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クリスト&ガンテンバインの建築展「The Last Act of Design – スイス建築の表現手法」レポート

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3月20日より代官山 ヒルサイドテラスにて開催のクリスト&ガンテンバイン「The Last Act of Design – スイス建築の表現手法」内覧会に行ってきました。


クリスト&ガンテンバイン(Christ & Gantenbein)はエマニュエル・クリストとクリストフ・ガンテンバインによって1998年に設立されたスイス・バーゼルを拠点とする新しい世代の建築設計事務所。スイス国立博物館やバーゼル州立美術館などを手掛けたことでも知られ、2018年にDeezen”Archi tect of the Year” 賞を受賞するなど世界からも注目されているスイスを代表する建築設計事務所である。

クリスト&ガンテンバイン、日瑞建築文化協会顧問の古谷誠章氏(もう一人の顧問アトリエ・ワンの貝島桃代氏は欠席)を囲み、本展のオープニングを祝うメンバー

主催は2018年に日本とスイスの建築の文化交流を促進させるためのプラットフォームを構築すべく、スイスとの関わりの深い建築家 有志が6名(石田建太朗/平瀬有人/黒川智之/金野千恵/湯谷紘介/黒川彰)により設立された一般社団法人日瑞建築文化協会。第一弾として企画されたクリスト&ガンテンバイン日本初開催となる本建築展は、東京・京都の2拠点において、 国立西洋美術館、京都工芸繊維大学などでのレクチャーと併せた開催となる。

本展は、2010年から2016年に竣工した7つの建築を、長年展覧会や出版のプロジェクトにおいて協働してきたイタリア人写真家のステファノ・グラツィアーニの目を通して表現される写真をメインに、表現媒体としての立体的なドローイング、そしてアンビルトの9つの模型によって構成されている。
  
写真は大小様々なサイズがあり、その中にはグラツィアーニ氏がクリスト&ガンテンバインの事務所を訪れ、スタディモデルなどプロジェクトのプロセスを自由に撮影したものが含まれている。
面白いのは、それらの模型やマテリアルなどを撮った写真の方が、実際に完成した建物の写真よりも、はるかに大きいサイズで大事そうにフレームに入れて展示されている点。

リンツ・チョコレート・コンピテンシー・センター(建設中)2019年秋に竣工予定。
そして模型写真。
吹き抜けエリア。本展のために再制作されたドローイングと模型が置かれたテーブルがある。
ドローイングは、青と黒をベースに、線、影、色、背景、ヴォイドといった様々なツールで表現されている。

最新の3Dプリント技術によって製作された9つのアンビルトプロジェクト。エマニュエル・クリスト氏は「これらアンビルトは僕たちにとっては同じように重要なもの」と話す。 
シテ・ドュ・ラ・ミュージック(スイス ジュネーブ 2017)

左から写真家のステファノ・グラツィアーニ氏、エマニュエル・クリスト氏、スタッフ、クリストフ・ガンテンバイン氏。
「本展のタイトルThe Last Act of Designは、『設計する行為は建物が建ったら終わりなのか?』という問いからきています。建物が何年も経ったあとも、デザインという行為は写真、ドローイング、模型といった媒体を通して持続し新たな表現で形づくられているという僕たちの考えを伝えたいと思いました」
【The Last Act of Design – スイス建築の表現手法】
東京展会期:2019年3月20日〜3月31日
会場:ヒルサイドテラスF棟 ヒルサイドフォーラム
主催: 一般社団法人 日瑞建築文化協会 + スイス大使館

京都展
会期: 2019年4月4日〜20日
会場: 京都工芸繊維大学 美術工芸資料館
主催: 一般社団法人 日端建築文化協会 + 京都工芸繊維大学 KYOTO Design Lab
+ 京都工芸繊維大学 美術工芸資料館 協力: スイス大使館

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黒川智之による「大岡山の集合住宅」

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黒川智之(黒川智之建築設計事務所)による東京 大田区の「大岡山の集合住宅」を見学。
東急目黒線・大井町線 大岡山駅から3分程の場所。アパートの名称は「Ookayama Apartment」。


建築面積102m2、延床面積397m2。RC造4階建て、14住戸からなる共同住宅。
密集した商業地域で、土地の分筆が進み、間口が狭く奥行きの深いいわゆる鰻の寝床。


