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「アトリエ・オイ展」レポート/AXISギャラリー

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スイスの建築デザイン事務所アトリエ・オイの設立25周年を記念した東京での初の個展「アトリエ・オイ展ーmaterial play」がAXISギャラリーで始まった。本展は、これまで手掛けてきた代表作を中心に、それぞれのデザインがどのように生み出されるのか、素材やプロセスとともに紹介する。

アトリエ・オイの活動領域は、建築、インテリア、プロダクト、グラフィックなど多岐にわたり、アルテミデ、B&Bイタリア、ブルガリ、USMなど数多くのブランドのプロジェクトを手がけている。近年では岐阜県との伝統工芸プロジェクトほか日本でのプロジェクトや展示が目立つ。

まず会場で出迎えてくれるのは〈Honminoshi Garden〉。岐阜県美濃市の手漉和紙をつかったインスタレーション。スパイラルガーデンでの展示も記憶に新しい。

〈マテリアル プレイ〉
作品やアトリエ・オイの日常を撮った映像。

会場は中心のリボン状に連なるパーティションで仕切られた空間にマテリアルやプロセスを軸とした展示、そのまわりをぐるりとインスタレーションが配されているという構成だ。

〈オイフォリーク〉
伸びたり縮んだりするランプ。形、光、空間感覚の変化を見る人に感じさせる。今回は靴を脱いで畳にあがる日本スタイルで演出。

〈マテリアルズ〉

マテリアルを操り、そこから学び、自然を観察するのがアトリエ・オイの基本的な姿勢。実験に基づいた生きたストラクチャーのアーカイブをつくっており、その数なんと常時25,000種類という。それらを将来のプロジェクトに役立てている。

〈DNA創作プロセス〉
アルミの折りたたみと穴あけに関する実験。世界初の飛行機や、リモワのスーツケースに見られる金属加工のノウハウに基づきインスパイアされたもの。

リモワのショップのインテリアに使われているアルミの実物大も。グローバル展開していくそう。

<アレグロ> フォスカリーニ
触れると美しい音を奏でる大きな鐘のような形のランプ。アルミニウムの棒がバランスを取りながら揺れ動き光と影をつくる。

〈エオル〉
本展のために製作された新作で、香りを使った動くインスタレーション。

和紙でできた傘上のものがパフュームディフューザー。時計やヨーヨーのメカニズムが利用され、円運動、直線運動のための2つのカウンターウェイトが備えられている。

棒状のウェイトを下に引っ張ると上がっていき、離すと回転しながら風と共にほのかな香りを放つ。円の軸に用いた木材はスイス・アローラ地方のもので、そこからも樹木の香りが。エオルとはgod of windの意。

〈シヌア・マイクロアーキテクチャーズ・システム〉
会場で使われているパーティションもアトリエ・オイの作品の一部。両面が使用可能なカーテンとして、また防音性の間仕切りとしてオフィスなどで使用するためのもの。規則的な波型が美しい。

 日本でも販売がはじまった〈USMイノスボックス〉。ポリエステルのフリース素材。USMハラーと互換性のあるサイズ展開なので、ハラーユニットに収納しても、単体としても使用することが可能。


〈フェノメノン〉自然から受けたインスピレーション
2002年のスイス万博のヌーシャテルに建てたスイスパビリオンの屋根のモチーフとなった水滴の写真や、照明器具「アレグロ」のモックアップなど。


〈ダンサー〉
ダンサーが踊るようにシェードがヒラヒラと回転する照明。

〈レザー〉
アトリエ・オイにとってレザーは、その扱いから造形までノウハウを持つ素材のひとつ。多くのレザー作品は、残った切れ端までその後の作品の一部としたり、最初から残る部分がないようにカットする。

〈フュージョンコレクション〉
光沢を放つシルクと手漉き和紙を組み合わせたランタン。外観のシェードにはシルクが用いられ、和紙が内包されている。オゼキとイタリアのダネーゼ・ミラノとの協働プロジェクト。


〈ギフォイコレクション〉
飛騨産業とコラボレーションしたダイニングチェア&テーブル。まっすぐに伸びた杉柾目圧縮材の美しさとなめらかさが特徴的。

アトリエ・オイの3人。左からオーレル・エビ、アルマン・ルイ、パトリック・レイモン。
「異なる食材の組み合わせを試す料理人のように、いつも素材を試しています。普段お見せすることが出来ないようなプロセスの部分を公開できて嬉しいです。様々な国に行きますが、日本人は私たちの作品を一番理解してくれているように思います。」

AXIS誌12月号。素材に真摯に向き合う彼らの取り組みをさらに詳しく知ることが出来る。

【アトリエ・オイ展 ― マテリアル プレイ】
atelier oï EXHIBITION – material play
会期 2016年10月28日~ 11月06日
会場 アクシスギャラリー(東京都港区六本木5-17-1 AXISビル4F)
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サポーズデザインによる「マツダ 高田馬場店」

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谷尻誠+吉田愛/サポーズデザインオフィスがデザインを、マツダデザイン本部による監修の「マツダ 高田馬場店」内覧会に行ってきました。場所は副都心線 西早稲田駅近く、明治通り沿いで11月5日にオープンを迎えた。

 敷地面積1,565m2、延床面積3571m2。地上3階、地下1階。鉄骨造/地上、RC造/地下。
マツダが進める「新世代店舗」のコンセプトを基に、よりブランド訴求に重点を置いた店舗計画で、サポーズが手掛けるのは「目黒碑文谷店」に次いで二店舗目だ。

 外観の一番の特徴は流れるようなラインを持つルーバー。夕景ではアップライトがルーバーから洩れ新しい街の風景を作っている。
(photo: Suppose Design Office)

 うねる陰影はファサードが3次曲面を描いているからだ。カーデザイン用の3Dソフトを駆使してデザインされ、車のボディーのようであり、疾走感を表現している。

 アルミパネルを1枚ずつ曲面加工してあるため繋がりが滑らかだ。


 ファサードの内側はテラスになっており周囲を植栽が覆っている。奥に車がなければカフェにしか見えないスペースだ。
テラスの上部に屋根はない。明治通りが都市計画道路のため、建て替えによって7mのセットバックを求められており、その7m分をテラスにして必要に応じて解体可能な状態としている。

 植栽は線の細いものを多く植え、少しの風でも揺れ動くことで疾走感を表している。


 ショールーム内はダークな床に木張りの天井。スポットライトで車を照らし、間接照明が周囲を包む美術館の雰囲気。


 車が美しく見えるよう演出しつつ、木と異素材の組合せで高級感を醸し出しながら、温もりと親しみやすさのバランスを取った。


 ショールーム奥にはドリンクウンターが、、、


 ショールーム(内)、インナーテラス(半外)、テラス(外)と内と外がグラデーショナルに連続したカフェのような空間にしているためだ。


 テラスでは天気が良ければルーバーから洩れる日の光の下で寛くこともできる。
椅子やローテーブルはオリジナル。

 ショールーム壁側は手前からレセプション。


 商談ブース。



 キッズスペースなどが、掘り込まれた洞窟のように並ぶ。


 マツダのブランドコンセプトをイメージしたオブジェやグラフィックが並ぶシェルフ。碑文谷店でも強調されているスペースだ。


 「車が美しく見える」ことにこだわった空間は、マツダのコンセプトカラーである赤が良く映える。


 マツダデザイン本部長 前田育夫さん。
「車は商品ですが我々デザイナーにとっては『作品』と言えます。その作品が美しく見える空間を建築家とコラボレーションして作り上げました。」「和の美意識を取り入れ、"間” を大切にし、縁側(テラス)によってショールームの敷居を下げ、お客様をお迎えする場となるようにしました。」

サポーズデザインオフィス 吉田愛さん。
「碑文谷店と比べ高田馬場店の大きな違いは、駅が近く人通りが多いことです。町ゆく人が『ちょっとここで寛ごうかな』とふらっと入って頂けるようなデザインを心掛けました。」「幅60mものファサードデザインは初めての経験でした。カーデザイン用の3Dソフトと、幅7mもあるスクリーンを使った実物大のシミュレーションなど、カーデザインと同じプロセスでデザインするのも刺激的でした。」

【マツダ 高田馬場店】
・設計/デザイン:サポーズデザインオフィス

・デザイン監修:マツダデザイン本部
・施工:西武建設株式会社
・造園:SOLSO
・詳細:
www.kanto-mazda.com/lp/new_takatanobaba



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エマニュエル・ムホーによる会場構成「SENSE OF MOTION あたらしい動きの展覧会」

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11月9日から南青山のスパイラルガーデンではじまる、エマニュエル・ムホーが会場構成を手掛けた「SENSE OF MOTION あたらしい動きの展覧会」のプレスビューに行ってきました。
出展はエマニュエル・ムホーのほか、Rhizomatiks Research、石黒猛、スズキユウリ、Nadegata Instant Party、AR三兄弟の6組。プロデューサーは紫牟田伸子。
また11月12日には「SENSE OF MOTION」をテーマとしたフォーラムも開催され、山中俊治、スプツニ子!、猪子寿之、真鍋大度ほかが登壇。

 この展覧会はベアリングのリーディングカンパニー NSK創立100周年を記念した展覧会で、動きを追求した同社の製品や技術を使いながら、6組のクリエイターが「あたらしい動き」を表現するというもの。


エントランスにはスズキユウリ+スローレーベルによる〈Tutti in C〉
実演してみせるスズキユウリさん。

「ピンボールマシンのようにも見えるこの作品は、多様な人々が協働しながら演奏することができる楽器。球とフリッパー部品にNSK 製品が使用され、球が跳ね返るごとに音を奏でる。」


