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川辺直哉による敷地をシェアした住宅「材木座プロジェクト」

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川辺直哉建築設計事務所 (Naoya Kawabe Architect & Associates) による鎌倉の住宅「材木座プロジェクト」のオープンハウスに行ってきました。二人の施主によって同じ敷地に、二棟が建てられた珍しいプロジェクト。

敷地面積243m2。左のY邸が建築面積37m2、延床面積74m2。右のM邸が建築面積39m2、延床面積78m2と若干異なるが見た目のボリューム感、切妻屋根のシルエットはほぼ同じに見える。

 右のMさんがこの土地を見付けたが、広すぎるため共同で購入してくれる方を探した。そしてお子さん同志が保育園からの友達、というYさんに声を掛けプロジェクトがスタートした。

 こういう場合敷地の境界などはどうなるのか気になるが、接道から続くアプローチ中央の飛び石が境界だそうだ。しかもアプローチは偶然4m幅あるのでもし片方が土地を手放しても2m接道が出来るという。

 敷地の奥より。芝を敷き詰め、コナラやクスノキ、果樹などが植わる庭は共用部として使う。敷地の奥(手前)に向かって盛り土をし起伏を持たせた。
海に近い鎌倉の風土に合うようにと、造園は地元の本田浩/Honda Greenに依頼した。

 裏庭のシャワーに敷き詰められるのは鎌倉石。ここの工事の際、土中からごろごろ出てきたので本田さんの提案で利用した。鎌倉石は今では採掘されていない希少な石だそうだ。

 それでは先ずY邸へ。

 玄関は引戸。ポーチには横長に庇を設け縁側の雰囲気を作った。

 1階DK。2面の開口から庭を眺められる。隣のM邸とは開口が正対しないように配慮されている。

 テレビがあるがここはダイニング。

 キッチンの奥は土間の納戸が設けられている。アーチ型の扉が奥さまのお気に入り。

 2階にリビング。こちらにはテレビがなく、家族共用の大きな書棚が設えてある。

 反対にはバルコニー、主寝室、畳スペース+納戸。

 ソファーの背後には子ども室が二つ並ぶ。 

 次にM邸へ。盛り土による隆起が分かる。

 Y邸とは打って変わって、玄関には亜鉛メッキされたフレームのガラス扉。

 玄関のすぐ右に水回り。

 そしてDK。

 キッチンではどこに何があるか一目で分かるようにと棚のみの収納。


 1階の床は全面モルタル仕上げで床暖房が入っている。(石油ストーブを見て、非常時には電気を使わない暖房器具は重宝するだろうなと改めて思った)

 L字型リビングの奥は両家の子どもたちの “たまり場” になっていた。

 2階にはスタディースペースを中心に、左に子ども室、右奥に納戸と主寝室。

 3人分の子ども室は横並びに。

 子ども室には机はなく、ベッドと私物のみ。狭く机を置かないことで...

 このように自然と子どもたちは共用部に出てくるそうだ。


 特注の木サッシュ窓。下に見える鍵の取付が泣かせる。

 くっきりと切り抜かれた開口からは四季を感じる木々が眺められる。

 外からはこのように。

 この日、川辺事務所はビールサーバーを用意し、お施主さん達によってBBQ大会が開かれる予定だったが残念ながら雨で夜に延期。幸い午後から雨は上がり沢山の見学者が集まった。(それでもビールや軽食はご馳走になりました。ありがとうございます)

川辺直哉さんは「共用部以外は基本的に両者個別の要望を伺いました。敷地に対してどのような配置、外観デザインにするか、庭をどのようにするかなどを提案しながら進めていきました。趣味趣向はそれぞれ異なるお施主さん達ですが、価値観が非常に近いので成り立ったのだと思います。」「お一人ではなかなかこれだけの敷地は持てませんが、広い敷地を互いにシェアし合うことでとても豊かな住まいが出来ました。」と話す

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14組の建築家による「新しい建築の楽しさ 2014」・前期

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11月6日より東京・京橋のAGC studioで始まった「新しい建築の楽しさ 2014」前期展に行ってきました。
恒例となってきた本展は今年で3回目。地に足を着け、社会との関わり方を模索する30〜40代の若手建築家14組が手がける最新のプロジェクトの模型を、前期と後期に分けて展示。いずれも実施を前提、或いは竣工済みのプロジェクトだ。

今回の会場構成を担当したのは萬代基介。繊細でありながら存在感があり、しかし模型を引き立てる展示台をデザインした。

 無数の細いスチールロッドで、厚さ2mmのアクリル板を支えている。


 2月5日に行われるフォーラムでこちらの話もされることだろう。


前期展では14組のうち7組の作品が展示されている。

 〈まるほん旅館改修プロジェクト〉久保秀朗+都島有美
群馬で400年以上続く老舗旅館の改修。あえて部分的建築で複雑さを足していきながら改修を進め、旅館の持続可能性を模索するプロジェクト。模型はそのうちの小さな風呂小屋。


 〈赤坂6丁目プロジェクト〉木下昌大


  都心の集合住宅。煉瓦の透かし積みのスクリーンでセミオープンな開口を用いて内外の関係に幅を持たせる。不動産の経済原則に従いながらも住戸の多様性を確保し、街の風景を刷新する集合住宅の新しいプロトタイプを目指した。 


 〈A-School Project〉藤原徹平


 埼玉・深谷の医療系専修学校。勉強熱心で学校での滞在時間がやたら長い学生のために、事業効率性を保持したまま空間の豊かさを生み出すのが課題。お気に入りの場所を探したり、授業を受ける教室を目指しながら人が立体的に動く活発な状況を建築によって生み出す。


 〈HS project〉栗田祥弘


 東京・天王洲対岸の活性化プロジェクト。運河沿いの古い建物を再生し水辺の賑わいを復活させる。船着き場やいかだの様な場を水上に作り、水運を使った往来も含め水辺に人が集まる工夫と居場所を考えている。


 〈みんなの別荘プロジェクト〉松井亮 


 神奈川・箱根の保養所を改修しシェア別荘として再生させるプロジェクト。保養所として既に十分な共有空間は備わるが、個人や家族利用のための空間が不足している。施設全体のパブリックとパーソナルのバランスを分散。森をシェアする仕掛を点在させている。


 〈Dragon Court Village〉 稲垣淳哉+佐野哲史+永井拓生+堀英祐


 郊外住宅地の賃貸長屋の段階的計画。軒下を中心とした立体的な外部空間とアネックスを備えポーラスな建築に。中長期的にアネックスの交換や借り増し、軒下の増改築などの持続可能性を取り込む試み。さらに隣地への集合住宅の計画により敷地を横断する連鎖をも試みる。


 〈鶴ヶ島太陽光発電所・環境教育施設『eコラボつるがしま』〉工藤和美+藤村龍至
埼玉の太陽光発電所に併設された、複数の機能をもつ施設。大学院生らが設計に参加し建築家が指導を行った。住民投票によるランキングを繰り返し段階的に案を統合。多数決投票ではなく、投票を用いて課題を抽出していった。


後期には松島潤平、三浦慎、伊藤暁+須磨一清+坂東幸輔、菅原大輔、川添善行、田辺雄之、三浦丈典が展示を行う。

【新しい建築の楽しさ 2014】 
会期:前期/2014年11月6日〜12月26日
   後期/2015年1月6日〜2月21日
会場:AGC studio
企画:中崎隆司
詳細:https://www.agcstudio.jp/project/pdf/project_12th.pdf

【フォーラム】18:30 - 20:00

11/20 リノベーションは多様化する  栗田祥弘/松井亮/久保秀朗
12/10 新しい設計体制を構築する 藤村龍至/稲垣淳哉
12/18 新しい景観をつくる 藤原徹平/木下昌大
1/15 新しい形式をつくる 川添善行/伊藤暁 + 須磨一清 + 坂東幸輔
2/5 人を集める 田辺雄之/三浦丈典/萬代基介
2/19 居場所をつくる 松島潤平/三浦慎/菅原大輔



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田根剛によるインスタレーションCITIZEN「LIGHT is TIME」日本凱旋展 レポート

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今年4月のミラノサローネで田根剛 (Dorell.Ghotmeh.Tane Architects) が手掛け話題となったシチズンのインスタレーション "LIGHT is TIME” を再編成した「 "LIGHT is TIME” ミラノサローネ2014 凱旋展」内覧会に行って来ました。

 会場は東京・南青山のスパイラル。
本凱旋展は、インスタレーション〈LIGHT is TIME〉に加え、シチズンの起源や時計作りへのこだわり等を深く知る事が出来る内容となっている。


  <Manufacture d'horlogerie>
シチズンの時計の製造現場映像・社員の想いなど。左に並ぶ円筒には精緻な時計の部品を展示。


 あまりにも細かい部品群。ルーペが備えてある。


 <LIGHT is TIME>
光と時をコンセプトにしたインスタレーション。


 「 "時間は光であり、光は時間である"。宇宙のはじまりビッグバンが起きたとき、光と共に時間は生まれました。そしていつしか地球が生まれ、地平の果てから昇る太陽が大地を光で満たし、動く影の変動や季節が移ろう光の変様、闇夜に浮かぶ月の満ち欠けに気付いた人類はあるとき “時間” という概念を創出したのです」(LIGHT is TIMEコンセプト文より抜粋)


