Quantcast
Channel: japan-architects.com
Viewing all 584 articles
Browse latest View live

「土木展」レポート/21_21 DESIGN SIGHT

$
0
0
 21_21 DESIGN SIGHTにて6月24日より始まる「土木展」の内覧会に行って来ました。

快適な生活を支えるため、街全体をデザインする基礎となる土木。道路や鉄道などの交通網、携帯電話やインターネットなどの通信技術、上下水道、災害に対する備えなど、人々の日常生活に必要不可欠な存在である。「土」と「木」で表す土木は、生活環境そのものであり、英語では "Civil Engineering"と表現されるように「市民のための技術」と言える。
本展は、私たちの毎日の暮らしであまり意識する機会がないが、密接に繋がっている土木にデザインの切り口から焦点を当て、あらためて身近に感じてもらおうというもの。

今回展覧会ディレクターを務めたワークヴィジョンズ西村浩さん
全国の駅舎や橋梁の設計、景観やまちづくりなどを手がけ、土木と建築の分野に精通しており、内藤廣さんからの推薦でこの大役が決まったという。
「土木についてのカタログのような展示ではなく、今までみたことのない切り口で、老若男女が楽しんでもらえる内容にしました。2020年東京オリンピックを控えた今、より良い未来を考えるきっかけとなれば嬉しいです」


ロビーは "都市の風景"を見てもらうエリアに。
〈渋谷駅解体、新宿駅解体、東京駅解体〉 田中智之
300万~400万人をさばく駅はどういうメカニズムになっているのかを可視化したドローイング3点。このような資料は実はどこにも存在しないという。



〈土木オーケストラ〉 ドローイングアンドマニュアル
日本の高度経済成長期を支えた土木の工事現場と、現在の渋谷駅周辺再開発事業の工事現場、新旧の映像をシャワーのように。迫力のある音は実際に渋谷で録音したもの。

〈土木の道具〉 ワークヴィジョンズ(西村 浩、林 隆育)
全国から集めた工事現場で使う道具や素材など。


"土木の行為" 「ほる」「ためる」「つむ」「ささえる」といったキーワードから土木を伝えるエリア。
土木の専門家ではないデザイナーやアーティストの作品により、土木をより身近に感じることができる。

見るだけでなく体験型の作品も多い。


〈まもる:キミのためにボクがいる。〉 WOW
消波ブロックや河川敷のコンクリートブロック、土留めの杭などが、私たちの生活と自然環境を災害から守っていることを伝える映像作品。
「荒々しく少し怖いという土木の既存イメージに対し、もっと親しみを持って欲しいという観点からコメディータッチな演出にしました。登場する消波ブロックの実寸サイズを体感していただけます。出てくるキャラクターは『どぼくん』です。」

30年間、建設現場を撮り続けてきた土木写真家 西山芳一によるダイナミックな写真。

〈つむ:ライト・アーチ・ボリューム〉 403architecture [dajiba]
空気で膨らませた台形型ビニールのピース(ペアになったピース7セット)を積み上げることで橋をつくる体験型作品。軽さを利用して1人でも軽々とアーチをつくり、その構造を学ぶことができる。

〈人孔(ひとあな)〉 設計領域
土木の質感を体感できるマンホールやアスファルトの作品。地面の表現にアスファルトまで敷き詰められており、マンホールから顔を出してみるという体験ができる。



〈ニュー土木〉 横山裕一
土木をテーマにした漫画。

〈土木で遊ぶ:ダイダラの砂箱〉 桐山孝司(東京藝術大学大学院映像研究科教授)、桒原寿行(東京藝術大学COI特任助手)
来場者が砂場遊びを通して土木の設計者となれる映像インスタレーション。

来場砂場を掘ると標高が低くなり、盛り上げると標高が高くなることを色でリアルタイムに表現してくれる。上空に手をかざすと手が雨雲になり、窪みに水が溜まる。


もう一つの砂場では高さに合わせ等高線が現れる。本作品は、今の土木を象徴している作品として会場の中心に置かれている。

〈現場で働く人たち〉 感電社+菊池茂夫
「現場はステージと同じライブです。」とう観点からパンクバンドのライブを撮る写真家が撮影した。

〈つく:山〉 日本左官会議(挾土秀平、小林隆男、小沼 充、川口正樹)
左官職人が手で突いた痕跡の残る版築工法で造った土と石のピラミッド。中に入ったり触ったりしてその技を感じる。

〈ささえる:ストラクチャー〉渡邉竜一+ローラン・ネイ
1mmのステンレス板だけでは強度もなくたわんでしまうが、折り曲げたり加工することによって橋として成立する。

実際にヨーロッパで計画中の全長65mの橋のストラクチャーとのこと。

〈つなぐ:渋谷駅(2013)構内模型〉田村圭介+昭和女子大学環境デザイン学科 田村研究室
渋谷駅は地下5階、地上3階の複雑な構成。 模型を通して、土木が駅構内をつないでいることを知ることができる。本作品を観賞したあとに、ロビーに戻って田中智之さんの渋谷駅ドローイングを見てみると面白い。

埼京線は遠く、東横線・副都心線は深く、銀座線がどれだけ上にあるかなどがよく分かる。

〈ダムとカレーと私〉 出演:宮島 咲/映像:ドローイングアンドマニュアル/制作協力:柿木原政広
日本各地のダムカレーの食品サンプルなど

〈はかる:Perfume Music Player Installation〉ライゾマティクスリサーチ
スマートフォンアプリの位置情報を用い、東京の交通網やユーザーの行動を観察することができる作品


"土木と哲学"エリア
土木の書籍や図面、東日本大震災の復興現場の映像などで、土木の役割について考察する。展示の最後に身近な世界に戻ってくるという構成になっている。
〈BLUE WALL 永代橋設計圖(東京大学大学院工学系社会基盤学専攻所蔵)〉EAU
関東大震災後の復興で掛け替えられた永代橋の青図。


〈GS三陸視察2015 映像記録作品『GROUNDSCAPE』〉
GSデザイン会議+岩本健太

西村浩さん(右)と、会場構成を担当した菅原大輔さん(左)。
「デジタルな最新の研究と、アナログな手仕事の両方の世界から土木を感じてもらえる作品が集まっています。展示台はよく見ると、盛り土のフォルムや地層を木目で表現したデザインになっています。」


柿木原政広による「土木展」の黄色いストライプのビジュアルは、Tシャツ、タオル、シールなどグッズとしてミュージアムショップにて購入できる。

ここでは紹介していない作品もまだまだありますので是非会場で。


展覧会チーム
展覧会ディレクター:西村 浩
企画協力:内藤 廣
企画チーム:崎谷浩一郎、新堀大祐、中村勇吾、八馬 智、羽藤英二、本田利器
テキスト:青野尚子
会場構成協力:菅原大輔
照明デザイン:海藤春樹
展覧会グラフィック:柿木原政広
アドバイザー:中村英夫


参加作家・参加団体

EAU、株式会社 感電社+菊池茂夫、柿木原政広、桐山孝司、桒原寿行、康 夏奈(吉田夏奈)、GSデザイン会議+岩本健太、設計領域、田中智之、田村圭介+昭和女子大学環境デザイン学科 田村研究室、ドローイングアンドマニュアル、西山芳一、公益社団法人 日本左官会議、八馬 智、ヤックル株式会社、ヤマガミユキヒロ、横山裕一、ライゾマティクスリサーチ、ワークヴィジョンズ、WOW、渡邉竜一+ローラン・ネイ、403architecture [dajiba]

【土木展 - Civil Engineering
会期:2016年6月24日〜9月25日
場所:21_21 DESIGN SIGHT
詳細:www.2121designsight.jp/program/civil_engineering/

**************************
japan-architects.com 
日本の建築家・デザイナーと世界をリンク
Web : www.japan-architects.com
Twitter : @JapanArchitects 

Facebook : japanarchitects

***************
***********
Reproduction of any of these images and texts without written permission is prohibited. 
Copyright: japan-architects.com


「スミルハン・ラディック展」レポート/TOTOギャラリー・間

$
0
0
7月8日よりTOTOギャラリー・間で始まる「スミルハン・ラディック展 - BESTIARY:寓話集」のプレス内覧会に行ってきました。
Exhibition [Smiljan Radić: BESTIARY]

 スミルハン・ラディックは、チリのサンティアゴを拠点に独創的な活動を続ける建築家。2010年にはTOTOギャラリー・間の25周年展覧会〈GLOBAL ENDS〉の7組の建築家のひとりとして出展している。同じ年、妹島和世が総合ディレクターを務めたベネチア・ビエンナーレ国際建築展にはインスタレーション〈魚に隠れた少年〉を出展、2014年にはサーペンタインギャラリー・パヴィリオン〈わがままな大男の家〉などで注目を集める。


 「寓話の中でよく描けた挿画には、描き手の脳裏をかすめた確信らしきものが必ず現れ、周囲に啓蒙的な影響を与える。描くことで人を啓蒙し、まったくの無の状態から虚構を構築する。」
「本展は私の作品に現れたこうした確信の瞬間の寄せ集めである。」

 展示模型のなかには、ラディックさんが気に入った物語(グリム童話など)の挿画からインスピレーションを得て形にしたものがある。これらには建築的な根拠も、背景も、用途もない。しかしこれらの中から偶然の巡り合わせで実作に結びつく原型となることがある。
3階展示室中央にはそのような空想の世界ともいえる模型が中心に並ぶ。

 4階展示室は、3階の模型などから着想を得て竣工したプロジェクトや、建設中のプロジェクトが並ぶ。



一部展示作品を紹介
 〈ルッソ・パーク・プロジェクト〉2014~、サンティアゴ
広大な公園のランドスケープデザインと、園内に造られるイベントホールの計画。壁面展示はイベントホールの屋根(斜線部)を支える柱梁の模型。
[russo park project]

 カメラを90度回転させ撮影するとこのように見える。
梁はRCで、不規則な形状からランドスケープと一体となるような空間を生み出している。ラディックさんのチリで刻まれた記憶の中から得られた揺らめきのようなもの。

 本展の「寓話集」とはこのように説明してくれた。
例えばスライドに映る “グリフォン”。上半身が鷲、下半身がライオンでできたヨーロッパの伝説上の生物、、、

 〈ランプの塔〉 2015
そのグリフォンからインスパイアされたのがこの模型。水銀ランプ、ヴァイオリンとその弓や、何かの古道具でできているが、スミルハンの世界観を描写したもので、これがどんな建築になるかなどという想定は全くない。しかしこの模型はいつか何かの切っ掛けで出現するチャンスを伺っている。
[tower light bulbs]

 〈NAVE - パフォーミング・アーツ・ホール〉 2015、サンティアゴ
築100年ほどの集合住宅をコンバージョンするプロジェクト。
ファサードはネオクラシック、中はパフォーマンスホール、屋上にはサーカステントという異なる要素の組合せにより、歴史的、空間的意味が生まれる。
[NAVE, performing arts hall]