 奥のスパイラルガーデンへ。傍らにはムホーさんの、ベアリングによって滑らかに回る花が咲き乱れる。実際手で回すことが出来き、静止状態と回転したときの色の変化を楽しめる。


 〈Slide〉ライゾマティクスリサーチ。
真鍋大度さんが奥のスクリーンで腕を動かし、それに合わせ白い紐が動くが、手前にはセンサーが付いており所定の位置で来場者が腕を動かせば紐はこちらにも反応して動いてくれる。


 紐は64本のボールネジとモーターで素早く滑らかに上下する。
「テクノロジーと身体の新しい関係を追求した動的な彫刻。」


 〈ルーフトップ・メリーゴーランド NSK ver.〉
ナデガタ・インスタント・パーティー
「人力で回る模型サイズのメリーゴーランド。回転軸にはベアリングが使用され、メリーゴーランド中心内部には、NSK製品で作られた架空の街が広がる。内部にはカメラが設置され、その街の様子がライブモニターによって外部に映し出される。」


 〈混色〉-色が回る。色が混ざる。心が動く。エマニュエル・ムホー
ムホーさんの “100色シリーズ” 最新作は25,270個もの花が美しく回転する。





仕組みは実にプリミティブで、風車とサーキュレーターの風によって花の軸が回るのだ。軸受けにはもちろんNSKのベアリングが使用されている。


 花を近くで見ると単色ではなく、3色からなっていることが分かる。回転混色によって色が刻々と変わっていくのだ。


 その為、「目線は水平よりも、見上げや見下ろしで楽しんでもらいたい。」とムホーさん。


 エマニュエル・ムホーさん
「100色シリーズでひとつのピースに複数の色を使うのは初めてです。『動き』というお題でしたので色が回ることで、色が混じり、そして心が動いていただけるような作品を目指しました。」


 
3作品の動きが分かる動画。

 〈Spinning Chair〉手前、〈Soft Metal Structure Ball〉石黒猛
ボールねじを内蔵した、座ると自動的に回り始めるピアノ椅子。(かなりの高速回転になることから実際座るのはNGとのこと)


 「数千個のベアリングとアルミ素材、スプリングの構造体からなる直径1.5メートルもの大きなボール。大きさや見た目の重量感とは裏腹にベアリングとスプリングのしなやかさによって金属製品の概念に無い未知なる感触が得られる。」
手で押してみたり、座ることもできる。(筆者は座ってみましたが会場では念のため係の方に訪ねて下さい)

 〈箱男〉AR三兄弟
まず箱をかぶり、壁際にある小さな模型を手に取って、箱前面のiPhoneにかざすとベアリングの動きが分かる映像が見える。

どれもインタラクティブな作品なので是非会場で試して体験していただきたい。

【SENSE OF MOTION あたらしい動きの展覧会】
会期:2016年11月9日~11月20日
会場:スパイラルガーデン
詳細:www.senseofmotion.net

【NSK Future Forum SENSE OF MOTION】
日時:2016年11月12日、14:00~
会場:スパイラルホール
入場:無料(※要事前予約)
詳細:www.senseofmotion.net/forum

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川添善行による「東京大学総合図書館新館計画:アカデミック・コモンズ」

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「東京大学総合図書館新館計画:アカデミック・コモンズ」の建設現場を見学してきました。設計監修:東京大学キャンパス計画室(野城智也・川添善行)・同施設部、設計施工:清水建設。
東大では各地に35ある付属図書館合計で約950万冊の蔵書を有するが、今後の蔵書スペースの拡充を迫られている。"アカデミック・コモンズ"とは本郷キャンパスの総合図書館の全面改修、及び噴水広場の地下に300万冊の収蔵能力を持つ自動化書庫と、ライブラリープラザをつくる計画だ。

見学ツアーの前に川添善行さんや清水建設の担当者からプロジェクトの説明をしていただいた。

既存の総合図書館(本館)と噴水広場。
当初の図書館は関東大震災で消失し、現在のものはロックフェラー財団の支援で1928年に再建した(設計:内田祥三)。その貴重な建物は保存しながら耐震補強を含む全面改修が行われる。(photo: wikipedia)

上部から見た噴水広場。ご覧のように周囲に建物が隣接。限られた敷地を最大限利用できるようニューマチックケーソン工法によって行われる。

ニューマチックケーソン工法は、地上で躯体を少しずつ造りながら同時に地下を掘削し、次第に躯体が自重により地下に沈設していくというもの。通常は橋脚や防波堤、建築物の基礎を造る際の土木技術で建築物に用いるのは稀だそうだ。
川添さんが指している部分が地下1階のライブラリープラザで、その下に天高11mの自動化書庫が3層、全体で46m掘削した。

地下には地下水が噴き出さないように圧力を掛けた機密作業室を作り、天高数メートルの中を平たい特殊なパワーショベルで掘り下げていく。
深度が深まるにつれ圧力が高くなるので、途中から無人での遠隔作業に切り替えられる。

外観の完成予想図。

 地下1階 “ライブラリープラザ” は、学生や研究者がグループ学習や発表会などのかたちで対話や議論ができる新しい知の形式となることを目指す。
天井には共鳴を抑えながら、程よいざわめきを生むよう杉材で放射状のルーバーをつくる。杉材は東白川産のものを時間を掛け葉枯らしさせた材を使う。
冷暖房には輻射パネル式と、全面床吹出し空調システムを採用し風のない空調環境になる。

 説明を聞き終え現場へ。右の黒い建物は仮設書庫で、本館の改修をする際、蔵書を一時的に保管するために造られた。下は新館建設のための大型車が通れるようになっている。


 本館正面(北側)。



ロッジアを形作るアーチも近くで見るとかなり劣化しているのがわかる。


 ちなみに安田講堂のファサードも劣化が進んでおり修復が待たれる。


 地上部とその下には地下1階 “ライブラリープラザ” が露出している。


 スラブや噴水の配筋が佳境を迎えている。
右手に本館、正面は大谷幸夫設計の文学部3号館。

 地下1階 “ライブラリープラザ”。円形で700m2ある。



中央の噴水底面には80mmのアクリル板が張られ、波のきらめきを持つトップライトになる計画。


 模型。200名ほどのキャパを予定している。


 本館地下も露出し基礎や柱の補強が行われている。工事初期は旧図書館の基礎や、加賀藩上屋敷の遺跡が出土し、保存・再利用も行われている。


 今だけ見える地下からの本館見上げ。本の背表紙が並ぶ様子がモチーフだとか。


 右はケーソン外皮の止水鋼板。厚さ6mmの鋼板を隙間無く全面溶接し、地下環境において200年の耐久性を想定している。
ケーソンの厚さは地下4階で2m。硬化熱によるひび割れを防ぐためスランプ12の高密度コンクリートを使用し、長寿命化も計る。

 さらに地下へ。


 地下中2階から、地下2階の書庫を見下ろす。この後巨大な書架やスタッカークレーンが搬入されるので、スケルトン状態を見ることができるのは今だけだ。



左がケーソン、右が書庫の内壁。階が深くなるにつれ(ケーソンが厚くなる分)狭くなるが設備やメンテ用のバッファゾーンが設けられている。


 地下2階。天高11mを10本の柱が支えている。
天井ぎりぎりまで書架スペースを取るため、空調のダクトが扁平している。

 この空間に100万冊を収蔵。同様の空間が地下3階、4階にもあり計300万冊を収める。




 貸し出される本は、1冊ずつではなく、何冊かがまとまった樹脂製のコンテナに載って、この搬送口から出入りする。
オーダーした本が手元に届くまでの所要時間は3~5分程。



模型で見る書庫1層分。平らな面が書架。

見学会の案内をして頂いた皆さん。清水建設の安中健太郎さんを挟んで、川添研究室の(左から)草野充子さん、神本豊秋さん、川添善行さん、辻昌志さん。

新設のライブラリープラザや自動化書庫は2017年7月からの運用予定。
本館改修後完了は2020年を予定。

【東京大学総合図書館新館計画:アカデミック・コモンズ】


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クライン ダイサム アーキテクツが手掛けた自由が丘の「KOE HOUSE」

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クライン ダイサム アーキテクツが設計とインテリアを手がけたライフスタイル型店舗「KOE HOUSE」のオープニングレセプションに行って来ました。
(11月16日オープン)

KOE HOUSEは株式会社ストライプインターナショナルの展開するグローバル戦略ブランド「KOE(コエ)」から派生した新業態。地下1階(RC造)から地上3階(木造)の4フロアに、飲食店、アパレル、生活雑貨などを展開する。店舗面積は200坪。


クライアントからはまず複合商業ビルの設計プロジェクトとして依頼があったという。商業施設とともに人々が暮らす街でもある自由が丘に相応しいボリュームをスタディしていくなかで辿り着いたコンセプトは「家」。耐火木構造による親しみやすい家型の建築である。

KOEの旗艦店となったが、将来的に中に入るテナントが変わっても木の建物という存在感のある顔や価値が損なわれない。



エントランスを入るとフロア中央にエレベーターシャフトと回り階段がレイアウトされ、その周囲を回遊するようにショッピングを楽しめる。


中へ入ると木構造の不思議な軽やかさとインテリアのマテリアル感が絶妙な心地よい空間。LVLで駆体を構築し、表面に杉材を用いている。


1F サラダショップ〈KOE green〉。オーガニック野菜のサラダやポタージュ、ホットサンドなど。


それぞれのフロアに合わせた品ぞろいのエコフレンドリーな雑貨。

2F ウィメンズウェア
各階、中心のエレベーターと階段をあがると開け放された大きな扉がある。その都度なかに入る行為で家の中に迎え入れられるような感覚になる。

什器は木とローズゴールド色のメタルを組み合わせ、シンプルで温かみのあるものとした。




階段からの見下ろし。窓際のような風景。

3F キッズウェア
テラスや子供が座って遊べるスペースもある。

並べた商品がケーキの一部に見えるハッピーな什器



店舗のいたるところにある木のディスプレイ。岡山の間伐材が使われている。

エレベーター前の広々スペースはバギー置き場にもなる。



B1F メンズウェア&スポーツ





からプロジェクトを担当したクラインさん、久山さん、小山田さん。
「継続していく心地よさを追求しました。ここなら住めると思いませんか?わたしたちが手掛けるものは、商業施設であっても自分たちが"住みたい"と思えるくらいの居心地の良さをいつも提供したいと考えています。」