反対側は黒川さんの母校東京工業大学のキャンパスに隣接し、銀杏並木や清家清が手掛けた事務局1号館を望むことができる。
今回密集した敷地で行ったのは、住戸ボリュームを南北にずらして配置しつつ、室内の土間と共用廊下を連続させることで、細長い敷地に於いて奥行きの感じられる通り土間をつくり出し、全面道路側の賑わいと奥の東工大側の良好な環境を結ぶことだ。


Aが共用廊下、Bが室内土間、Cが寝室。
B-A-Bの空間が連続することで通り土間を形成し、東西の抜けを作っているのだ。
左(西側)に細い路地状の区有地があり、そこを避難経路として認められたために可能になった計画だ。


エントランス。日影規制による高さ制限の中で、4層のボリュームを確保するため1階は少し掘り下げた。


エントランスホールに積極的に開口した101号室は通りにも面しており、住居というより事務所利用を想定している。




階段は2経路あり、通路を介して北側の階段へ通じる。


上階へあがると通り土間の効果が分かりやすい。パブリックである共用廊下から住戸の土間を透かして表へ視線が抜ける。


そのまま後ろへ下がり、向かい合う住戸のセミパブリックである土間へ。


さらに下がるとプライベートなキッチンや寝室が現れる。
東西に端から端まで連続する通り土間により、自室を超えた開放感が得られる。


プライベート空間へは適度に光や風が取り込まれる。土間では手前の板の間とは異なる使い方も出来るだろう。
このひと住戸のみ3・4階のメゾネットだが、、


一部分が別な用途地域の斜線規制に掛かるためだ。


各住戸とも浴室はユニットバスではなく、FRP防水にホーローの浴槽と贅沢な仕様。




北側の東西の抜け。
階段は屋上へ上がるためのもので、塔屋が吹き抜けとなり気積が大きくなっている。


屋上は4階住戸の専用バルコニーが付く。界壁代わりのベンチなども設えてあり、使い道は十分にある屋上だ。
右奥の遠景に見える建物も黒川さんが2015年に手掛けたアパート「北千束の集合住宅」だが、クライアントも異なる全く偶然の立地だそうだ。手前に林立する塔屋と雰囲気が似ているのが面白い。

【大岡山の集合住宅】
設計監理:黒川智之建築設計事務所
構造設計:ロウファットストラクチュア
施工:林田建設 


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小堀哲夫による梅光学院大学新校舎「The Learning Station CROSSLIGHT」

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小堀哲夫(小堀哲夫建築設計事務所)による下関市の梅光学院大学新校舎「The Learning Station CROSSLIGHT」を見学。下関の主要道路である県道248号線沿いで、下関駅から車で10分程の場所。
今までにない革新的な教育環境を整備すべく2017年のコンペにより採用された。地方都市共通の問題である人口減少が進む下関において、街の新たな中心となるような試みが盛り込まれている。


外観は伝統的なキリスト教系大学の佇まいにこだわらず、「学校」のイメージを払拭することで地域に開かれた新しい大学のシンボルとなるようなデザインとした。


近付いてみると雁行したボリュームと庇が顕著な特徴として明確になる。
県道と運動公園に挟まれた敷地は細長いため、建物はどうしても細長くなる。そこに真っ直ぐの建物を建て、真っ直ぐの動線を通すのは効率は良いが、人同士の交わりは生まれない。そこで建物のボリュームを4つ、45度振り、それらが複雑に絡まることで動線が交わる「交流のグリッド」を構成した。


その45度に振ったボリュームが外観にも現れることで、街に対する表面積が増え、四方八方から校舎にアクセスできるのだ。
敷地境界のフェンスを排し、地域の人が歩道から直接エントリー出来るようアプローチが複数延びているが見える。
ランドケープを担当したのは、古家俊介が代表を務める福岡の デザインネットワーク/DNA


アプローチはテラスに接続し、地域のひとも自由に利用できる。


階段を上がると日曜にはミサが行われるスタジオに入ることもできる。


振り返ると街に大きくせり出したバルコニーになっており、もちろん誰もが自由にくつろぐことができる。
このインテリアが外に飛び出したようなようなデザインで、通常伺い知れない、校舎内で学生が何をしているのかが街に示されることになる。


メインエントランスは東側。45度に振られたボリュームが大きな庇を生みだし人々を向かえ入れるようだ。庇は端部で12mほどせり出している。


学内側のエントランス。右手の校舎は耐震不足によりこの後解体され、公園のような広場が整備される。さらに右手に広がる市営運動公園とも親和性を高め、市に掛け合い運動公園と一体となるようなキャンパスを目指していきたいそうだ。