 幻想的な空間は中に入ることができる。


 中央にはムーブメントのグラフィックと、その上にシチズン時計第一号の懐中時計が吊り下げられている。


 懐中時計は1924年製の “本物”。



 光を受けて輝いているパーツは腕時計の地板(じいた)。この地板に全ての部品が付き時計が出来上がる。
部品から完成時計まで一貫して製造可能なマニュファクチュールであるシチズンの原点そのもの。

 その地板65,000枚を使って圧倒的な光の空間を作り出している。


 ミラノでは、デザインアワードの「ベストエンターテイニング賞」と「ベストサウンド賞」の2冠に輝いた。


 スパイラルならではのスロープ上からの眺めは田根さんのお気に入り。




 <TIME EVOLUTION>
ビッグバンから光と時が生まれ、時の進化と、シチズンの挑戦を立体樹形図で展示。

 壁面左側は、田根さんご自身で集めた展示物。数日前に来日してから作ったというものもある。


 <BETTER STARTS NOW>
"どんな一瞬もすべてを良くするスタートだ"というシチズンの信念をグラフィックとムービーで表現。


 点灯式での様子。北川景子さんとシチズン取締役副社長の青柳良太さん。


 照明・音響演を担当した遠藤豊さん(LUFTZUG)。
「ミラノの時よりもクローズドで1/3の大きさの空間なので、今回潜り込むような音とLED270個を使ったゆらぎのパターンの光で構成しました。」


田根剛さん。
「スパイラルならではの展示になるよう、一から作り上げました。日本の皆さんにも是非この機会に体感してもらいたい。スロープがあるので上へとあがりながら浮遊感を感じ、三次元的に楽しんでもらえると思います。」
「日本でのプロジェクトは展示も含め現在10件ほど進行中です。初めての個人住宅が来年大磯に完成予定ですので楽しみにしていて下さい!」

【"LIGHT is TIME” ミラノサローネ2014 凱旋展】

会期:2014年11月14日〜11月24日
会場:スパイラルガーデン(スパイラル1F)東京・南青山
詳細:www.spiral.co.jp/e_schedule/detail_1256.html

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槇文彦、内藤廣らが登壇 シンポジウム「新国立競技場の議論から東京を考える」レポート

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10月1日、日本建築学会 (AIJ) 主催「建築文化週間2014」のイベントとして、シンポジウム『新国立競技場の議論から東京を考える』が田町の建築会館ホールにて開催された。

 槇文彦、内藤廣、青井哲人、浅子佳英、五十嵐太郎の各氏がそれぞれの意見をプレゼンテーションし、その後ディスカッションや、会場からの意見交換などが行われた。


 冒頭、モデレーターの松田達氏から6つのポイントで問題提起された。
1. 作者の問題、2. プログラムの問題、3. 費用の問題、4. 都市計画の問題、5. コミュニケーションの問題、6. 政治的な問題

 槇文彦 + 槇TEAMからは、『新国立競技場案 (2014.5.28) の何が問題か?』と題してプレゼンテーション。 

以下は槇氏のプレゼンテーションを要約し書き起こしたものだ。
 『誰の作品?』

「当初案は3,000億円と試算され、5月現在案は日本の設計チームが加わって1,685億円と試算。さらに10月末大手ゼネコン7社よりプロポーザルの回答がでる予定。その後ゼネコンの設計チームが加わるかも知れない、そうするとこの建築はもはや誰の作品か分からなくなる。」

 『巨大な開閉膜屋根は可能か?』

槇チームでも考えてみたがどうにもうまくいきそうにない。ゼネコンに投げられたのは実はこの部分の解決策が見つからないため。」

1万数千m2の幕屋根の開閉は技術的に可能だろうか。実際に原寸モックアップで検証する必要があると思うが、そこで無理だと分かったときはどうするのか。」

この巨大で、相当な重量になる幕を高所で張り替える作業は可能だろうか。」


 『芝の育成はできるのか?』

「実際、開閉式屋根を持つ大分銀行ドームは、新国より大きな開口面積だが、芝育成のため十分な日照を得られない。」

「2001年のオープン以来10回の事故。2011年から屋根は開放したまま放置されている

「こういった失敗例からなぜ学ばないのか。」

 『高温多湿』 

 「オリンピック開催時期、高温多湿な真夏の東京。こんなにクローズな競技場で本当に競技者のための絶好の競技環境が提供されるのか。観客は快適に観戦できるのか。」

「IOCへのもてなしなどは非常に次元の低い話。」

「そもそも8万人が入るのは開会式の時だけでないだろうか。」

 『日よけ』 

「芝育成のために一部(10,000m2程)がガラス屋根になるようだが、その下の観客は暑い。そのため可動式の日よけスクリーンを設置する必要がある。以前バーゼルでフランク・ゲーリーのガラスの建築で可動式のスクリーンを見たが、モーターやワイヤーを使い複雑な(メンテナンスも掛かる)仕組みが必要になっていた。」

「こういった設備の問題は山のようにあり、ここで紹介したのは一部でしかない。」

 『イベントホールとして成り立つか?』 

「恐らく開閉部分はC種膜による屋根になると思うが、残響時間は8秒もあり、遮音性はほとんどない。観客のジャンピング対策(=近隣への振動)はどうするのだろうか。ならばジャンピングは禁止にすればいい?そんなイベントホールは楽しいだろうか?十分な収益が上げられるだろうか?」

『コスト分析1』 
「5月現在建設費は1,625億円と算出されているが、物価上昇や屋根・免震等の諸問題を加味すると最終的には2,500億円と予想される。
長期修繕には国の施設の場合、毎年建設費の0.8%掛かると試算されるので、50年で40%である650億円が見込まれているが、これが2,500億円の建設費になった場合、修繕のレベルにもよるが最小でも50年1,250億円、最大で3,750億円がが予想される。」
「このように現状の見込み650億円と非常にかけ離れた数字になり、我々の税金で何とかすればいいという姿勢がはっきり分かる。」

 『コスト分析2』 

「年間の収支についてJSCは、収益を50億と想定していたが、そんなに儲からないだろうと周囲から言われ、38億に下方修正。しかし支出で46億の想定のままでは大幅な赤字になる。そこで特に修繕費の部分を半分に見積り、支出を33億にし収益が出るように見せるという、数字遊びでごまかしている。

簡単に修繕費を半分に落とすなどという欺瞞に満ちた数字を出すところを本当に信用できるのか、そういったところも議論する必要がある。」

 『無蓋案はどうか?』 

「(300m近い)クイーンエリザベス号と比較してもこのような大きさになる。」

「天井をなくし、50,000人規模の常設客席にし、不足分は仮設で補う。屋根が必要とIOCが言うならなら仮設テントを張ることもできる。そして新国際子供スポーツセンターを併設。」

 「屋根を支えるアーチの断面はどの位巨大かというと、80m2のアパートが入る位の大きさ。」


 『もう一つのオプション』 

「穏やかさのある東京。そして大人も子供も年間を通して楽しめるスポーツ施設。季節を彩る木々を植える。それは平成の都民からみらいの子どもたちへの贈り物になるのではないか。」

「しかしここまでしてもこの建物が廃墟になる可能性がある。2050年の日本は、人口が1億人くらいになり、生産年齢人口も減り、GDPは世界14位まで下がると予測されているからだ。そのために益々規模を小さくしていけるようなことを考える必要があるかもしれない。」 

 最後に内藤氏のプレゼンテーション。
「敵役で出てきました (笑)。」
「槇先生がいらっしゃるので、本来ここで話すのは審査委員長である安藤忠雄さんが良いと思うが、出ないとのことなので私が多少なりとも事情を話せたらと思う。」と前置きしながら、
「審査した者として結果には責任がある。」
「槇先生をはじめ中村勉さんが指摘された件は、解決し乗り越えなければならない問題。」
「審査のあり方については拙速であったと思う。時間がないなかで急がされ、私たちの意見も取り入れられないことも多々あり、こんな状態でやるべきではないと思いながらも巻き込まれたことは自分に責任がある。」
「応募資格についてはJIAの新人賞受賞者、建築学会の作品選受賞者くらいまでは広げるべきではと主張したが取り入れられなかった。」
「情報公開の仕方について、審査・設計のプロセスも公開するようにと安藤委員長も求めたがそうはならず、多くの誤解を招いた。しかるべきタイミングで公開可能な情報を提供し、市民の意見を取り入れていくことがもっとあっても良かった。(7月に行われた)建築団体とのコミュニケーションも遅きに失した。」

「このプロジェクトはまだ港に居て船出していない。それをJSC (日本スポーツ振興センター) が受け止められるだろうか。」

「今日申し上げたいのは、本当にもう時間がないのにまだ港にいる。今日ここには設計者がたくさんいらしてお分かりかと思うが、この時間次第で出来上がるものの密度であったり、建築として成り立つかどうか、施工において納得のいくクオリティになるか、皆さんが懸念されている問題を解決できるのか、それが決まる。建築の質にまつわる問題を誰も議論してこなかった...本当はこれが一番大事なのではと思う。」

「完全にこれを造るのを止めよう、というのならそれはありかも知れない。しかし造るのであれば、こんなに時間のない中で沢山の問題を解決し、未来の国民に対して落とし前を付けられるものを作り上げるのは至難の業。」

「私も全貌を把握しているわけではないので、設計についてはザハ事務所或いはJSCが説明するのが良いが、私がざっと見ただけでもハードルは極めて高い。」

「どういうことかと言うと、私の解釈は槇先生とはちょっと違って、挑戦的であることからくる問題だと思っている。それは構造の問題、開閉幕の問題、やるとなると世界初というようなことが幾つも出てくる。他に当然コストの問題、メンテナンスの問題もクリアしていかなければならない。」

