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手塚建築研究所による 「勝林寺本堂・納骨堂」

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手塚貴晴+手塚由比/手塚建築研究所による豊島区の 「勝林寺本堂」を見学してきました。山手線巣鴨駅・駒込駅から15分ほどの場所。

 敷地面積3,034m2、建築面積206m2、延床面積303m2。木造+一部 RC造、地上1階、地下1階。
勝林寺は400年前臨済宗の寺院として創建。戦中での空襲によって焼失しその後再建されたが、60年以上を経て本堂の建て替えと地下に納骨堂を設けた。
住職は南三陸のあさひ幼稚園を目にし依頼したという。

 両腕を伸ばしたような大きな庇が二段、手塚建築で寺を設計するとこうであって欲しい、と納得する美しい佇まい。



 寺社建築によく見られる組物はなく、太い二連の梁が交差しながら軒を支えている。
また屋根はごく緩い勾配の宝形造なため平屋根に見える。

 近づくと目の細かい横格子の簾戸。一枚開いているが出入り口以外全周に蔀戸(しとみど)が設えてある。
左奥の開き戸から堂内へ。スロープは地下に延び、納骨堂へ通じる。

 堂内に入ると四面全て簾戸越しの繊細な光が差し込んでいた。堂内は10m×10mの無柱空間。


 照明を点け見上げるとダイナミックな架構が姿を現した。


 135×240の梁を二連で交差するように渡し、束柱を支持。もう一段上の二連の交差梁を支えている。柱梁は集成材だが仕口加工され、渋墨(柿渋、松墨、日本酒の混合)、床には柿渋を塗布する伝統的な工法と塗料を用いお寺としての風格を醸し出している。


冷暖房は床暖房と、床吹き出しの冷房を備える。
住職はここを地域に開かれた集いの場であり祈りの場であり、交流の場になってもらいたいと望んでいる。実際寺子屋として、座禅、ヨガ、茶道、書道、仏像彫刻などを開催し、そしてグリーフケア、障がいをもつ子どもと家族が集うコミュニティとしても開いていくそうだ。


 奥は既存の須弥壇(しゅみだん)。仏具にも流行があり、時代とともに装飾的になってきたそうだ。そこで今回原点回帰ともいえる平安時代頃のシンプルな須弥壇のデザインも依頼された。手前はその模型だが、実に建築的なデザインで現在制作中とのこと。


 なお本尊は平安初期、約1200年前の釈迦如来像で豊島区の重要文化財に指定されている。現在修復に出されており、お堂には仮の本尊が鎮座している。
(photo: 勝林寺)

 蔀戸の金物はオリジナルで製作した。簾戸にはアクリル板が挟み込んである。


 次に外へ出て、スロープを下り納骨堂へ。


 下りきると重厚な鉄の扉が現れた。


 豪雨などで万一にも納骨堂内が浸水しないように念を入れた防水扉だ。


 納骨堂。冥界との境、小宇宙のような別世界が出迎えた。


 歩みを進めると床にぽっかりと空いた孔。ここには合葬壺が置かれ、継承者がいなくなったお骨を合葬し永代供養される。


 納骨棚は全616区画。細工された仕切り板がはめ込まれる。


 仕切り板は金色に見えたが照明によるもので、実際はステンレス。細かな伝統柄をレーザーカットするために材や厚みを検討したそうだ。


 納骨棚。奥行き違いで3種類ある。仕切り板は8種類あり、同じ柄が隣り合わないように配列されている。


 数カ所ハイサイドライトがバウンドしながら淡く差し込む。



全体模型。今回完成したのが右の本堂で、山門や左の庫裏(くり)が今後建設される。庫裏には事務所や、広間、客間、住職の住居などが計画され、2017年12月の竣工を目指す。
「創建から400年、今後も400年在り続けるお堂とはどうあるべきか、普段手掛ける住宅とは比べものにならない経年を想定して計画し、かつ地域に開かれるお寺として、迎え入れ、包み込むような大らかさを持った新しいお寺のかたちを目指しました。」と手塚建築研究所。

【勝林寺本堂・納骨堂】
設計:手塚建築研究所/手塚貴晴+手塚由比
   杉中俊介、斧田裕大、島田真弓、辺見祐希、南烔旭
構造:TIS & PARTNERS
照明:ぼんぼり光環境計画
施工:前川建設
CD:アソボット
AD:ネンデザイン

勝林寺www.mannen-syourinji.com

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