その際にも接触面積の多い校舎のデザインが活きてくることだろう。


メインエントランスへ。およそ大学校舎の入口には見えないだろうが、それが狙いなのだ。


エントランスから左はカフェレストラン、右はラーニングエリアへ。


校舎内には殆ど仕切りがない。様々な性格・広さのスペースが26作られ、それぞれA、B、C・・・となっているが、Aは「Amen」、Bは「Bread of Life」、Cは「Christ」などとキリスト教に関係するネーミングがされている。


カフェレストランはもちろん一般のひとも利用できる。というより一般の人を呼び込むためにつくられた。夜9時まで営業し、酒類の提供もあるが運営は生協が担当する。書棚には本も並び自由に閲覧できる。
周辺にはほとんど飲食店がないため、近隣の人にとって嬉しい施設だ。


ラーニングエリアへ。今回の新しい取り組みは、ここまでに紹介したエリアはもちろん、ラーニングエリアへも一般の人が自由に入ることができ、講義を聴いたり、様々なスペースで過ごすことができるという非常に公共性の高い校舎にすることだ。


1階は左に前述のカフェレストラン、中央から右が教職員用のフリーアドレスオフィス
2階はスタジオと呼ばれる50〜100人ほどを収容する教室が4つと、後述するアクティブスポットが複数ある。
3階はより細分化されたアクティブスポットが多数レイアウトされている。


要所要所にトップライトを持つ3層の吹き抜けが5ヶ所。横からは軒の深い開口から柔らかな自然光を取り込む。


さらに進むと、既存の大学の概念にはないスペースが連続していく。教職員のフリーアドレスオフィスだが、"教員も"というところがポイントで、個室の研究室を排したので、教員は授業の無いときはこのフリースペースにいる。
在学生はもちろん、近隣の高校生なども教員を捕まえていつでもコミュニケーションを図ることが出来るためだ。
床にはスペースを示すサインが見える。


フリースペースに散りばめられたシェルフは教員一人一人に割り当てられており、その教員がどような本を読み、何に興味があり、どのようなことを研究しているかが分かるようにするもの。研究室のなくなった教員は、ここに厳選した書籍や私物を並べ、自身をプレゼンテーションするのだ。そしてここを訪れた高校生やその父兄は「この先生に教わってみたい。」といった切っ掛けになることを目的としている。
一番手前は樋口紀子学長のシェルフ。
引き出しには鍵が掛かり、例えばパソコンなどの高価なものを収納できる。


このスペースではカフェキッチン付き。教職員のフリーアドレスデスクのひとつ。


こちらは若干囲われたスペース。
職員もフリーアドレスだが、同じ部署同士で固まってはいけないルールがあるそうだ。
なお成績表などの資料を扱う場合や、プライバシーに関わる話ができるような個室もある。


窓際に面したスペース。


そこかしこに人が行き交い、出会いやコミュニケーションが生まれる場の数々。


誰でも利用できるとはいえ、「一般利用者は一応登録をしてIDカード発行して行く必要があるかもしれない。運用しながら改善していけばいい。」と小堀さん。
手前のサークルはワンストップサービスのカウンター。


2階へ上がる大階段。スツールが置かれているということは、、、


見返すとプロジェクターが備わり、アクティブスポットになっている。奥にもアクティブスポットが連続している。
アクティブスポットとは用途に縛られない交流の場。授業はもちろんディスカッション、サークルのミーティング、自習といった多様な活動に利用される。
45度と90度の面が複雑に交わり、1階から3階までが垂直方向に絡まるカットだ。


これらアクティブスポットも、一般に開放される。


アクティブスポットはほぼ全てが連続しており、廊下と呼べる移動経路や、空間を仕切るドアがない。
動線はこのようにアクティブスポットを縦横に縫っていくのだ。


ドア付きの空間で仕切られたスタジオ(教室)は大小4つ。こちらは一番大きなスペースだが、ガラス張りで、上には3階の外部バルコニーから貫通して入ってきた見学ブリッジがあるセミオープンな空間。
そして椅子。毎日異なる椅子に座って学ぶことが出来るというコンセプトで、365種類の椅子がある。


