うフリースペース。


 応接室には造り付けのソファ。前田さんの作品 “群峰の森/COSMIC” でのデザインを踏襲。


前田圭介さん「洗練された銀座の魚屋だったらこのような感じかな、とイメージし、魯山人の言葉『器は料理の着物』にあるように、商品と一体となりながら引き立てることができれば良いなと思いながらデザインしました。」

【王子サーモン銀座店】
東京都中央区銀座3-7-12
www.oji-salmon.co.jp

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槇文彦グループより新国立競技場プロジェクトへの提言

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槇文彦グループより新国立競技場プロジェクトへの提言が届きましたので全文を紹介します。


=================================
『低いキールアーチ構造がコスト高、長工期の原因である』

(JSCの現在案に対しコスト削減、工期内工事可能な対案を提言する)
平成27年5月29日 槇グループ

提言
現在JSCが推し進めようとしている案(A案)の問題点については、私たちは昨年来、具体的な問題点を指摘してきたが、JOC、JSC、文科省他関係省庁、東京都、自民党等関係者内部においても現実のものとなって浮かび上がってきた。この問題点の最も大きなものはコスト高と工期の長さである。
この問題を引き起こす原因は原案(A案)の低いキールアーチ構造にあり、この課題を解決する方策として、低いキールトラス構造をやめ、代案(B案)として過去のオリンピック主会場で広くもちいられている構造形式と客席のみを覆う屋根形式を提言する。


(画像クリックで拡大)

現状のA案で進める限り、あらゆる面(建設費、維持費、収入の市場性、屋根開閉装置や芝生の育成に必要な技術的保証、景観・・・)において代案(B案)より不利である。この時点で、再検討する費用は、得られる利益を補って余りあると考えられる。
これにより、オリンピック及びラグビーワールドカップ等のスポーツに関する要求条件を満足し、予算内に納め、予定通りの工期で完成することが可能である。

代案B案は以下の通り

① 屋根は観客席用に限定して覆う。従って屋根開閉装置、芝生育成の装置、閉鎖開口部等は不要であり、それらを支えていた長辺方向のキールトラスは不要となる。観客席用の天蓋は客席最上部からのキャンティレバー方式等、今後の検討による。
これによるコスト削減は約1500億円内外が期待できる。

② 恒久観客席6万人席以内の規模、2万人席は仮設とし、オリンピック開催時は8万人とする(仮設席の位置はいくつかの選択肢があるので今後の検討による)。

③ この2点の変更を行うことにより、全体で約1000億円内外で42ヶ月程度の工期で建設が可能となる。

④ 但し、これまでの国立競技場の使用例を参考とし、様々なイベントにより対応しやすいデザインとする。

屋内スポーツサービス施設の充実、将来に寄与する子どもスポーツセンターなどの案も新たな収入源として一つの可能性となる。

⑤ 現行案は大幅な変更となるが、設計体制については、デザイン監修者以外の設計・施工体制は継続して設計、建設にあたることが可能である。(JSCとデザイン監修者との契約変更については、国民の納得のいく方法で行う)。

以上



以下に原案(A案)と代案(B案)の比較検討の結果を簡略化して示します。


(画像クリックで拡大)


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