 〈ありふれたサーカステント〉
NAVEの屋上には実際のサーカステントを買って設置したそう。会場の中庭には元の “サーカス小屋” の写真が大伸ばしされ展示されている。
[ordinary circus tent]

 〈卵に隠れた少年〉 2011
デイヴィッド・ホックニーが描いたグリム童話の挿絵からイメージ。
[the boy hidden in an egg]

〈魚に隠れた少年〉 2010、イタリア
ベネチア・ビエンナーレ国際建築展に出展。こちらも同様のイメージから。
[the boy hidden in an fish]

 〈家での死〉(左)、〈わがままな大男の城〉(右)
〈わがままな大男の城〉も用途の想定もなく、構造の根拠もない単なるイメージモデルだったが、、、
[death of house], [the selfish giant’s castle]

 偶然が切っ掛けで〈サーペンタインギャラリー・パヴィリオン2014〉のデザインへと結びついた。
背後に吊り下げられるのは、後日制作されたイメージの変遷を表現したスタディ模型。
[serpentine gallery pavilion 2014]


〈家での死〉 2015
[death of house]

 〈フラジャイル〉 2010 
2010年の25周年展覧会〈GLOBAL ENDS〉に出展されたこの作品は、、、
[fragile]

〈サンティアゴ アンテナタワー 計画案〉 2014
電波塔のコンペ獲得に繋がった。ゴーストのように存在を消した塔。
[santiago antenna tower project]

 “新作” 〈マイ ファーストタワー〉 2016
東京にタワーをデザインしたら、というイメージ。タワーに模したチーズシュレッダーとキューピー人形を並べた瞬間、キューピーが大きいのか、タワーが小さいのかなどと様々に考えることができる。全く異なる要素や素材を組み上げることで新しい思考が始まる。
[my first tower] 

 〈直角の詩に捧ぐ家〉 2012、チリ、ビルチェス
こちらも〈GLOBAL ENDS〉に原型である〈隠れ家〉が出展され、その後竣工している。背後はそのスタディ模型とイメージスケッチ。
〈直角の詩〉とはコルビュジエの版画作品で、本作はそのオマージュだ。
[house for the poem of the right angle]

 〈ビオビオ市民劇場〉 2011~、チリ、コンセプシオン
現在建設中の延べ床10,000m2の劇場プロジェクト。これだけ大きなプロジェクトでありながら事務所総勢5人のスタッフで進めているという。
「5人ではとてもハードワークですが、この位の人数でないと私がコントロールできないのです。」と笑いながら話すラディックさん。
[bio bio regional theatre]

 そして天井から吊り下がる直筆スケッチブックの数々。自由に閲覧できる。



スミルハン・ラディックさん。
「私はあらゆるモノからピースを集め、今までに無い新しいものを作ろうと常に発想しています。実作に結びつかないものも沢山ありますが、今後どのような建築として姿を現すのか私自身分かりません。本展ではここ6~8年位の作品の一部と、作品づくりの手がかりを見てもらえると思います。」

【スミルハン・ラディック展 - BESTIARY:寓話集】
"Smiljan Radić: BESTIARY”
会期:2016年7月8日 ~ 9月10日
会場:TOTOギャラリー・間
詳細:www.toto.co.jp/gallerma/ex160708/index.htm


**************************
japan-architects.com 
日本の建築家・デザイナーと世界をリンク
Web : www.japan-architects.com
Twitter : @JapanArchitects 

Facebook : japanarchitects

***************
***********
Reproduction of any of these images and texts without written permission is prohibited. 
Copyright: japan-architects.com

駒田建築設計による港区の住宅「TRANS」

$
0
0
駒田剛司+駒田由香/駒田建築設計事務所による港区麻布の住宅「TRANS」の内覧会に行ってきました。昔ながらの都心の住宅街。

 敷地面積42m2、建築面積29m2、延床面積77m2。RC造3階建て。
建物の間口は約二間、奥行きは約7.7m、準工業地域のためご覧のように隣家が密着。この条件でどのように “快適” さをかたちにしているのか楽しみだ。

 接道も非常に狭いためセットバックも求められた。そのため(いつかなくなるかも知れないが)前庭を設けることができた。
防火地域でもあるため現実的にRC造を選択。接道の向かいにもRC造の住宅が建ち並んでいる。

 玄関を開けると打ち放しコンクリートと、ラワン材の建具のみのシンプルな表情、頭上に吹き抜けとスチールの階段が現れた。
奥へは廊下を介して寝室、水回りと続き、右手の扉はトイレへ。

 廊下を奥まで進んで水回りから見上げると、こちらにも吹き抜けと階段があった。
左が浴室、正面に洗濯機。

 浴室からは大きなフレームのような開口で、奥まった水回り空間を開放的にした。


 玄関扉を閉めると玄関ホールの光量は抑えられているのが分かる。2階へ上がるとどうだろうか。


 2階には全く別な空間が現れた。3階天井までの細い吹き抜と、その先は全面のトップライト。というより狭い路地の上に、ガラスの屋根が掛けられているという印象。


 間口二間しかない空間を大胆に壁で分割。小さな街並みのような空間をつくり出し、いくつかの小さなスペースを設け、南北二つの階段で連続させた。


 駒田さんが路地を歩いているように見える。”路地” の幅は1.3m、高さ6.1m。こちら “室内” 側は幅1.9m、高さは2.8m。



”路地” 側にソファを置き、“室内” 側にテレビを設置する。

 一体型のキッチンとダイニングは、構造でもある仕切り壁をまたいで設えられている。
仕切り壁は鉄筋コンクリートの構造壁としては最薄に近い120mmにし、幅のない空間で見た目に重くならないよう配慮した。

 ステンレスのシンクはフランジがなく、端面で天板と面一にしてあり非常にスッキリとした表情になっている。



 1.3mの ”路地” に天板をどの位出すかはかなり悩んだという。
見学は同業の建築家が非常に多く、「幅1.3mの空間が本当にあり得るのか体験しに来た」、「誰かがやってみないと自分では恐くて設計できない」、「この空間にこのDKは発明だ」、などの驚きと感心の声が多数聞こえた。



スチールの階段は通常工場で製作したものを現場で据え付けるが、狭いため、側桁や踏面の鉄板を一枚ずつ現場で溶接して製作した。しかも裏から見てもビード(溶接跡)が出ないよう一手間かけた仕事がなされている。

 3階は夫妻の個室。手前が奥さまで、奥の階段から上がってご主人の部屋がそれぞれある。
夏場の日差しが心配になるが、、、

 ご覧のようにスクリーンカーテンが手動で開閉できる。


 グレーの壁と白い壁は別な建物で、その間に路地があるように見える演出。人が多いと街の路地を行き交う人々の賑わい然とした光景が現れた。


 奥さまの部屋。奥を見ると屋上へ上がる外部階段を挟んで、ご主人の部屋へ間接的に連続している。
分けながらも全て通じているのだ。

 アーチ型窓にはガラスがはめ込まれ、階段室の吹き抜けには木サッシュの引戸、床はモルタル、壁はブルーに。


 対してご主人の部屋は矩形の窓が二つで片方にはガラスがはめ込まれ、もう片方は外開き窓。床はフローリングで壁は緑と、夫婦で趣向が異なる。
3階の二部屋は1階の寝室とは別で、夫婦それぞれの趣味の部屋になる。

 屋上にはコンクリートで作り付けたベンチが設えてあった。



 駒田剛司さん、駒田由香さん。(1.3m幅に座るのは3人では窮屈なのがわかる)
「小さな個室が3つ、それと生活に必要な要素をこの敷地内でどう繋ぐかを考えました。間口二間を敢えて壁で隔てることで、様々なスケールと距離感が織り込まれた二人のための街が生まれました。」「1.3m幅はチャレンジでしたが、どうしても窮屈な空間を、思い切り上に抜くことで成立させることができたと思います。」

【関連記事】

品川区の集合住宅「アリウェイ戸越」


**************************
japan-architects.com 
日本の建築家・デザイナーと世界をリンク
Web : www.japan-architects.com
Twitter : @JapanArchitects 

Facebook : japanarchitects

***************
***********
Reproduction of any of these images and texts without written permission is prohibited. 
Copyright: japan-architects.com

ニコ設計室による杉並の住宅「若井さんの家」

$
0
0
西久保毅人/ニコ設計室による杉並の「若井さんの家」のオープンハウスに行ってきました。中央線西荻窪駅から10分程の場所。

 敷地面積115m2、建築面積67m2、延床面積109m2。木造2階建て。
正面西側をセットバックさせ、駐車場と前庭を広く取り、建物の開口も多く街を引き込んでいるように見える。

 斜め三角に突き出した庇の下に、二面の開口を持つバルコニーが特徴的だ。


 敷地奥に向かって1mほど高くなっているので、室内も奥に向かって、いくつかのステップが見える。


 玄関で振り返ると、アプローチが玄関へ気持ちよく連続する演出がよく分かる。そして上部に階段が見える。


廊下もアプローチのカーブを踏襲するようにカーブしている。右に子供室、クローゼット、主寝室。その左に水回りと続く。


 子供室。窓の外にはバルコニーへ上がる大きな階段が見える。


右手の壁にもドアがあり、玄関前に通じている。来客はプライベートエリアである1階を通らずに、この半屋外階段を使って2階のリビングに上がることができる。


 上がってみるとバルコニーは広い踊り場で、インナーテラスと呼べる雰囲気になっていた。


 屋根を接道に向かって前傾させ、ダークな彩色と共にこのスペースのプライベート感をつくり出している。


 こんな情景がぴったりだ。

 1階へ戻り主寝室。1階の床は水回り以外杉張り。


 櫛引の壁が柔らかな陰影をつくる水回り。


 2階へ。無垢材のかなりしっかりしたささら桁を持つ階段。


 親柱と手摺のシンプルな作りかと思い見上げるとこんな遊び心が。


 2階LDK。床はフレキシブルボード、奥は小上がりでリビングスペースへ。
見渡すと使い勝手を良くする小さな工夫がそこかしこに見られる。


 振り返るとインナーテラスへ連続するフリースペース。来客はここがエントランスになる。左は書斎。


 書斎の書棚は箱階段になっており、上のロフトスペースの昇降にも使う。


 DKスペースは大きな島を中心に据えた。南側のハイサイド、北側の階段室は全面大開口で、奥行きのある敷地で中心部が暗くならないようたっぷりの採光。

 建物奥側にもう一つインナーテラスがあった。左には離れのような客間。
西から東へ細長い敷地に対して、外、半外、内、半外、外と少しずつスキップしながら連続している構成だ。

 この住宅から徒歩数分の場所に、ニコ設計室が手掛け3ヶ月前に竣工した「大山さんの家」のご夫妻よりカレーが差し入れられた。オープンハウスでは通常あり得ない状況だが、お施主さん同士ニコファミリーとして繋がるのがニコ設計室のいいところ。