【KOE HOUSE】
東京都目黒区自由が丘2-9-19
www.koe.com


【関連記事
クライン ダイサム アーキテクツによる「湘南T-SITE」
クライン ダイサム アーキテクツと「20」のケーキ


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「新しい建築の楽しさ2016:前期展」レポート

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11月8日から開催の「新しい建築の楽しさ 2016:前期」に行ってきました。会場は東京・京橋のAGC studio。本展は今年で5回目。
出展者は前期展に神本豊秋、小川 博央、能作淳平、岩瀬諒子、山岸綾、蘆田暢人。1月からの後期展には大西麻貴+百田有希、高野洋平+森田祥子、山﨑健太郎、馬場兼伸、伊藤立平、落合正行の計12組の若手建築家。会場構成はバンバ タカユキ。企画は中崎隆司。

 「模型やレンダリング技術などを駆使し、 諸々の条件を起点に空間や構造についての検討を繰り返すことによって、周到にプランを練り上げ、複雑なものを単純化し、建物をひとつの思想に変換していく。既成概念にとらわれず、プロジェクトごとにコンセプトやアイディアを練りながら、新しい可能性を追い求める30代から40代前半までの建築家たち。」


 〈品川ビル再生計画〉神本豊秋建築設計事務所+ 再生建築研究所
品川にある築45年のビルのコンバージョン。

 1~2階は保育所、上に子育てカフェ、カルチャースクール、キッチンスタジオ、そして屋上庭園に。既存不適格のビルで容積率を大幅に超えているため、二つある階段室の一つをテラスにして居室面積を減らしながら、巨大なジャングルジムに見立て街につなげる。


 〈クロアチア・ SKYSCAPEプロジェクト〉 小川博央建築都市設計事務所
クロアチア、ザグレブにある病院の屋上を憩いの場とするランドスケープデザイン。

 リング状のパーゴラと、床の四角形のプランターがフラットバーの柱で接続され、四角から円に形状が変化する様子を表現。円には梁でもあるルーバーが挿入され、向きの違うそれらが時間や季節によって光に変化を与える。


〈ショウワノート株式会社 高岡工場〉 能作建築設計事務所+ 佐藤工業株式会社一級建築士事務所
富山県高岡市、工場の増改築計画。

 工場に企業の歴史などを展示する機能と情報発信の拠点を加える。立体倉庫をガラス張りにし、外に開かれた展示空間に。古い工場はワークショップスペースと倉庫に。ノコギリ型の屋根と煙突に見立てた立体倉庫でアイコン的な姿を見せ、地域の中に工場の風景をつくる。


 〈木津川遊歩空間整備事業〉 岩瀬諒子設計事務所
大阪市西区、木津川の一部と立売堀(いたちぼり)上面を整備するプロジェクト。(2013年『木津川遊歩空間アイデアデザインコンペ』最優秀賞)

 川側に段差のある遊歩道を確保し「水辺」をつくる。曲がりくねらせた道筋に植物と様々な居場所を生み出す。まちと離れてしまった川沿いに遊歩空間を整備、植物を手入れする人と機会、増水時には浸水する場所をつくるなど、人が川と共に生きる空間を目指す。


 〈あいちトリエンナーレ2016 豊橋会場プロジェクト〉 山岸綾/サイクル・アーキテクツ
愛知県豊橋市、国際芸術祭の会場。

 国内外119組のアーティストが参加。市内14の場所に手を入れ現代美術展の会場とした。幅8m長さ800mに渡って板状に続く「水上ビル」や、立体迷宮的な「開発ビル」などユニークな建物が同時多発的に改修されることで、建物の内外が等価な動線としてつながり、人が巡り、街と人が直接接続できる。


 〈松之山温泉景観整備計画〉蘆田暢人建築設計事務所
新潟県十日町市の松之山温泉の景観整備計画。

 温泉街道路の融雪システムの機械室に雪の側圧に耐える構造体を構築。デザインは越後杉の足場板を用いて、地域の特徴的なデザインボキャブラリーである「雪囲い」をモチーフとした。これを景観整備計画の見本とし、今後もランドスケープや公共施設対象にを順次整備していく。


 会場構成はバンバ タカユキ/takayuki.bamba+associatesによる。
「コンセプトは『庭のような会場構成』。建築模型展というものは、それを眺めたり覗き込んだりすることで、来場者の想像を喚起するというところに醍醐味があるように思う。そこで、展覧会場を庭に、展示される模型を石などの庭の構成要素にみたて、龍安寺の庭のような想像を喚起する人の入れない余白をもった空間として会場構成を行った。」とバンバさん。

 展示台は白塗装された2.6φのカーボンロッドをメッシュ状に組み上げて作られている。非常に軽くしなやかで、人が通る風でも揺れ動き「建築が戯れる新しい楽しさをイメージしている」とのこと。


 「庭のよう」で「環境に溶け込む展示台」は、この西日が差し込んだ光と影が強烈な時間が最も環境に溶け込んでいるのではないだろうか。(模型はもちろん日が当たってない時が見やすいです)

【新しい建築の楽しさ2016】
前期:2016年11月8日 ~ 12月27日
後期:2017年1月10日 ~ 3月4日
会場:AGC studio1階(東京都中央区京橋2-5-18 京橋創生館)
詳細:www.agcstudio.jp/project/pdf/project19th.pdf
11/24、12/15、1/19、2/16に建築家3組ずつによるデザインフォーラム有

【関連記事】
新しい建築の楽しさ2015:前期展後期展
新しい建築の楽しさ2014:前期展後期展 
新しい建築の楽しさ2013:前期展後期展

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永山祐子建築設計+竹中工務店による「女神の森 セントラルガーデン」

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永山祐子建築設計+竹中工務店による「女神の森 セントラルガーデン」の内覧会に行ってきました。山梨県・小淵沢駅から徒歩30分程の場所。

 建築面積2,787m2、延床面積5,385m2。S造+RC造、地下1階、地上2階建て。敷地近くに本社を持つ自然派化粧品会社のホール・研修施設・カフェなどの複合施設。
永山事務所はデザインアーキテクトとして、竹中工務店は設計施工を担当した協働プロジェクトだ。

 敷地は南北に緩やかに傾斜し8m程の高低差を持つ。
ホールやその他の要素を一つのボリュームに納めてしまうと大きくなり、周囲の森に対して違和感がある。機能を分節し、ボリュームをできるだけ小さくしながら、それらを廊によって繋ぐ構成とした。

南北を貫く抜けが3本、そして東西も貫く多くの抜けにより、周囲が豊かな森ということを全面で享受。明治以降に植林されたアカマツの森だが、今回、地域本来の植生を再編集し、花や紅葉の色づきでエリアごとに植樹したという。四季折々に彩りを変える植物を「森のカラーパレット」に見立て、各開口から内部に取り込むことができる。

 左のアスファルトは車寄せへ通じ、歩行者は草木の間を巡る遊歩道を通ってアプローチする。遊歩道は二手に分かれ、左はホールや研修室へ。右は一般の利用も可能なカフェへ通じる。

 カフェに向かう途中、北端の多目的スペースから中庭を挟んで南端のホールまで、緑、室内、緑、室内、緑とレイヤー状に見通すことができる。


 カフェのエントランス。カフェは後ほど紹介。
(永山さんのお子さんも見学に訪れた)

 アプローチからも同様に、北から南を一直線に約90m見通せる。
1階の外壁はアスロック(押出成形セメント板)だが、あえてムラのある裏面を使い、職人の手作業によるオリジナルの「森綾」柄を表現。
上部にはリブ付きアスロックのリブピッチと合わせた格子を組み合わせた「森綾」をアルミキャストで表現し、さらに上の一番高い層は空の雲模様と馴染むようにムラのある塗装を施すなど、森との親和性を高めるためフラットな表情を避けた様々な心遣いが伺える。

 アプローチを見返す。天井のステンレス2B材に映り込む遊歩道。


 車寄せから見るエントランス。


 エントランスから多目的スペースへ。筆者背後の緑地と、中庭に挟まれたランドスケープの一部のような空間だ。この空間は間仕切って使うこともできる。


 南北の開口部分には温水式ペリメーターヒーターの吹き出しと、小さい方は自動開閉式自然換気の吹き出し口。

多目的スペースを抜け、インフォメーションスペースは「森綾」を横使いにした書棚がアクセント。この後照明が付き書棚を照らすそうだ。

 カフェ。4面ほぼ全面開口で、中庭と森に囲まれた贅沢な空間だ。
敷地は下がっていっているので、カフェの奥に進むに従って地上0mから5mへと森の高さが変わっていく様子が楽しめる。

 天井は低めで水平方向の広がりが強調されている。
天井にも「森綾」。敷地を覆っていた赤松を伐採後、製材し利用している。
自家農園の野菜を使った体に良いこだわりメニューで、来春オープン予定。

 テーブル類はオリジナルデザイン。写真のテーブルは丸みのある木の葉をイメージした。
またソファのファブリックはオリジナルで、この後紹介するホールの壁面にも使用されている。