一見普通のスタジオのようだが、開口の外はバルコニーで外部動線に大きく開いている。また吹き抜け越しに向こうのアクティブスポットが覗く。


バルコニー側から見るとこのように。バルコニーは外周を1周はしていなく、「8の字」を描くように、外と内を巡るように計画されている。


アクティブスポットにはプロジェクターを用いたインタラクティブホワイトボード(電子黒板)が備わる。


2人だけのスペースも。日中は殆ど照明を点けず、上部と外周から入る自然光を頼りにする。


水平・垂直に絡まり合う空間は、思いがけないところから思いも寄らないスペースが見えたりする。


広いところばかりでなく、このようなスペースも。


3階はさらに細かなアクティブスポットが縦横にレイアウトされている。


幾つものアクティブスポットが見え隠れしながら連続し、場所場所で様々なディスカッションが行われることになる。
真っ直ぐに比べ、ジグザグの移動には倍の距離が必要であるが出会いの場は数倍になるのがよく分かる。


なぜこのような校舎のデザインなのか。これからの大学の講義は、講義室で先生から学生への一方通行で聞くだけの座学でなく、アクティブラーニングが圧倒的に主流になるという。


アクティブラーニングの具体的な手法はこうだ。学生はサーバーから教材をタブレットへダウンロードし、事前に家や学校のスペースで予習を行う。
そして授業のとき、様々なアクティブスポットに設置されたプロジェクターを用いて、教員や他の学生の前で発表しディスカッションするのだ。
学生はタブレットからクロームキャストを利用して、一度サーバーを介してプロジェクターに投影する。

そのために壁の至るところがホワイトボードやアクティブホワイトボードになっており、同じスポットでも複数のプロジェクターがありグループワークを行うことができる。
それら授業の様子を近隣の高校生や一般の人は自由に見学できるし、空いているスポットで寛いだり自習をすることができる。


スポットの広さは親密な距離感、ソーシャルスペースを意識したという。半径3.6mまでの空間が人と話しやすい、話題を共有しやすいメンバーシップが生まれることが研究で分かっているそうだ。
アクティブラーニング自体は珍しくないが、広いフルオープンの空間で幾つもの授業をするケースがほとんど。ここではジグザクにすることで角が沢山でき、小さなセミオープン空間を作ることが出来ている。

デザイナーチェアを揃えやオリジナルの家具制作はインターオフィスが担当した。
床にあるのは「リンゴ箱」と呼び、机やスツール、収納にもなる汎用性の高い家具も作った。


ときには籠もった場所で過ごしたいこともあるだろう。


ときには他の授業のディスカッションを上から眺めてみたいこともあるだろう。

小堀哲夫さん。座っているのは今回オリジナルで一脚のみ制作した45度の角度で座る椅子で、学校へのプレゼント。コンクリートと木の塊でできているので非常に重く、唯一容易に動かすことはできない椅子だ。
「ここは建築から、スペースから新しい使い方を想起して欲しい『ダイナミックモデル』と呼んでいます。教育と空間は互いに影響し合うものです。場があるからこういう授業をしよう、こういう教え方をしよう、逆にこういう授業をしたいからこういう場が欲しいと、使われながら進化していく建築になっていって欲しいと思います。」

梅光学院大学【The Learning Station CROSSLIGHT】
建築設計:小堀哲夫建築設計事務所
構造・設備設計:Arup
ランドスケープ:DNA
サイン:Arata Takemoto Design
家具:インターオフィス
施工:清水建設


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納谷建築設計による「武蔵野リノベーションプロジェクト」

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納谷学+納谷新(納谷建築設計事務所)による東京 三鷹市の「武蔵野リノベーションプロジェクト」を見学。企業が所有していた社宅を、分譲マンションとして1棟丸ごとリノベーションしたプロジェクトで、事業主はリビタ。建物名は「renoa musashino」。
三鷹駅から徒歩15分程の場所。


敷地面積1,670m2、延床面積826m2。18住戸からなる集合住宅。
1階接道面にエントランスホールを兼ねたコミュニティスペースを増築したのが最大の特徴で、住人と地域の人が交流できるような場をつくった。

既存では正面に住戸ごとの倉庫があり、この時代の集合住宅に定番のツツジが植わっていた。
(Googleストリートビューより)


階段の丸い意匠を利用して新設した塀に腰掛けを造り付け、街との接触部分とした。


既存ではエントランスだった部分は駐輪場とした。RCのままでは圧迫感があるため境界が曖昧になるようミラー仕上げのステンレス板を張り込んだ。


中は駐輪場の他、右手にトイレやゴミ置き場、機械室を設けた。自転車置き場は正面の反対側にも設けた。


ではエントランスはというと、このコミュニティスペースそのもがエントランスホールとなるのだ。オートロックの自動ドア横には郵便受けや、宅配ボックスも見える。


住人はホールを抜けて、もう一度オートロックのドアを通って居住エリアに進む。
このスペースは「manabino」と名付けられ、漢字をあてるなら「学び野」となり、武蔵や屋上の芝生からイメージされた原などからくるネーミングだ。住人たちはもちろん、地域の人が使える様々な「学びの場」にしていくことを目指す。