「私は今まで少し傍観していたところがある。(安藤)委員長が前面に出るべきだと思っていた。しかし最近の様子を見て思うのは巨大な二流の建物はいらないと思う。これが最大の無駄遣い。やるのであれば世界に誇れるものにすべき。」

「そのためにきちんとした建築的クオリティを与え、コストも収め、性能も収めてというプロセスをこれから辿ると、非常に時間がない。」


 その後のディスカッション。


 槇氏「先ほどの内藤さんのお話は全面的に反対です。最後に、色々な問題があるが、時間のないことだから後は担当者が一生懸命汗を流して、その結果立派なもの、誇れるものを造るのが大事なのではと仰った、そのように解釈したがよいでしょうか?」

内藤氏「はい、大丈夫です。」

槇氏「私はこういうものを造って喜ぶ人は絶対世界にいないと思う。なぜなら、審査委員の責任ではないが、あの狭いところに理想的な競技場でもない、理想的なサッカー場でもラグビー場でもない、理想的なホールでもない、それを一緒にした複合施設をコストも合わないのに造っても羨ましがる人は絶対いない。むしろこんなプログラムでこんなものを造ったのかと世界から冷笑される、恥ずかしいものができると思う。」

「私も世界中でコンペの審査員をしたが、中には何でこんなひどいものものを造ったのかというものもある。その場合それは審査員の責任はそんなにはないと思う (笑)。今回審査員をされた内藤さんも、こんな事になるだろうとは思ってなかったということは十分に理解できる。プログラムがひどい、その結果建築家につけが回ってきている、この場合建築家はザハや日建たちなのかも知れない。しかしここで潔くこんなものはできません、こんなものにお金を掛けては恥ずかしい、決して高い志を持ったものは出来ませんと早めに声を上げた方がいい。」

「内藤さんはもう時間がないと仰ったが、東京に相応しいものを造るんだということを日建も含め、日本の設計者なら今からでもアイデアを出せるはず。」

 内藤氏「いや、そうかもしれません。現状 “離婚調停” は厳しい。」

「一年前であればそういうこともあった(できた)かもしれない...」

槇氏「今でもできるのではないですか。」

内藤氏「出来るかも知れないで離婚するわけにはいかないので...」

槇氏「私が言いたいのは、今決心すれば日本チームの設計で、世界に誇れる...かどうか分かりませんが (笑) 、”普通の” 競技場が出来て、それが一番都民や国民にとって幸せなことではないかということ。」

最後に本件で建築学会の役割について、
 「本プロジェクトをいかにつぶすかというデータばかりが出ている。建築学会の役割としてはニュートラルな立ち位置で何かあったら学会に、と思われるようになれればいい。」


 「技術的なことがうまくいくか、芝の育成がうまくいくかとかゼネコンのプロポーザルで結果を待つ、ということは間違っている。本来であれば第三者である建築学会の有識者で徹底的にチェックすることができる。」

「ゼネコンにプロポーザルさせてしまえば何とかなるという意識が我々にもある。その考えを直す文化を作っていくことが必要で、私も今回とても学ばせてもらった。」

「しかし私としては何としても、どうやったらこの案を阻止できるかが大切なこと (笑) 」
と締めくくった。

ギャラリーでは「東京オリンピック2020から東京を考える」展が開催されている。

【建築文化週間2014】
建築夜楽校2014 「東京オリンピック2020から東京を考える」
・第一夜:新国立競技場の議論から東京を考える
 日時:10月1日 →本記事
・第二夜:オリンピック以後の東京
 日時:10月9日 18時〜
・東京オリンピック2020から東京を考える展
 会期:10月1日〜13日 
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小坂竜(A.N.D.)、齊藤太一(SOLSO)等参加の商業施設「グランツリー武蔵小杉」

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11月22日川崎市・武蔵小杉にオープンする商業施設「グランツリー武蔵小杉(GRAND TREE MUSASHIKOSUGI)」内覧会に行ってきました。

 地上4階、地下2階建てで、店舗面積は約37,000m2。セブン&アイ・ホールディングスによる "上質"にこだわった地域密着型の大規模商業施設だ。東横線・JR南武線武蔵小杉駅から徒歩4分。


 本施設ではエコへの取り組みが随所に見ることができるが、こちらは "セブンの森"の間伐材で出来たベンチ。


 エントランスの壁やファサードも緑化されている。


 1F。4層の吹き抜けが開放的。
1F〜4Fまで日本初出店や新業態を含む約160のテナントが入り、イトーヨーカドーを核テナントに、そごう・西武、タワーレコード、フランフランなどグループの各専門店も出店している。

 1階には高さ8mの "グランツリー"をイメージした大きな樹のモニュメントが設置されている。


 葉に見えるのはなんと折鶴!本施設のテーマ「愛」を表現すべく、折鶴アーティストの小野川直樹がディレクションした。
3種類の緑色の折紙を用い、開業に向けて近隣や出店テナントの方々、セブン&アイ・ホールディングスの社員など関係者達で折ったという折鶴その数約4万羽。"ORIZURU PROJECT"として来客者も参加して木を成長させるという参加型プロジェクトだ。

 <AQUA DROP>
高さ14mから落ちる水のオブジェで、6パターンの音と光の演出により様々な表情を見せるグランツリー武蔵小杉のシンボル。



 各フロア毎にそれぞれテーマがあり、1FはMy Beautiful Life、2FはCLOSET & MIRROR、3FはEnjoy Living!、4FはHandy for Momsとなっている。



 階段は踏面の色を交互に変えてあり、目の不自由な方に対応したユニーバサルデザインを採用している。


 2F <西武・そごう武蔵小杉SHOP>


 空間デザインは小坂竜/乃村工藝社・A.N.Dが手掛けた。"SUITE RESIDENCE"をテーマに、風、光、緑など自然を感じるモチーフをデザインに取り入れている。


 4F <スマイルスクエア>
子供と家族のためのスペース。インタラクティブに遊べるモニターも設置。地域の人々によるファッションショーやワークショップ等をする場所としても使われていく。 

 ベビールームは各フロアにあり、4階には2箇所設置されている。こちらはその一つ、40坪以上の広々としたベビールーム。「個室で遮らない授乳室が欲しい」というママ達の声に応えた仕切りのないオープンなつくり。 


 ルーム内で栄養士などに相談する機会を設けるなど、情報交換の場、コミュニティー機能を持つスーパーベビールームだ。


 こちらは4階のもう一つのベビールームでサンリオとのコラボ空間。今後も他の企業と模様替えをしていくそう。


 4F <PARTY FOR YOU>
レンタルパーティースペース。 


 周辺のタワーマンションに備え付けてある簡素なレンタルルームとは一線を画す仕上げで、周辺に住むひとの需要に応えている。


 4F <フードテラス>
ハイサイドライトを採用した自然光溢れるフードコート。



 テラスも緑化されている。


 RF <ぐらんぐりんガーデン>
グリーンプロデュースにSOLSO代表の齊藤太一を起用した、広さ約4,300m2という日本最大級の屋上庭園。

 庭園内は「PLAY&JOY」「RELAX」「EAT&FLAVOR」の3つのテーマで構成されており、それぞれのテーマに沿って約300本の樹木とその他植物約8,000株が植えられている。


 クランベリー、レモン、ザクロ、ラフランス等の果樹も楽しむことが出来る。


 ウッドデッキには、廃木材の木粉と廃プラスチックによる再生木材が使われている。


 多用されている円のモチーフには「人と人を繋ぐ」という想いが込められている(そして円があれば子供は回る)。



グランツリー武蔵小杉のメインビジュアルにも注目。JTの大人タバコ養成講座のイラストなどで知られる寄藤文平が手掛けている。

【グランツリー武蔵小杉 - GRAND TREE MUSASHIKOSUGI】
詳細:www.grand-tree.jp 




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駒田建築設計による集合住宅「アリウェイ戸越」

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駒田剛司+駒田由香+深澤浩司/駒田建築設計事務所 (Komada Architects office) による東京・品川区の集合住宅「アリウェイ戸越」のオープンハウスに行ってきました。

 敷地面積296m2、建築面積182m2、延床面積625m2。RC造、4階建て。共同住宅と長屋の兼用で11住戸。
建物は幾つものボリュームに分かれているように見え、色も何色かの中間色に塗られている。


 向かいの路地から見るとほとんど違和感なく、色も雰囲気もなじんでいる。


 ここは東京にある典型的な昔ながらの街並み。周囲のコンテクストを読み取り、リサーチすることでこの建物が街の異物にならないように配慮した。
「このような周辺環境では大きな真っ白な塊にはしてはならない。」と駒田さん。


 敷地の奥行きは25m程ありそこに路地を作った。そして建物は幾つもの棟が路地に沿って並んでいるように見える。
さらに窓にはあえて懐かしい感じのスチール製手摺も付けた。既製品はもうなかなかないので特注したそうだ。
手前には防災用の井戸を掘った。 


