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藤本壮介による会場構成「ラース・ミュラー: 本 アナログリアリティー」展 レポート

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藤本壮介が会場構成を手掛けた「ラース・ミュラー: 本 アナログリアリティー」展のオープニングに行ってきました。場所は銀座のギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)。
[Lars Müller BOOKS Analogue Reality] space design by Sou Fujimoto

 グラフィックデザイナーであるラース・ミュラー (Lars Müller) はスイスを拠点にLars Müller Publishersを設立し、自身でも多くの装丁デザインを手掛け出版し、世界的に高い評価を得ている。
藤本壮介を取り上げた本も出版しており、ミュラーと親交もあることから会場構成を手掛け、春に京都dddギャラリーで開催された展覧会の巡回展となる。

 本展ではミュラー独自の世界を形づくっている作品の中から、テーマや形式へのこだわりを具現化する100冊を厳選して展示されている。


 京都会場では1フロアだったが、東京では1階と地下の2フロアが会場だ。


 思わず手に取りたくなる美しいデザインの数々。




 藤本さんの本を発見。丹下健三とイワン・バーンの間に。


 〈Sou Fujimoto Sketchebook〉
中を開くと藤本さんのスケッチやメモ。左は進行プロジェクトの都市名か、移動予定の都市名か、アジア、ヨーロッパ、中東、北米に渡る。

 台湾タワーと思われるスケッチも。これは2011年当時使っていた藤本さんのモレスキンの手帳をそのままスキャンして、ほぼ編集なしで本にしたもの。
「クライアントの個人名や会社名以外本当にそのまま。施工費の計算やちょっとしたメモ書きなどもあったりするので、少し恥ずかしい。」と藤本さん。

 会場で藤本さんが手にしていたモレスキンの手帳(右)と並べてみた。大きさや表紙、紙質、色などもそのままに再現した本だ。
手帳を開いてみると、本は実物と見分けが付かないほどの出来だと良く分かった。
ちなみにこの本のほか、展示中のいくつかの本がggg隣のmmmで購入可能だ。

 地下1階会場。京都で使ったオリジナル制作のテーブルを持ち込み、全く違う形に構成した。


 テーブルはいくつかのサイズがある。一つ一つが小さな島のようであり、全体的には大きな島となる。京都ではバラバラで動的、東京ではまとまり静的。それぞれの本ごとに居場所があり、落ち着いて閲覧することが出来る。



 
 手前は〈Zaha Hadid: Space for Art〉


 たくさんある居場所に、ひとが座ってもらって会場の完成形が見えてくる。



いくつか展示されている本を紹介。
日本では手に入りにくい本が多いので、この機会にぜひ手に取ってみたい。
 ミュラーさんの代表作。左より〈Neue Grafik〉、〈Helvetica Homage to a Typeface〉、〈Helvetica Forever〉
スイス人によって作られた世界で最も有名なフォントの一つHelveticaはラテン語で「スイスの」という意味だ。

 〈Peter Zumthor Works〉
(amazonで20万円で出品されていた)

 〈Herzog & De Meuron Natural History〉


〈Steven Holl Idea and Phenomena〉
〈Steven Holl Written in Water〉

 〈Steven Holl Scale〉


 スティーブン・ホールのスケッチ。


 〈Peter Eisenman the Formal Basis of Modern Architecture〉


〈Jasper Morrison Everything but the walls〉
〈Jasper Morrison a Book of Things〉

 〈Holocaust Mahnmal Berlin〉
ホロコースト犠牲者のための記念碑と同じセメントでできている表紙。下に敷いてあるフェルトは覆いに使われるセット。

 藤本さんとミュラーさんによるギャラリートーク。
例えばこんなトークがあった。

ミュラー:本作りで譲れないこと、読解性、明解さ。
本離れがすすんでいるが、本を読むことをやめてはいけない。本を読まずに聞くことばかりでは考えることができない。そして(本離れにより)ヨーロッパでは言葉が乱れてきていて、暗号めいた言葉が日常的に使われている。そういった危機を迎えている。建築ではどうだろうか?

藤本:建築はいい意味で鈍い。時代が変わってデジタル化がいくら進んでも物理的な空間をどうするかが建築。空間の認識の仕方、体験の仕方はデジタル化や技術で変わっていくと思うが、そこで広がっていく感覚と空間のギャップ、その間に新しい何かが生まれる余地があるような気がする。そこが面白いことであり、やりやすいことでもある。

ミュラー:建築が終焉を迎えるときは建築がその意味をなくしたときだと思う。優れた建築というのは、人間がどのように振る舞うべきなのか、プライベートな場ばかりでなく、パブリックな場、つまり内と外の空間のありかた、学びの要素がある物だと思う。ひとつの空間にひとつのドアしかないような場では、ひとは他の選択肢を与えられていないことになる。実際にはひとつのドアしか使わなかったとしても、同時に他のドアがあれば複数の選択肢もあり得るのが重要だと思う。本も同じように学びや選択、表現の道具として存在している。

藤本:非常に建築の本質を突く話でとても共感できます。建築はある意味恐ろしいもので、ひとの動きを制御し、ある一つの方向・生き方を押しつけてしまうこともあり得る。ひとが意識しても、また知らず知らずのうちにいつの間にかでも、楽しみながら選び取っていくのが幸せなのではないでしょうか。京都会場では大きさの異なるテーブルがランダムに置かれテーブルを選択でき、東京ではレイアウトは異なりながらも何となくいろいろな居場所があるのでそれを選択し、座ることができる。

【ラース・ミュラー: 本 アナログリアリティー展】
会期:2015年08月04日(火)~ 2015年08月26日(水)
場所:ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)


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