棚には本が並び、近所の子どもや親がたちが集まり、イベントなども開催しながら世代を超えたコミュニティを醸成し、通りを活性化しよういう試み。(開放されているときは表側のオートロックは掛からない)
デザインプロデューサー萩原修が代表を務める株式会社シュウヘンカが、リビタに委託されて運営していくという。


構造用のラーチ合板で作られたオリジナルのテーブル。カーブしたものを2台繋げた状態だが、1台だとちょうどホール両側のカーブしたベンチにフィットする。


ホールを抜けたところ。


ホール増築のために植栽を撤去したので、屋根に芝を張り、街に緑を再還元した。色の違う箇所はアゼターフという地方の提携した里山のあぜ道を切り取ってきた自然植生マットで、複数の草花が伸びてくる。manabinoとして、こういった普段とは違う植生をこどもたちに知ってもらうことができる。


階数表示。エレベーターからの距離をfeetやm、尺、間など様々な単位を使ってビジュアル的に表現し、単位の違いがあることを学ぶことができる。


202号室の1住戸のみ、納谷建築設計で内装デザインも手掛け販売される。
床面積は83m2、3LDK。


玄関を入って右に子ども室を想定した部屋。小上がりを造り付け、ベッド、収納、椅子にもなる。表面はコルクシート張り。


廊下の向かい側は主寝室を想定。同様に小上がりが作り付けられている。モデルルームとして公開されているので家具が設えてある。


LDK。キッチンの位置はそのままで、軽やかなデザインに仕上げた。
この住戸を見て気に入れば、他の住戸も注文すれば同様の内装にすることができるそうだ。


キッチンの反対側は水回り。


リビングと、、、


隣の個室にも造り付け家具が連続している。1階のホールに採用されたカーブをこちらに踏襲したデザインで、住戸の外周をぐるりと囲むようなイメージで。包まれるような一体感をもたらしている。
椅子や収納家具を減らし、高低差が自由な使い方を生みだす装置となっているのだ。


納谷新さんと、担当の島田明生子さん。
「プロジェクトの当初からデザイナーなどソフトを担当する方たちに入ってもらいました。その中でやはり顔となるエントランスを思い切ったものに提案し、人が集まることで活力を生み出そうという方向が見えてくると、プロジェクトは一気に進行し、ハードとソフトが調和した新しいリノベーションの形ができたのではないかと思います。」


【武蔵野リノベーションプロジェクト】
建築設計:納谷学+納谷新+島田明生子/納谷建築設計事務所
企画・プロデュース:リビタ
統括設計:ベイス
構造設計:アトラス設計
設備設計:環境プランナー
サイン・コピー・コンセプトメイク:POOL、電通デジタル
施工:デザインアーク


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間宮晨一千による東京・中央区のカフェ「イルマン堂」

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間宮晨一千(間宮晨一千デザインスタジオ)による東京・中央区のカフェ「イルマン堂」を訪問。
東京メトロ日比谷線小伝馬町駅から直ぐ、国道6号線に面した場所。


鈍く光る真っ黒なファサード。小さな入り口と、壁に空いたいくつかの丸い穴が気になる。


既存の「イルマン堂」は2、3階が住居、1階が店舗の昔ながらのカメラ屋で、建物ごと売りに出されていた物件を現オーナーが入手し、カフェへコンバージョンするために間宮さんに設計を依頼した。
元オーナーと現オーナーは面識はなかったが、間宮さんの提案で、地元に親しまれ続けた「イルマン堂」の名前をそのまま踏襲した。(photo:Googleストリートビュー)


延床面積80m2、地下RC造、地上3階木造。
築60年ほど経過しており、ファサード面を中心に外壁を耐震補強したため思い切って開口をなくした。
黒に映える銅製の縦樋は、通し方や位置も踏襲した。