左から西久保毅人さん、若井家の3人、担当の牛島史織さん。
「敷地の奥が児童館の空地に隣接しているので、接道とその空地に対してインナーテラス二面を介しながら街を繋ぎ、雨でも晴れでも内が外にはみ出していくような計画にしました。」と西久保さん。

【関連記事】
・調布の住宅「小川さんの家」
・杉並の住宅「中島さんの家」

**************************
japan-architects.com 
日本の建築家・デザイナーと世界をリンク
Web : www.japan-architects.com
Twitter : @JapanArchitects 

Facebook : japanarchitects

***************
***********
Reproduction of any of these images and texts without written permission is prohibited. 
Copyright: japan-architects.com

IKDSによる横浜の「シードビル」

$
0
0
國分昭子+池田靖史/IKDSによる横浜の「シードビル」を見学してきました。東急東横線 大倉山駅から数分の場所。1階に「野のすみれクリニック リハビリテーション科」、2〜3階に横浜市障害者グループホームが入る。
このような、知的障がい者の共同生活援助を行うホームに筆者は初めて訪問したが、求められるプログラムが通常のシェアハウスとは異なるので非常に勉強になった。

 敷地面積130m2、建築面積96m2、延床面積269m2。鉄骨造3階建て。
ホームには例えば養護学校を卒業し、その後働いたり、作業所に通われるような方々が、実家を出てここで暮らす、といったかたちだ。2〜3階の各開口部分が概ね入居者の個室で、外壁の色や仕上げを変えながら、その部分が住戸(=我が家)に感じられるような意匠になっている。そして各部屋共に小さいながらも必ずバルコニーに面するように計画され、外部との接触面を設けている。

 入居者は街の一員としてそれぞれのレベルに応じた社会生活が求められるし、街もこのホームを受け入れる。この建物を街に理解してもらうため、街に対して「開く」ことが重要とは言え、建物内の営みがすべてオープンとなるような雰囲気は街とホーム双方にとって好ましいとはいえず、そのさじ加減がポイントになるそうだ。


1階はビルのオーナーでもある、小児リハビリテーションやセラピーを専門とするドクターのクリニック。診察室などの他にこちらのサロンを備え、障がい者関係のネットワーク、地域との交流を図る様々なイベントを計画中。
(photo: Nobuyuki Umeda)

 リハビリテーション科には障がいをもつ方々も多く訪れる。この部屋の東側にはハイサイド・トップライトが設けられていて、街の視線にさらされずとも空が見え、外光に包まれるこのスペースで、リラックスして診療を受ける方々もいるという。上のホームとの間接的な繋がりも感じることができる。


 この日は介助犬のデモンストレーションが行われ、多くの見学者が訪れた。


 2階グループホーム。個室2室と、厨房、食堂、洗面、浴室などの共有スペース。
市内の福祉法人によって運営されて、食事や日常生活を24時間体制でサポートする。

 個室のドアは、左の食堂に正対しないよう配慮。柱や家具などを利用して少し入り組んだ街並みを再現。


 食堂の天井は路地をモチーフに。


 1階のクリニックで見えたトップライトは2階ではこのように。大きな開口を街に対して直に接続せず、街の風景を取り込みつつ通りを行く人と視線は合わないように配慮している。



個室。特定のことに非常に執着する方が居る場合もあるので、個室はシンプルにして、入居者自身が望む空間にできるようにした。

 3階には個室3室と洗濯場など。個室は廊下を挟んで左右に、といった正対する配置にはせず、こちらも路地にある独立した住戸になるよう計画。街の中にある小さな街を演出し、入居者が街の一員であり、独立した個であるような意識を促す。


 新築であるにもかかわらず、何年も前からこの街にあるような佇まい。


 國分昭子さん。「院長は古くからの友人で、地域の方々にとても信頼されている方です。『障がいのために医療機関にかかるのを躊躇されていた方が気軽にかかることができるクリニックを目指す。』と話しているように弱者に対する意識を底上げできるよう、様々な思いを持ってこの地に着地し、深く根付くようお手伝いしました。」
「通常シェアハウスではプライバシーを確保しつつ、入居者が如何に繋がるかということを求められますが、このグループホームでは、プライバシーを確保しつつも繋がりと距離感をどれだけ取るかが重要になりました。」

【野のすみれクリニック】

**************************
japan-architects.com 
日本の建築家・デザイナーと世界をリンク
Web : www.japan-architects.com
Twitter : @JapanArchitects 

Facebook : japanarchitects

***************
***********
Reproduction of any of these images and texts without written permission is prohibited. 
Copyright: japan-architects.com

「住宅建築賞 2016 入賞作品展」レポート

$
0
0
8月10日まで開催の、東京建築士会主催「住宅建築賞 2016 入賞作品展」と、初日に行われた入賞レセプションも合わせて出席してきました。

 会場は東京京橋のAGC studio。入賞作品6点が展示される。
6作品中3作品が当ブログで取材したことがあるので思い入れが深い回となった。

 審査委員は4年目の委員長を務める西沢立衛と、委員に乾久美子、小嶋一浩、妹島和世、藤本壮介の面々で、いずれも過去同賞の受賞経験者だ。


 しかし残念ながら今年も “住宅建築賞金賞” は選出されず、 “住宅建築賞” 5点と “奨励賞” 1点は選出された。


 住宅建築賞〈DECKS〉 伊藤博之建築設計事務所
風車状の配置によって、周囲の視線を遮りながら光と風を取り入れられる。互いに影響を与え合って建つ戸建て住宅のように、他律的であり自律的でもあるような集合住宅。

 住宅建築賞〈ペインターハウス〉 加藤亜矢子+村山徹/ムトカ建築事務所


アーティストとその家族のためのアトリエ兼住宅で、低コスト、短期間の厳しい条件。資材や建材の種類を抑えそれらを少しユニークなディテールで仕上げた。建て売り住宅のようでありながらも、もっと建築は豊かになれる。

 住宅建築賞〈living journey〉 佐藤美輝/佐藤事務所
5層に個室を6つ持つ住宅。変化する空間に合わせて様々な暮らしができるように、敷地全体を居間として仕上げた。日々刻々と表情が移り変わる空間に合わせて居心地の良い場所に移動する旅を、建て主は植物を育てながら楽しんでいる。

 住宅建築賞〈横浜の住宅〉 伊藤暁建築設計事務所


北向きの急峻な傾斜地に建つ設計者の自邸。そのままでは地下に埋もれてしまいそうな1階の天井高を持ち上げ、採光や眺望を確保。周辺のランドスケープの一部として馴染みつつ、敷地の特性や生活の固有性にも適応した。
>> 取材記事へ


 住宅建築賞〈SHIRO building〉 木下昌大+石黒大輔/KINO architects
表参道にほど近い場所に建つ複合ビルで、1~2階がテナント、3階がオーナー住居。建蔽一杯に建物を作りながら、上にいくに従って四隅を天空率緩和を適応できるまで削り取る。削られた部分はテラスとなり、内部に開放的な空間を生み出す。

奨励賞〈tetto〉 安原幹+日野雅司+栃澤麻利/SALHAUS 



郊外の農地に残されていた空き家を建て替え、里山の風景を残す大らかな集合住宅。雁行しながら凹凸のある平面で領域を重ね合わせ居場所をつくり、屋内・屋外、専有・共有が混じり合いながら集まる状態を目指した。


 レセプションの様子。”レセプション” と銘打っているものの、実際は “講評会"といえるだろう。審査員、受賞者共にプロの建築家として、熱い議論が繰り広げられることもしばしばあり、とても貴重な機会として存在している。
この日出席した審査委員は西沢立衛さん、乾久美子さんのみであったが、良いころ、良くないところも、はっきりと愛のある辛口コメントが飛び出す。

今回で4年務め、審査委員を退く西沢立衛さんが締めた。
「4年間『新しい時代の住宅』というテーマでやってきましたが、これぞ新しい時代の住宅、この時代だからこそこの住宅なんだ、という力強さのある作品は現れなかったことは残念ではありましたが、裏を返せばそれだけこの時代の住宅を考えるのは難しいことなのかも知れません。」

【住宅建築賞 2016 入賞作品展】
会期:2016年7月20日~8月10日
会場:AGC studio


**************************
japan-architects.com 
日本の建築家・デザイナーと世界をリンク
Web : www.japan-architects.com
Twitter : @JapanArchitects 

Facebook : japanarchitects

***************
***********
Reproduction of any of these images and texts without written permission is prohibited. 
Copyright: japan-architects.com

「HOUSE VISION 2」フォトレポート

$
0
0
7月30日から開催される「HOUSE VISION 2 2016 TOKYO EXHIBITION内覧会に行って来ました。

HOUSE VISIONは、家を未来の産業や暮らしの交差点と見立てていくプロジェクト。2回目となる今回の展覧会のテーマは「CO-DIVIDUAL=分かれてつながる/離れてあつまる」。一人暮らしが主流となり個に分断されてしまった人々、そして都市と地域、あるいはテクノロジーの断片をどのように再集合させていくか、その具体案を15社の企業と13人の建築家、建築家ユニット、クリエイターとともに12の展示ハウスによってわかりやすく提案する。展覧会ディレクターは原研哉。


会場構成は2013年と同じく隈研吾。
会場面積12,519m2に、12の展示ハウスとメインテントの間に木のデッキをめぐらせ来場者を導く。メインテントに使われる1500本の材木は奈良県の吉野杉です。すべての材木は展覧会修了後は再利用される計画だ。


広場にあるシンボルツリー。
住友林業緑化とプラントハンター西畠清順率いるそら植物園によって植えられた、推定樹齢1000年のオリーブの大木。

[冷蔵庫が外から開く家]
ヤマトホールディングス×柴田文江




柴田文江さん


[吉野杉の家]
Airbnb×長谷川 豪












長谷川豪さん(右)と原研哉さん。


[の家] 
Panasonic×永山祐子










永山祐子さん


[棚田オフィス]
無印良品×アトリエ・ワン






[遊動の家]
三越伊勢丹×谷尻 誠・吉田 愛






谷尻 誠さん


[賃貸空間タワー]
大東建託×藤本壮介












藤本壮介さん


[凝縮と開放の家]
LIXIL×坂茂














[市松の水辺]
住友林業×西畠清順・隈 研吾(会場構成)




[木目の家]
凸版印刷×日本デザインセンター原デザイン研究所








[内と外の間/家具と部屋の間]
TOTO・YKK AP×五十嵐 淳・藤森泰司










藤森泰司さん


[グランド・サード・リビング]
TOYOTA×隈 研吾




[電波の屋根を持つ家]
カルチュア・コンビニエンス・クラブ×日本デザインセンター原デザイン研究所(展示デザイン)・中島信也(映像制作)




