4月19日から開催の「坂茂:プロジェクツ・イン・プログレス」のプレス内覧会に行ってきました。
ギャラ間での坂さんの展覧会は1999年以来、18年振り2回目だ。今回の展示ではタイトル通り全て「現在進行中」のプロジェクト10作品をプロセスや、構造・ディテールのモックアップを使って紹介する。
Exhibition [Shigeru Ban: Projects in Progress] Tokyo.
展覧会概要:「本展では、現在世界各地で進行中の最新プロジェクトのプロセスを通して、坂氏の設計思想と取り組みを紹介します。これまで「紙管」という安価で解体・組み立て・再利用が容易な素材を建材として利用し、建築作品だけでなく世界各地の災害支援にも尽力してきた坂氏が、今改めて『木』という素材の特長や可能性に注目し、これらを多様なかたちで用いた大規模なプロジェクトに挑戦しています。」
3階展示室は4月22日にオープンを迎える〈ラ・セーヌ・ミュジカル〉のプロセスを紹介。パリ近郊、セーヌ川セガン島に建設されている音楽ホール・コンプレックスだ。
La Seine Musicale (Paris vicinity, France/ 2017)
展示室の中央には全長4mの断面模型が鎮座する。台の脚はもちろん紙管。周囲にはディテールのモックアップや、映像が展示され図面は一切ない。
セガン島は長い間ルノーの工場があったが、撤退後ピノー財団が取得し安藤忠雄の設計で美術館を計画していたものの中止となり、プンタ・デラ・ドガーナの名称でベネチアに計画変更され完成した。その後ジャン・ヌーベルが島全体のマスタープランをつくり、ピノー財団の敷地はPFI方式の音楽ホール・コンプレックスとしてコンペが行われ、2013年坂事務所が勝利した。
「フランスは凄い国。音楽ホールを設計しこともない私たちにチャンスをくれた。」と坂さん。
手前に音楽学校、中央に4000人収容、奥の球形ボリュームに1150人収容の音楽ホールからなる。
ちなみに、ボブ・ディランがようやくノーベル平和賞を受け取りにストックホルムへ赴き、その足で4月21日オープン前夜祭に受賞記念コンサートが行うとか。
設計要件で「パリの西の玄関となり得るようなモニュメンタルなデザイン。」を求められたという。円形ホールの外壁はモザイクタイルで仕上げられ、アトリウムは木造架構にガラス張りの外殻で包まれる。その外側にヨットのセイルをイメージしたデザインのソーラーパネル。パネルは発電効率を上げるよう太陽を追いかけて可動し、ガラス張りのアトリウムに日陰もつくれるようにした。
天井に張り巡らす吸音装置としても紙管を利用。壁面に張る波板は同じピッチ・曲率の波でできており、組み方を変えることで音の反響具合を調整できるようにした。
ソーラーパネルと円形ホール外壁のモザイクタイル。
タイルは光の当たり具合(見る位置の変化)で赤から緑に色が変わる。今回イタリアで開発した特殊タイル。
竣工したホール。オープンの4月22日はフランスの大統領選挙直前のため「報道陣があまり集まりそうもないので日本のメディアの方是非来てください。」と坂さん。
中庭は頭上一面を紙管の架構で覆った。
大分の〈竹田市クアハウス〉(2018年7月就航予定)。レシプロカル構造屋根のモックアップ、滋賀県立大の学生や慶応大のインターン20人掛かりで組み上げた。実際の建築では木材だが、展示での施工性を考慮し紙管を採用した。
〈熊本木造仮設住宅〉昨年の熊本を襲った大地震の被災者用に設計た仮設住宅のモックアップ。大工がいなくても特別な技術を必要とせず組み立てられるL字型ユニットを開発。仮設住宅の悩みである隣との音の問題を、界壁に収納を設えることで、収納不足の問題と共に解消した。
現状、最低限の住環境である仮設住宅の基準は低すぎるという。コストを上げずにもっと快適な仮設が可能だということも訴えている。
〈ネパール復興プロジェクト〉 2015年のネパール大地震後の復興住宅。煉瓦造りの家が多く地震で多くが倒壊した。瓦礫となった煉瓦を地元で手に入る木パネルの構造板に非構造として積み上げ、誰でも施工できる仕組みにした。地震に強い構造と瓦礫の再利用を同時に実現。
4階展示室は建築模型とモックアップが並ぶ。
〈湯布院ツーリストインフォメーションセンター〉 2018年3月竣工予定
柱のモックアップ(1/3)。日本でも曲面の木材加工ができるのは、と思うかもしれないが、国内では二次曲面の加工しかできないそうだ。
〈富士山世界遺産センター〉 2017年7月竣工予定。
逆さ富士形の建物が周囲の水盤に映ることで正富士の形が現れる。内部の螺旋スロープを上がりながら富士山の魅力を紹介し、屋上まで上がったとところでピクチャーウィンドウの先に富士山が見える。
外壁の木格子のモックアップ。これら大型のモックアップはそのままでは搬入できないので、部材を運んで何日も掛け、この場で組み上げた。
坂茂さん。「一般の方が図面を見ても理解するのは難しい。展覧会ならではの建築の展示コンテンツは何か?と考え、施工プロセスやモックアップを中心に展示しました。」
【坂茂:プロジェクツ・イン・プログレス】
会期:2017年4月19日~7月16日
会場:TOTOギャラリー・間
詳細:www.toto.co.jp/gallerma/ex170419/index.htm
ギャラ間での坂さんの展覧会は1999年以来、18年振り2回目だ。今回の展示ではタイトル通り全て「現在進行中」のプロジェクト10作品をプロセスや、構造・ディテールのモックアップを使って紹介する。
Exhibition [Shigeru Ban: Projects in Progress] Tokyo.