気になる丸い穴は、カメラのレンズをモチーフとした開口のようだ。


店内へ入ると光を抑えた空間が出迎える。間口に対して奥行きは浅く、厨房、通路、2人掛けの席が二つという構成。


メニューはコーヒーやお茶のほか、トーストや手作りプリン、スコーンなど。厨房は地下にもあり調理が必要なものはそちらで行う。
内装の仕上げはグレーのモールテックス。


客席は2階にもあるようだ。


2階は4人掛けが4席。こちらもささやかな照明でほの暗く、国道の喧噪をシャットアウトし、落ち着いて過ごすことが出来る空間だ。


穏やかなBGMが流れ、ヴォールト天井で異空間に優しく包まれるような感覚になる。


照明を抑え、設計者の意図に近い状態で撮影したが、各席にはペンダントライトの明るさを変えられる調光スイッチが備えてあり、客が好みの明るさにできる。


そして「レンズ」を覗くとこのように。景色を見るためというより、正にカメラのレンズを覗くような仕草が必要になる。
手前にあるのはレンズの蓋。


驚いたのが本当にレンズになっていることだ。ピンホールカメラと同じ原理で、外の景色を向かいの壁に見事に映し出している。
照明を暗めにすると良く見えてくる。


一転、トイレは白く明るい雰囲気に。ほの暗い客席からインパクトのある演出。


3階は座敷席。既存の梁が現しで、天井も低く茶室のようだ。日常的に客席として使うかは未定で、用途は検討中だそうだ。


間宮晨一千さん。「お施主さんは既存の構造を活かしながら、かなり "尖った店"の設計を望まれました。そこで既存のカメラ屋さんと言う文脈を活かし、店全体がピンホールカメラのようなデザインを提案しました。そしてイルマン堂という店名も受け継ぐことで、かつてこの地にカメラ屋さんがあったという文化や歴史、記憶の継承もできるのではないかと考えました。」

【イルマン堂】
設計監理:間宮晨一千デザインスタジオ
イルマン堂:東京都中央区日本橋小伝馬町11-9(11:00〜19:00、月曜定休)
      www.instagram.com/irumando


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シーラカンスK&Hによる東京の「北区立田端中学校」

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工藤和美+堀場弘/シーラカンスK&Hによる東京の「北区立田端中学校」を見学。
2008年、田端中学校と新町中学校が統合され田端中学校となるも、校舎の老朽化により新校舎建設の必要性があった。その後近隣の小学校の統廃合によって空いた旧滝野川第七小学校の跡地を利用して、新しい田端中学校を造る計画としてスタート。そして2015年、新しい田端中学校設計のプロポーザルによってシーラカンスK&Hが選ばれた。
プロポーザルでは地域防災拠点としてのプログラムも組み込みながら、校舎やグラウンドの配置、ボリュームや工法なども提案した。
(※許可を得て外観のみ掲載)


敷地面積7,222m2、建築面積2,312m2、延床面積8,256m2。
校舎棟:PCa・PC造+一部S造・RC造 8階建。
体育館棟:RC造+一部S造・SRC造 2階建。
付属棟:RC造1階建。
生徒数は300人足らずとは言え、元々広くはない小学校の跡地に中学校をつくるのは容易ではなく、できるだけグラウンドを広く、体育館も小学校以上の広さが必要で、そのためには8階建ての校舎、かつプールは8階にあるという公立の中学校では殆ど前例のない建物となった。
手前が校舎棟、奥が体育館棟と呼ばれる。付属棟はグラウンド側の体育倉庫や防災用倉庫のこと。

工事の際、近隣への騒音削減と工期の短さも求められ、躯体はPCa・PCを用いた工法が選ばれた。(PCa・PC=プレキャスト・プレストレストコンクリート。通常の鉄筋コンクリートより強度や耐久性、精度が高い)。
ただし、この工法では巨大なコンクリート塊が搬入されるため、現場へトラックが入れるか、荷下ろし場所や方法、クレーンの配置などを計画し、それによって部材の大きさも変わるため、部材の構造計算、金具の設計など全て事前に把握する必要があるそうだ。

高精度のプレキャスコンクリートが太陽光を鈍く反射させる。
校舎棟の1階に家庭科室、保健室、調理室。2階は昇降口、図書室、職員室、事務室。3階〜5階は普通教室。6階は音楽室、理科室など。7階は美術室、技術室、和室など。8階(屋上)はプール。


体育館棟は現場打ちのRC造。1階はランチルーム、武道場など。2階は体育館。屋上には広場。周囲は木が沢山植わる公開空地として開放される。
体育館内は、軒桁まである掃き出し窓から自然光がルーバー越しに差し込む。

体育館棟はロッジアによって内外の中間領域を設けている。避難所としてもこういった空間は重要になるだろう。

西に面したファサード。変形敷地のため校舎棟と体育館棟が割れるように建っており、その間に各所へのメイン動線を配した。
校舎棟は柱梁が外に現れ、室内はすっきりした空間となり、梁は庇にもなる。

