中川エリカ(中川エリカ建築設計事務所)による神奈川県熱海市の住宅「桃山ハウス」を見学してきました。
オンデザインから独立後、中川さんの建築デビュー作になる。
オンデザインから独立後、中川さんの建築デビュー作になる。
山の斜面を縫うヘアピンカーブに接する敷地。その敷地ままにカーブした既存塀を気に入って選んだ施主。形状からインスパイアされた曲線を描く屋根が特徴だ。
アプローチ側へ。外壁や門柱、門扉は既存のまま、一部修復して利用するそうだ。
大屋根を支える14本のRC造の柱は、350□の角柱と400φの円柱がある。角柱の型枠にはざらついたラワンに筋を入れ、小板の縦張りを模してあえて粗い表情を出した。
それは既存の門柱や、周辺環境から抽出したエレメントであり、熱海に古くからある建物や擁壁など各所に見られる表情で、引用することにより新築でありながら場に馴染んだ建築を実現した。
右手には駐車場。キノコのような屋根が愛らしい。
左手は南に面した庭へ。モルタルや飛び石などでアプローチは仕上げられる予定で、来客はこちらへ行ってもうらうそうだ。
玄関を入るといきなり洗濯機があり、なるほどこちらはプライベート色の強い入口だ。
右に浴室、奥が寝室、左がLDK。
ガラスブロックとタイルに囲まれた浴室。浴槽の隅には切り欠きがあり、温泉掛け流しであることが分かる熱海らしい浴槽。
寝室。60代ご夫婦の住まいで、寝室はひとつ。当面は週末住宅として利用し、リタイア後はこちらに移住することも計画している。
間仕切りにはカーテンが付くそうだ。輻射パネル式の暖房が見える。
上部の換気はここから。換気扇は付けたくない、網戸を付ける、隣家からの目隠しなど様々な要件を検討しこの形になった。
LDKへ。天高4,350mm。通常こういった傾斜敷地では2階レベルを上げ眺望を確保するところだが、ここは海に面した熱海とは言え、海岸までは直線で600m程はあるため「開放的で空が見え、風が室内を吹き抜ける」ことを主眼においた平屋とした。
振り返ると分かるのだが、山側は塀に囲まれ、谷側は高さのある擁壁で周囲からの視線が遮られる。360度全周ガラス張りの開放が可能なのだ。
西側は隣家のため、要所要所に壁を設けプライバシーを確保している。
暖房には右奥のグレーのもの、右手のベージュの輻射式パネルが賄う。また設備は出来るだけ屋外に出ないように床下80cmを中空にし、設備ピットとしている。
キッチン。照明は2D材に防錆材をどぶ漬けしたステーにLEDを取付け、壁に刺しただけ、といった感じのワイルドなもの。
曲面型のパントリーは外部にもその形状が現れている。
キッチンから。シャンデリアは施主が選んだロス・ラブグローブによるデザインのもの。
正面に見える植栽は既存で、ちょうどその向こうに熱海には似つかわしくないタワーマンションが建っているため残した。
四畳半と周囲に土間を模したモルタル。右側の壁がRCなのは、万一、山側からの土砂崩れで建物が潰れないようにしたもので、熱海など傾斜地特有のご当地条例によるものだ。
離れの前から母屋を見る。屋根を支える柱は基礎と剛接合、屋根とはピン接合。
前庭へ。ダイニング・キッチンからテラコッタタイルが円形に連続し、テラスを形作っている。
視線が一番抜ける3方向にだけ円柱を立て、方向性が出ないようにした。また一番奥の柱は構造ではなく、庭に密度を与えるために立てたという。
中川エリカさん。「一見ランダムな柱群は1,820ピッチのライン状にレイアウトされています。その上に軽やかな屋根を乗せ、そこから平面のレイアウトをお施主さんと一緒に模型を見ながら検討していきました。都内のマンションにお住まいのお施主さんですが、ここに来ると都内では味わえない開放感とたっぷりの日差し、抜ける風を十二分に感じて頂けるよう計画しました。」
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