[冷涼珈琲店─煎]
AGF×長谷川 豪









【HOUSE VISION 2 2016 TOKYO EXHIBITION】
会期:2016年7月30日(土)〜 8月28日(日)
会場:お台場・青海駅前 特設会場
詳細:house-vision.jp


**************************
japan-architects.com 
日本の建築家・デザイナーと世界をリンク
Web : www.japan-architects.com
Twitter : @JapanArchitects 

Facebook : japanarchitects

***************
***********
Reproduction of any of these images and texts without written permission is prohibited. 
Copyright: japan-architects.com

後藤連平/architecturephotoのセミナー「建築メディアのつくりかた」レポート

$
0
0
アーキテクチャーフォト/architecturephoto.netを運営する後藤連平のセミナー&トークショーに行ってきました。西澤明洋率いるエイトブランディングデザイン主催による勉強会「クリエイティブナイト」に招聘されたかたちだ。

architecturephoto.netは、建築にまつわる情報を世界中のウェブサイト上から編集・セレクトして紹介しているウェブメディア。個人がゼロから立ち上げたウェブメディアが、今では月間27万ページビューを誇り建築関係者から高い支持を得ている。
なぜこれほど支持されるようになったのか。今回のセミナー&トークショーでは、メディア運営の裏側だけでなく、情報発信者のメディアとの接し方のコツ、メディアに受け取ってもらえる情報発信のあり方など、メディアとして業界をクリエイティブに活性化させている活動を聞くことができた。

 当ブログの読者であれば知らない人はいないと思われるアーキテクチャーフォト。建築関係者の多くが情報源としている有力メディアで、当ブログもしばしば記事をリンク掲載していただいている。
しかし、サイトの存在は多くの方が知っており、多くの建築家がメールでやり取りしたことがあるにもかかわらず、静岡を拠点としているという地理的な側面もあり、運営者の後藤連平さんに実際に会ったことがある人はほとんどいない。
そんな後藤さんが、今回初めて東京でセミナーをするという貴重な機会に心躍った人は少なくないだろう。予約はたった3日で埋まったというから、その関心の高さがうかがえる。

 会場はエイトビル(木下昌大設計)。今回、同じ京都工芸繊維大学・建築学科出身で2年先輩である西澤さんの呼び掛け(呼び出し?)によって、遂に東京の公の場姿を現したが、西澤さんも含め、来場者のほとんどが後藤さんに会うのはこの時が初めてというのが面白い。


 レクチャー&トークは有料制で、1ドリンクとおむすびが付く。エイトブランディングデザインでブランディングを手掛けている "COEDOビール"、"IKU’S SHIRO"、有機米おむすび "七むすび"が供される。


 レクチャーは大きく3つのテーマで進行した。「アーキテクチャーフォトとは」、「アーキテクチャーフォトができるまで」、「アーキテクチャーフォト流情報発信術」。
大学を卒業後、組織設計事務所で分譲マンションの設計を経験し、その後地方の設計事務所に勤務。思い描いていた仕事とのギャップに戸惑い、「世界で、少なくとも日本で自分にしかできないことをやらないと将来、生きていけない」と強く思う。

学生時代に菊池宏さんのサイトに衝撃を受け、「ウェブサイトを作ろう」と考え、まず始めたのは建築写真のギャラリーサイトを作ること。
するとイタリアのdomusより藤森照信の建築写真を撮る依頼があり、それが採用された。岡田栄造さん(京都工繊大、S&Oデザイン)にもその写真を見せたところ「イワン・バーンみたいになれるよ」と言われ、建築写真家をなれると思い込むも、依頼は続かず方向転換し、毎日更新して人を集めるサイトにするためニュースコーナーを作ったのが今のアーキテクチャーフォトの起源だ。
それから10年間、ビジネスとして成り立ち始めたのは4年前からだそうだ。

 アーキテクチャーフォトを運営する上で大切にしていることは、「アクセス数よりも信頼されることを心掛ける」、「継続的に発信する」、「情報を受け手に合わせて(誇張ではなく)チューニングする」、「自分が伝えたいことと、受け手が知りたいことをバランス良く発信する」、「発信された情報と、受け手の反応を意識して観察する習慣を身につける」こと。

セミナーの後は西澤さんとのトーク。「ずっと浜松で、なぜ東京に出てこないのか?」との問いに、「長く居るので愛着があるのもあるが、東京でやると情報が東京寄りになってしまう気がする。どこでもできる仕事ですが、地方という中立的な場所だからこそ客観性をもって情報の取捨選択ができるメリットがある。」と後藤さん。
「日々溢れていく情報を僕というフィルターを通してアーカイブ化し、建築情報の歴史が見えるようになっていけたらいい。」 とも。

 西澤明洋さん(左)と、後藤連平さん(右)。学生の頃は同じ大学で建築を学び、今はそれぞれ建築に直接触れることのない仕事をすることになった二人。
最後に西澤さんから「後藤さんにとって建築メディアとは?」という問いに対しては、「アーキテクチャーフォトは自分を救ってくれた存在」と明かした。サイトを立ち上げる前は、建築系の繋がりも少なく、悶々とした日々を過ごしていたが、建築メディアを主宰することによって多くの方と繋がることができ、人生が大きく変わったという。

今回セミナー&トークを聴いてわかったのは、アーキテクチャーフォトは何となくメディアとして成長していったのではないということ。「人に来てもらうのではなく、集まりたくなる場をつくる」という確固たる信念を持ち、そのためにはどうすれば良いかを考え抜き、戦略的に構築してきたものであるということ。基本姿勢は建築家をサポートし、応援することであり、建築家を尊敬する気持ちと、そこから生まれる信頼を何よりも重んじているからこそ今がある。これだけの支持されるサイトには、なるべくしてなったのだ。


 朝起きるとまず、スマホでSNSやメールを大量にチェックするという後藤さん。会が終わるとすぐスマホチェック。2〜3日サイトの更新をしないと「後藤さんどうしたんだろう?」と心配されてしまうから厄介だ。

クリエイティブナイト:http://goo.gl/CbQmss
アーキテクチャーフォト:architecturephoto.net


**************************
japan-architects.com 
日本の建築家・デザイナーと世界をリンク
Web : www.japan-architects.com
Twitter : @JapanArchitects 

Facebook : japanarchitects

***************
***********
Reproduction of any of these images and texts without written permission is prohibited. 
Copyright: japan-architects.com


レベルアーキテクツによる「鎌倉中央公園の住宅」

$
0
0
出原賢一 + 中村和基/レベルアーキテクツによる「鎌倉中央公園の住宅」の内覧会に行ってきました。湘南モノレールの最寄り駅より徒歩20分程の住宅地。

 敷地面積173m2、建築面積69m2、延床面積117m2。木造2階建て。
第一種低層住居専用地域でゆったりと建ち、且つ地区計画により一定割合以上の緑化を求められた。

 南側は擁壁を持った段差になっており、眺望が良さそうだ。元は平屋の大きな屋敷が建っており、3区画に分筆された敷地。
作品名の「鎌倉中央公園」は直接眺めることはできないが北側背後数10mの所から広がっている。

 玄関前には庇を突き出したキャンティレバーのポーチ、奥にはルーバーに囲まれた中庭が覗く。


 ルーバー越しに植栽が透けて見え、敷地反対側の山まで見通せる。敢えて間隔の広いルーバーで、植栽を街に還元する地区計画に配慮した工夫だ。


 中庭は扇型に苔を敷き詰め、シンボルツリーにカエデを植えた。




 屋内に入ると広めの玄関ホールから、和室、主寝室へと続く。


 和室は中庭とほぼ同サイズで、正対し庭を眺めることができる。


 振り返ると奥にトイレと収納。玄関ホール天井にはフックが備えてあり、ハンギングチェアを吊り下げる予定だとか。


 主寝室。手前中庭に面して書斎を設け、一段上がって舞台のような寝室。
今は広すぎるが、お子さんが大きくなったとき分割し子供室をつくるそうだ。

寝室の外にはテラス、そして2階にも広いバルコニーがある。テラスにもフックが二つ備えてあり当然ハンモック用だ。

 2階へ。左は水回りで、キッチンからの一直線の家事動線が伺える。


 キッチンに近付くとダイニングと一体の(切り離すこともできる)5.7mのテーブルと、その上に鏡像のように吊り天井が設えられている。



 リビングの南側は全面の大開口だ。


 向かいの桔梗山の緑、春には桜、秋には紅葉を室内に取り込むことができる。


 天井は1m以上の高低差を持ちながら風景に向かって開いており、抑えられたキッチン側から一気に開放するよう演出されている。



 LDKから階段室へ戻る。ガラスの間仕切りと引戸を設え冷暖房効率に配慮した。


 水回り。白い空間に淡い光が差し込む。


 光源は浴室だ。中庭に面し、物干し用のバルコニーをバッファーにしているので非常に開放的で明るい。


 出原賢一さん(右)と中村和基さん(左)。
「お施主さんはこの地域に長く住まれていて、地域ののんびりした雰囲気のまま暮らせるよう望まれました。2階ではカフェのようなLDKで緑を静かに眺め、テラスやバルコニーでは屋外でのアクティビティが楽しめるよう計画しました。」

設計:LEVEL Architects
構造設計:馬場貴志構造設計事務所
施工:株式会社 匠陽

【関連記事】
千葉県の「南房総の別荘」
中野区の「沼袋の住宅」
渋谷区の「北参道の住宅」

**************************
japan-architects.com 
日本の建築家・デザイナーと世界をリンク
Web : www.japan-architects.com
Twitter : @JapanArchitects 

Facebook : japanarchitects

***************
***********
Reproduction of any of these images and texts without written permission is prohibited. 
Copyright: japan-architects.com

ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展「西田司さんの受賞を祝う会」レポート

$
0
0
今年のヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展にて、オンデザインの西田司が関わる日本館が審査員特別賞を受賞したことを受け、オンデザインが入居する横浜の「宇徳ビル ヨンカイ」を中心に組織さた実行委員会によって「西田司さんの受賞を祝う会」開催されたので行ってきました。

 祝賀会の企画は「お盆前にやろう」という目標のもと急遽決定し、告知は開催の2日前だった。


 会場は横浜港に面するBankART Studio NYK(バンカート)。


 急な開催にもかかわらず多くの方がお祝いに駆けつけた。


 ビエンナーレでの日本館のテーマは「en[縁]:アート・オブ・ネクサス」。20~40代前半の若手メインで12組の建築家の作品を紹介し、人の縁、モノの縁、地域の縁という3つの切り口で、建築という行為にまつわる、つながりや関係性を作品の主題として展示している。(2016年11月27日まで)
オンデザインでは2009年の作品「ヨコハマアパートメント」を出展した。


2009年竣工直後、オープンハウス時の動画

 会場に入ると片隅では西田さんが直前までスライドの調整をしている慌ただしさ。


 地元関内のCafe & Dining SAKAEによるケータリング


 ビエンナーレの様子がスクリーンに映し出され雰囲気を盛り上げている。


 西田さんがスライドの準備を終えたところで乾杯!