 101号室。表通りに面した長屋部分。壁は吹きつけの外断熱が施されている。


 玄関を開けると正面に螺旋階段とその背後にラウンドした壁。左は水回り。
壁はコンクリート打ち放しに白の塗装がしてある。


 螺旋階段で振り返ると複雑な立体構成が見えてくる。


 2階は階段室の左右に寝室とDK。


 DK側を見る。天井高3mにフィックスガラスで街が近い。左には小さなバルコニーもある。


 103号室。101号室の階段室がこちらでは空間の仕切りに使われている。


 玄関側を見ると敷地内路地を行くひとが見える。
左のガラスに換気扇ダクトが直で付いているのに注目。


 敷地内路地を奥へ。長屋のエントランスが並ぶ。


 別な角度からはこのように。


 ここで一度屋上を見ると分かりやすい。建物の輪郭は内と外を入ったり出たりしながらも一筆書きで描かれている。そして内部の壁柱や垂れ壁と作用しながら空間の内外が入れ替わり豊かな表情を作っている。



 107号室。右から小さな玄関ホールを抜けると、3階まで吹き抜けに螺旋階段が挿入されるトリプレット。まるで巨大なドリルビットがこの竪穴を掘ったようだ。


 2階には寝室と水回り。


 3階に上がると右にトイレ、左に机、奥にDK、リビングと続く。


 ちょっとした机があると使い勝手がいい。


 DKとリビング。壁構造のこの建物。壁柱や垂れ壁(梁)で、構造と空間の間仕切りを両立させて緩やかに仕切っている。



 敷地内路地に面した共同住宅部分のエントランスホール。何か白く大きな箱が置いてある。


 反対側を見ると郵便受けと宅配ボックスだった。 
左に見える開口とその空間は建物の機能としてはあまり意味がないが、街の隙間のように存在させた。施主はこのような一見無駄とも思えるデザインを許容してくれたそうだ。


 403号室。見える壁は全てRCの壁柱や垂れ壁(梁)。戸や扉を付けずにスペースは仕切られている。


 冒頭の101号室の階段室のラウンドはそのまま3階、4階へ用途を変えながら続いている。 
 角度の付いた壁の間隔が狭くなることだけで空間を仕切る。


 屋上から見えた輪郭の凹みはこういったサプライズ的な開口としても利用されている。


 401号室。玄関から見ると狭く絞られているが...


 2歩進むと至るとこに設けられた開口越しに空間と外の景色へ視線が抜けていく。



 正面、V字の隙間はほとんど使い道がない。こういった “無駄” は通常賃貸住宅の設計ではNGだが、許されたここでは “余白 として豊かな表情を生んでいる。



駒田由香さんと駒田剛司さん。「施主である工務店は地元に60年前からある老舗で、60周年記念として地元に誇りが持て、地元に愛してもらえるような建物を望まれました。そしてここは昔ながらの商店街を抜け、昔ながらの下町の雰囲気です。違和感なくこのボリュームのものを建てるにはどうするか検討を重ねました。街に対して閉鎖的になるのではなく、敷地や建物の境もはっきりしない、住居内部もあまり内外がはっきりしないように設計しました。」


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伊藤暁による「菊名の住宅」

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伊藤暁/伊藤暁建築設計事務所 (Satoru Ito) による「菊名の住宅」の内覧会に行ってきました。場所は横浜市鶴見区。

 敷地面積117m2、建築面積54m2、延床面積101m2。木造2階建て。 


 眺望の良い傾斜地に建つ。2階からもエントリー出来そうだが、金網と並行に幅1m程の所有者の所在不明な謎の土地が横たわっている為それは叶わなかった。


 2階には建物を半周囲うバルコニー。その下に玄関アプローチ(後にモルタルで仕上げるそうだ)。現場で設置される柵が見えるがこれで完成。


 左の壁はサイディングで中は納戸。右の壁はガルバリウム鋼板で中は水回りになる。


 外壁の仕上げ材であるガルバリウム鋼板が水回り側にそのまま入ってきている。


 洗面の照明は現場の仮照明のようだが、梁に穴を開け配線してあることでそれが “仮” ではないことを表現している。


 水回りから振り返ると左側に蛍光灯がずらりと並んでいる。


 スイッチをONにするとこの光量! 何と右の壁に反射させて使う間接照明だった。点灯させる本数で光量を変えることもできる。


 壁には白いターポリンシート。まだ施工途中かと思いきやこれで完成。内側はウレタンフォームの断熱が吹き付けられている。


 1階リビング。夏涼しいだろうと思われるここは「夏のリビング」と名付けた。
踏面がフレーム側から片持ちされている珍しい階段。

 右の開口面は北向き。天井を3.7mまで上げハイサイドライトを設けた。そして持ち上げられた2階は立地を活かしてさらに眺望を良くした。


 柱は無垢材だが、この大黒柱だけは集成材だ。無垢材だと構造上150角になってしまうので、他の柱と同じ105角にするには強度のある集成材の必要があった。
奥は主寝室とクローゼット。その上に子ども室。 

 強い大黒柱は、崖上の敷地で北西の風がかなり強く当たることから、手前の梁から伝わる風圧を受けるために必要だった。


 子ども室から。転落防止の方策が取られる予定。



 2階LDK。こちらは「冬のリビング」と呼ばれる。
床はオーストラリアヒノキ材(サイプレス)。梁はベイマツ材。

 2階からの眺め。住宅地だが手前に空地と緑がありなかなか良い。
バルコニーのデッキもオーストラリアヒノキ材。屋外にも十分使えるそうだ。


 ラワン合板の壁面収納は裏側に少し隙間を空けた。掃除機などが簡単に収納できるアイデアだ。



 キッチンのステンレスは厚板かと思いきや、1mm以下の薄板をピン角に曲げて張り込んでいた。


 キッチンの脇からは勝手口のようにバルコニーへ出られる。


 バルコニーの手摺は亜鉛メッキのパイプに亜鉛メッキの金網と、ここでも現場のような仕上げ。(写真では暫定のビニールコート金網)


伊藤暁さん。「建て方が終わった直後の躯体の状態がとても好きです。この建物ではできるだけ建て方後の状態に見えるように、在来軸組の美しさ、見せる架構ということにチャレンジしました。」


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サポーズデザインオフィスの「東京事務所お披露目会」レポート

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谷尻誠+吉田愛/サポーズデザインオフィスの「東京事務所お披露目会」に行ってきました。場所は渋谷区桜丘町、渋谷駅と代官山駅の間辺り。

富ヶ谷の前事務所よりアクセスしやすくすることと、手狭になってきたことによる引越だ。


当日は「カフェになっている」と聞いていたが、エントランスを入ると本当に店のようになっており、コーヒーのいい香りが漂っている。


普段はもちろんカフェではなく、事務所の給湯コーナーだ。ちょっとしたイベントでバーや受付にもなるようにした。


築40年ほどのマンションの一室で広さは約20坪。立地や家賃に加え、改装を自由にしていいということが決め手だった。
大家さんにはデザインをCGで作ってまでプレゼンしたという。



内壁を全て剥がし、躯体をむき出しにした。


解体はスタッフが行った。プロの業者が行えば4日で済むところ、業務の合間を縫っての作業ということから4ヶ月も掛かったそうだ。
(photo: Suppose Design Office)



天井を剥がすと現れた換気扇ダクトを通してあったという梁の大穴はそのまま!


解体しこの部屋の時間を遡ったような荒々しい古さと、シャープでありながら温かみのある新しいものとのコントラスト。
天井にはH鋼を格子状に渡した。上面に間接照明が付き、下面にはライティングレールが通してありスポットライトが付く。


茶色の壁は自社開発したという色付きメッキ板。亜鉛メッキした鉄板に車の塗装などに使うキャンディーカラーを塗った。
この事務所のデザインにあたって、これらの開発品を使おうというのがはじめからあったそうだ。



裏側はご覧のように亜鉛メッキのまま。


鉄板はリブが立てられて隣の板と接合できるが、直にリブ同士を接合せず、隙間に棚受けのアジャスターを挟み、いずれ棚が付けられるようにしてある。


奥の打合せスペース側は日が当たり明るい。
床は足場板の古材(広島のWOODPRO)。



テーブルのフレームや脚、書棚の鉄部には同色に着色してある。


この日カフェを開いてくれたのは自由が丘のIDEEに入っている〈自由が丘 ベイクショップ〉の浅本充さん(右)。来訪者に一杯ずつ、豆を挽いてからコーヒーを淹れてくれた。


さらに、ベイクショップで出しているサンドイッチやクロワッサン、クッキーなどをいくつものコンテナで用意した。


ビールは〈BLUE MOON〉が大量にスタンバイ。フレーバービールで、オレンジを添えて飲むのがおすすめだそうだ。


会が始まればご覧のような賑わいになった。とてもオープンなお披露目で、「SNSで見かけたので来てみました」と本当に一見さん的な方がちらほら。






お土産に用意された〈PAPABUBBLE〉で作ったSupposeキャンディー。


左から谷尻誠、吉田愛、濱谷明博、阿部隼の各氏。
「建築事務所には普段、仕事や設計のご依頼でもないと訪れることはないと思います。でも建築はこんなところで仕事しているのですよ、と誰にでも気軽に見ていただけるようにこの会を開きました。もちろんいつもカフェみたいにはなっていませんが、ふらっと立ち寄っていただけるような雰囲気の事務所にしました。」と谷尻誠さん。

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小山光/キー・オペレーションによる恵比寿の「タイムゾーンヒルトップビル」

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小山光/キー・オペレーションAkira Koyama + Key Operation Inc.が手掛けた商業ビル「タイムゾーンヒルトップビル」内覧会に行って来ました。場所は恵比寿駅からほど近い飲食店と住居が混在するエリア。

敷地面積265m2、建築面積148m2、延床面積578m。RC造5階建て。
2012年に小山さんが手掛けた「テラスビル」と道を挟んだ真向かいの敷地で、同じ施主から依頼された(施主にとっては恵比寿での4件目のプロジェクトとなる)。



1階〜4階までは飲食テナント、5階は住戸。
建物は接道よりセットバックさせ、さらに左側を敷地に対して斜めに後退させ、生まれたスペースに緑豊かなゆとりのある場を設けて人を呼び込む。



1階テナントにはテラス空間を設けた。
向かいのテラスビルでの経験を活かし、近隣住居への配慮として防音パネルをつける予定とのこと。



取材後、1階のテナントやグリーンが入った現在の様子 (photo:KEY OPERATION INC.)


