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ギャラリー・間「クリスチャン・ケレツ展 -The Rule of the Game」レポート

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東京港区のTOTOギャラリー・間で7月19日からはじまる「クリスチャン・ケレツ展 -The Rule of the Game」の内覧会に行ってきました。
Christian Kerez Exhibition -The Rule of the Game

 スイスを拠点に活躍する異才の建築家クリスチャン・ケレツの日本初の個展。
「建築とは既成のルールや固定概念を破る "知的な作業" 。模型やレンダリングで空間や構造の検討を繰り返し、周到に練り上げていく設計スタイルをとる。プロジェクトごとに改めてコンセプトやアイディアを練りながら新しいオーダーを見つけ出していく。そして単純化し、建物をひとつの思想、ひとつの原理にまで還元し、無限にバリエーションを増やす "知性のミニマリズム" によって空間が自由で豊かになる。」展覧会概要より抜粋


 5つのプロジェクトだけのシンプルな展示だが緻密な相互関係が空間として感じ取ることができる。
今回展示されるコンセプト模型は、リアリティを目的にしているわけではない。模型には固有のリアリティがあり、抽象的なものが具象化されプロジェクトの背景にある理念が見えてくる。


 "ホルシム研究開発センター/Holcim Competence Center" 
2008年コンペで1等を獲得。もっと大きな模型を作りたかったがオフィスのエレベーターに入らないという理由でこのサイズになったそうだ。


 中は儚くて、外はしっかりしているという対照的な性格を持っている。床・天井の開口によって異なるフロアで人の気配を感じ交流が密になる。 
会場の壁面には内部を望む動画があるので是非見ておきたい。 

 スタディモデル。基本的な理論構造は同じだがライトウェルの光の筋道と関わりあいが異なる。

 "ワルシャワ近代美術館/Museum of Modern Art in Warsaw" 
2006年コンペで1等を獲得。今回いちばん小さな模型で積極的に映像と一緒に見てもらいそうだ。


 1階は柱や梁が密に構成されている。

 対して2階は柱や壁が無く、ヴォールト天井が空間に変化を与えている。

 "スイス・リー・ネクスト/Swiss Re Next" 
2008年コンペ案。 


 3箇所の階段室が14階のフロアを縦横に貫く。どの階段を使うかは各人の自由だし、階段室の位置の違いで各フロアの平面に変化が生じ、低予算でこれ見よがしでなくても多様性をもたらすことができる。

 コンペについてケレツさんは「スイスにはコンペが沢山ありますが、負けることを大前提にして臨んでいる。そして勝つか負けるかは重要ではなく、その結果何が残されるのかが大事です」と話す。

 "パライゾポリスの公営住宅/Social Housing in Paraisopolis"  
サンパウロのファベーラ(バラック集落)に住む人たちに供給する住宅。ファベーラでは衛生状態や地盤の悪い箇所も多くあり立ち退いて転居してもらう。

 450戸の小さな住宅を建設する計画。複雑に見えるが5種類の間取りのみで構成されている。

 あえてファベーラとあまり違いのない環境を用意した。直接路地に出られ、居間の正面にはベランダがあり物干しをしたりそこで過ごしたりも出来る。ケレツさんは実際ファベーラで2週間過ごしたそうだ。

 通常ブラジルでは西洋型の近代主義風の住戸しか提案されないが、ファベーラを全く別物のその土地固有の建築様式と捉えて提案した。

 会場の資料をめくると現地の航空写真があった。手前にごちゃごちゃと広がるのがファベーラ。赤いのが計画地なので、いかにこのファベーラが広大かが分かる。 

 "鄭州の高層ビル/Highrise in Zhengzhou" 
中国鄭州 (ていしゅう) のオフィス・商業ビルの第1案と第2案。手前は当初の案。コンセプトは気に入ってもらえたが張り出したケーブルが消防法に抵触するとのことで奥の第2案を再提出した。


 第1案。中心を貫くコアを設けずオープンで華奢な儚さを重視した。1階と30階では掛かる加重が30倍も異なることを可視化した。構造体の密度が上・中・下層で変化していく。 


 第2案。 各階を貫く柱、というよりフロア毎に密度が変化するトラス構造の連続。


 スタディモデル。すべて違うものに見えるが、同じ構造のことについて検討したもの。

 会場には実際に使用したプレゼン資料が置いてあるので、2つの違いや同じ所を見比べるのも面白い。

クリスチャン・ケレツさん。
The Rule of the Gameというタイトルについて「最終的にどうなるかは、経済的、構造上の諸事情でRuleが機能していて私が見いだすもの。一方Gameは例えばクライアント、行政が決めていて、私の力が及ばないものという定義です。」
「Ruleというのはプロジェクト毎に違い必ず目的がある。想像力だけでなく"リアル"に力を発揮し機能していくことが大事。それでなければただのschemeで終わってしまう。」
また建築とは何かについて「その定義は沢山あり様々な捉え方ができます。私は美的な好みもなく、表面的なことには興味がありません。一番興味があるのは本当の本質を明らかにしていくことです。」と話した。

クリスチャン・ケレツ展 -The Rule of the Game
会期:2013年7月19日〜9月28日
場所:TOTOギャラリー・間
詳細:http://www.toto.co.jp/gallerma/ex130719/index.htm

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