 ヨコハマアパートメントをパートナーして(当時)共同設計した中川エリカさんと。


 そして西田さんよりビエンナーレの様子が報告された。
息子さんが縦横にプロジェクターの前を横切り、大きな影を作るが全く意に介さない西田さん(笑

 作品の説明は中川さんにバトンタッチ。
ちなみに中川さんは、ご主人 原田雄次さんが勤めるスミルハン・ラディックのオフィスがあるチリにしばらく行くが、原田さんがもう2年ほどスミルハンの元で働くことから、自身もチリに住まいながら海外の建築を勉強できる機会と捉え、日本での仕事も進めているのため、一時帰国もしばしばあるような生活になるとのこと。日本で建築の仕事を辞めチリに移住してしまう、というようなことはないそうだ。

>>ギャラ間で開催中の「スミルハン・ラディック展」レポート

 プレゼンが終わると質問タイムに。
同じ港町にオフィスを構える田井勝馬さんから「西田さんにとって建築の美しさとはどのように捉えているか?」との質問に、、、
「好きな建築家の一人アルヴァ・アアルトが、『この白い壁は、何故この白を選んだのか』と質問された際、『ここに置かれる家具が一番引き立つ白を選んだ』と答えたという有名な話がありますが、僕は人が集まったとき、その背景にある建築がどのような美しさを持っていると、ひとが引き立つのかということを意識しています。」と逆説的に答えた西田さん。

 中川エリカさんからも質問。「ヨコハマアパートメント前と後で建築に対する取り組み方や姿勢が変わったと思いますが、どのように変わりましたか。」との質問には、、、
「以前は設計を進めながらここはどうやって使おうとか、どう美しく作ろうかなどを考えすぎていた。しかしヨコハマアパートメントを作って、人や人の活動と建物がどうあるべきかに気付かされました。」と西田さん。

 ヨコハマアパートメント竣工後、実際に家族3人(当時)で住んでみた西田家。人見知りで引っ込み思案だった娘さんが、社交的で明るくなったとか。
また当時2、3歳だった娘さんからは「狭かった!」との思い出話に会場は盛り上がった。

ここからは会場の様子をいくつか




 (田中さんピンボケ申し訳ありません)












ヨコハマアパートメントのオーナー川口さんと(怪我のため車椅子で出席)。

【2016 ヴェネチア・ビエンナーレ 国際建築展】
会期:2016年5月28日~11月27日
会場:ジャルディーニ地区(Giardini di Castello)、アルセナーレ地区(Arsenale)など
詳細:www.jpf.go.jp/j/project/culture/exhibit/international/venezia-biennale/arc/15/

**************************
japan-architects.com 
日本の建築家・デザイナーと世界をリンク
Web : www.japan-architects.com
Twitter : @JapanArchitects 

Facebook : japanarchitects

***************
***********
Reproduction of any of these images and texts without written permission is prohibited. 
Copyright: japan-architects.com


カヌチがインテリアを手掛けた「Nentrys office」

$
0
0
木下陽介+野口優輔率いるCANUCH Inc.(カヌチ)がインテリアを手掛けたネントリーズ株式会社の「Nentrys office」を内覧してきました。場所は渋谷区笹塚の駅前に建つオフィスビルの4階と、7階の一部。ネントリーズ株式会社は、商用車の買取・販売を行う「トラック王国」の運営を行っている会社である。今回首都圏にあった2拠点の統合に伴う移転プロジェクトとして依頼された。

エレベーターを降りてまず正面に現れるのは、大きく弧を描く壁面と白く光るロゴマーク。759㎡のオフィスのちょうど中心にあり、ここから東西に空間が伸びる。ITや広告会社のようなクールさを放ち、車の買取・販売業界では異色と言えるオフィス。その見た目から、入居当初はカフェに間違えられることもあったという。


従業員数160名、平均年齢33歳。元々インターネット広告をあつかうベンチャー企業として始まった会社で、トラックを扱う事業にシフトした今も、"人ありき"という姿勢を変えることなく、その固定概念にとらわれない柔軟な考え方が新オフィスにも現れている。


円弧の内側はセミナースペース。
階段状の椅子を使えば、大人数でのミーティングやパーティーを行うことができる。このスペースが動線の中心にあることで、従業員同士の活発なコミュニケーションが生まれる。


そしてその外円と営業部との境に設置されているのはバーカウンター。
夕方から夜、業務を終えた社員が自然とオフィスの中心(円)に集まってくる。その交流の場所はエントランスからも見えるようにし、来訪者に社風を感じとってもらえる仕掛けにした。
カウンターも同心円を描いているのがわかる。


酒瓶がディスプレイされている棚越しに営業部エリアが見える。


営業部。
あたらしくデザインされたオフィスによって、部署間を越えた関係がさらに強まり、業績もアップしたという。


バーのある外円の延長線上には8人掛けの会議室。
「空間を視覚的に遮断せずに、なるべく全て見通せるように」という要望と、「会議室はしっかりとセキュリティを高めたい」という要望両方を、レイアウトとガラス間仕切りへ加工したフィルムのグラデーションで解決した。




中心のセミナールームに戻り、反対側へ。


6人掛けの会議室。


リラクゼーションスペース。
酸素ボックス、マッサージチェア、昼寝ができる畳の間、、、社員が新オフィスに欲しいと言ったものを社長がすべて叶えてくれたそうだ。パーティションのあるシートは、プライベート感覚で寛いだり飲食もできるスペースとなっている。
(photo:Kenji Masunaga)


酸素ボックス。
短時間で疲れを回復できると従業員にも好評。


畳の間。
主にランチタイムの昼寝や読書をする場として活用されている。畳の間の奥には総務部。


対面に12人掛けの会議室。


GLAS LUCEのマジックミラー。
プレゼンテーションの際には、画面が美しく浮かび上がる。


ミーティングテーブル。
脚は鏡面で浮遊感を演出。内部は収納スペースになっている。


 7階、308㎡のスペースに海外事業部が入っている。


ミーティングルーム。


リフレッシュエリアに設けられたハイカウンターからは、街が一望できる。

「ネントリーズ株式会社は社内イベントや部活動が盛んで、統合前から部署間を越えた関係が既に出来ていました。社員一人一人がよく見える透明感がある社風です。その関係性をより高めるため、オフィスの中心にはリラクゼーションスペースやバー、セミナースペースを集約し、あえて動線上に絡めたレイアウトにしました」と担当の野口さん。


**************************
japan-architects.com 
日本の建築家・デザイナーと世界をリンク
Web : www.japan-architects.com
Twitter : @JapanArchitects 

Facebook : japanarchitects

***************
***********
Reproduction of any of these images and texts without written permission is prohibited. 
Copyright: japan-architects.com

中村高淑による横浜の「桜台の家」

$
0
0
中村高淑(unit-H 中村高淑築設計事務所)による横浜市青葉区の住宅「桜台の家」を見学してきました。東急田園都市線 青葉台駅から徒歩18分程の場所。

 敷地面積77m2、延床面積76m2。木造2階建て。
ビルトインガレージにはポルシェが納まり、2階には台形の大開口が目を引く。

 2階には半周、バルコニーが回っている。


ガレージの折れ戸と玄関扉を開けると1階の半分が露わになる。
実はこのポルシェ、ご主人のお兄さまの形見だそうで、この車が納まるガレージが第一条件だったとか。
ビルトインガレージ付き住宅を多く手掛け、ご自身もポルシェ乗りの中村さんに声が掛かった。

 当日は引き渡し。この家に初めて車庫入れをしたご主人はガレージに納まるポルシェを見て、お兄さまのことを思い出し涙を流したが、「今までで一番緊張した車庫入れだった。」と最後には笑った。
ひとの記憶と大切なモノを繋ぐ建築だ。

 ガレージのフロアはモルタルに顔料で着色し、タイヤ痕やオイルなどの汚れが目立たないように配慮。
右から収納、階段室、トイレ、洗面、クローゼット、個室と続く。

 個室は一部畳み敷きになっており、同居する奥さまのお母さまの部屋になる。


 階段室は鮮やかなロイヤルブルー。蹴込みには乳白の樹脂板がはめ込まれており、階段下のトイレの明かりが淡く透過する仕掛け。


 振り返ると格子状の仕切りが見える。上部にもハイサイドライトを設け階段室が暗くないように。
格子にはポリカーボネートの板が挟み込まれている。

 2階LDK。北側斜線に沿った片流れの屋根。西面と南面には天井までの大開口と、吹き抜けによる大きな気積、さらにデッキ張りのバルコニーにより空間が外部と連続し気持ちいい。


 大開口の先に見えるのは内井昭蔵による集合住宅の名作「桜台コートビレジ」。名建築と、そこに植わる桜を借景とするための大開口だ。
ちなみに開口のガラスは光や熱を選択透過・反射するLow-eペアガラスを採用しているので、見た目ほど暑さは心配ない。またこの後バーチカルブラインドを付ける予定。

 1970年竣工の桜台コートビレジはいわゆるデザイナーズマンションの先駆け的存在。雁行しながら各住戸は南西面を向いているので、こちらへの視線は殆どない。(良好な周辺環境からいまだに空き待ちの人気物件だそうだ)


 階段室の仕切りは飾り棚になっており、ご主人のミニカーコレクションが並ぶ予定。
梁の上には間接照明が設えてあり天井を照らす。
床はパイン材、建具や天井はシナ材。

 キッチン側(西面)を見る。キッチンの背後は水回り、キッチンからも浴室からもバルコニーへ出られ、物干しも容易なよう家事動線を集約。手前には黒皮ままの鉄製階段がロフトへ伸びる。


 ロフトはご夫婦の就寝スペースに。



中村高淑さん。「桜台コートビレジは学生の頃、集合住宅の課題で調査に訪れたことのある思い出深い建築です。その目の前に住宅を設計するとはまさか思いませんでした。」「この敷地は築15年ほどの古家付きで売りに出されていました。リノベも検討しましたが最終的には建て替えとなり、僅か15年ほどで解体される住宅に心が痛みましたが、この住宅は眼前の桜台コートビレジのように長く愛される建物になってくれたらいいですね。」


**************************
japan-architects.com 
日本の建築家・デザイナーと世界をリンク
Web : www.japan-architects.com
Twitter : @JapanArchitects 

Facebook : japanarchitects

***************
***********
Reproduction of any of these images and texts without written permission is prohibited. 
Copyright: japan-architects.com

河野有悟による大田区の「南雪谷の家」

$
0
0
河野有悟(河野有悟建築計画室)による大田区の「南雪谷の家」を見学してきました。
最寄り駅は東急池上線 雪が谷大塚駅。

 敷地面積170m2、建築面積102m2、延床面積229m2。木造3階建て。
大きなボリュームを上下・左右方向に割ったような構成で、1階に親世帯、2~3階を子世帯とする二世帯住宅だ。