展覧会概要:「本展では、現在世界各地で進行中の最新プロジェクトのプロセスを通して、坂氏の設計思想と取り組みを紹介します。これまで「紙管」という安価で解体・組み立て・再利用が容易な素材を建材として利用し、建築作品だけでなく世界各地の災害支援にも尽力してきた坂氏が、今改めて『木』という素材の特長や可能性に注目し、これらを多様なかたちで用いた大規模なプロジェクトに挑戦しています。」
3階展示室は4月22日にオープンを迎える〈ラ・セーヌ・ミュジカル〉のプロセスを紹介。パリ近郊、セーヌ川セガン島に建設されている音楽ホール・コンプレックスだ。
La Seine Musicale (Paris vicinity, France/ 2017)
展示室の中央には全長4mの断面模型が鎮座する。台の脚はもちろん紙管。周囲にはディテールのモックアップや、映像が展示され図面は一切ない。
セガン島は長い間ルノーの工場があったが、撤退後ピノー財団が取得し安藤忠雄の設計で美術館を計画していたものの中止となり、プンタ・デラ・ドガーナの名称でベネチアに計画変更され完成した。その後ジャン・ヌーベルが島全体のマスタープランをつくり、ピノー財団の敷地はPFI方式の音楽ホール・コンプレックスとしてコンペが行われ、2013年坂事務所が勝利した。
「フランスは凄い国。音楽ホールを設計しこともない私たちにチャンスをくれた。」と坂さん。
手前に音楽学校、中央に4000人収容、奥の球形ボリュームに1150人収容の音楽ホールからなる。
ちなみに、ボブ・ディランがようやくノーベル平和賞を受け取りにストックホルムへ赴き、その足で4月21日オープン前夜祭に受賞記念コンサートが行うとか。
設計要件で「パリの西の玄関となり得るようなモニュメンタルなデザイン。」を求められたという。円形ホールの外壁はモザイクタイルで仕上げられ、アトリウムは木造架構にガラス張りの外殻で包まれる。その外側にヨットのセイルをイメージしたデザインのソーラーパネル。パネルは発電効率を上げるよう太陽を追いかけて可動し、ガラス張りのアトリウムに日陰もつくれるようにした。
壁面には、建設のプロセスを定点カメラが記録した動画。音楽ホールで使われる座席のモックアップに座って鑑賞できるが、その座面と背もたれは紙管でできている。
通常工事はまず杭を打つ作業からはじめるが、ここでは安藤忠雄の美術館建設前に打たれた杭を抜く作業からはじまった。その様子が動画でも確認出来る。
通常工事はまず杭を打つ作業からはじめるが、ここでは安藤忠雄の美術館建設前に打たれた杭を抜く作業からはじまった。その様子が動画でも確認出来る。
天井に張り巡らす吸音装置としても紙管を利用。壁面に張る波板は同じピッチ・曲率の波でできており、組み方を変えることで音の反響具合を調整できるようにした。
ソーラーパネルと円形ホール外壁のモザイクタイル。
タイルは光の当たり具合(見る位置の変化)で赤から緑に色が変わる。今回イタリアで開発した特殊タイル。
竣工したホール。オープンの4月22日はフランスの大統領選挙直前のため「報道陣があまり集まりそうもないので日本のメディアの方是非来てください。」と坂さん。
中庭は頭上一面を紙管の架構で覆った。
大分の〈竹田市クアハウス〉(2018年7月就航予定)。レシプロカル構造屋根のモックアップ、滋賀県立大の学生や慶応大のインターン20人掛かりで組み上げた。実際の建築では木材だが、展示での施工性を考慮し紙管を採用した。
〈熊本木造仮設住宅〉昨年の熊本を襲った大地震の被災者用に設計た仮設住宅のモックアップ。大工がいなくても特別な技術を必要とせず組み立てられるL字型ユニットを開発。仮設住宅の悩みである隣との音の問題を、界壁に収納を設えることで、収納不足の問題と共に解消した。
現状、最低限の住環境である仮設住宅の基準は低すぎるという。コストを上げずにもっと快適な仮設が可能だということも訴えている。