2階テナントスペース
左の壁裏に非常階段があるが、テナントの気積をとるために壁を斜めにした。



4階テナントスペース
1階の外構にゆとりを持たせたため、2階から4階はできるだけ大きな面積を確保できるように一体的なボリュームにしている。大小様々な開口でリズムを作り大きな壁面の圧迫感を軽減。



エントランス側の見下ろし。斜めにふっているファサードの状態がよく分かる。


5階の住戸は施主の自宅兼事務所だ。


特注ダイニングテーブルは打ち合わせテーブルを兼ねている。


南側の大開口からは恵比寿ガーデンプレイスの夜景を存分に眺めることが出来る。


恵比寿駅より続く道からは、建物がこのように見えてくる。
両ビル共ファサードの手前を角度をつけて開いているので店舗の賑わう様子がわかる。右のテラスビルと呼応するように建てられた。



テラスビル。


小山光さん。「街づくりを意識しました。以前手掛けたビルとの建物同士の関係性を考えるのは勿論のこと、実際の店舗空間の使われ方や周辺環境への配慮の仕方等、テラスビルの設計で学んだことを反映させながらアプローチすることが出来ました。」


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「2014 モダンリビング大賞・グランドチャンピオン授賞式」レポート

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「2014モダンリビング大賞」と10周年記念の「モダンリビング大賞 グランドチャンピオン」授賞式・パーティーに行ってきました。場所は東京・広尾のアルフレックスショップ東京。
[10th Modern Living Award]

 ハースト婦人画報社CEOのイブ・ブコン (Yves Bougon) さん。
2014度の大賞と、10回目となった本賞の記念として、2005年から2013年まで歴代の大賞9作品からグランドチャンピオンが選ばれる。

 モダンリビング大賞はノミネート作品の中から読者投票によって選ばれる。


 会場のアルフレックスショップ東京。


 ショールーム全体が式のため開放される。




 抽選会の賞品や、受賞者への副賞が並ぶ。手前の〈marencoソファ〉はグランドチャンピオンへ。


 2014年度モダンリビング大賞はノミネート6作品から選ばれた。
進行とプレゼンターはモダンリビング編集長下田結花さん。

 ■モダンリビング大賞〈八ヶ岳の家〉
城戸崎博孝+佐野優子/城戸崎建築研究室
(photo:川辺明伸)



 城戸崎博孝さんと、施主家族。
建築は建築家と施主により生まれるということから、賞は双方に贈られる。

 ■モダンリビング準大賞〈SO house〉
森山善之+竹内典子/建築設計事務所バケラッタ
(photo: 下村康典)

 森山善之さんと、竹内典子さん

以下はノミネート作品。
 〈YY〉
山縣洋/山縣洋建築設計事務所
(photo: 傍島利浩)


 山縣洋さん。作品は自邸だ。


 〈JUSANSOU〉
小杉浩久/プロップ・ポジション
(photo: 鳥村鋼一)


 小杉さんの代理で夫人が出席。


 〈纏の家〉
植木幹也+植木茶織/スタジオシナプス
(photo: 鳥村鋼一)


 左から植木幹也さん、植木茶織さん、施主夫妻。


 〈伊予の家〉
小松隼人/小松隼人建築設計事務所
(photo: 矢野紀行)


 小松隼人さん、小松涼子さん。


 そして読者投票によって選ばれたグランドチャンピオンは...


 ■モダンリビング大賞 グランドチャンピオン〈I-HOUSE〉
窪田勝文/窪田建築アトリエ
(photo: 下村康典)


 窪田勝文さん。
「10年前の作品なのでこのような席に立てるとは到底思わなかった。本当にありがとうございます。」
〈I-HOUSE〉はネット投票、ハガキ投票共に1位の文句なしだった。

以下はグランドチャンピオンノミネート作品。
 〈HORIZON HOUSE〉
小川晋一/小川晋一都市建築設計事務所
(photo: 熊谷忠宏)


 小川晋一さん。


 〈house ao〉
押尾章治/UA
(photo: 目黒伸宜)


 押尾章治さん、施主夫妻、UAスタッフの方。


 〈ホワイト・モノリス〉
榎本弘之/榎本弘之建築研究所
(photo: 目黒伸宜)


 榎本弘之さんと、施主。


 〈SHELL〉
井手孝太郎/アールテクニック
(photo: 藤塚光政)


 井手孝太郎さんと、施主家族


 〈豊前の家〉
谷尻 誠+吉田 愛/サポーズデザインオフィス
(photo: 矢野紀行)


 吉田愛さん、濱谷明博さん


〈ミンナノイエ〉
間田 央+間田真矢/MAMM DESIGN
(photo: 阿野太一)

 間田央さん、間田真矢さん
作品は自邸。


 〈M邸〉
坂倉竹之助/坂倉アトリエ
(photo: 石井哲夫)


 担当の石上英一郎さんと、施主。


 〈SENSE〉
今永和利/今永環境計画
(photo: 傍島利浩)


 今永和利さん


最後にモダンリビング編集部の面々が紹介された。

【モダンリビング大賞・グランドチャンピオン】
2014年度 モダンリビング大賞
 〈八ヶ岳の家〉
 城戸崎博孝+佐野優子/城戸崎建築研究室 

・2014年度 モダンリビング準大賞
 〈SO house〉
 森山善之+竹内典子/建築設計事務所バケラッタ

・モダンリビング大賞 グランドチャンピオン
 〈I-HOUSE〉
 窪田勝文/窪田建築アトリエ


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木下昌大によるエイトブランディングデザインの自社ビル「エイトビル」

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木下昌大(Masahiro Kinoshita / KINO architects)設計による、西澤明洋率いるエイトブランディングデザインの自社ビル「エイトビル」の内覧会に行ってきました。場所は港区南青山。
プロデュースに高橋寿太郎+高垣和明/創造系不動産、アートワークに清水久和/S&O DESIGNも参画している。

 敷地面積267m2、建築面積151m2、延床面積528m2。S造、4階建て。
1階を7台分の時間貸し駐車場にしてある。

 ファサードには大きさも出幅も異なる出窓が幾つも並ぶ。


 2階の階段ホールに上がると壁面に清水久和さんデザインのアート〈平賀源内〉が現れる。
平賀源内は土用の丑の日に鰻を食べることを発案し広めたと言われている。つまり現代風に言うとブランディングのパイオニアというわけだ。そんな意味を込めて社屋のシンボルとして鎮座する。

 2階オフィス。20人以上が作業できるスペースになっている。
オフィスの説明をする西澤明洋さん。会社設立8年で自社ビルを完成させた!「高橋寿太郎さんが不動産プランニングに入っていただけなかったら実現しなかった。」と話す。



 外観で見えた出窓は開口の大きさによって出幅を変えてある。
オフィスとは言え窓辺の環境があるのが良いと考えた。休憩したり、書棚の資料を読んだりするのに腰掛けとして利用できる。

 天井は高くしたかったので天井板を張らずに耐火被覆のままとも考えたが、新築でそれは面白くないということと、配線のラックも必要になることから、配線ラックを兼ねた半天井のようなデザインにした。


 出窓と天井が凹んで整合性が取られた印象。


 収納棚は、以前から使っていたMUJIのファイルボックスがぴったり収まるサイズ。
ちなみに照明は演色性を求められるグラフィックデザインの現場であることから、美術・博物館用蛍光灯が用いられている。

 3階は会議室などの個室が3部屋。この日はエイトブランディングデザインが、ブランディングを手掛けている新商品をお披露目。
床の絨毯は、山形緞通のラグ〈空シリーズ〉〈景シリーズ〉で商品全体の企画にも携わってる。

 和歌山の建具メーカー中井産業のブランディング。〈KITOTE〉というブランドを立ち上げ、こちらも全体の企画に携わる。障子の組子を二重に組み、障子紙を太鼓張りにしてある。  


 隣の部屋では木下昌大さんが手掛けている建築と、清水久和さんが手掛けるプロダクトの紹介。


 4階への階段。鉄板に木材を貼り込んである。
床には西澤明洋さんが所有するアート作品。

 こちらの踊り場にも清水久和さんの作品〈鏡の髪型〉シリーズ〈長谷川平蔵〉。


 4階はLDKと名付けた多目的空間。


 バルコニーも備わる


 片隅にはブランディングを手掛ける商品が所狭しと並ぶ。 


 4月に竣工したが、その後引越をして事務所が落ち着いたのでようやくお披露目会を開くことが出来た。ケータリングを手配し沢山のフィンガーフードが並んだ。


左から髙橋寿太郎、清水久和、西澤明洋、木下昌大の各氏。髙橋さん、西澤さん、木下さんは同じ京都工芸繊維大学の先輩後輩関係でコラボがとても多い。
清水さんのS&O DESIGNのCIやVIを西澤さんが手掛けているといった関係。