 一度多目的ホールに戻り2階へ。


 左右の天井と連続するような階段。


 階段を上がると研修室のロビー。天井のツートンはホールのホワイエにも踏襲される。


 研修室は300人収容


 中庭側の開口は、ルーバーを介した柔らかな採光を行っている。


 ルーバーに近付くと「森綾」柄。


 アルミのダイカスト製で、アルミがうまく流れるように型の微調整が繰り返されたそうだ。


 1階へ降り、「屋外ロビー」と名付けられた廊を通ってホールへ。


 ホール ホワイエ。研修室のロビーで見られた色のツートンはここでは、ダークカラーでテクスチャーのツートンで仕上げられている。
(照明は最小限にされた状態)

 振り返るとアプローチ方向の抜け。ハイサイドから光と森を一手間掛けて取り込んでいる細やかさ。



南端の開口からは水面に映る森を逆さまにしたような光景がみえる。

 足元の微妙な反射は洗い出しされた黒玉砂利。

 所々横方向にもピクチャーウィンドウのような抜けが設えられている。


 ホールは700人収容。正面ステージの背後は暗幕を開放し中庭に連続する。


 座席の背後も全面開口。秋が深まり始めた(取材時10月)小淵沢では早くもクヌギやコナラが色づきだしている。木々が育った数年後の秋は一面黄金色の景色になるそうだ。


 可動式の座席はよく見ると「森綾」のオリジナルファブリック。壁もオリジナルのファブリックでカフェのソファに使われていると前述。


 ステージの背後。暗幕とガラスの前面にロールスクリーンも備わる。


 楽屋廊下。


 楽屋ロビー。バックヤードでも要所要所で森を取り込んでいる。


 地下搬入口。左の壁にも敷地から伐採したアカマツから、木毛セメント板を製作して使用している。


 舞台下倉庫の巨大な迫。



永山祐子さん。「大きな建物であるため、森の中という敷地条件を鑑み、どのような建ち方が相応しいか全体の構成とデザインを熟慮しました。さらに森との親和性、森が持つ肌理(きめ)を重視し、汎用建材を使いながらもその表情を利用し、森の中に楚々として存在するホールができたのではないかと思います。」

【女神の森 セントラルガーデン】
デザインアーキテクト:永山祐子建築設計
設計施工:竹中工務店
所在地:山梨県北杜市小淵沢町1578
建築主:株式会社AOB慧央グループ

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ninkipen!、クライン ダイサム アーキテクツ、名和晃平ら参加の商業施設「中目黒高架下」

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11月22日に開業の中目黒駅の高架下商業施設「中目黒高架下」プレス内覧会に行ってきました。



高架下には、もともと飲食店などが立ち並んでいたが、鉄道の安全性の向上を目的とする高架橋耐震補強工事をきっかけに、東急電鉄と東京メトロが共同で開発した。
敷地面積:約8,300m2、延床面積:約3,600m2

開発コンセプトは「シェア(SHARE)」。全長約700mに及ぶ高架下を個性豊かな店舗がシェアし、中目黒らしい街の楽しみ方ができる新しい商店街のかたちを目指す。

中目黒駅正面改札の横断歩道を渡った側には6店舗。

〈中目黒 蔦屋書店〉
クライン ダイサム アーキテクツ







〈Soup Stock Tokyo 中目黒店〉
ninkipen!


高架下ならではの柱を活かした空間。※詳しいレポートは後ほど!


ninkipen!の今津康夫さん。


そのほかにも、「中目黒高架下」唯一のアパレル店MHL.やLONCAFE STAND NAKAMEGUROなど。


目黒側を渡った先にあるのは


〈PAVILION〉
スマイルズが新たに手掛ける、LOVEとARTがテーマの窯焼き料理とワインの専門店。


名和晃平の作品「Black ball」


店内へはここから入る(!)


「席があるかどうか、この受話器で確認してもらうことができます」とスマイルズ代表の遠山正道さん。

PAVILION入口は、50mほどの回廊を抜けた先にある。


アートや映像など


ウェイティングバー。デスクは
サカナクションの山口一郎が使っていたものを譲り受けたそう。


中目黒駅南改札口から祐天寺方面には、飲食店を中心に20以上の店舗が並ぶ。


EXILEのリーダー・HIROが代表を務めるLDHグループが展開する「CURRY SHOP 井上チンパンジー」、うどん居酒屋「二○加屋長介」など。




「中目黒高架下」のロゴ。
"中目黒高架下"の6文字と6本の高架橋脚をモチーフに、トランジットジェネラルオフィスが手掛けた。

【中目黒高架下】
設計・監理:株式会社東急設計コンサルタント
施工:清水建設株式会社
商環境デザイン:株式会社丹青社

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ninkipen! による「Soup Stock Tokyo中目黒店」

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「Soup Stock Tokyo中目黒店」の内覧会に行って来ました。場所は中目黒駅に誕生した新しい商業施設「中目黒高架下」内、蔦谷書店の向かい。今津康夫が主宰する大阪の一級建築士事務所ninkipen!(ニンキペン!)が店舗デザインを手掛けた。


Soup Stock Tokyo(スープ ストックトーキョー)は株式会社スマイルズが展開するスープ専門店。


ガラスウィンドウ越しのオリジナルサイン。
ウィンドウの大部分をコンクリートの巨大な柱が占めていたため、通常の店舗のサインを導入することは困難であった。柱には釘を打ってはいけない制約もあり、空気圧で大玉ころがしに用いる玉を挟むだけというサインを考案した。


ガラスウィンドウのなかでもう一つ目を引くのがこちらの「スープの泉」と呼ばれるディスプレイ。
「スープが店内を満たすイメージです。既存のSoup Stock Tokyoの店舗でも”スープ”はデザイン・キーワードとして取り入れられてきましたが、もっと抽象化したスープの表現をしたいと思い、"スープの床"を作ることにしました」と今津さん。
傾いたスープカップからあふれ出るテラゾーが、実際に店内の床一面に広がっている。テラゾー床には、ジャガイモ、人参、ブロッコリーなどスープの具材をイメージした砕石が混ぜてある。




店内を構成するのは、その他にもコンクリート、タイル、木、真ちゅう等さまざまな素材。タイルはスマイルズ社長である遠山正道の作品。常滑で絵付けし焼き上げた。
中央には、塊のカウンター席。窓際に44席とテラスが12席ある。奥の柱の先に客席が続く。



高架橋整備用のハッチがある場所にはあえてタラップを立て、空間のアクセントに。

エントランス方向見返し。エントランスに立つ木の柱は曲がったものを選択している。お辞儀をして出迎えているイメージだ。

奥の客席には、かこみで座る大きなテーブルがあり、椅子は様々な種類が用意されている。輝く金色の囲いは厨房への入口。

今回今津さんが提案したのは「3つの柱」を軸としたコンセプトである。高架を支える土木の柱、天井を支える建築の柱、そして意匠として空間を豊かにするインテリアの柱。土木の柱は大きいもので太さが1.1m×1.9mある。それらを組み合わせることで、場所性をdevelopさせた。

木の柱。栗の木を六角名栗したもの。

ninkipen!の今津康夫さん。
「高架下の店舗という今までにはない条件下のもとで、何ができるかを考えていきました。素材の味を生かしたスープ専門店ですので、店舗デザインにも素材の表情を活かすこと、そしてこの場所でしかできない空間にすることを大切にしました」

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落合正行の事務所兼自邸「上池台の住宅 – いけのうえのスタンド」

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落合正行(PEA.../落合建築設計事務所)によるの大田区の事務所兼自邸、「上池台の住宅 – いけのうえのスタンド」の内覧会に行ってきました。

 敷地面積51m2、建築面積29m2、延床面積82m2。S造、3階建て。
1階全面道路に面したピロティーのような軒下空間を「いけのうえスタンド」と名付けた自身の設計事務所で、ご近所が集う半パブリックゾーンとした。

 横から見ると軒下には切妻の小さな小屋が挿入された様な格好で、上層の居住部とは明らかに性格が異なることを示し、住宅=プライベートという敷居を取り払ったデザインにしている。


 大きな敷地を分筆された敷地に建つ住宅の多くは、奥に続く住宅のようになるのが常だ。落合邸は車ではなくスタンドが納まっている様子がよく分かる。※撮影にご協力頂いたのは西村幸希さん(西村幸希建築設計)
スタンドはカフェスタンドも意味しているのだが、訪れたひとはご覧のようにコーヒーを注文し、、、

 窓際に設えた縁側で一服出来るという趣向。
しかし縁側に座るには隣家の敷地であるスロープに “侵入” するわけだが、建設中から良好な近所付き合いを始めた落合さん。このスタンド部分の利用目的を理解してもらい、共有スペースのように使うことができるのだ(!)。そして今後も共同でイベントなどを開催していく予定だとか。

スタンド内。設計事務所としてのコンパクトなデスクと、左手はトイレや収納。右手には水道とシンクも設置し、コーヒーをはじめ軽食の提供も可能にした。ここに詰めるのは奥さまだ。

 主構造は150mm角の鉄柱と、梁せい250mmのH鋼で構築されている。(ここに見えている棟木は細いもの)


 事務所内からも通じているが、一度外へ出て玄関へ。
敷地奥へ向かって傾斜地のため玄関からは70cm程高くなり三段上がる。

 1階予備室。


 2階LDK。正面に街を受け止める正方形の開口。ガラスの三枚引戸も見える。


 フローリングのリビングに対して、タイルを敷き、フレキシブルボードで造作されたキッチンで表情を変えた。
右の壁には収納を設けず大きな開口にして、階段室とその下の予備室とを連続させている。

 正方形の大開口側はインナーバルコニーになっていた。気分や天候によって外にも中にもできる汎用性の高いスペースだ。
天井にはハンモックなどがいつでも取り付けられる準備がしてある。