左手が南になるが、そのままでは1階に外光が得られないため、片手を上げるようにハイサイドライトの開口を設け光を導いている。
それに伴い立ち上がった斜めの壁はプライバシーを得るために活用されている。

 1階の室内から見るとこのように。住宅密集地ゆえ、南側に迫る隣家に対して積極的に開口せず、ハイサイドライトから間接光を得ているのがよく分かる。
奥と手前に見える梁を利用して、引戸で仕切り個室を作ることができる。

 奥からの見返し。


 奥の個室は庭に面している。見えるのは子世帯側で、庭を介して通じることができる。


 子世帯へ。左の黒いガルバリウム張りは親世帯だが、奥にキッチンの開口があるので、孫たちが「おばあちゃん行ってきまーす」といった具合に声を掛けられる。


 玄関を入ると正面に和室。


 和室は床の間も入れて9畳。久しぶりに広い和室を拝見した。


 雪見障子を上げると縁側と、先に紹介した庭に連続する。


 2階は筆者の背後に映像作家であるご主人のアトリエ、ダイニングスペースとその左にキッチン、リビングスペースと続く。


 リビング側から。南(左)はルーフバルコニーで、全面開口で連続する。


 家族皆が集まれる広いリビングは、さらにルーフバルコニーへ広がる。


 リビングには親世帯で見られたようなハイサイドライトより外光が降り注ぐ。


 ダイニングスペースはすこしバルコニーへ突き出している。


 ルーフバルコニー。親世帯と子世帯の間に生まれた都会のプライベートスペース。奥行きは約10m、幅は広いところで約5mある。
もちろん軒にはハンモック用のフックが備えてある。

 傾斜壁には植栽の手入れ用に階段がついている。


 オープンでパブリック的な2階から、プライベートな3階へ。筆者の背後に主寝室、右に側に水回り、子供室と続く。
頭上には傾斜した天井に沿って光が落ちるよう照明が設えてある。

 子供室。左側は就寝スペースで将来的に二部屋に分割もできる。
北側斜線による傾斜天井の下にはスタディデスクを作り付けた。高さが取れない部分に座って利用するスペースを持ってくる効率の良い設計だ。

北側のトップライトなので明るすぎず机上を照らす。足元が斜めになっているが、2階のハイサイドライトに見えた部分。

【南雪谷の家】
建築設計:河野有悟建築計画室
構造設計:Scube 
施行:山庄建設
敷地条件:準防火地域、近隣商業地域、第一種中高層住居専用地域

**************************
japan-architects.com 
日本の建築家・デザイナーと世界をリンク
Web : www.japan-architects.com
Twitter : @JapanArchitects 

Facebook : japanarchitects

***************
***********
Reproduction of any of these images and texts without written permission is prohibited. 
Copyright: japan-architects.com

エマニュエル・ムホーによるインスタレーション「今、ここにいるよ。」

$
0
0
9月下旬までMEToA GINZAで開催の「Space in Ginza - 銀座の中の宇宙」にて、エマニュエル・ムホー(Emmanuelle Moureaux Architecture + Design)のインスタレーション「今、ここにいるよ。」を見てきました。



会場は銀座の新しい顔、東急プラザ銀座(日建設計)内にあるMEToA GINZA(空間設計:窪田茂)。
「三菱電機のテクノロジーが、アートや伝統、様々な文化と結びつき、新しい価値をカタチづくっていく。ここにしかない発見や驚きを、多くの人に、見て、ふれて、体験してもらうための場所。」



 METoA GINZAは晴海通り側ではなく、銀座西5丁目交差点側にエントランスがある。

今、ここにいるよ。/ I am here
準天頂衛星の測位精度をモチーフとした、エマニュエルさんの100 colors シリーズ12番目のインスタレーション。
「準天頂衛星は、地球の上空40,000kmの高度から自分のいる場所(x,y,z)を、センチメータ級の精度で測ることができます。この、準天頂衛星の精度を美しく可視化し、親しみと感動を届ける来場者参加型のインスタレーション。銀座の雑踏をイメージした作品の中には、迷い込んでいる何かが存在しています。」

100色、18,000体もの女性のシルエット。その中に猫と小さな女の子が迷子になっている。

皆探している。 

 探す、


 探す、


 銀座を思わせる圧倒的な雑踏の中、、、


見付けた!
一つだけ見付けることができましたが、銀座を訪れた際は探しに行ってみてはいかがでしょうか。他の作家の作品もあります。
ちなみに迷子の位置は時々変わるそうです。

【Space in Ginza — 銀座の中の宇宙】
会期:2016年7月9日〜9月下旬
会場:METoA Ginza

**************************
japan-architects.com 
日本の建築家・デザイナーと世界をリンク
Web : www.japan-architects.com
Twitter : @JapanArchitects 

Facebook : japanarchitects

***************
***********
Reproduction of any of these images and texts without written permission is prohibited. 
Copyright: japan-architects.com


河口佳介による「横浜 青葉の家」

$
0
0
河口佳介(K2-Design)による横浜市青葉区の住宅「横浜 青葉の家」の内覧会に行ってきました。

敷地面積300m2、建築面積118m2、延床面積150m2。RC造+木造、2階建て。
敷地は奥に向かって5m程の高低差があり、1階をRC、2階を木造にしている。

河口さん特有の上に傾斜する軒裏。屋根は非常に傾斜の緩い寄せ棟なので薄く軽い屋根が乗せてあるように見える。
建物ののRC部は杉板型枠仕上げ、2階はリシン吹き付け仕上げ。

3台分の駐車スペースと、接道からセットバックしているおかげでゆったりと建つ。前庭に小さいながらも植え込みを造作し、ファサードに表情を与えている。上はバルコニーと思われるが穴が空いておりハイノキが貫通している。


玄関ホール。1階は右に納戸と奥にトイレ、左には和室。1階はコンパクトで突き当たりの壁は土留めでもあり、その向こうは地中になる。


お施主さんはこの杉板型枠仕上げをどうしても採用したかったそうだ。
それに答えるように型枠の浮造りや、コンクリートの流し込みなど、丁寧な仕事が伺える。

和室。2日後に引越を控え、子どもたちが新居での生活を待ちきれないようだ。


和室は中庭に面し、アオダモがこれから子どもと共に育っていく。


階段を2.5mほど上がると2階に面した庭に出る。奥の斜面も敷地で、お施主さんはこれからどのように仕上げていくかを楽しみにしていた。


戻って、2階へ。左に主寝室、右は水回りとウォークインクローゼット、正面はLDKへ通じる。


主寝室。ちょっとした書斎スペースも設えてある。


主寝室と浴室は、表から見えたバルコニーに連続する。外壁によりプラバシーを確保しながら、採光と通気を得られる仕掛だ。

キッチンから見渡すおよそ40m2のLDK。
手前からダイニング、リビング、横長の収納家具、AVコーナーとエリアを緩く分けていくそうだ。

ハイサイドライトが全周を囲っており、軽やかさと開放感を醸し出している。
床、天井共にアフゼリアというモザンビーク産の材を使用。「サンプルだと結構赤みが強く見えるのでちょっと敬遠されがちですが、実際使ってみるとそんなことはなく、チークに似た堅く高級感のある仕上げになります。」と河口さん。

キッチンは、お施主さんの希望で昇降式レンジフードを採用し天井はすっきりだ。


LDKには3人のお子さんそれぞれの個室が並ぶ。


外周、各室全てがハイサイドライトで連続しており、どこまでも続くような奥行き感を生み出している。
ちなみに各室はガラスで仕切られている。



河口佳介さん(左)と、お施主さん一家。
「周囲に対してあまり大きな開口部を持たないシンプルな建物の中で、ハイサイドからの柔らかな採光と、その光でさらに深みを増す自然素材に囲まれた空間が住み手の生活を優しく包み込みます。」と河口さん。

【横浜 青葉の家】
設計監理:河口佳介+K2-Design(アーキテクツスタジオジャパン登録建築家)
施工:ASJみなとみらいスタジオ

**************************
japan-architects.com 
日本の建築家・デザイナーと世界をリンク
Web : www.japan-architects.com
Twitter : @JapanArchitects 

Facebook : japanarchitects

***************
***********
Reproduction of any of these images and texts without written permission is prohibited. 
Copyright: japan-architects.com


「SDレビュー2016 入選展」レポート

$
0
0
9月14日~9月25まで開催の「SDレビュー2016 – 第35回 建築・環境・インテリアのドローイングと模型の入選展」に行ってきました。会場は代官山ヒルサイドテラスF棟。
[The 35th Exhibition of Winning Architectural Drawings and Models]

 SDレビューは、実現見込みのないイメージやアイデアではなく、実際に「建てる」という厳しい現実の中で設計者がひとつの明確なコンセプトを導き出す、思考の過程を、ドローイングと模型によって示そうというもの。


 1982年、槇文彦発案のもとに第1回目が開催され、以降毎年「建築・環境・インテリアのドローイングと模型」の展覧会と誌上発表を行っている。

各賞の発表は後日だが、今年の入選15作品を紹介。
 〈裏と「オモテ」と境界〉 石川翔一、神谷勇机/1-1 Architects
愛知県知立市の住宅。

 築50年の木造住宅の増改築。天井の高い平屋住宅に水平の境界を挿入し、天井裏であった箇所を天井「オモテ」と読み替え、新しい住空間を創出。


 模型の赤い部分を既存より減築し、奥の青い部分を増築し同時に耐震補強も図る。


 〈農家住宅の分筆〉 安田将之、岸 秀和/kishi, yasuda architects
愛知県一宮市の住宅。

 田園地帯に残る低密度な風景を継承しつつ更新する手法。風景の輪郭ともいえる屋根の稜線と躯体を残しながら、二家族のために分筆する。


 既存状態。


 〈擁壁と屋根/対行政住宅〉 齋藤隆太郎/DOG
神奈川県横浜市の住宅。

 市街化調整区域で様々な規制や条例が掛かる敷地。対行政という要素をポジティブに取り込み、敷地の特殊な形状や性質を利用して、ここにしかできない新しい建築の姿を生み出す。


 〈House N〉 矢野泰司、矢野雄司/矢野建築設計事務所
高知県東部の住宅。

 海を望む高台の敷地で、独自のフレーム構造を並列に連続させ、3階を持ち上げ海への眺望を獲得。その下に高さ4mの半屋外空間を生み出し、人と人を繋げる場として機能させる試み。


 〈おおきな家〉  針谷將史建築設計事務所
三重県の住宅・事務所・ギャラリー。

 写真家のためのギャラリー併用住宅。住宅街の中、1,000m2もの敷地は家と街との間にどのような関係性をもたらすのか。内外の庭と様々なスケールの空間が、複数の過ごし方を同時に許容する。