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ムトカ建築事務所による「ペインターハウス」

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村山徹+加藤亜矢子/ムトカ建築事務所 (MURAYAMA + KATO ARCHITECTURE / mtka) によるアトリエ兼住宅「ペインターハウス」のオープンハウスに行ってきました。場所は相模原市中央区。

 敷地面積83m2、建築面積35m2、延床面積71m2。木造2階建て。
竣工直後一度オープンハウスが行われたが、告知が急だったことと、家具が入ってからが完成ということで改めて行われた。


 テーマは「対」。開口の大きさは異なるがサイディングの色を変え、グレーの部分で対称的な開口部のイメージを演出。


 1階はペインターである施主のアトリエ。引っ越し間もないことでアトリエはまだ整理がついていないのでご了承を。 
1階の広さ3/5がアトリエ。 


 階段の右側、2/5が水回りと寝室。2階はこの面積配分が反転し「対」になっている。
むき出しのラーチ合板は施主が塗り分けた。

 振り返ると外観から見えた図柄がある。内壁と一体で切り抜かれている。施主のデザインで、下側の二つの四角、上側の二つの三角、内側の二つの円、これも「対」。


 寝室。スキップさせた床は施主がDIYで作り上げた。


 2階へ。


 2階リビング。階段室はポリカーボネートのプラ段で囲い空調の効率を上げた。
こちらが2階の広さの3/5。

 階段室を挟んで2/5はDKと納戸。


 DKの色は、1階の水回りと同様にペイントされている。これらのペイントは竣工後ではなく、2週間ほど施工を止めて行われた。




 リビングを反対から見ると大きなスロープが!3階があるかのように見えるが、空調効率化のため階段室の “蓋” だ。
施工中に急遽このようにしたそうだが、結果「対」や「対角」を象徴するような意匠が現れた。

 天井高は3m。高めにして将来子供スペースとして使えるロフトを作る事を可能にしておいた。そのときこの滑り台にしては急過ぎるスロープが役に立つかもしれない。


 合板の継ぎ目を境に施主は自身で調色した塗料やオイルステンを使って丁寧に塗り分けた。




 サッシュは4種類の大きさで、それぞれ2種類の色を調達した。そしてグレーの枠を使った所にはシルバーの引戸。シルバーの枠にはグレーの引戸を「対」の位置で交換して据え付けるというこだわり。


 タイルカーペットは壁側に回り込ませて張り、床と壁の境が曖昧に。


 施主の山本桂輔さんは小山登美夫ギャラリー所属のアーティスト。


 絵画のほかに彫刻も手掛けるという。






加藤亜矢子さんと村山徹さん。「階段で分けた矩形の平面を、1階と2階で反転させ、それら二つのフロアを行き来することで広がりを感じられるようになっています。決めきらないで作ったこの住まいをお施主さんは存分に活用し、ご自身の手で成長させながら住まわれています。」



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クライン ダイサム アーキテクツによる「湘南T-SITE」

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カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)企画運営の複合施設「湘南T-SITE」内覧会に行って来ました。蔦屋書店を中心とした30のショップやレストラン全てのショップに本があり、書店と専門店がシームレスにつながっているのが最大の特徴だ。全体の設計は代官山T-SITEと同様クライン ダイサム アーキテクツ(以下KDa)が手掛けた。

敷地面積約14,100m2、延床面積約7,400m2。鉄骨造2階建て。
広大なパナソニックの工場跡地にできた藤沢市の「FujisawaSST/藤沢サスティナブル・スマートタウン」に位置する。


1〜3号館まであり、1号館はENTERTAINMENT、2号館はFOOD/LIFE、3号館はFAMILY/Fujisawa SST SQUAREとそれぞれのテーマに沿って構成されている。


門型のボリュームをずらして配置している。周辺の住宅環境に配慮し、大きな塊に感じさせないようなヒューマンスケールを意識した。


1号館と2号館の間がメインエントランス。






ファサードには蔦屋のツタの葉モチーフにしたFRPタイルをサイズ違いで4種類、4000枚配置した。
ツタの葉モチーフは、代官山T-SITEで採用した “T” よりも、”ファミリー”、”やわらかい"といった湘南のイメージと合う新たな蔦屋のシンボルとして選ばれたそう。本物のツタも所々にある。


1号館 <マガジンストリート>
湘南T-SITEの3棟を貫く湘南蔦屋書店は、代官山蔦屋書店にあるマガジンストリート(幅4m×長さ55m)のおよそ2倍の大きさ。ライフスタイルを提案する書店として、湘南カルチャーをリードしようという意気込みを感じる。


<STARBUCKS COFFEE>
KDaとスターバックスによるデザイン。




<カメラのキタムラ>
KDaがデザインを担当。コーヒーを飲みながらプリントオーダーやフォトブック作成をすることが出来る。


隣接しているスターバックスよりも営業時間が短いため、カメラ用品からキャッシュレジスターまで、閉店時にはトランクケース型のケースを閉じるだけ、という便利なディスプレイシステムを導入。


スターバックス(手前)とカメラのキタムラ(奥)は、海をイメージした同種類の家具を配置し繋がりを持たせている。


マガジンストリートの突き当たりは数段上がって階段ホール。光り溢れる空間はギャラリースペースを兼ねている。


階段ホールを抜けるとテラス。


太陽光パネルが目前に設置されているが、テラス席からの眺めを邪魔することはない。


階段を上がって2階へ。


1号館2階 <T-SITE Apple Authorized Reseller>
AppleとCCCのコラボで誕生したApple販売店。こちらのデザインもKDaが手掛けた。


Apple販売店では指定の什器が使われるケースがほとんどだが、それらの什器では湘南T-SITEの雰囲気から浮いてしまうという理由からアメリカの本社より特別な承認を得て一からデザインした。


ディスプレイには黒いベルベットを使用。




<T-SITE Apple正規サービスプロバイダ>
KDaがデザインを担当。Apple製品の修理をする場所で、修理を待つ時間も隣接する湘南ラウンジでくつろぐことができる。修理店と販売店が横並びになっている構成は世界初。


<湘南ラウンジ>
KDaがデザインを担当。ヴィンテージマガジンに囲まれたくつろぎのスペースで、家具やカーペットは湘南の海、木、空などのイメージで揃えられた。


様々なソファやチェアで寛ぐことが出来る。


ラウンジ内には隣接するApple販売店との境界を曖昧にするかのようにヴィンテージのApple製品も展示されている。写真は1983年発売のApple IIeと1984年発売の初代Mac、Macintosh 128K。


ラウンジには3Dプリンターやレーザーカッター等もあり、Fabスペースとしての利用も可能だ。


湘南T-SITEは屋内・屋外合わせて約300席の椅子やソファが用意されており、施設全体が大きなブック&カフェとなっている。


1号館と2号館をつなぐ渡り廊下にもテラス席が設けられている。


2号館はスローフード&スローライフがテーマ。2階には <ISETAN MiRROR Make & Cosmetics>、<FRESCA>等が出店。


2号館1階 <本と物の店>
自著を出していて、物にこだわりのある人の ”本と物” を扱う生活雑貨ショップ。店舗に入るという気負いが全くいらないこのシームレス感。


3号館は1・2号館とは道路を1本挟んだ場所にある。
子どもと過ごす豊かな時間がテーマであることから、遊具の庭も設置。ランドスケープデザイナーは代官山T-SITEと同じ古内時子を起用している。


3号館1階 <マガジンストリート>


 <湘南料理塾> 
手前のレストラン <WIRED KITCHEN> の前を通って料理教室に入るというユニークな動線。


トイレ前廊下のグラフィック。
ちょっとしたスペースにも楽しさを提供したり、待っている間も退屈させないKDaらしいアイディア。


湘南T-SITEと隣接するスマートタウン戸建地区。100年続くサスティナブルな街づくり計画が着々と進んで行く。


KDaのアストリッド・クラインさん、マーク・ダイサムさん。
「代官山T-SITEのDNAを受け継ぐことが求められました。30のテナントの統一感をディレクションするのは大変でしたが、本とモノとサービスがシームレスに存在する全く新しい文化の発信地が完成しました。湘南の地で3世代に渡り『此処にもっといたい』と感じてもらい、居心地の良い家のように愛され続けてもらうことが一番のサステイナブルだと思っています。」

【湘南T-SITE】



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Niji Architectsによる「鷹番の長屋」

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原田将史+谷口真依子/Niji Architects (Masafumi Harada + Maiko Tanigichi) による「鷹番の長屋」のオープンハウスに行ってきました。場所は東京・目黒区、学芸大学駅より2分程の場所。

 敷地面積51m2、建築面積31m2、延床面積73m2。S造3階建て、2住戸が入る長屋。


 建て替えにより敷地脇を4m接道にする必要があったため敷地が減少、そこに専用住宅は小さいので何か面白いアパートを建てようということになった。


 2住戸は下層・上層で分けるのはなく、この小さなボリュームを道路寄りの東側と、敷地奥の西側で縦に割って分けた。


ファサードのガルバリウム鋼板はそのまま玄関ドアにまで張り込んだ。


 玄関を入ると広めの土間に螺旋階段と、住戸を分けるS字型の界壁が現れる。

 1階は玄関ホールと水回り。
螺旋階段は支柱も、25mm厚の踏み板も無垢鉄材で剛性を出したので上り下りで足音がしない。

浴室から見る。 


 閉鎖的で少し薄暗い1階から2階へ上がると切妻の頂点までの吹き抜けと、トップライトが見え、一気に開放される。


 ここで一度模型を見て頂くと分かりやすい。住戸は単純に真っ直ぐな壁で仕切られておらず、室内に狭い側・広い側をつくることで強制パースが生まれ広く感じられる。
(photo: Niji Architects)