〈ネパール復興プロジェクト〉 2015年のネパール大地震後の復興住宅。煉瓦造りの家が多く地震で多くが倒壊した。瓦礫となった煉瓦を地元で手に入る木パネルの構造板に非構造として積み上げ、誰でも施工できる仕組みにした。地震に強い構造と瓦礫の再利用を同時に実現。
4階展示室は建築模型とモックアップが並ぶ。
〈台南市美術館〉 2018年秋竣工予定。
既存の地下駐車場を補強しその上に美術館や劇場を建設する計画。周辺には市民の憩いの場となる公園がないため、箱型の空間の内外を自由に出入りできる公園としての機能も有する。
Tainan Museum of Fine Arts (Tainan, Taiwan/ Projects in Progress)
日射の強い台南。五角形のフレームにフラクタル造形の日よけを開発し採用する。
〈スイス時計会社本社〉 2018年7月竣工予定。
スイスを代表するカジュアルウォッチと高級時計メーカー本社キャンパス増築計画。敷地のあるビール/ビエンヌ市はスイスを代表する木構造専門の大学があり、CNC旋盤による木加工で世界をリードするスイス。この地で大規模な木造建築を作ることは自然な選択肢。このプロジェクトのために加工用の工場を隣接して造った。
Watch Company Headquarters in Switzerland (Biel/ Bienne, Switzerland/ Projects in Progress)
木材三次曲面の自動加工技術はスイス、ドイツはずば抜けている。日本は戦後、耐火の問題から大規模な木造技術の開発が行われず、ガラパゴス化が進んで完全に遅れている。このような建築を作りたくても加工技術も設備も人材もないそうだ。
躯体構造モックアップ(1/3)。針葉樹の材の中に、部分的に強度が必要な箇所は堅い広葉樹の材(色の濃い部分)を混構造としている。
スイスを代表するカジュアルウォッチと高級時計メーカー本社キャンパス増築計画。敷地のあるビール/ビエンヌ市はスイスを代表する木構造専門の大学があり、CNC旋盤による木加工で世界をリードするスイス。この地で大規模な木造建築を作ることは自然な選択肢。このプロジェクトのために加工用の工場を隣接して造った。
Watch Company Headquarters in Switzerland (Biel/ Bienne, Switzerland/ Projects in Progress)
木材三次曲面の自動加工技術はスイス、ドイツはずば抜けている。日本は戦後、耐火の問題から大規模な木造技術の開発が行われず、ガラパゴス化が進んで完全に遅れている。このような建築を作りたくても加工技術も設備も人材もないそうだ。
躯体構造モックアップ(1/3)。針葉樹の材の中に、部分的に強度が必要な箇所は堅い広葉樹の材(色の濃い部分)を混構造としている。
〈湯布院ツーリストインフォメーションセンター〉 2018年3月竣工予定
柱のモックアップ(1/3)。日本でも曲面の木材加工ができるのは、と思うかもしれないが、国内では二次曲面の加工しかできないそうだ。
〈富士山世界遺産センター〉 2017年7月竣工予定。
逆さ富士形の建物が周囲の水盤に映ることで正富士の形が現れる。内部の螺旋スロープを上がりながら富士山の魅力を紹介し、屋上まで上がったとところでピクチャーウィンドウの先に富士山が見える。
外壁の木格子のモックアップ。これら大型のモックアップはそのままでは搬入できないので、部材を運んで何日も掛け、この場で組み上げた。
【坂茂:プロジェクツ・イン・プログレス】
会期:2017年4月19日~7月16日
会場:TOTOギャラリー・間
詳細:www.toto.co.jp/gallerma/ex170419/index.htm
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