大階段からは生徒や教職員の昇降口へ、その下ピロティーからは、地域にも開くパブリックスペースとしてグラウンドや武道場へ通じる。

大階段をあがって昇降口。校舎内は体育館を除き、中学校では珍しい下足のままという運用。玄関土間や下足入れを廃しスペースを確保するためだ。

「住宅密集地において、隣接するお寺と共に貴重なオープンスペースをもちながら、地域の昔ながらの雰囲気を残す場所です。接道面の敷地を開放し、街角の森として当時の面影を少しでも再現しました。8階建ての高層校舎にはX型の緩やかな階段を配し、階段が単なる移動経路ではなく、留まり立ち話ができる生徒同士の出会いや交流のきっかけとなることを意図しました。外観はプレキャスト・プレストレストコンクリートの構造体がそのまま現れ、この高品質な躯体そのものが地域の新しいシンボルとなることを願っています。」と堀場弘さん。

【北区立田端中学校】
設計監理:シーラカンスK&H
構造設計:KAP
施工:越野・川田・髙山異業種特定建設共同企業体


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「中山英之展 , and then」レポート/TOTOギャラリー・間

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5月23日からTOTOギャラリー・間で開催の「中山英之展 , and then」のプレス内覧会へ。
まずは本展の概要を確認していただきたい。

展覧会概要:
「この展覧会は、いくつかの映像からなります。
過去に建ち、僕たち設計者の知らない時間を過ごしてきた建物たちを映したものが主です。だからこれは、建築の展覧会というよりも建築のそれから/, and thenを眺める上映会、と言ったほうが正しいかもしれません。
『それから』の時間に建築家は関わることができないように、それぞれの映像も別人によって撮られ、編集されたものです。だからこれは、ばらばらなイメージの並んだ小さな映画祭のような展覧会、と言うこともできるかもしれません。
もちろん映っている建築についてなら僕たちも、カーテンの開閉機構の仕組みから影響を受けた映画監督の言葉まで、全てを知っています。ギャラリーがこの期間だけ小さな映画館になるのなら、それらが展示されたロビーも忘れずに用意したいと思います。
もうひとつ。
映像には始まりと終わりがあるので、好きな時に行き、自分のペースで会場を回れる展覧会とは、ちょっぴり相性が良くないかもしれません。そんな意味でも展覧会には、できれば映画館に出かけるような気分で来てもらえたら嬉しいです。」中山英之

概要で分かるように今回の展覧会は "映画館"なので、いつもの3階エントランスは映画館のチケット売り場のようになっている。


ロゴも "GALLERY MA"ならぬ "CINE MA"に。
壁に中山さんが直接鉛筆で描いたものだ。


"廊下"の壁には上映作品のポスターと、左に "ロビー"。
なぜロビーだと分かるかというと鴨居に鉛筆で "LOBBY"と書いてあるからだ。


上映作品のタイムテーブル。
5作品と聞いていたが、急遽1作品増え6作品が上映される。インターバルを挟んで全て観るとちょうど1時間。上の分針のみの時計で、大体今どの辺りを上映しているかが分かる。


今回は映像だけなのかと心配された方は安心していただきたい。ロビーには撮影された建築の模型や、スケッチ、図面などのほか、撮影で使われた小道具などが並ぶ。
これから観る映画の予備知識を得る、或いは観た後にまた戻ることで理解を深めることが出来る。


フリーハンドで描かれたような展示台と、実際フリーハンドで描かれた線によって、やんわりと作品ごとのゾーニングがなされている。
プロジェクトの進め方は線形ではなく、様々な思いつきがランダムにいつも広げられているような状態をここでも表現した。


キャプションは全て中山さんが鉛筆で直に書いたもの。
プロジェクトの説明だけでなく、あるものを見たときに感じたことや、答え、プロジェクト同士の間にある思想を理解してもらう、謎解きのように楽しんでもらえる。どこから考えはじめたのか分からないが、どこから見始めても物語が見えてくる構成になっている。


〈O邸〉 2009年/京都
京都市に建つ、京都工芸繊維大学の教授であり、dezain.netを立ち上げた岡田栄造氏の自邸。高さ7mの薄い切妻のボリュームはカーブを描き、奥が見通せない路地のような建物。


〈岡田邸〉(O邸)
岡田氏自らが撮影した自邸のありのままの姿を映す。元々3人家族向けに設計された住宅は "それから = and then" 5人で住む家となっている。
挿入される音楽は中山さんが大好きだという「空間現代」が担当した。偶然岡田邸の近くに本拠地があり、中山さんが頼んだわけでもないのに、岡田さんが音楽を依頼したそうだ。