 見学者の方に撮影のご協力をいただき、反対を見るとリビングにしか見えないインナーバルコニー。背後の開口は開閉可能。


 方々・様々な大きさの開口が設けられているのが分かる。外部に面した開口の殆どは正方形だが、外観写真からも分かるようにサッシュを外付けにしてあるので室内からはすっきりと見える。


3階水回り。奥にバルコニー、南側にハイサイドライトで十二分な採光を確保している。
小屋裏は収納スペース。

バルコニーには浴槽と連続するようなプランターを設けた。浴槽に浸かると目線に植栽がくるわけだ。

 浴室にはFRP防水された衝立。脱衣スペースとの間仕切りと、シャンプーラックを兼ねるアイデア。


トイレドアの裏側はこのように。ここもスペースを効率的に使うアイデアだ。

 スキップで上がって寝室へ。


 一転ダークブラウンで落ち着いた就寝スペースに。ここにも複数の開口。
正面の開口からは、高台の頂点であることから、武蔵小杉の高層ビル群や遠く富士山も望むことが出来る。

日大理工学部まちづくり工学科に籍を置き、NPO地域再創生プログラムなどにも携わる落合正行さん。奥さまは勤めを辞めこのスタンドを切り盛りしていくが、カフェを持つことは夢だったそうだ。
「街とどのように繋がることが出来るかを考えました。オフィスを街へ開いて、ご近所さんとも協力しながら、小さいながらも新しい街づくりがここを基点に広がっていけたらいいなと思っています。」

【上池台の住宅 – いけのうえのスタンド】
建築設計:落合建築設計事務所
構造設計:株式会社ロウファットストラクチュア
施  工:株式会社システムシーツー
外  構:塩津丈洋植物研究所

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手塚建築研究所による 「勝林寺本堂・納骨堂」

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手塚貴晴+手塚由比/手塚建築研究所による豊島区の 「勝林寺本堂」を見学してきました。山手線巣鴨駅・駒込駅から15分ほどの場所。

 敷地面積3,034m2、建築面積206m2、延床面積303m2。木造+一部 RC造、地上1階、地下1階。
勝林寺は400年前臨済宗の寺院として創建。戦中での空襲によって焼失しその後再建されたが、60年以上を経て本堂の建て替えと地下に納骨堂を設けた。
住職は南三陸のあさひ幼稚園を目にし依頼したという。

 両腕を伸ばしたような大きな庇が二段、手塚建築で寺を設計するとこうであって欲しい、と納得する美しい佇まい。



 寺社建築によく見られる組物はなく、太い二連の梁が交差しながら軒を支えている。
また屋根はごく緩い勾配の宝形造なため平屋根に見える。

 近づくと目の細かい横格子の簾戸。一枚開いているが出入り口以外全周に蔀戸(しとみど)が設えてある。
左奥の開き戸から堂内へ。スロープは地下に延び、納骨堂へ通じる。

 堂内に入ると四面全て簾戸越しの繊細な光が差し込んでいた。堂内は10m×10mの無柱空間。


 照明を点け見上げるとダイナミックな架構が姿を現した。


 135×240の梁を二連で交差するように渡し、束柱を支持。もう一段上の二連の交差梁を支えている。柱梁は集成材だが仕口加工され、渋墨(柿渋、松墨、日本酒の混合)、床には柿渋を塗布する伝統的な工法と塗料を用いお寺としての風格を醸し出している。


冷暖房は床暖房と、床吹き出しの冷房を備える。
住職はここを地域に開かれた集いの場であり祈りの場であり、交流の場になってもらいたいと望んでいる。実際寺子屋として、座禅、ヨガ、茶道、書道、仏像彫刻などを開催し、そしてグリーフケア、障がいをもつ子どもと家族が集うコミュニティとしても開いていくそうだ。


 奥は既存の須弥壇(しゅみだん)。仏具にも流行があり、時代とともに装飾的になってきたそうだ。そこで今回原点回帰ともいえる平安時代頃のシンプルな須弥壇のデザインも依頼された。手前はその模型だが、実に建築的なデザインで現在制作中とのこと。


 なお本尊は平安初期、約1200年前の釈迦如来像で豊島区の重要文化財に指定されている。現在修復に出されており、お堂には仮の本尊が鎮座している。
(photo: 勝林寺)

 蔀戸の金物はオリジナルで製作した。簾戸にはアクリル板が挟み込んである。


 次に外へ出て、スロープを下り納骨堂へ。


 下りきると重厚な鉄の扉が現れた。


 豪雨などで万一にも納骨堂内が浸水しないように念を入れた防水扉だ。


 納骨堂。冥界との境、小宇宙のような別世界が出迎えた。


 歩みを進めると床にぽっかりと空いた孔。ここには合葬壺が置かれ、継承者がいなくなったお骨を合葬し永代供養される。


 納骨棚は全616区画。細工された仕切り板がはめ込まれる。


 仕切り板は金色に見えたが照明によるもので、実際はステンレス。細かな伝統柄をレーザーカットするために材や厚みを検討したそうだ。


 納骨棚。奥行き違いで3種類ある。仕切り板は8種類あり、同じ柄が隣り合わないように配列されている。


 数カ所ハイサイドライトがバウンドしながら淡く差し込む。



全体模型。今回完成したのが右の本堂で、山門や左の庫裏(くり)が今後建設される。庫裏には事務所や、広間、客間、住職の住居などが計画され、2017年12月の竣工を目指す。
「創建から400年、今後も400年在り続けるお堂とはどうあるべきか、普段手掛ける住宅とは比べものにならない経年を想定して計画し、かつ地域に開かれるお寺として、迎え入れ、包み込むような大らかさを持った新しいお寺のかたちを目指しました。」と手塚建築研究所。

【勝林寺本堂・納骨堂】
設計:手塚建築研究所/手塚貴晴+手塚由比
   杉中俊介、斧田裕大、島田真弓、辺見祐希、南烔旭
構造:TIS & PARTNERS
照明:ぼんぼり光環境計画
施工:前川建設
CD:アソボット
AD:ネンデザイン

勝林寺www.mannen-syourinji.com

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中佐昭夫/nafによるパナマ領事館も入居のオフィスビル「Village on the Building」

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中佐昭夫/ナフ・アーキテクト&デザインによる東京 港区のオフィスビル「Village on the Building」を見学してきました。
大江戸線赤羽橋駅、南北線麻布十番駅から数分の場所。

 敷地面積334m2、建築面積232m2、延床面積963m2。RC造地下1階、地上5階建て。
1~2階にはパナマ領事館が入居し、3~5階にはオーナーの弁護士事務所や司法書士事務所などが入居する。

 でこぼことユニークな外観は、2色のタイルといくつかの切妻ボリュームがつくりだしている。
通常、道路や北側などの斜線規制に掛からないように、水平・垂直ラインで建てると薄茶色の階段状のボリュームのみになるが、斜線の内側に勾配屋根のボリュームを作られることを「発見した」と中佐さん。

 切妻ボリュームの中はもちろん角形の “本体” と繋がっているが、敢えて屋外階段をいくつか設け、バルコニーを繋ぎながら離れのような存在で建物内でも少し性格の異なる空間としている。


 敷地の角に面したエントランス。右側にオフィスビルではあまり見掛けないシルバーのポールが据え付けられているのは、領事館としてパナマ国旗を掲揚するためだ。


 エントランスホールは2層吹き抜け。左にエレベーターや階段室へ。1階奥と、右の階段をあがるとパナマ領事館へ。壁面のサインが建物のシルエットになっている。


 パナマ領事館のエントランス。この扉の向こうは治外法権だ。領事館内のインテリアは特に中佐さんは手掛けていない。


 2階からエントランスホールを見返す。


 外観で見えた屋外階段で3階へ。


 3階バルコニーからさらに屋外階段で4階、5階へと続く。
右の切妻ボリュームの3階部分は弁護士事務所の所長室。その上は予備室。

 3階、沙門外国法事務弁護士法人のオフィス。スペイン人のオーナーであり所長の依頼によりアイストップにビビッドな太陽の差し色が入る。


 躯体に埋め込むことが出来なかったエレベーターのパネルは、外付けになるならとしっかり家具のように製作した。


 所長室。ここにもオレンジや赤の差し色。


 ここが3階のバルコニーだと忘れてしまいそうなカット。


 4階。一層ずつシーンが切り替わる。
4階は関連の会計事務所、司法書士事務所、行政書士事務所とミーティングルームが入る

 都心でビルが多いため、少し場所を動くだけで街の見え方も変わってくる。わざわざ屋外階段で移動することで得られる小さな都市体験だ。


 5階。中佐建築特有のカーブした壁はここに現れた(!)