 南の広い側には幅一面に開口を設け、緑の借景を望むことができる。


 カーブを描く界壁に落ちる影。


 3階は “納戸” にして、コンパクトな梯子で上がる。


 3階納戸。開放的なスペースの使い方は住み手の自由だ。
ちなみに、夏場を迎えてみて暑いようだったらエアコンが付けられるように設備の準備はされている。


 3階から2階を見下ろす。
開放感を得るために吹き抜けを広くしたいが、賃貸として床面積は増やしたい、そのバランスを検討した。
そしてこの軽快感を出すためには木造ではなく鉄骨造を選んだ。鉄骨はほとんど100×100のH鋼が使われている。

 2階から3階を見上げると、2階へは直射日光で3階へは青空からの間接光が入る。


 もう一方の住戸へ移動してみると、逆に2階へは間接光、3階へは直射日光が入る。


 そのため界壁には異なる陰影が現れる。


 室内には版画がいくつか展示されている。谷口さんの友人である版画家、菅祐子さんによる小さな個展を同時開催。


 3階。


左から原田将史さん、谷口真依子さん、菅祐子さん(版画家)。
「密集した近隣と小さな建築面積なので、住戸を上下に分けてしまうと上下でかなり住環境に差が出来てしまいます。そこで縦に分けることでほぼ同じ環境になり、家賃もほぼ同じにできます。」「小さな居室は吹き抜けや開口を利用し、界壁にも変化をもたせることで狭さを出来るだけ感じさせない工夫をしました。」「また今回版画を展示したのは、住空間にもっと版画や絵画などのアートを、インテリアとしてもっと積極的に使ってみてはという提案です。」


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廣部剛司による住宅「由居庵(ゆいあん)」

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廣部剛司 (Takeshi Hirobe Architectsによる東京・世田谷区の住宅「由居庵(ゆいあん)」のオープンハウスに行ってきました。

敷地面積137m2、建築面積50m2、延床面積92m2。木造2階建て。旗竿敷地や、風致地区によるセットバックなどにより建築面積は制限される。

 玄関土間はスレート張り。奥の地窓からは敷地外周に巡らせた植栽が覗く。


 閉じ気味の玄関と狭められた開口を抜けると...


 一転、22畳のワンルーム空間が広がる。


 この住宅はご主人がもうすぐ定年を迎えるご夫婦の住まい。寝室や書斎などの個室を設けず、「下の部屋」と「上の部屋」のみ。ベッドを置かずに布団で気ままに好きなところで寝るそうだ。


 いわゆる老後の住まいのイメージではなく、よりアクティブに住まうことができるよう自由な空間作りがされている。


 キッチンと、筆者の背後の納戸に洗濯機が置かれる。奥の勝手口からは物干しに出られるので一直線の家事動線だ。
キッチンと作業台の天板は黒御影石。

 吹き抜けの上下には大開口。外周にはシラカシの生け垣でプライバシーを確保。


 反対側は螺旋階段と丸木を使った大黒柱。2階と北西の壁を支える太い梁は105×330ある。


 階段の踏面の支えはカーブさせ柔らかい表情を出している。
また外壁に櫛引を多用する廣部さんだが、ここではシラスの内壁全体に刷毛引を施した。

 2階へ上がると多摩丘陵の斜面から、向かいのマンション越しではあるが多摩川方向を望むことが出来、遠くに丹沢の山並みと富士山も。
敷地の法規制ぎりぎりのボリュームを取りつつ、2階の床を高く設定することで眺望の抜けを実現した。上棟後真っ先に2階へ上がり、多摩川の対岸が見えたときはほっとしたという。

 中央の小さめの開口はフィックスではなく引き違いサッシュを利用している。


 外から見るとこのように。既製の引き違い窓の外枠を外寄りに付け、片側のサッシュにガラスを入れないで使っている。勿論雨仕舞はきちんとされている。


 反対側、左にウォークインクローゼット、右に書斎スペース。


 屋根は切妻(上の画像)と寄せ棟だと分かる。奥の戸は水回り。



 天井には少し光沢のある和紙が貼り込んであり、表情を変えながら光を反射させている。


「お施主さんは、動きがあり、空に開かれ、使い方に自由度がある空間を望まれました。ここでは法的な縛りで外形ボリュームはある程度決まってしまいますので、広さではなく “拡がり"、そして気積をコントロールしました。大きめの吹き抜けで上下層を繋ぎ、シンプルな箱形に相互貫入していくような “抜け” を作りました。」と廣部剛司さん。



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14組の建築家による「新しい建築の楽しさ 2014・前期」レポート

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11月6日より東京・京橋のAGC studioで始まった「新しい建築の楽しさ 2014」前期展に行ってきました。
恒例となってきた本展は今年で3回目。地に足を着け、社会との関わり方を模索する30〜40代の若手建築家14組が手がける最新のプロジェクトの模型を、前期と後期に分けて展示。いずれも実施を前提、或いは竣工済みのプロジェクトだ。

今回の会場構成を担当したのは萬代基介。繊細でありながら存在感があり、しかし模型を引き立てる展示台をデザインした。

 無数の細いスチールロッドで、厚さ2mmのアクリル板を支えている。


 2月5日に行われるフォーラムでこちらの話もされることだろう。


前期展では14組のうち7組の作品が展示されている。

 〈まるほん旅館改修プロジェクト〉久保秀朗+都島有美
群馬で400年以上続く老舗旅館の改修。あえて部分的建築で複雑さを足していきながら改修を進め、旅館の持続可能性を模索するプロジェクト。模型はそのうちの小さな風呂小屋。


 〈赤坂6丁目プロジェクト〉木下昌大


  都心の集合住宅。煉瓦の透かし積みのスクリーンでセミオープンな開口を用いて内外の関係に幅を持たせる。不動産の経済原則に従いながらも住戸の多様性を確保し、街の風景を刷新する集合住宅の新しいプロトタイプを目指した。 


 〈A-School Project〉藤原徹平


 埼玉・深谷の医療系専修学校。勉強熱心で学校での滞在時間がやたら長い学生のために、事業効率性を保持したまま空間の豊かさを生み出すのが課題。お気に入りの場所を探したり、授業を受ける教室を目指しながら人が立体的に動く活発な状況を建築によって生み出す。


 〈HS project〉栗田祥弘


 東京・天王洲対岸の活性化プロジェクト。運河沿いの古い建物を再生し水辺の賑わいを復活させる。船着き場やいかだの様な場を水上に作り、水運を使った往来も含め水辺に人が集まる工夫と居場所を考えている。


 〈みんなの別荘プロジェクト〉松井亮 


 神奈川・箱根の保養所を改修しシェア別荘として再生させるプロジェクト。保養所として既に十分な共有空間は備わるが、個人や家族利用のための空間が不足している。施設全体のパブリックとパーソナルのバランスを分散。森をシェアする仕掛を点在させている。


 〈Dragon Court Village〉 稲垣淳哉+佐野哲史+永井拓生+堀英祐


 郊外住宅地の賃貸長屋の段階的計画。軒下を中心とした立体的な外部空間とアネックスを備えポーラスな建築に。中長期的にアネックスの交換や借り増し、軒下の増改築などの持続可能性を取り込む試み。さらに隣地への集合住宅の計画により敷地を横断する連鎖をも試みる。


 〈鶴ヶ島太陽光発電所・環境教育施設『eコラボつるがしま』〉工藤和美+藤村龍至
埼玉の太陽光発電所に併設された、複数の機能をもつ施設。大学院生らが設計に参加し建築家が指導を行った。住民投票によるランキングを繰り返し段階的に案を統合。多数決投票ではなく、投票を用いて課題を抽出していった。


後期には松島潤平、三浦慎、伊藤暁+須磨一清+坂東幸輔、菅原大輔、川添善行、田辺雄之、三浦丈典が展示を行う。

【新しい建築の楽しさ 2014】 
会期:前期/2014年11月6日〜12月26日
   後期/2015年1月6日〜2月21日
会場:AGC studio
企画:中崎隆司
詳細:https://www.agcstudio.jp/project/pdf/project_12th.pdf

【フォーラム】18:30 - 20:00

11/20 リノベーションは多様化する  栗田祥弘/松井亮/久保秀朗
12/10 新しい設計体制を構築する 藤村龍至/稲垣淳哉
12/18 新しい景観をつくる 藤原徹平/木下昌大
1/15 新しい形式をつくる 川添善行/伊藤暁 + 須磨一清 + 坂東幸輔
2/5 人を集める 田辺雄之/三浦丈典/萬代基介
2/19 居場所をつくる 松島潤平/三浦慎/菅原大輔



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辻昌志によるリノベーション「川沿いのペントハウス」

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辻昌志建築設計事務所 (Masashi Tsuji Architects) によるマンションのリノベーション「川沿いのペントハウス」の内覧会に行ってきました。
江戸川区平井駅から10分程の場所。施主はプリズミック。