 〈大きな屋根と小さな屋根のある庭〉 小川泰輝、錦織真也/小川錦織一級建築士事務所
宮城県石巻市の住宅。

 3.11の津波で自宅を失い、5年間の借り暮らしの後防災集団移転地へ。親子二世帯が丁度並ぶ敷地を得られたことで一続きでありながら沢山の余地を残す計画で、DIYや野菜作りなどしながら新しい地での生活を創造していく。


 〈だぶるすきんの家〉 佐藤 信
大分県大分市の住宅。

 思い出のある家を改修しながら、並列で2台分の駐車場を確保するという施主の要望。


 既存の建物半分を解体し、構造部材をそのまま使いながら90度回転させた位置に再構築。”切り口“ 部分は耐震補強を兼ねた入れ子状の出窓で表情を持たせた。(出窓は端部のみ開口する)


 〈大地の家〉 畑友洋建築設計事務所
大阪府池田市の住宅

 敷地周辺の風をもつ小盆地、それに適う植生、環境に当たり前に寄り添いながら暮らすことを考え、全ての階層に於いて平面計画は大地への配置計画であり、建築全体で内外の豊かな関係性を紡ぐ。


 〈瀬戸内の海の駅舎 〉西澤高男/ビルディングランドスケープ+日髙仁/SLOWMEDIA
愛媛県弓削島。

 全国初の海の駅のための駅舎で。海と陸の結節点として、サイクルステーションや観光案内所も兼ねる。桟橋から続く様々な空間を建物のスロープが繋ぎ「全てが道端のような」小さな活動が連続する場となる。



 〈52間の縁側〉 山﨑健太郎、岡本章大/山﨑健太郎デザインワークショップ
千葉県八千代市の宅幼老所(小規模多機能型居宅介護施設)。

 デイサービスや宿泊、訪問介護センター、さらに子ども食堂、就労支援スペースとして工房、寺子屋も併設。緩やかに起伏する敷地に合わせ縁側と、雨水を活用した水辺をもつ縁の下や畑は地域、子ども、お年寄りたちの新しい営みの場となる。



 〈呼応する場所〉 木村太地、佐々木健二/SUPPOSE DESIGN OFFICE
神奈川県鎌倉市のオフィスビル。

 周囲の商店や住宅の環境文化を壊さないよう、引き違い窓という住宅の要素を取り込むことでファサードのスケールを細分化。しかし内部は街のような気積を持たせるため内外のズレによって建物は揺らぎを獲得し、古都に馴染む画一的なオフィスから脱却する。


 〈Takasaki Trekking Terrace〉 田中裕一、中本剛志/Studio YY
群馬県高崎市の集合住宅複合施設。

 高崎の良さや賑わいを還元できる事を目指す建築。下層にはテラスで結ばれるテナントとアウトドアチャペルも計画。上層には住居で居住者用のスロープから公共のスロープへ連続し、街から個の居場所へ自然に繋がることを期待。



  〈とらのこ保育園〉 山下貴成建築設計事務所
山梨県河口湖町の保育園。

高齢者施設の3棟が囲む敷地に湾曲したアーチの屋根を掛け、園庭、ラウンジ、保育室など分節しながらも一繋がりの柔らかい環境をつくり出す。保育園が皆が集まる大樹のように、コミュニティの核となるような建築を目指す。

 アーチ屋根の1/1モックアップ。


 〈富江図書館 さんごさん〉 能作淳平/ノウサク ジュンペイ アーキテクツ
長崎県五島列島福江島のゲストハウス兼図書施設

 過疎化が進むこの島の文化を次の世代に、或いは島を訪れた人に伝えることを目指し、島にある素材や建材、技術を用いてコンバーションする。また図書館がない地域なので全国から寄贈された本を集め図書スペースも計画。


 〈幼・老・食の堂〉 金野千恵/teco
東京都品川区の高齢者福祉施設(看護小規模多機能型居宅介護施設)

 介護施設と保育所を、中心にあるまちの食堂で繋ぎ、幼と老、地域の食を支える地域に開かれたお堂のような建築。ロッジアによって多様な交歓を生み、テラスや屋上菜園を開放し、地域と施設の相互的なケアが培われる事を期待。


 会場を回る槇文彦さん。


 審査委員。左から岡村仁、安田幸一、飯田善彦、乾久美子の各氏



【SDレビュー2016 – 第35回 建築・環境・インテリアのドローイングと模型の入選展】
東京展
 会期:9月14日~9月25日
 会場:代官山ヒルサイドテラスF棟、ヒルサイドフォーラム
京都展
 会期:10月3日~10月21日
 会場:京都工芸繊維大学 美術工芸資料館

【関連記事】

**************************
japan-architects.com 
日本の建築家・デザイナーと世界をリンク
Web : www.japan-architects.com
Twitter : @JapanArchitects 

Facebook : japanarchitects

***************
***********
Reproduction of any of these images and texts without written permission is prohibited. 
Copyright: japan-architects.com

河野有悟による大田区の「南雪谷の家」

$
0
0
河野有悟(河野有悟建築計画室)による大田区の「南雪谷の家」を見学してきました。
最寄り駅は東急池上線 雪が谷大塚駅。
(※9月19日発売の新建築 住宅特集2016・10月号 "テラスの極意"に掲載されている作品です)

 敷地面積170m2、建築面積102m2、延床面積229m2。木造3階建て。
大きなボリュームを上下・左右方向に割ったような構成で、1階に親世帯、2~3階を子世帯とする二世帯住宅だ。


左手が南になるが、そのままでは1階に外光を得にくいため、片手を上げるようにハイサイドライトの開口を設け光を導いている。
それに伴い立ち上がった斜めの壁は2階のプライバシー確保に活用されている。

 1階の室内から見るとこのように。住宅密集地ゆえ、南側に迫る隣家に対して積極的に開口せず、ハイサイドライトから間接光を得ているのがよく分かる。
奥と手前に見える梁を利用して、引戸で仕切り個室を作ることができる。

 奥からの見返し。


 奥の個室は庭に面している。見えるのは子世帯側で、庭を介して通じることができる。


 子世帯へ。左の黒いガルバリウム張りは親世帯だが、奥にキッチンの開口があるので、孫たちが「おばあちゃん行ってきまーす」といった具合に声を掛けられる。


 玄関を入ると正面に和室。


 和室は床の間も入れて9畳。久しぶりに広い和室を拝見した。


 雪見障子を上げると縁側と、先に紹介した庭に連続する。


 2階は筆者の背後に映像作家であるご主人のアトリエ、前方にダイニングスペースとその左にキッチン、リビングスペースと続く。


 リビング側から。南(左)はルーフバルコニーで、全面開口で連続する。


 家族皆が集まれる広いリビングは、さらにルーフバルコニーへ広がる。


 リビングには親世帯で見られたようなハイサイドライトより外光が降り注ぐ。


 ダイニングスペースはすこしバルコニーへ突き出している。


 ルーフバルコニー。親世帯と子世帯の間に生まれた都会のプライベートスペース。奥行きは約10m、幅は広いところで約5mある。
もちろん軒にはハンモック用のフックが備えられる。デッキはレッドシダーにグレーを塗ってから拭き取り、ニュートラルな色に仕上げた。

 傾斜壁には植栽の手入れ用階段が数カ所ついている。


 オープンでパブリック的な2階から、プライベートな3階へ。筆者の背後に主寝室、右側に水回り、子供室と続く。
頭上には傾斜した天井に沿って光が落ちるよう照明が設えてある。

 子供室。左側は就寝スペースで将来二部屋に分割もできる。
北側斜線による傾斜天井の下にはスタディデスクを作り付けた。高さが取れない部分に座って利用するスペースを持ってくる効率の良い設計だ。

北側のトップライトなので明るすぎず机上を照らす。足元が斜めになっているが、2階のハイサイドライトに見えた部分。

【南雪谷の家】
建築設計:河野有悟建築計画室
構造設計:Scube 
施行:山庄建設
敷地条件:準防火地域、近隣商業地域、第一種中高層住居専用地域

**************************
japan-architects.com 
日本の建築家・デザイナーと世界をリンク
Web : www.japan-architects.com
Twitter : @JapanArchitects 

Facebook : japanarchitects

***************
***********
Reproduction of any of these images and texts without written permission is prohibited. 
Copyright: japan-architects.com

「トラフ展 インサイド・アウト」レポート/TOTOギャラリー・間

$
0
0
TOTOギャラリー・間で10月15日から開催の「トラフ展 インサイド・アウト」のプレス内覧会に行ってきました。

 展覧会概要:「インサイド・アウト」と名づけられた本展は、初期作品から数々の会場構成、プロダクツ、そして最新の住宅プロジェクト「Big T」(2016年)に至るまで、その完成形をスタディの過程、試行錯誤する中で手がかりとなったもの、インスピレーションを受けた素材などとともに展示することで、創る過程をも楽しむトラフのアタマの中をのぞき、思考の過程を追体験いただだける内容となります。是非、トラフの思考法に触れ、これからの建築や都市の有り様を探っていただくきっかけとしていただければ幸いです。(オフィシャルサイトより)


 3階展示室に入ると大きな展示台が1台。その上はおもちゃ箱をひっくり返したような賑やかさだ。


 一つ一つを眺めると、トラフがデザインし、見たことのあるプロダクトや建築模型のほか、奇妙な形をした植物、何かのサンプル、古い日用雑貨などが置かれている。
オブジェクトの傍らには番号が振ってあり、入場の際もらうハンドアウトにそれが何か説明されており、その数は100個。1番はハンドアウトそのもので今回の作品の一つ。「本展を宝探しのように、発見的に読み解くガイドブック」と書かれている。

 さらに展示台のオブジェクトを縫うようにNゲージの線路が敷設されており、模型の列車 "トラフ号"がその上を静かに走っている。
これらがトラフのお二人の頭の中の世界を表現しているそうだが、ここまでで来場者は今ひとつピンとこない展示と感じるのではないだろうか。

 もやもやした気分で3階中庭に出ると、展示室と同じ幅のテーブルが連続するように置かれ、3階と4階との接続領域として存在している。これから東京中で始まるデザインウィーク、「歩き疲れたらここで座って休憩してもらえる場所」でもあるそうだ。


 中庭には大きな石が常設されているのだが、よく見ると目が描かれているではないか。この石が以前から魚に見えるような気がしていたそうで、目を描いたら正に魚に。すると周りは水に見えてきて、テーブルは波に浸食されたような形になって、周囲には空や海の青を見立てた。


 青いシートは近付くと建設現場でよく使われる養生シートだった。プリーツ加工して二枚重ねると不思議なモアレが現れている。
安東陽子とのコラボレーション。

 中庭の頭上には防虫ネット。水中から水面を見上げたようなきらめきでもあり、風になびけば空気を可視化する装置となる。


 4階展示室は映画館のようになって、ムービー “インサイド・アウト” が流れている。前から後ろにかけて徐々に高くなる 段々ベンチが設えてあり見やすい。
藤森泰司とのコラボレーション。

 プレスカンファレンスではこのムービーをトラフの二人が解説してくれた。
ムービーは3階の展示台を走る列車にカメラを載せて撮影されたものだ。

 視点が全く変わったことにより、展示台の小さなオブジェクトがヒューマンスケールに変わり、置かれたモノが一気に建築物のように見えてくるのだ。


 脈絡なく置かれていたようなオブジェクトは、概ね時系列的にトラフのプロジェクトを順に表現しており、時折ムービーが停止し、二人のナレーションによる解説が流れる。


 列車は展示台の下にも潜り込み、地下世界を見せてくれる。
ムービーは15分程あるので是非会場で。
そしてムービーを見終えたところで「なるほど3階の展示主旨が分かった」となって、再び3階へ戻るのだ。

 ここがムービーのスタート地点。「メッシュのトンネルを抜けると二人の顔が見えたなあ」と思い出す。


 トラフ号はオブジェクトや作品のスタディ、イメージを抜けたり、、、


 実作の中を走ったり、、、


 ひとの目線では到底見ることのできない世界を駆け、、、


 ときには建築模型の中を走ることで、空間を疑似体験しながら様々な情景を見せてくれる、という趣向だった!