 中は、応接や会議のほかパーティーなどのにも使える多目的空間。
ここも切妻ボリュームで、
斜線に掛かる部分を弧を描きながらナイフで切り取った格好だ。



一角は樹脂モルタルでテクスチャーをつけ、空間が単調にならないように。

このビル唯一の南側開口はリビングのような空間。オフィスの南側に開口を設けても熱環境的に良い事はない上に、結局殆どブラインドを締め切ってしまう。それならいっそ階段室やエレベーターホール、設備を全て南側に寄せた。

ガス暖炉、ベイマツのフローリングと家庭的な雰囲気。
右はラーセンによるデザインの “エリザベスチェア”。滑らかな革に、包み込まれるような座り心地が最高だった。

最後に地下へ。

領事館が入居することが前提であったため、駐車場のスペックは「メルセデスのSクラスが5台停められること。」が条件だった。
そして奥の扉もカラフルで、特注塗装してもらった変電ボックスが目を引く。

オーナーのモントロ・ミゲルさんを挟んで中佐昭夫さん(右)と、担当の天野徹平さん(左)。
モントロさんは「2年前いくつかの気になる建築事務所に連絡をしました。私の日本語があまり良くなかったのか皆相手にしてもらえませんでしたが、中佐さんだけは誠実に対応してくれました。タイトなスケジュールでしたがとても丁寧に私の話聞いてもらい、素晴らしいアイデアの建物が出来ました。」と話す。
「モントロさんからはどこにでもあるような箱型の建物は避けて欲しいとお願いされました。法規の厳しい都心部では規制によって外観がほぼ決まってしまいます。斜線で使えなくなるようなスペースを隅々まで利用することで立体的に構成し、山に根ざした村のような建物が生まれました。」と中佐さん。

【Village on the Building】
設計:中佐昭夫・天野徹平/ナフ・アーキテクトアンドデザイン
構造設計:なわけんジム
設備設計:EOS plus
施工:田久保工務店

沙門外国法事務弁護士法人www.samon.jp/jpn



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浅利幸男による文京区の「本駒込の家」

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浅利幸男/ラブアーキテクチャーによる文京区の「本駒込の家」のオープンハウスに行ってきました。
2014年に亡くなった黒沢隆による設計で1972年に竣工した住宅のフルリノベーション。

 建築面積69m2、延床面積135m2。木造2階建て。リノベーションとはいえ、躯体以外は全て作り替えた。



旗竿敷地の奥でありながら、庭が広めだったためかろうじて外観の撮影ができた。

 接道側には同じく黒沢隆による集合住宅「アウローラ」が建つ。ファサードはRCに銅板張りされている。(1989年竣工)


 外観は既存にあった “昭和” の面影を感じる仕上げにした。


 隣家の迫る玄関だが、反対側もガラスにして明るくしている。


 玄関を上がって右を見ると突き当たりの開口から坪庭が覗く。


玄関から左はキッチンへ直ぐ入ることができる。玄関横で寒いのではと考えしまうが、引戸で仕切ることができる。


 キッチンから見たリビング・ダイニング。庭に向かってテラスが突き出した全面開口。


 実はこの住宅、元々大正時代に建てられたもので、昭和47年に黒沢隆もリノベーションを担当した。2本の柱はよく見ると2本ずつ立っており、手前側はその時増築されたときに追加された柱。
大正、昭和、平成と三つの時代をリノベーションしながら生きる建築だ。


 テラスに出からは「アウローラ」が見える。

 リビングから廊下に出ると、廊下が十字型に計画されているのが分かった。正面は北側の坪庭。


 振り返って南側を見る、今度は左が玄関やキッチンになる。そしてそれぞれの突き当たりには開口が設けられている。
正面は奥さまの書斎で、壁の右側は水回り。

 広い開口から自然な光に包まれる水回り。


 浴室は全面開口が可能で、隣家の視線も遮ってある。


 奥さまの書斎。マットレスが納まり、横になって本を読むこともできる寛ぎの空間だ。


 2階へ。スリット状のトップライトを新たに設けたが、光は間接光で取り込まれるようにした。
廊下の左手には子供室が三室、庭に向かって並ぶ。奥の作り付け家具に見えるのは収納とトイレだ。右手壁を挟んだ隣は主寝室とご主人の書斎。

主寝室。トンネルのような収納とその先に書斎がある。

 トップライトの光がラウンドした壁に反射し柔らかに注ぐ。

 ご主人の書斎。棚の支柱は真鍮のパイプを曲げて作るという浅利さんらしい細かい造作。


 振り返ると収納のトンネルとベッドボードが連続する。これらの壁紙は奥さまの経営する会社の商品を使った。


 子供室にも廊下のトップライトからの間接光が入ってくる。


 ヴォールト天井に沿って光が導かれる。各部屋にはアクセントとして(もちろん構造)古い梁が表しになっている。
完全な建て替えも可能だったが、リノベーションによって100年近く家族の記憶を留めてきたこの棲まい。二度目のリノベーションでこれからもこの家族と共に時を刻んでいく。

【本駒込の家】
設計監理:ラブアーキテクチャー一級建築士事務所/浅利幸男、須賀茂幸
施工:泰進建設株式会社

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中川エリカによる熱海の住宅「桃山ハウス」

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中川エリカ(中川エリカ建築設計事務所)による神奈川県熱海市の住宅「桃山ハウス」を見学してきました。
オンデザインから独立後、中川さんの建築デビュー作になる。

 敷地面積458m2、建築面積213m2、延床面積142m2。RC造、一部S造・木造、1階建て。
山の斜面を縫うヘアピンカーブに接する敷地。その敷地ままにカーブした既存塀を気に入って選んだ施主。形状からインスパイアされた曲線を描く屋根が特徴だ。

 フラットな大屋根の下には家具がパラパラと置かれているように見えるが、一体どうなっているのだろうか。


 アプローチ側へ。外壁や門柱、門扉は既存のまま、一部修復して利用するそうだ。


 大屋根を支える14本のRC造の柱は、350□の角柱と400φの円柱がある。角柱の型枠にはざらついたラワンに筋を入れ、小板の縦張りを模してあえて粗い表情を出した。


 それは既存の門柱や、周辺環境から抽出したエレメントであり、熱海に古くからある建物や擁壁など各所に見られる表情で、引用することにより新築でありながら場に馴染んだ建築を実現した。

 エントランス周り。中央のステンレス部が玄関扉。


 右手には駐車場。キノコのような屋根が愛らしい。


 左手は南に面した庭へ。モルタルや飛び石などでアプローチは仕上げられる予定で、来客はこちらへ行ってもうらうそうだ。


 玄関を入るといきなり洗濯機があり、なるほどこちらはプライベート色の強い入口だ。
右に浴室、奥が寝室、左がLDK。

 洗面室はシンプルなホテルの雰囲気。


 ガラスブロックとタイルに囲まれた浴室。浴槽の隅には切り欠きがあり、温泉掛け流しであることが分かる熱海らしい浴槽。


 寝室。60代ご夫婦の住まいで、寝室はひとつ。当面は週末住宅として利用し、リタイア後はこちらに移住することも計画している。


 間仕切りにはカーテンが付くそうだ。輻射パネル式の暖房が見える。


 上部の換気はここから。換気扇は付けたくない、網戸を付ける、隣家からの目隠しなど様々な要件を検討しこの形になった。


 LDKへ。天高4,350mm。通常こういった傾斜敷地では2階レベルを上げ眺望を確保するところだが、ここは海に面した熱海とは言え、海岸までは直線で600m程はあるため「開放的で空が見え、風が室内を吹き抜ける」ことを主眼においた平屋とした。


 振り返ると分かるのだが、山側は塀に囲まれ、谷側は高さのある擁壁で周囲からの視線が遮られる。360度全周ガラス張りの開放が可能なのだ。


 西側は隣家のため、要所要所に壁を設けプライバシーを確保している。
暖房には右奥のグレーのもの、右手のベージュの輻射式パネルが賄う。また設備は出来るだけ屋外に出ないように床下80cmを中空にし、設備ピットとしている。

 イメージとしてはガラスは無いものとして考え、ピロティーのような開放感溢れる空間が表現されている。その為天井の塗装は、外部と内部で出来るだけ差が出ないように苦労して塗ってもらったそうだ。

 書斎はこじんまりと篭れるようにした。


 キッチン。照明は2D材に防錆材をどぶ漬けしたステーにLEDを取付け、壁に刺しただけ、といった感じのワイルドなもの。


 曲面型のパントリーは外部にもその形状が現れている。


 キッチンから。シャンデリアは施主が選んだロス・ラブグローブによるデザインのもの。
正面に見える植栽は既存で、ちょうどその向こうに熱海には似つかわしくないタワーマンションが建っているため残した。

 外へ出て離れの茶室へ。(外構は未完)


 四畳半と周囲に土間を模したモルタル。右側の壁がRCなのは、万一、山側からの土砂崩れで建物が潰れないようにしたもので、熱海など傾斜地特有のご当地条例によるものだ。


 離れの前から母屋を見る。屋根を支える柱は基礎と剛接合、屋根とはピン接合。


 前庭へ。ダイニング・キッチンからテラコッタタイルが円形に連続し、テラスを形作っている。
視線が一番抜ける3方向にだけ円柱を立て、方向性が出ないようにした。また一番奥の柱は構造ではなく、庭に密度を与えるために立てたという。

 上棟前、基礎と柱だけの状態ではあたかも古代遺跡のようだったそうだ。



中川エリカさん。「一見ランダムな柱群は1,820ピッチのライン状にレイアウトされています。その上に軽やかな屋根を乗せ、そこから平面のレイアウトをお施主さんと一緒に模型を見ながら検討していきました。都内のマンションにお住まいのお施主さんですが、ここに来ると都内では味わえない開放感とたっぷりの日差し、抜ける風を十二分に感じて頂けるよう計画しました。」

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2016年最も注目された記事ベスト20

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japan-architectsブログ 2016年最も注目された記事ベスト20です。
当ブログは基本的に事務局が直接取材に伺い、写真や記事はほぼ全てオリジナルで構成されています。あまり専門的に寄らず、どなたが読んでも分かりやすく、あたかも「行った気になれる」ような記事が特徴です。



