荒谷省午/荒谷省午建築研究所による西宮の「目神山の住宅」を見学してきました。
目神山は荒谷さんの師、竹原義二氏のさらに師である石井修氏が20以上の作品を残した地区であり、荒谷さんにとってはこの地区2作目となる。
敷地面積874m2、建築面積237m2、延床面積m2。木造2階建て。
親が50年ほど前に建てた家を建て替える計画だ。
接道より3mの高さまで緩やかに傾斜した敷地に平屋の棟をいくつか雁行させながら配置し、その上に一筆書きで屋根を掛けた。
既存では西寄り(右)に大きな2階建ての棟が建っており、東寄りに手入れされた庭木が植わる大きな庭があったが、今回十分に活用出来る庭の使い方を求められたそうで、庭(余白)の残し方を多くスタディした。
ピロティを抜けると南の庭。土の部分は芝生になる予定。つまり堅い庭と、柔らかい庭にして目的によって使い勝手を良くしたのだ。
南に面した新しい庭はキャッチボールや、ちょっとしたサッカーも楽しめるくらいの広さ。ダイニングやリビングに接続するバルコニーからも出入りできる。
外壁はモルタル。クラックが入りにくいように目地を切り、金ゴテ仕上げと、スタイロ仕上げで表情を変えた。
玄関へ。土間はモルタルで、右奥の階段からガレージに通じている。上がり框の下に間接照明が仕込まれている。
天井は木毛セメント板で、軒天井から連続する。
右へ進むと、ハッとするような朱が鮮やかな和室が現れる。
朱の引戸、襖は和紙の壁紙が張られたもの。仏間や客間として利用する部屋だ。
玄関から左は段床を伴いながら奥へ廊下が続く。左手にはウォークインクローゼットがあり、藍の壁にはピクチャーレールが備わる。
廊下を進むとLDKの手前に前室のような小部屋。そこに2枚の引戸。
藍色はEP(エマルジョンペイント)に砂を混ぜて、表情を付けながら塗った。
左の引戸はトイレで、右を開けると洗面室と浴室。
洗面室から左を向くと、家事室、そしてパントリー、キッチンへと続く家事動線。
家具や建具に丁寧な仕事が見られた。ラワン材に柔らかな加工がされた手掛かり。戸当たりとして埋め込まれたブラシは荒谷さん標準の仕上げだそうだ。また引戸と戸袋の境に見切りを一筋入れ、戸を閉めたときの納まりが美しくなるよう一手間かけている。
水回りからキッチンは施主の好みが強く反映されているという。「それらを調整しながら自分の設計に落とし込むのはおもしろい。」と荒谷さん。
玄関から続く廊下を見返す。分節された屋根が交互に勾配を変えていく様がよく分かる。
ダイニング・キッチン。緩やかな勾配の大きな天井が、左のリビングに向かって開放感をもたらす。
ヘリンボーンの床は施主の要望を反映した。
ダイニングから少し上がってリビング。この下がピロティになる。持ち上げられたリビングは景色の眺め良くするためでもある。
西宮の街並みと大阪湾を望む。
リビングに据えられるようにレイアウトされた畳スペースは3人の子どものための勉強部屋。右手から2階に上がることができる。
リビングの壁も同様に砂混のEP。畳スペースはシルバーのガルバリウム鋼板貼り。
施主はチェストやテーブルなどのビンテージ北欧家具を多く所有することから、配置を楽しめるように、壁を多めにした。
2階は、通常ならロフトと呼べるような天井の低いコンパクトな空間だが、ここからでないと見ることができない内外の眺めがある。
下の畳が子どものスペースで、こちらは親のスペースとして使う予定だそうだ。
畳スペースの左手奥へ。
正面の開口からちょうど梅が咲いているのが見える。
子ども3人の寝室。まだ小さいので引戸は付けずにオープンに。間仕切りは黒板塗装がされている。左奥に主寝室。
振り返ると子どもが好きそうな凹凸が沢山ある。
子ども室の奥から。開口から見える庭は今後植栽がもっと入れられる。
主寝室の出入りは不思議な三角の "廊下"に面する。「大きなところと小さなところを意図的に設けでメリハリを付けた。」と荒谷さん。
左はトイレで、反対が主寝室。
主寝室へは、玄関から上がったり下がったりしながら30mほどの動線がある。離れのように一番小さなボリュームとして配置されている。
床はサイザル麻だが、綿が混紡されて足触りが柔らかい。
荒谷省午さん。「建て替え前の住宅は、この広い敷地が持つ可能性を充分に使いこなせていないように感じました。今回の計画では、これまでのここでのクライアントの生活に敬意を払いつつ、この場所のポテンシャルを最大限引き出す事に注力しました。平屋を少し立体的に捉えることにより、眺望の確保や大きな軒下など、敷地に残される余白部分もまた魅力的な空間とすることが出来たと思います。」
【目神山の住宅】
・建築設計:荒谷省午建築研究所
・構造設計:エス・キューブ・アソシエイツ
・施工:山陽建設工業
目神山は荒谷さんの師、竹原義二氏のさらに師である石井修氏が20以上の作品を残した地区であり、荒谷さんにとってはこの地区2作目となる。
敷地面積874m2、建築面積237m2、延床面積m2。木造2階建て。
親が50年ほど前に建てた家を建て替える計画だ。
接道より3mの高さまで緩やかに傾斜した敷地に平屋の棟をいくつか雁行させながら配置し、その上に一筆書きで屋根を掛けた。
