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アトリエ天工人によるシラスRCの住宅「トルソ」

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山下保博+水上健二+友寄篤/アトリエ天工人Yasuhiro Yamashita / Atelier Tekutoによる渋谷区の住宅「トルソ」のオープンハウスに行ってきました。
シラスを混合するという新しいコンクリートの住宅。

敷地面積67m2、建築面積31m2、延床面積107m2。RC造、地下1階、地上3階建て。
矩形の角を面取りし、空に向かって積極的に開口するシリーズ第4弾。



見る角度によって姿が大きく変わる。これらの面取りは斜線制限や天空率によって生まれ、バランスを見ながら意匠に落とし込む。


下の開口は1階と地下の半分に、上の開口は2階と3階に面する。
前庭にはブラシノキが植わる。 

外構に敷き詰められたシラスの軽石。
シラスとは南九州の火山による火砕流堆積物の総称で、鹿児島県には県の面積の半分、東京ドーム6万杯という膨大な埋蔵量があり、土木用としては利用が進んでいるものの、建築では左官壁や瓦の利用に留まり、建築の構造体としてはほとんど実績がないそうだ。



実績がないため構造体としての認定には多くの実証実験をこなし、ようやくこの1棟に限り国交大臣の認定を取得できた。しかし今後、個別に大臣認定を取得しながら実績を作り一般認定を目指す。というのもこのコンクリートは将来的に取り壊した後、粉砕しリサイクルセメントとして利用が可能だからだ。
「一説にはあと100年ほどでセメントは枯渇するといわれています。そのためにも今から都市にセメントをストックしておくということです。」と山下さん。



今回のコンクリートには前出の軽石が使われたわけではない。通常コンクリートに使われるのは水、セメント、石灰砕石、石灰砕砂、山(川)砂だが、トルソでは山砂をほぼシラスの細骨材に代えて混合されている。


玄関に入ると鈍い銀色の床になっている。亜鉛メッキに見えたが、鉄を叩いて仕上げられた鍛鉄の一品もので、鍛鉄作家・田中潤による仕事。


1階。中へ入ると北面の三角窓から淡い光に照らされた黒い建具。MDFボードに墨を含浸させそれを磨き出すということを繰り返し行われたもの。
床はモルタルだが、ひびが入る可能性があったのでシラスは使わなかった。


玄関側を見ると4畳半の和室。引戸で仕切られ客間として使える。
右はトイレ。



地下へ降りると今度は建具が墨ではなく柿渋で仕上げられている。手摺は鍛鉄で仕上げられ、微妙な凹凸が手にしっくりと馴染む。(墨・柿渋、手摺は共に田中制作)
床は特注のシラスタイル敷き。
中央の扉の中は音楽好きのご主人のためのスタジオ。 

階段下の収納には熱循環システムの太いパイプが通っている。地下の冷たい空気と、3階の暖かい空気を季節によって循環させることができる。


2階へ。2階・3階は吹き抜け。


2階LDK。キッチン左の黒い扉を開けると水回り。
床はとAVボードは紫の木材、パープルハート材。鹿児島のシラスを使っているのでサツマイモ色にしたそうだ。

階段の上では構造担当の佐藤淳さんがキャンティレバーの具合を確認している。佐藤さんにとってもシラスコンクリートは初めての素材で、大臣認定取得のためのプロジェクトメンバーとして2012年から携わる。


振り返ると三角形の大開口から空。


キッチン周囲はステンレスにバイブレーション仕上げ、収納の扉はさらにキャンディーカラーのダークグレーの焼き付け塗装。
Dornbracht(ドンブラッハ)の水栓が付くキッチン前面のガラスの裏は浴室だ。

パンチングメタルの扉が1枚あるので開けてみると、外に小さなバルコニー状のヤードが設けてあった。


この住まい、施主の住まい方を考えた場合ゴミ箱が室内にあるべきではないと考えたため。


キッチン裏の水回り。


浴室から見たキッチンのガラス。階段が透けて見えている。


見上げると三角形の吹き抜けからトップライト。トイレの上はハイサイドライト。
3階の床が2階とは角度を変え壁に勘合しているようなイメージ。

3階へ。

3階寝室。収納を兼ねる腰壁で視線を遮る。開口には曇りガラス調シートを貼るかどうか、まずは住んでみて決めるそうだ。

ベッド頭上には間接照明。枠に沿ってある溝にはカーテンが付く天蓋へと姿を変えるので、寝ているところが外部から見えるわけではない。
ヘッドボード背後の開口は浴室へ通じる吹き抜け。

山下保博さん。「天工人が挑戦的な建築をつくることを良くご存じのお施主さんで、『今までにないRC造の住宅を建てて欲しい』と望まれました。その言葉を受け、『パンテオンに使用された古代コンクリートを現代の最新技術を用いて環境型コンクリートとして蘇らせる』というキーワードで始まったプロジェクトです。コンクリートばかりでなく、各部の仕上げも丁寧に作り込み工芸作品のような住宅が出来たと思います。」

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