3、永山祐子+竹中工務店/小淵沢「女神の森 セントラルガーデン」




4、成瀬・猪熊建築設計/世田谷「経堂のカフェ併用住宅」




5、N.A.S.A設計共同体/千葉県鋸南町「道の駅 保田小学校」



6、
「土木展」レポート/21_21 DESIGN SIGHT


7、伊藤博之/江東区の「辰巳アパートメントハウス(塔の躯体)」




9、新関謙一郎/渋谷区「元代々木プロジェクト」



10、永山祐子/自由が丘「also Soup Stock Tokyo」


11「HOUSE VISION 2」フォトレポート


12、藤村龍至/白岡ニュータウン「コミュニティーガーデン街区」


13
千葉学/「瓢喜 香水亭 六本木店」



14、松島潤平/シャルル・フレジェ展「YÔKAÏNOSHIMA」会場構成」


15
吉村靖孝/千葉県市原市「フクマスベース/福増幼稚園新館」


16、オンデザイン/目黒区の仕事場兼住宅「ON / OFF balance」


17、伊東豊雄やSANAAらが出展/MoMA「A Japanese Constellation: Toyo Ito, SANAA, and Beyond」


18、
駒田建築設計/港区の住宅「TRANS」


19、中川エリカ/熱海の住宅「桃山ハウス」



20黒川智之/品川区「大森の住宅」



皆さん取材ご協力ありがとうございました。

今年もjapan-architectsブログをよろしくお願いいたします。

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保坂猛による台東区の住宅「窓辺のバルコニー」

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保坂猛建築都市設計事務所による台東区の住宅「窓辺のバルコニー」を見学してきました。
敷地は常磐線・日比谷線 南千住駅から10数分、商店や住宅が混在する下町。

 敷地面積77m2、建築面積48m2、延床面積73m2。木造2階建て。
白い箱型のボリュームから、南側に軒のように突き出しているのはカーポートと小さなバルコニー。ぽっかりと開いた窓から脚や顔が覗いている。

 北側にも窓が二つ。手摺は周辺の住宅がつくり出す路地の風景に馴染むデザインとした。


 カーポートを高くすると新しい外部空間が生まれた。
見慣れない高さのカーポートは目の当たりにするとかなりの迫力だが、高透明なポリカーボネート屋根のおかげで次第に見慣れてくる。


 正面に回ると大小の引戸が並ぶ。右が玄関で、左は勝手口。勝手口は直ぐキッチンなので家にダイレクトに入れる雰囲気のためなのか、皆そこから出入りしてしまう。


 玄関を入るとバイクラックに2台のロードバイク。


 玄関を入ると驚いた。(人が立っている位置が玄関)奥から振り返って撮ったカットだが、部屋の中にバルコニーが幾つもあるのだ。


 玄関上の「寝室バルコニー」から全貌を。左が「子供室バルコニー」、正面が「客間バルコニー」、右上「ちょいとお前さんバルコニー」、右「フリーバルコニー」。
当初、大きな箱の中にいくつかの箱をレイアウトして検討していたが、窮屈で無理が出てきてしまった。オープンな性格の施主夫妻は「家の中で特にプライバシーは求めない」との一言で、思い切って各箱を開いてみた。そのままでは空間性が出ないので上に庇をつけることでエリアが確立され、同時に益々バルコニーのようになり、写真のようにご近所さんがバルコニー越しに会話をするような下町の路地風景が屋内に生み出された。

 キッチン。勝手口の引戸を開けるとご覧のように縁側に早変わり。


 キッチンの上から。右が「寝室バルコニー」。


 振り返ると “本当の” バルコニーへ。物干しに使うが、周囲を見るといくつものバルコニーが。向かいは施主の親戚宅とのことで、実際にバルコニー越しのご近所付き合いが発生するはずだ。


 「フリーバルコニー」へ。バルコニーは全てタイル張りで屋外感を演出している。窓の外には道路や車が見えるのに、バルコニーは内側にあるという妙な光景だ。このバルコニーは掃き出し窓なので、最初の写真のよう脚を投げ出すことができる。


 振り返ると向かいに「子供室バルコニー」と、その下は水回り。


 「客間バルコニー」。奥に一人分の就寝スペースを設けた。下は書棚と勉強机。上は「ちょいとお前さんバルコニー」。


 右を見るとこのように。保坂さん(左)とお施主さん(右)。
施主ははじめ、ハウスメーカーや工務店に依頼したがあまりぱっとしなかったという。そこで以前から気になっていた保坂さんに思い切って相談したところこのような提案が出て大満足だそうだ。

 「ちょいとお前さんバルコニー」。座ってちょうどいい高さ25cmに肘を掛け、ビールを飲みながら路地を眺め、ご近所の幼なじみが通ったら「ちょいとお前さん!血相変えてどこ行くんだい!?」といった具合に声を掛けるとか掛けないとか。
上部はトップライトであり、屋上への出入り口。隅田川の花火が眺められるそうだ。

 「ちょいとお前さんバルコニー」から。
ちなみにプロジェクトの英名は「Juliet House」とのこと。家中でロミオとジュリエットごっこができる。

「お施主さんはこの地元で生まれ育った方です。親戚や幼なじみ、古くからの知り合いが多く住む下町の雰囲気を何とか建物に取り込めるよう試みました。住宅密集地ですが幸い角地なので窓辺の気持ち良さを各所に散りばめました。季節や陽の位置によって気持ちの良い場所が変わるので、好みに合わせて色々なバルコニーで過ごしてもらえると思います。」と保坂猛さん。

【窓辺のバルコニー】
設計・監理:保坂猛建築都市設計事務所/担当:保坂猛、保坂恵
構造設計:なわけんジム/名和研二
施工:航洋建設

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猿田仁視/CUBOによる三鷹のアトリエ兼住宅「cocoon」

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猿田仁視(CUBO Design Architect)による東京 三鷹市のアトリエ兼住宅「cocoon」を見学してきました。
京王井の頭線・三鷹台駅から10分程の住宅地。

 敷地面積158m2、建築面積91m2、延床面積160m2。木造2階建て。
西側から。五角形の変形敷地で且つ角地で、三面が接道する。

 東側からは違った表情に見える。ファサードの仕上げは杉板に塗装。


 左がアトリエで、右が住居。ボリュームは繋がっているが室内は分離されている。


 アトリエは二層吹き抜け。ジュエリーデザイナーの奥さまのアトリエで、作品のギャラリースペースや、撮影も出来るように計画されている。1階の奥はトイレやミニキッチンで、2階の奥がアトリエとなる。
作品名の「cocoon」はこのアトリエの名称でもあり、奥さまの名前から由来する。

 入口の引戸は低くにじり口のようで、ジュエリーの世界へシーンを切り替える装置だ。


 角に開くスリット窓から光が差し込み、角を丸めた壁や天井によって柔らかな吹き抜け空間に。


 住居へ。物語の始まりを告げるような玄関。
2段目までが土間で、右は納戸。

 階段室までいって見返す。敷地が変形しているため、左奥の寝室を矩形にするために玄関は45度の角度が付けられ、間の納戸は三角形に。


 寝室。三角形の中庭に面し採光している。


 ご主人の書斎。


 バラガンを意識したという階段は光を目指して昇っていきたくなる。
階段下は裏庭から納戸として活用できる。

 手摺はスカルパへのオマージュ。階段室のトップライトは効果覿面だ。


 2階LDK。玄関から続く道程はここで一気に開放される。(もう少しカメラを右に振って撮ればよかった、、)
2枚目の写真で見える屋根の開口が正面のもの。

 右を見ると、階段室からラッパ状に開きながらLDKへ開くように操作されていたのだ。
中央のボリュームは水回り。

 屋内と一体で連続するテラスは、ベンチが作り付けられておりユーティリティ性が高い。


 ダイニングテーブルと一体のキッチン。軍艦のようになっているのは前述の三角形に合わせた遊び心。
キッチンはモルタルに水性塗料を含浸させ、クリアを吹き付けて仕上げてあるが、塗膜を長持ちさせるために長年試行錯誤を重ねてきたそうだ。

 水回りは三角形の45度の辺を意図的に使いながら変化のある空間としている。



 テラス。左は鉄板の黒皮まま。経年変化を楽しむという。


 ジュエリーのきらめきのように面や光が様々に絡み合っている。


猿田仁視さん。「外観からは閉鎖的な住宅に見えますが、中に入ると、一筋の光の落ちるエントランスが現れ、そのまま折れて繋がっていく階段を上がると、おおらかな2階大空間へと続きます。どこも採光を絞った計画としています。黒皮の鉄板やモルタルなど、素材そのものの持つ魅力をそのまま使い、高価な材料は使っていませんが、光の扱いを繊細にすることで、印象的で居心地の良い空間を目指しました。緊張感のある空気を纏った住宅となりました。」

【関連記事】

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「堀部安嗣展 建築の居場所」レポート/TOTOギャラリー・間

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TOTOギャラリー・間で1月20日から開催の「堀部安嗣展 建築の居場所」のプレス内覧会に行ってきました。
Exhibition [Yasushi Horibe: A Human Space for Architecture]

 「『建築の居場所』と名づけられた本展のタイトルには、自然との関わりが希薄になっている現代において、私たちに本来備わっている心地よい空間の記憶を取り戻し、それぞれが本来の居場所を見つけて欲しいというメッセージも込められている。」
>>展覧会概要


 3階展示室。中央には机のような白い展示台。周囲には様々な椅子が置かれ「どうぞお座り下さい」と誘っているようだ。


 上段にはアガチス材で作られた1/100竣工模型が26点。普段はスタディ模型までしか制作しないため、これらは今回の展覧会のために制作した。年代毎に形状の変遷が分かるように並んでいる。



 下段には図面冊子や、作品図録のほか、堀部さんが設計中に聞く音楽やイメージを膨らませた映画などを紹介してる。何れも手にとって閲覧可能だ。


 周囲の壁面には代表作の図面や写真、模型など。


 デビュー作〈ある町医者の記念館〉鹿児島/1995
工事が始まると現地に移り住んで現場に毎日通ったという。

 「とても地味で、こんなの作っても誰にも評価されないだろうなと思いながらも、自分に正直に設計した。」と堀部さん。


 〈イヴェール ボスケ〉石川/2012
のどかな田園風景の中に立つカフェ併設の洋菓子店。

 壁に設置された模型は何とチョコレートでできている。オーナーの河村剛志氏が本展のために制作。


〈竹林寺納骨堂 位牌堂・本坊・庫裏〉高知/2013~
2016年の日本建築学会賞を受賞した納骨堂。今年、庫裏が竣工予定で、その後も境内全体の計画が進行中。
「点が線になり、面へと変わっていくプロジェクトでとても嬉しい」と堀部さん。