既存では西寄り(右)に大きな2階建ての棟が建っており、東寄りに手入れされた庭木が植わる大きな庭があったが、今回十分に活用出来る庭の使い方を求められたそうで、庭(余白)の残し方を多くスタディした。
アプローチはそのままで、玄関の位置も踏襲。中央に小さく盛り上がる庭石の辺りに建物の角があった。
今回大きく変えたのは、庭を敷地中央に取り、持ち上げた棟の下にピロティ設け、そこを介して南北に連続させることだった。
ピロティの高さは180cmほどで、無垢の鉄柱で支持した。無柱にする事もできたが、コンクリートスラブが厚くなることや、それだけのコストを掛ける意味があるのかを検討した結果柱を立てた。
砂利の部分はこの後コンクリートブロックが敷き詰められる。
今回大きく変えたのは、庭を敷地中央に取り、持ち上げた棟の下にピロティ設け、そこを介して南北に連続させることだった。
ピロティの高さは180cmほどで、無垢の鉄柱で支持した。無柱にする事もできたが、コンクリートスラブが厚くなることや、それだけのコストを掛ける意味があるのかを検討した結果柱を立てた。
砂利の部分はこの後コンクリートブロックが敷き詰められる。
ピロティを抜けると南の庭。土の部分は芝生になる予定。つまり堅い庭と、柔らかい庭にして目的によって使い勝手を良くしたのだ。
南に面した新しい庭はキャッチボールや、ちょっとしたサッカーも楽しめるくらいの広さ。ダイニングやリビングに接続するバルコニーからも出入りできる。
外壁はモルタル。クラックが入りにくいように目地を切り、金ゴテ仕上げと、スタイロ仕上げで表情を変えた。
玄関へ。土間はモルタルで、右奥の階段からガレージに通じている。上がり框の下に間接照明が仕込まれている。
天井は木毛セメント板で、軒天井から連続する。
右へ進むと、ハッとするような朱が鮮やかな和室が現れる。
朱の引戸、襖は和紙の壁紙が張られたもの。仏間や客間として利用する部屋だ。
玄関から左は段床を伴いながら奥へ廊下が続く。左手にはウォークインクローゼットがあり、藍の壁にはピクチャーレールが備わる。
廊下を進むとLDKの手前に前室のような小部屋。そこに2枚の引戸。
藍色はEP(エマルジョンペイント)に砂を混ぜて、表情を付けながら塗った。
左の引戸はトイレで、右を開けると洗面室と浴室。
洗面室から左を向くと、家事室、そしてパントリー、キッチンへと続く家事動線。
家具や建具に丁寧な仕事が見られた。ラワン材に柔らかな加工がされた手掛かり。戸当たりとして埋め込まれたブラシは荒谷さん標準の仕上げだそうだ。また引戸と戸袋の境に見切りを一筋入れ、戸を閉めたときの納まりが美しくなるよう一手間かけている。
水回りからキッチンは施主の好みが強く反映されているという。「それらを調整しながら自分の設計に落とし込むのはおもしろい。」と荒谷さん。
玄関から続く廊下を見返す。分節された屋根が交互に勾配を変えていく様がよく分かる。
ダイニング・キッチン。緩やかな勾配の大きな天井が、左のリビングに向かって開放感をもたらす。
ヘリンボーンの床は施主の要望を反映した。
ダイニングから少し上がってリビング。この下がピロティになる。持ち上げられたリビングは景色の眺め良くするためでもある。
西宮の街並みと大阪湾を望む。
リビングに据えられるようにレイアウトされた畳スペースは3人の子どものための勉強部屋。右手から2階に上がることができる。
リビングの壁も同様に砂混のEP。畳スペースはシルバーのガルバリウム鋼板貼り。
施主はチェストやテーブルなどのビンテージ北欧家具を多く所有することから、配置を楽しめるように、壁を多めにした。
2階は、通常ならロフトと呼べるような天井の低いコンパクトな空間だが、ここからでないと見ることができない内外の眺めがある。
下の畳が子どものスペースで、こちらは親のスペースとして使う予定だそうだ。
畳スペースの左手奥へ。
正面の開口からちょうど梅が咲いているのが見える。
子ども3人の寝室。まだ小さいので引戸は付けずにオープンに。間仕切りは黒板塗装がされている。左奥に主寝室。
振り返ると子どもが好きそうな凹凸が沢山ある。
子ども室の奥から。開口から見える庭は今後植栽がもっと入れられる。
主寝室の出入りは不思議な三角の "廊下"に面する。「大きなところと小さなところを意図的に設けでメリハリを付けた。」と荒谷さん。
左はトイレで、反対が主寝室。
主寝室へは、玄関から上がったり下がったりしながら30mほどの動線がある。離れのように一番小さなボリュームとして配置されている。
床はサイザル麻だが、綿が混紡されて足触りが柔らかい。
荒谷省午さん。「建て替え前の住宅は、この広い敷地が持つ可能性を充分に使いこなせていないように感じました。今回の計画では、これまでのここでのクライアントの生活に敬意を払いつつ、この場所のポテンシャルを最大限引き出す事に注力しました。平屋を少し立体的に捉えることにより、眺望の確保や大きな軒下など、敷地に残される余白部分もまた魅力的な空間とすることが出来たと思います。」
【目神山の住宅】
・建築設計:荒谷省午建築研究所
・構造設計:エス・キューブ・アソシエイツ
・施工:山陽建設工業
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