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「スミルハン・ラディック展」レポート/TOTOギャラリー・間

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7月8日よりTOTOギャラリー・間で始まる「スミルハン・ラディック展 - BESTIARY:寓話集」のプレス内覧会に行ってきました。
Exhibition [Smiljan Radić: BESTIARY]

 スミルハン・ラディックは、チリのサンティアゴを拠点に独創的な活動を続ける建築家。2010年にはTOTOギャラリー・間の25周年展覧会〈GLOBAL ENDS〉の7組の建築家のひとりとして出展している。同じ年、妹島和世が総合ディレクターを務めたベネチア・ビエンナーレ国際建築展にはインスタレーション〈魚に隠れた少年〉を出展、2014年にはサーペンタインギャラリー・パヴィリオン〈わがままな大男の家〉などで注目を集める。


 「寓話の中でよく描けた挿画には、描き手の脳裏をかすめた確信らしきものが必ず現れ、周囲に啓蒙的な影響を与える。描くことで人を啓蒙し、まったくの無の状態から虚構を構築する。」
「本展は私の作品に現れたこうした確信の瞬間の寄せ集めである。」

 展示模型のなかには、ラディックさんが気に入った物語(グリム童話など)の挿画からインスピレーションを得て形にしたものがある。これらには建築的な根拠も、背景も、用途もない。しかしこれらの中から偶然の巡り合わせで実作に結びつく原型となることがある。
3階展示室中央にはそのような空想の世界ともいえる模型が中心に並ぶ。

 4階展示室は、3階の模型などから着想を得て竣工したプロジェクトや、建設中のプロジェクトが並ぶ。



一部展示作品を紹介
 〈ルッソ・パーク・プロジェクト〉2014~、サンティアゴ
広大な公園のランドスケープデザインと、園内に造られるイベントホールの計画。壁面展示はイベントホールの屋根(斜線部)を支える柱梁の模型。
[russo park project]

 カメラを90度回転させ撮影するとこのように見える。
梁はRCで、不規則な形状からランドスケープと一体となるような空間を生み出している。ラディックさんのチリで刻まれた記憶の中から得られた揺らめきのようなもの。

 本展の「寓話集」とはこのように説明してくれた。
例えばスライドに映る “グリフォン”。上半身が鷲、下半身がライオンでできたヨーロッパの伝説上の生物、、、

 〈ランプの塔〉 2015
そのグリフォンからインスパイアされたのがこの模型。水銀ランプ、ヴァイオリンとその弓や、何かの古道具でできているが、スミルハンの世界観を描写したもので、これがどんな建築になるかなどという想定は全くない。しかしこの模型はいつか何かの切っ掛けで出現するチャンスを伺っている。
[tower light bulbs]

 〈NAVE - パフォーミング・アーツ・ホール〉 2015、サンティアゴ
築100年ほどの集合住宅をコンバージョンするプロジェクト。
ファサードはネオクラシック、中はパフォーマンスホール、屋上にはサーカステントという異なる要素の組合せにより、歴史的、空間的意味が生まれる。
[NAVE, performing arts hall]

 〈ありふれたサーカステント〉
NAVEの屋上には実際のサーカステントを買って設置したそう。会場の中庭には元の “サーカス小屋” の写真が大伸ばしされ展示されている。
[ordinary circus tent]

 〈卵に隠れた少年〉 2011
デイヴィッド・ホックニーが描いたグリム童話の挿絵からイメージ。
[the boy hidden in an egg]

〈魚に隠れた少年〉 2010、イタリア
ベネチア・ビエンナーレ国際建築展に出展。こちらも同様のイメージから。
[the boy hidden in an fish]

 〈家での死〉(左)、〈わがままな大男の城〉(右)
〈わがままな大男の城〉も用途の想定もなく、構造の根拠もない単なるイメージモデルだったが、、、
[death of house], [the selfish giant’s castle]

 偶然が切っ掛けで〈サーペンタインギャラリー・パヴィリオン2014〉のデザインへと結びついた。
背後に吊り下げられるのは、後日制作されたイメージの変遷を表現したスタディ模型。
[serpentine gallery pavilion 2014]


〈家での死〉 2015
[death of house]

 〈フラジャイル〉 2010 
2010年の25周年展覧会〈GLOBAL ENDS〉に出展されたこの作品は、、、
[fragile]

〈サンティアゴ アンテナタワー 計画案〉 2014
電波塔のコンペ獲得に繋がった。ゴーストのように存在を消した塔。
[santiago antenna tower project]

 “新作” 〈マイ ファーストタワー〉 2016
東京にタワーをデザインしたら、というイメージ。タワーに模したチーズシュレッダーとキューピー人形を並べた瞬間、キューピーが大きいのか、タワーが小さいのかなどと様々に考えることができる。全く異なる要素や素材を組み上げることで新しい思考が始まる。
[my first tower] 

 〈直角の詩に捧ぐ家〉 2012、チリ、ビルチェス
こちらも〈GLOBAL ENDS〉に原型である〈隠れ家〉が出展され、その後竣工している。背後はそのスタディ模型とイメージスケッチ。
〈直角の詩〉とはコルビュジエの版画作品で、本作はそのオマージュだ。
[house for the poem of the right angle]

 〈ビオビオ市民劇場〉 2011~、チリ、コンセプシオン
現在建設中の延べ床10,000m2の劇場プロジェクト。これだけ大きなプロジェクトでありながら事務所総勢5人のスタッフで進めているという。
「5人ではとてもハードワークですが、この位の人数でないと私がコントロールできないのです。」と笑いながら話すラディックさん。
[bio bio regional theatre]

 そして天井から吊り下がる直筆スケッチブックの数々。自由に閲覧できる。



スミルハン・ラディックさん。
「私はあらゆるモノからピースを集め、今までに無い新しいものを作ろうと常に発想しています。実作に結びつかないものも沢山ありますが、今後どのような建築として姿を現すのか私自身分かりません。本展ではここ6~8年位の作品の一部と、作品づくりの手がかりを見てもらえると思います。」

【スミルハン・ラディック展 - BESTIARY:寓話集】
"Smiljan Radić: BESTIARY”
会期:2016年7月8日 ~ 9月10日
会場:TOTOギャラリー・間
詳細:www.toto.co.jp/gallerma/ex160708/index.htm


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