 土佐漆喰や土壁のサンプル。土壁には境内の土を使った。

 〈せとうちクルーズ船 guntû(ガンツウ)〉 2017
今年9月に就航予定の宿泊型の小型客船で尾道を出発・帰港地しながら瀬戸内の景勝地を周遊する予定。
模型の脇に置かれるスネアドラムはドラムが趣味の堀部さんのものだが、船の色に引用したしたそうだ。

 3階デッキには軒の深い縁側が設えており、軒先に切り取られた瀬戸内の景色を眺められる。最前部にはスイート客室。


 建築と船舶は全く異なプロセスで作られる。船は全てのパーツを予め作っておいて、一気に組み立てるそうだ。
3階客室の切妻屋根はひっくり返して “パーツ” として作られる様子や、本展数日前に行われた進水式の様子が4階展示室の映画で見ることができる。

 左は堀部事務所の日常風景を再現。打合せテーブルや椅子は事務所のもの。


 今でも図面は手描きする堀部さん。いつも使っている製図板はも置かれている。


 著名建築の平面ドローイング。写真はアアルト自邸。


 中庭へ出ようとしたところでいつものギャラ間と違和感が。30年親しまれてきた踏み石は安全のため階段に取って代わった。


 中庭。展示物は竹林寺納骨堂で使われている実物のベンチ。ベンチに腰掛けながら全国にある堀部建築の現場で収録された音を聴くことができる。


 4階展示室。短編ドキュメンタリー映画〈堀部安嗣 建築の鼓動〉が上映されている。


 堀部建築14作品を半年掛けて撮影し、30分の美しい映像にまとめてある。
堀部作品は映像によって、周辺の音や光がその佇まいをより鮮明に伝えてくれる。

堀部安嗣さん。「建築に携わっていない方、建築をよくご存じない方にも、建築をとりまく人やものを分かりやすく伝えられたらと思います。お好きな場所に座って、目の前にあるものを手にとって見て、目が疲れたら中庭に座って耳を澄まして、そして4階で映画を見て、とゆっくりと寛いでいただける展覧会を目指しました。」

【堀部安嗣展 建築の居場所】
会期:2016年10月15日~12月11日
会場:TOTOギャラリー・間
詳細:www.toto.co.jp/gallerma/ex170120/index.htm

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「新し建築の楽しさ2016:後期展」レポート

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1月10日から開催の「新しい建築の楽しさ 2016:後期展」に行ってきました。会場は東京・京橋のAGC studio。
この後期展には大西麻貴+百田有希、高野洋平+森田祥子、山﨑健太郎、馬場兼伸、伊藤立平、落合正行の6作品が出展されている。
前期展では神本豊秋、小川博央、能作淳平、岩瀬諒子、山岸綾、蘆田暢人が出展した。
会場構成はバンバ タカユキ。企画は中崎隆司。

 前期展では西日が差し込む時間に訪れたが、後期展では日没後のニュートラルな状態を撮影した。
バンバさんが担当した会場構成については前期展の記事に詳しい。

 〈福智町立図書館・歴史資料館 ふくちのち〉 大西麻貴+百田有希/o+h
福岡県福智町の図書館と歴史資料館からなる複合施設へのコンバージョンプロジェクト。

 1階は文化活動が広がる屋内広場のような空間で、2階には小さな居場所をつくる。本をきっかけに様々な出会いが起こる場所になるよう建物全体が図書館であり、歴史資料館となる。


 小さな居場所の例。子どもたちが楽しみながら読書できる積み木のような本棚。



大西麻貴さん、百田有希さん

 〈土佐市複合文化施設〉高野洋平+森田祥子/MARU。Architecture、聖建築研究所
高知県土佐市の図書館、ホール、公民館、社会福祉協議会、商工会からなる複合施設。


 テーマは「ミチ文化」。水運が発達した歴史や、道路を使って行われる祭りや市、日本古来のミチ文化が息づく地域にあって、建築内にミチを取り込み、ミチを巡ることで活動や情報との出会いを生み出し、ミチに沿って賑わう風景をつくる。



高野洋平さん、森田祥子さん

 〈五十二間の縁側〉山﨑健太郎デザインワークショップ
千葉県八千代市の宅幼老所(小規模多機能型居宅介護施設)


 デイサービスや宿泊、訪問介護センター、さらに子ども食堂、就労支援スペースとして工房、寺子屋も併設。緩やかに起伏する敷地に合わせ縁側と、雨水を活用した水辺をもつ縁の下や畑は地域、子ども、お年寄りたちの新しい営みの場となる。



山﨑健太郎さん

 〈代田の長屋〉 馬場兼伸建築設計事務所/B2Aarchitects
東京都世田谷区の賃貸アパート。


 均等に開口が並ぶ外壁の中は上下左右異なる広がりを持つ6住戸からなり、条件に応じて独立性や採光性を重視したものなど性格が異なる。殻と中身のずれの狭間に、静かに多様な生活が展開することを想像している。


 〈木の風景〉伊藤立平建築設計事務所
山口県長門市の製材業を営む一家のための、ギャラリーと住宅が一体の施設。


 家具や木工品、材料のショールームが併設。規格材による積層壁は架構の一部でもあり、場所に応じて寸法を変え様々な用途に対応させた。製材所、来訪者、地域の人々、家族との関係を築き、活力のある場を生むことを目指す。


 〈いこうファームのキッチン・ラウンジ〉 落合正行 PEA.../落合建築設計事務所
東京都足立区の貸農園に併設する共同のキッチン・ラウンジ。


 農園利用者や周辺の人たちも利用できるキッチン・ラウンジを併設し、プライベートだった場所をパブリックに開き、地域に関わりながら建築によって付加価値を生み出していく仕組み。私有地を公共性の高い場所に変えることはリスクを負うが、新たな土地活用のあり方を問う。


 この日は出展者3組が登壇し「パブリックスペースの中にプライベートスペースをつくる」というテーマでフォーラムが開催された。


 本展の企画者でフォーラムのモデレーターも務める中﨑隆司さん。

【新し建築の楽しさ2016:後期展】
会期:2017年1月10日~3月4日
会場:AGC studio(東京・京橋)
詳細:www.agcstudio.jp/project/pdf/project19th.pdf

※2月16日、出展者である馬場兼伸、伊藤立平、落合正行登壇のフォーラムが開催。

【関連記事】
新しい建築の楽しさ2016:前期展
新しい建築の楽しさ2015:前期展後期展
新しい建築の楽しさ2014:前期展後期展 
新しい建築の楽しさ2013:前期展後期展

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「MARU。architectureの宇宙展」レポート

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高野洋平+森田祥子の「MARU。architectureの宇宙展 ―思考のはじまりとつながり―」に行ってきました。会場は東京 南青山のプリズミックギャラリー。

展覧会概要:「現在、私達は、個人住宅から大規模公共施設まで幅広い背景を持つ建築に取り組んでいます。 都市と地方、パブリックとプライベート、社会性と経済性、様々に異なるシチュエーションから始まるプロジェクトは、パラレルなようでいて、見えないところで関係しあい、影響し合っています。この展覧会では、アンビルドから竣工作品まで17のプロジェクトについて、その思考のはじまりに着眼した展示を行います。現代の建築の置かれるカオスティックな状況の中で、それぞれの建築をめぐる思考をつなげながら、1つずつプロジェクトを考えようとしているのです。」

 エントランスのコリドールには壁から突き出したイントロダクションが。
読み進めてみると「こにちは。これはMARU。architectureの宇宙展です-----」「どうして宇宙展なのかな?と思ったでしょう-----」などと話しかけてくるように続く。


 竣工、計画中、コンペ案など17プロジェクトの1/100模型が会場を取り囲むように浮いている。


中心に立つと時計回り時系列に手掛けてきたプロジェクトが並ぶ。
展覧会自体が一つの作品になるよう意識したという。


 〈西小中台団地集会所〉 2011
団地の集会所の建て替え計画。住民が主体となった団地再生活動をサポートするための場所づくりを目指す。


 〈太田駅北口駅前文化交流施設設計プロポーザル〉 2014
工業都市として発展してきた太田市のドライな風景の中で、森の中にいるような居場所をつくることを目指す。


 左:〈土佐市複合文化施設〉 2015~。プロポーザルコンペで勝ち取り現在進行中。「新しい建築の楽しさ2016:後期展」には検討が進んだ状態の模型が展示されている。
右:〈西ノ島町コミュニティ図書館 プロポーザル〉 2016。図書を媒介として人と人が出会う場所、誰もが気軽に訪れることのできる居場所として、図書館機能とコミュニティ機能が自然と混ざり合う「としょカフェ」を提案。


 各プロジェクトを解説する冊子がこちらに並んでいる。



森田祥子さんと、高野洋平さん。「宇宙に浮かぶ星々が回りながら互いを引き合うように、私たちのプロジェクトも見えないところで関係し合い、影響し合っています。そんな私たちの思考の様子を是非見に来ていただけたと思います。」

【MARU。architectureの宇宙展 ―思考のはじまりとつながり―】
会期:2017年1月21日~3月5日
会場:プリズミックギャラリー(東京都港区南青山4-1-9)
詳細:www.prismic.co.jp/gallery

【ギャラリートーク】
日時:2月12日、17時~19時
登壇者:畝森泰行、大西麻貴+百田有希、能作淳平、高野洋平+森田祥子
モデレーター:中村航

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