長崎辰哉/アトリエハレトケによる渋谷区恵比寿の住宅「190(one-ninety)」を、入居から数ヶ月経過した状態で見学させていただいた。
「190」とは断面方向の寸法が全て190の倍数で構成されていることに由来する。建物高さや階高、階段の蹴上、杉板型枠(1/2倍の95mm)なども含めて全て190の倍数とのこと。
敷地面積158m2、建築面積94m2、延べ床面積332m2。RC造、地下1階、地上3階、塔屋1階。
エントランスは2ヶ所あり、左が住居用、右がコミュニケーションスペース用。
エントランスは2ヶ所あり、左が住居用、右がコミュニケーションスペース用。
接道からガレージを介したコミュニケーションスペースのエントランスへ。
ガレージから見上げると自分だけの空が覗く吹き抜け。
ルーバーは強靭なH鋼のキャンティレバーの構造で支持されている。
コミュニケーションスペース。ワインのエキスパートである施主は、試飲会やワイン講習会、料理教室、パーティなど、この空間を様々な用途に活用することを想定している。
北側には中庭を設けた。
造園は藤倉陽一(藤倉造園)が手がけ、「都心に居ながら季節感を感じる野趣溢れる森」をテーマに日陰に強い植物が選ばれている。ベンチも設えてあり、取材の後ワインをいただいた。
キッチンカウンターには、特注のステンレス製化粧パネルがはめ込まれる。後方のモザイクタイルは施主がイタリアで買い求めたもので、インテリアのデザインキーワードとなっている。
地下にはワインセラーというよりストックヤード。エアコンではなく、輻射パネルで室温を一定に保っている。施主は自らフランスやイタリアの産地を訪れ、畑、土、醸造所を確認し、作り手と話し、試飲し、気に入ったワインを日本で紹介するという。
2階へ。(屋上含め)5層を貫く階段室はコーナーに設えた照明により淡い光に包まれる。
2階には寝室のほか、ウォークインクローゼット、水周り、書斎、ジムがある。
寝室のバルコニーは冒頭で紹介した吹き抜けに面している。手摺りの唐草は1階コミュニケーションスペースのモザイクタイルから引用されデザインしたオリジナルだ。
寝室の背後から水周りへ。
浴室は中庭に面し、タイル張りのインフィニティバスが納まる。
3階トイレはKOHLERで統一。
LDK。キャビネットにはテレビが納まるが、ほとんど使用しないとのことでまだソファーが置かれていない。ブルーの部分のパントリーや、砂浜の色のタイルでビーチリゾートの雰囲気に。
キッチン。1階のキッチン共にリネアタラーラによる施工。水栓はKWC、オーブンとIHクッカーはガゲナウ、ガスコンロはハーマン、レンジフードはアリアフィーネ、食洗機はミーレ、ペンダントライトはバカラという仕様。
アーバンリゾート。食事はカウンターキッチンと、気候が良いときは専らこちらのバルコニーで摂るという。
長崎さんこだわりのルーバーの組み上げでH鋼フレームが透けて見ない。またガレージ側のルーバーは通りに面しているので、フレームが内側に見えたが、こちら中庭側はフレームを外にした。
屋上も積極的に利用。水場やオーニング、自動潅水付きのオーガニック菜園も。
「全体的にクライアントと縁の深い南仏エクス・アン・プロヴァンスを意識しつつ、クライアントの好みやこだわりを色濃く反映させながら、建築としてこの場所で、何をどのように表現すべきか、深く考えたプロジェクトです。」
「温熱環境制御をはじめ、住んで、使って、良さの分かる建築的工夫を随所に織り込みました。『楽しく充実した住まいづくりだった。ひと冬ひと夏を経て、とても心地良く、快適な住まいであることを実感している』との言葉を頂き、嬉しく思いました。」
「住宅という場所で、建築が、理念として、空間として、モノとして、どのような価値を生み出して行くべきか、これからも実践を重ねながら思考を深めていきたいと思います。」と長崎辰哉さん。
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