 この展覧会、前回のスミルハン・ラディック展終了後1ヶ月の間隔を開けてあるのだが、終了後1週間、つまり本展開始の3週間前には設営を完了するというギャラ間史上最速の設営期間だったそうだ。その理由は設営後鉄道模型で撮影し、それを編集・加工するために3週間は必要で、ムービーの完成をもって展示の完成を迎えるということだったのだ。
ムービー制作はWOW inc. による。

 とはいえ展示台上の制作はトラフのオフィスでかなり前から進行していて、この台がしばらくオフィスを占領し、打合せは外で行わなければならなかったそうだ。


 石巻工房〈カラフルな AAスツール〉 
その上には〈事務所のカレンダー〉。トラフで13年間同じシリーズを使い続けているもの2004年の12月を見ると、事務所創設まもなく仕事がまばらだった様子が分かる。


 トラフの代表作〈空気の器 のスタディ
時系列で開発の様子が分かる。

 〈スカイデッキ〉 こんな所にも展示作品があるのでお見逃しなく。


 そして今回は3・4階の展示室を飛び出し、ギャラ間のビル全体で展示されているのだ。
2階Bookshop TOTOに〈コロロデスク〉や、、、

 ギャラ間限定〈空気の器 TOTOギャラリー・間オリジナルデザイン〉は水をテーマにデザインされている。


 1階・地下1階のセラトレーディング・ショールームでは〈空気の器 インスタレーション使った空気の器は900個という。


 100番目の作品はどこだろうか?
ギャラ間を出ようとする直前に探してみてください。

 そして長年ギャラ間の代表を務めた遠藤信行さん退任に伴い、新代表に就任した筏久美子さん。


「より開かれたギャラリーに。単なる展示の場だけでなく、多くの人の交流点にしていきたいと思っています。」と新代表。数年ぶりに内覧会でのパーティーが開催された。


 鈴野浩一さん(右)と、禿真哉さん(左)。
「プロダクトから建築まで色々手掛けていますが、単なる回顧展にはしたくないと思いました。様々なものが建築やデザインのヒントになっています。スケールを変えること、視点をかえることで見えるもの、感じるものが変わっていく体験をしていただければと思います。」

展覧会に合わせTOTO出版より刊行された〈トラフ建築設計事務所 インサイド・アウト〉。タイトル通り「表と裏」をひっくり返すように、少し視点を変えてみることで生み出された42作品を紹介。ムービーの中にも時折でてくる「ぼうや」を探すのも楽しみのひとつ。
ブックデザイン含むグラフィックデザインは中村至男による。

【トラフ展 インサイド・アウト】
会期:2016年10月15日〜12月11日
会場:TOTOギャラリー・間
詳細:www.toto.co.jp/gallerma/ex161015/index.htm

**************************
japan-architects.com 
日本の建築家・デザイナーと世界をリンク
Web : www.japan-architects.com
Twitter : @JapanArchitects 

Facebook : japanarchitects

***************
***********
Reproduction of any of these images and texts without written permission is prohibited. 
Copyright: japan-architects.com

アトリエ・オイ監修「USMイノスボックス」を使った長山智美スタイリングのUSMショールーム空間

$
0
0
スイスを代表する家具メーカー、USMモジュラーファニチャーは、10月26日よりオリジナルアクセサリーボックス「USMイノスボックス(アトリエ・オイ監修)」の国内発売を開始。東京デザインウィーク中、長山智美氏がインテリアスタイリングを手掛けた空間となっている丸の内の直営ショールームに行って来ました。


家族のリビングでの収納例。
こげ茶、ベージュ、オレンジをメインカラーに、サボテンなどのラテンアイテムで楽しい雰囲気。

今回ショールームの照明は通常の40%ほどに落としてある。長山さんによる細やかなディレクションで、よりリアルな生活空間を体感できる。

新商品「USMイノスボックス」オフィスでの使用例。USMハラーと互換性のあるサイズ展開なので、ハラーユニットに収納しても、単体としても使用することが可能。

色はライトグレー、アントラサイトの2色。サイズは大きさ2種類、高さ2種類の4種類がある。ポリエステルのフリース素材。

USMハラーに実際にUSMイノスボックスを目一杯いれた様子。色やサイズを自由に組み合わせて自分だけの棚をつくることができる。

階段室を挟んだ壁際のディスプレイは、家族それぞれのライフスタイルに合わせた収納例。

こちらは旅と写真を撮ること好きなお父さんを想定した棚。


編み物が趣味のお母さんの収納棚。

ディバイダーを使えばこまごました裁縫用具もすっきり。

子どものための収納。
取っ手がついていて手押しにもなるので、好きな玩具を入れて運べばどこでも遊び空間になる。


長山智美さん。「テーマはリビングとオフィスです。家族それぞれのための収納スタイリングでは、実際に写真や裁縫をしている方の道具をお借りしました。今回USMとガーデニングという初と思われるスタイリングにも挑戦していますので、ぜひショールムーで探してみてください」

特別展示期間: 2016年10月26日(水)~11月7日(月)
会場: USM丸の内直営ショールーム
営業時間: 月-日11:00〜19:00 (祝日を除く)
www.usm.com

東京デザインウィーク期間中、hhstyle.com青山店ではミラノサローネ2016で発表したUSMイノスボックスのインスタレーションが再現されています。

【関連記事】
USM50周年記念レセプションと長谷川豪参加のプロジェクト展示
「スイスデザイン展」レポート/東京オペラシティアートギャラリー


**************************
japan-architects.com 
日本の建築家・デザイナーと世界をリンク
Web : www.japan-architects.com
Twitter : @JapanArchitects 

Facebook : japanarchitects

***************
***********
Reproduction of any of these images and texts without written permission is prohibited. 
Copyright: japan-architects.com

青木淳やムトカが参画したギャラリーコンプレックス「complex665」

$
0
0
青木淳建築計画事務所ムトカ建築事務所らがインテリアデザインを手掛けた、六本木のギャラリーコンプレックス「complex665」の内覧会に行ってきました。
麻布警察署裏手の路地を入り、六本木の喧噪から少し離れた場所。

 小山登美夫ギャラリー、シュウゴアーツ、タカ・イシイギャラリーの3つのアートギャラリーと、ブロードビーンのショールームが入居する複合商業ビル。
美術館の多い六本木地区の新しいアートスポットだ。

 その内のシュウゴアーツのギャラリーを青木淳建築計画事務所が、小山登美夫ギャラリーをムトカ建築事務所がインテリアデザインを手掛けた。
青木淳さんと、ムトカの村山徹さんは師弟関係だが、今回のプロジェクトは全くの偶然だったとか。

 シュウゴアーツ エントランス。アルミの大きな引戸は室内のアルミテーブルからイメージを引用している。


 展示室は6面白のキューブのような空間。床はグロス塗装で汚れを拭き取りやすくした。
壁上部に見える隙間はエアコンの吹き出し口。

照明には岡安泉も携わり、均質な光になるよう調整が繰り返された。
オープニング展は小林正人による「Thrice Upon A Time」。12月4日まで開催。

 間仕切り代わりのバックルームを抜け、奥のスペースへ。


 こちらはエクストラの展示室でもあり、商談室でもある。
中央には青木事務所でデザインした楕円のアルミテーブルとスツール。

 照明も青木事務所デザイン。天井には照明を設けず、このスタンドライトの間接光で賄う。


 青木淳さん(右)と、担当の竹内吉彦さん(左)。「二つのスペースはほぼ同じ面積で同じ形をしていますが、照明によってスペースの質を変え、大きな楕円テーブルで様々な用途に切り替えが可能です。」


 ムトカが担当した小山登美夫ギャラリーへ。右がシュウゴアーツ。
こちらは内覧会より前、まだ作品が展示されていない状態も見学させていただいた。

 煉瓦タイルが敷き詰められたエントランスと、ムトカらしいシンメトリーな構成が出迎える。


 ギャラリーA。ヴォールト天井が柔らかな光を生み出している。
床はモルタル。

 エントランス側の壁はベージュ。


 扉を開けた際、凹凸がでないように一手間加えた納まりに。



コリドール状のギャラリーB。


レセプションと、その背後にバックルーム。
切り出された石を磨き上げたようなレセプションカウンター。



応接室の扉がどこかに隠れている。


 突き板同士の目地はゴールドに着色されていた。


応接室は暖色で落ち着いた雰囲気に。

 天高を抑えたギャラリーBから、折り返し天井で大空間を演出したギャラリーCへ。
照明はDNライティングのシームレスラインを使用しているが、天井面から不要な飛び出しがないよう埋め込んでいる。

 オープニング展は蜷川実花の「Light of」。12月3日まで開催。






 ギャラリーの構成を表した模型。建築家らしく建築的なアプローチで空間を塊のように捉えていることがよく分かる。


 村山徹さんと、加藤亜矢子さん。「ギャラリーには壁が求められますが、単に壁を多くするのではなく、3つのギャラリーの大きさや性格を変え、ストーリー性のある展示が可能になるよう計画しました。」



タカ・イシイギャラリーでは、荒木経惟や畠山直哉ら20名によるグループ展「Inaugural Exhibition: MOVED」が11月19日まで開催。


 ブロードビーンのショールーム。

シュウゴアーツ:shugoarts.com
小山登美夫ギャラリー:tomiokoyamagallery.com
タカ・イシイギャラリー:www.takaishiigallery.com
ブロードビーン:broadbean.jp


**************************
japan-architects.com 
日本の建築家・デザイナーと世界をリンク
Web : www.japan-architects.com
Twitter : @JapanArchitects 

Facebook : japanarchitects

***************
***********
Reproduction of any of these images and texts without written permission is prohibited. 
Copyright: japan-architects.com

Viewing all 584 articles
Browse latest View live