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安藤忠雄のコメントや質疑応答/新国立競技場計画に関する説明会

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去る7月7日、新国立競技場案に関して、日本スポーツ振興センター(JSC)をはじめとする新国立競技場計画関係者から、これまで意見・要望などを表明した建築家団体の代表者に対する説明会が建築家会館にて開催されました。
説明会での各コメントが公表されたので抜粋してお伝えします。

■■ 計画関係者
【発注者】
日本スポーツ振興センター:河野一郎、鬼澤佳弘、山﨑雅男、阿部英樹、和田 章(アドバイザー) 

【国立競技場将来構想有識者会議ワーキンググループ】
安藤忠雄、内藤廣、安岡正人、小倉純二、都倉俊一

【デザイン監修担当者】
Jim Heverin (ザハ・ハディド・アーキテクツ)、内山美之

【基本設計担当者】
日建設計・梓設計・日本設計・アラップ設計共同体、亀井忠夫、山梨知彦

■■ 建築設計関連 5 団体関係者
日本建築家協会:会長 芦原太郎、副会長 上浪寛
日本建築士連合会:会長 三井所清典 
東京建築士会:会長  中村勉 
日本建築士事務所協会連合会:会長 大内達史、前会長 三栖邦博 
東京都建築士事務所協会:会長代行 西倉努

(左:2013年3月時点案、右:現在案)

本説明会の主旨等説明
【芦原氏】
・新国立競技場計画については、建築家、建築関連団体、市民の方々から色々な主張がなされている。そのような中、今回、専門家である私たちに情報を正しく説明いただける機会を持てたことは大変嬉しいことだと思っている。
 ・この会は、日本スポーツ振興センターと協力いたしまして、非公開という形ではありますけれども、内容をきっちりと確認し、整理して、何らかの形で公表していきたいと考えております。

【安藤氏】
・場所、景観、規模、開閉式屋根等の問題点を指摘されているのは認識している。
・場所や規模、予算などについては、委員を依頼された時点で前提条件として聞いていたことであり、私もすべての事柄について権限のある責任者ではなく、国民や専門家の皆様に対して説明する立場にないため、これまでJSCから事業者として説明して頂くよう伝えていた。
・私がデザインについて説明をする前に、皆さんの疑問点を直接聞くことが必要。このような機会がこれまでなかったのが問題であったと思っている。国家的事業であ ることを考慮すれば、本来であれば公開ですべきだと考えている。
・デザインの選考については、構造や設備、そして管理運営など専門の先生方にも相談して審査して頂き、ザハ・ハディドの案が良いのではないかということになった。 審査についての問題点も指摘されているようだが、限られたスケジュールの中では 公平になされたと思っている。その経緯の詳細については JSC が HP上で公開している。
・今回は皆さんが問題に思っていることをどんどん言ってもらいたい。私が答えられる範囲のことは全部話したい。自分たちが考えたことはしっかりと説明したいと思う。

経緯等説明後の補足説明 
【芦原氏】
 ・規模の問題、多目的のプログラムと費用に対する懸念、外苑の景観に対する懸念について、まずはしっかりと把握するため、説明いただくようにしていただきたい。問題については、既にそれぞれの建築団体から要望書や提案書という形で何度も提出しているので、私たちが感じている問題点を既に御理解いただいているものと考えている。計画について説明いただいた後に、時間がある限り問題点についても話し合いを行いたい。

【安藤氏】
 ・審査委員会が関与し、説明できる範囲とできない範囲がある。デザインについては我々がコンペの最優秀案として選んだものであるが、その後の基本設計の経緯には関与していない。

【河野氏】
・場所と8万人規模、全天候型、可動席という前提は我々も条件として認識しているので、指摘をいただいているが、そこまで戻る意見には我々としては答えられない。前提条件について、御意見があるのは踏まえた上で我々が政府と話し合いをした結果としてやる必要があると判断して進めている。