荒川沿いの8階建ての賃貸マンションで、一棟ごとプリズミックが所有者となったことで、空室だった住戸を幾つかリノベーションするために辻さんに設計を依頼した。この日公開されたのは左上最上階の三角の住戸。


7階に上がってみると、専有のルーフバルコニーを備えていた。屋上にひと住戸だけ突き出した2層のペントハウスだ。
建物名は「PRISM COURT 平井」。バルコニーも含めた専有面積は71m2、2LDK、賃料19万円。



ルーフバルコニーからは荒川を望むことが出来る。


右奥の玄関から入ってきてDK。床にはフレキシブルボードを張り、キッチンはコンクリートの造り付けに変えた。

リビング側は2層の吹き抜け。上階から、うねるようにカーブした個性的な床がリビング側に1m程せり出し、正面の開口の前に螺旋階段が設置されていたが、それらを撤去しすっきりと開放的にした。


解体前の様子。

反対側を見ると斜線制限を受けた天井が対角方向に下がっていき、空間的にかなりダイナミックさを出している。
奥右の扉は水回りで、左の小さな扉は納戸。

水回りは全て更新した。


納戸を覗くと斜めの屋根が床ぎりぎりまで収束していく様子が見える。


螺旋階段を撤去したのちDKとリビングの間に壁を立て、キャンティレバーの階段を設えた。壁が無いときはバルコニー越しに開放的ではあったが、室外機が内を向いて設置されていることもあり、壁によりシーンの切り替えができるようにした。

しかし完全には仕切らずチラッとバルコニーが覗くも室外機は見えないよう配慮した。
サッシュは黒く目立つので枠に袖を被せ視覚的に落ち着かせた。

上階(8階)には個室が2つ。


吹き抜けとはガラスで仕切った。


奥の個室。ここに置ける家具はなかなか難しいので予め作り付け、使い勝手を良くした。


辻昌志さん「傾斜した屋根によって空間が大きく変化する住戸です。単に開放的にするだけでなく空間のシークエンスを大切にしました。」「梁も大きく傾斜しているのでそれを特徴として印象的に見えるようにしました。」

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レベルアーキテクツによる「目黒の住宅」

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出原賢一 + 中村和基/レベルアーキテクツ (Kenichi Izuhara + Kazuki Nakamura / LEVEL Architects) による目黒区「目黒の住宅」のオープンハウスに行ってきました。

 敷地面積62m2、建築面積37m2、延床面積91m2。木造+一部RC造、地下1階、地上2階建て。
三角の帽子を被せたようなトンガリのウロコ屋根が愛らしい。

敷地は近隣と共有する私道の奥に位置し、敷地の角だけがわずかに接道する。都心特有の密集した住宅地であるため斜線制限もかなり厳しい環境だ。
地下をガレージにし、2mほど階段を上がって1階の玄関になる。


 玄関を入ると右に主寝室、正面に地下の個室へ降りる階段、左に水回りと続く。


 玄関ホール。右の壁にはニッチを設けた。


 主寝室には書棚が並ぶ。右の扉はウォークインクローゼット。


 2階へ。桁板は特徴的なデザイン。


 外観で玄関側に見えた大開口は木製の十字型サッシュ。


 振り返ると前日まで仕上げていたという漆喰壁に、柔らかな光のグラデーションができている。
夜にはディクラッセのペンダントライトが光と影を映し出す。


 2階LDK。壁、天井は漆喰。床はコルクタイル。


 天井を見上げると5本の棟木でできたトンガリ屋根だと分かった。
正面の小部屋は書斎。

 棟木や垂木の現場写真。棟木の上面や、垂木の接合部は現場で角度を合わせながら加工していった。
寄せ棟の頂点は接合金物を特注で製作した。

 書斎は明るい階段室に向かって窓がある。雑誌の編集者である施主の籠もりスペースだ。


 書斎の一面には床と同じコルクタイルを貼り込んだ。


 正面と右面は鈍角に開いており、既製の家具ではきれいに納まらないことから、ダイニングや食器棚は造作した。


 キッチン天板とダイニングテーブルは、コーリアンで脚までの一体造作。


 食器棚と出窓も一体となったデザイン。
また壁と天井の境は丁寧にRを取って左官され、こちらも一体となるようにしている。


 キッチンの奥に冷蔵庫とパントリー。 



「平行四辺形に近い不正形の敷地と、厳しい斜線で自然にトンガリの寄せ棟屋根になりましたが、“ドールハウスのように”とお施主さんから求められましたのでうまく意匠にできました。ここではディテールや仕上げにとても注力することでき、職人さんの手仕事が住まい手の暮らしのストーリーを紡いでくれると思います。」 と出原賢一さん、中村和基さん、担当の安蒜和希さん。

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上用賀の住宅




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2014年注目された記事ベスト20

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2014年、japan-architectsブログでアクセスの多かった記事ベスト20

1. 槇文彦、内藤廣らが登壇 シンポジウム「新国立競技場の議論から東京を考える」レポート







































【番外:過去記事でありながら2014年アクセスの多かった記事】












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14組の建築家による「新しい建築の楽しさ 2014・後期」レポート

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1月6日より始まった「新しい建築の楽しさ 2014」後期展に行ってきました。場所は東京・京橋のAGC studio。昨年11月より、14組のうち7組ずつ前期・後期に分けての展覧会。
地に足を着け、社会との関わり方を模索する30〜40代の若手建築家14組が手がける最新のプロジェクトの模型を、前期と後期に分けて展示。いずれも実施を前提、或いは竣工済みのプロジェクトだ。

 会場構成は萬代基介。


 無数の細いスチールロッドで、厚さ2mmのアクリル板を支える展示台に7つの作品が並ぶ。


 前期展は夕刻の訪問だったが、今回は15時頃の訪問で傾き始めた日光がスタジオの奥まで差し込み、ロッドの長い影を映しロッドが倍の数になっている。
この時期15時前後の短時間だけ現れる現象だ。

 〈えんがわオフィスアーカイブ棟〉伊藤暁 + 須磨一清 + 坂東幸輔


 徳島・神山町における、東京の映像関連企業のサテライトオフィス。先だって築80年ほどの住宅をオフィスにコンバージョンしたが、今回は映像データを収めるアーカイブ棟の新築。人、光、風など様々な外的要因との関係を調整しながら設計している。

 〈木島平村農の拠点施設(仮)〉 三浦丈典


 長野・木島平村の農の拠点施設。旧デルモンテ工場を利用し、マーケットや飲食施設、キッチンスタジオ、インキュベーションオフィス、多目的ホールなどの複合型社会交流施設。工場建屋にビニールハウスのようなボックスが貫入し採光、通風、構造補強として機能する。


 〈育良保育園〉 松島潤平


 長野・飯田市の保育園。まちの河岸段丘地形が園舎内にも連続するようなスキップフロア。各部に多種多様な素材を用い、子供の微視的なまなざしに対して、それぞれ個別の奥行きを持つ雑多な情報に溢れたマテリアルの世界を展開。
模型には実際に使用する様々な素材がそのまま使われている。

 〈ゆたか幼稚園〉菅原大輔


 埼玉・三郷市の幼稚園。"幼稚園 = kindergarten = 子供の庭"として捉え直した。多様な場が内外に連続し、選択性のある遊び場群が新しい体験と発見による自発的な幼児教育を可能にする。身体感覚を研ぎ澄ませ、場を検索する人間の動物的本能と、必然と偶然が点在する環境。


 〈ニッケてとて加古川〉三浦慎 (Miurashin Architect+Associates)


 兵庫・加古川市の高齢者グループホーム。3人単位の箱型空間を巴型に配置することで、住宅サイズの空間と街並みの様な変化と居場所がうまれる。数度回転させたレイアウトにより軒下から内部へ連続する空間を実現。


 〈東京大学総合図書館新館アカデミック・コモンズ〉川添善行(東京大学施設部、清水建設と共同)


 90年ほど前に建てられた東京大学総合図書館の新館。図書館前の広場の地下に深さ50m程の空間をニューマチックケーソン技術で構築。地下1階は既存の噴水を活かしたトップライトから光が注ぐ。学生や研究者が対話できる新しい知の形式となることを期待している。


 〈沢村旧軽井沢店プロジェクト〉田辺雄之


 長野・軽井沢町のベーカリー併設のレストラン。大木や小川に囲まれる自然豊かな環境を享受できるよう、2階レベルに設けた空中散策路が内や中庭と関わりながら建物を巻き込むように周回する。



前期には久保秀朗+都島有美、木下昌大、藤原徹平、栗田祥弘、松井亮、稲垣淳哉+佐野哲史+永井拓生+堀英祐、工藤和美+藤村龍至が展示を行った。
>>前期展の様子

【新しい建築の楽しさ 2014】 
会期:前期/終了
   後期/2015年1月6日〜2月21日
会場:AGC studio
企画:中崎隆司
詳細:
https://www.agcstudio.jp/project/pdf/project_12th.pdf

【フォーラム】18:30 - 20:00
11/20 リノベーションは多様化する  栗田祥弘/松井亮/久保秀朗
12/10 新しい設計体制を構築する 藤村龍至/稲垣淳哉
12/18 新しい景観をつくる 藤原徹平/木下昌大
1/15 新しい形式をつくる 川添善行/伊藤暁 + 須磨一清 + 坂東幸輔
2/5 人を集める 田辺雄之/三浦丈典/萬代基介
2/19 居場所をつくる 松島潤平/三浦慎/菅原大輔


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