【安藤氏】
 ・当デザインを選んだ経緯について説明させて頂きたい。2020年に向けて心が一つになるような、祝祭性のあるデザインをテーマに掲げ、審査委員会の総意として選んだ。
・コンペ案の段階では敷地をはみ出すなどの問題点もあったが、基本設計の過程で調整できうる範囲のものと考えた。選考にあたっては 50 年、100 年先を見据え、この場所にあって良かったと思えるような、誇りの持てるデザインであるかどうかを重視した。
・審査では、スケジュールの都合がつかずどうしても参加できなかったノーマン・フォスター、リチャード・ロジャースを職員が訪問し、一日かけて内容を説明した。 その上で審査して頂き、評価を頂いた。最終案決定の際に私が電話で直接経緯を説明した上で判断を仰ぎ、同意を確認した。彼らも適正に審査に参加している。
・世界に向けて日本の技術を誇れるものという意味では、あのデザインで良かったと思っている。景観の問題についても、要求される容積の中で、建物外周部の高さを抑えた流線型のデザインは、比較的威圧感を低減するのではないかと考えた。
・構造的には大きな挑戦となるが、和田先生にも見て頂き、十分実現可能だとご判断を頂いた。
・当初想定されたコストを基本設計で見直し、現在も調整中であるが、建築資材等の単価は現在上昇傾向であり、ある程度のコスト増はやむを得ないのではないかと思っている。
・景観についても、場所については国が決めたことであるが、実際に関わるのは市民であり、その要望に対し配慮すべきことはしっかりと対応すべきだと思う。ただ、 今回の競技場に求められる条件を前提とした場合、仮設でつくるという計画は当初から想定されていなかった。
・ほかにも新国立競技場の計画について様々な意見が寄せられているが、腹を割って話し合うことが大事であり、事業者である JSC はしっかりと受け止め、対応できるところは対応しつつ、今後も情報発信をしていって欲しい。


その他の質疑応答(Q:建築関連団体、A:JSC等)
Q:総工事費や維持管理費についてはどのような検討を行ってきたのか。
A: デザインコンクールでは、日産スタジアム等の類似施設を参考に1,300億円の目安額を設定した。その後、建設物価の上昇、オリンピック対応や各ワーキンググループからの要望を全て盛り込むと大幅に超えるものになってしまうので、専門家の御意見を踏まえながら、デザインをコンパクト化した。政府部内との調整を踏まえて、本体工事費1,388億円、周辺整備237億円となっている。その間、自民党の無駄撲滅プロジェクトチームや財務省との協議を経て今に至っている。基本設計もこの条件で収まっている。ただし、建設物価上昇分は昨年までのもので、消費税は5%を前提としている。
新国立競技場は立地もよいので、多目的スタジアムとして収入を上げて、国民の税 金になるべく頼らないような計画にした方がよいのではないかと考え、維持費についてはフレームワーク設計の時に試算したが、第三者にも評価してもらい、収入が 50.4億円、支出が46億円と見込んでいる。収支計画については、基本設計に 基づき試算しており、現在政府部内と調整次第、公表したいと考えている。

Q: 改修ではできないのか。
A: 現在の国立競技場に手を加えても、国際基準を満たすものにならないという認識の下でスタートしている。基本的には建て替えないと無理だと考えている。8万人規 模等の与条件を踏まえると改築しかないと考えている。

Q: 改修案について検討した結果を示してもらうことはできないか。
A:今の8万人規模というのは国際スポーツ団体の基準であり、これは我々では変えられる立場にはない。

Q: 情報を公開していくべきと考えているがどうか。
A:情報をできるだけオープンにしていくことは同意見であり、できる範囲内のことは やっていこうというスタンスである。情報については、政府の了解が必要なことも あるので、我々だけの判断ではできない部分もあることは御承知願いたい。
情報を HP 等に公開しても、反対意見を出す人が見ていない場合もある。


Q: 解体工事の着手を遅らせることはできないか。
A: 2019年3月に完成させる予定であり、建築工事に42ヶ月かかる。来年の10月には着工しなければならない。解体には15か月かかるので速やかに着手する必要がある。詳しいスケジュールは別途資料を提出する。

Q(JSC等より): ナショナルプロジェクトで不満があると言うが、国立競技場の改築に反対する方々の意見の要点は何か。

A(建築関連団体より):神宮外苑の環境の中に70m程度の建物は大きすぎるのではないか、景観上影響は ないのかという心配があったが、シミュレーションを見て、大きすぎるのかどうか検証してわかっていただくことが第一歩と考えている。次に、素晴らしい競技場を作るという思いはわかるが、一部の人からは今この時代に建設費や維持費が大きくなることに懸念を持っている方がいる。そういう人に、具体的にどれだけの費用がかかり、どういうことができるのか、国民にとってどの程度の役割を果たすのかについて、しっかりコミュニケーションが取れていないと考えており、専門家としても、問題点を整理して、都民・国民にわかりやすく公表していくことも重要と考えている。
本日は、説明を聞く場として参加しており、専門家としての議論は控えた。今日の説明をもとに質問書として整理して提出させていただき、そのうえで専門家だけでなく市民団体などを交えた議論の場を公開で設けていただきたい。専門家だけの問題でなく、国民の議論になってもよいと考える。

全文はこちらより(PDF)


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