中山英之さんと、岡田栄造さん(右)は20年来の友人だという。
「子どもが大きくなるに連れ、どんどん狭くなっていくが居場所を探すのが楽しい。」「中山さんは、特に垂直方向の設計が天才的。普通、2階から1階に降りてきて、忘れ物に気づき2階に戻るのはおっくうなものだが、この家の階段だとまた戻るのが嬉しくなる。」と岡田さん。


〈2004〉 2006年/長野
中山さんが独立して最初のプロジェクトで、SD Review 2004 鹿島賞受賞作品。
会場にはSD Review展での展示物を倉庫から出してきて、当時のものを並べた。
「今自分で見ると鳥肌が立つほど恥ずかしいスケッチもそのまま展示した。」と中山さん。


その敷地が出来るだけ "地面"であって欲しいことから、地面から浮いた家。


〈2004〉
現オーナーは施主でなく、別な方が所有している。そのため撮影ができないので本展用のリストから外れていたが、かつて中山さんが出会った韓国人アーティストYU SORAが参画することとなり、YUの希望により本プロジェクトが選ばれた。
撮影は出来ないため、竣工時の写真や図面などを元にYUによるアニメーション作品となっている。


〈弦と弧〉 2017年/東京
複雑な構成を持つこの事務所兼住宅の設計を進めるために、様々な素材の模型で検討されてきたことが分かる。


2階建て分の高さの空間に10層のプレートを持つ。重なり合うプレートの中央だけが吹き抜けになっており各層を繋ぐ。


〈弦と弧〉
層の変化を最適に撮影するために、吹き抜け部分を垂直に移動する装置を「開発」。その装置にリコーの全天球カメラ "シータ"を用い撮影し、横に長いスリット状の映像をつくり出した。


垂直撮影に使われた装置がこれ。中山事務所の若手が手作りしたというが、撮影や演出、編集にはもちろん中山事務所は関わっていない。


〈道と家〉 2013年/東京
竣工後未発表作で、本展にて初公開となる作品。
3面接道の敷地に仕上げの異なる同じ大きさの棟が二つ、その間にアスファルトの道を通し、両側に扉を付けることで周辺と接続したり、切り離されたりする。


〈道と家〉
竣工時の施主は住んでいない。"それから = and then"新しい住まい手は小さな男の子のいる三人家族。その日常が4台の定点カメラによって撮影され、それぞれが4曲のピアノ伴奏曲にと共に順に流れる。棟は分かれているが、実は地下で繋がっていることがいずれ理解できる。


そして最後に4つの映像と、4つの曲が合わさり、ピアノ4重奏と共に映し出される。


〈mitosaya薬草園蒸留所〉 2018年/千葉
書店「ユトレヒト」をオープンしたり、執筆家として活躍し日本のブックカルチャーを牽引した江口宏志氏が転身し、蒸溜家として新たな人生をはじめた。


閉園した薬草園とその展示室を、果物とハーブを使った蒸溜所へコンバージョンしたプロジェクト。


映像はこのように江口氏が頭にGoProを付けて撮影された。


〈mitosaya薬草園蒸留所〉
閉園後手付かずで放置された施設に生活そのものを移し新しく蘇らせていく。果物やハーブを運び、洗浄し、砕き、蒸溜器に投入し、抽出し、パッケージングするといった日々の営みを一人称カメラが黙々と伝える。


〈かみのいし〉 2017年
庭石があるなら部屋石があってもいいだろうとの発想からできたプロダクト。
竹尾による「紙のかたち展 2」で発表された。


〈きのいし〉
かつてこのテラスに鎮座していた庭石へのオマージュ。ベニヤ板にUVプリントしたもの。
手のひらサイズの石ころをスキャンし、ここまで拡大しても「石は石であることをやめない。」


アポロ16号の月面探査の映像は、展示で使うためNASAに許可を取ったそうだ。オープンソースなので本来その必要はないが、「『展覧会の成功を祈る』と返信をもらい、『ミッションの成功を祈る』とNASAっぽく言われたようで嬉しかった。」と中山さん。
この映像から流れる音声で会場が満たされるようにっているので、是非キャプションを読んでいただきたい。
〈かみのいし〉に関する映画は、「急遽加えられたシークレット」とのことで、ここでもシークレットとしておく。


TOTO乃木坂ビルの地下1階から2階まで至るところに紙の石が展示されているので探してみるのも楽しい。

中山英之さん
何にも興味が持てずいた高校生のとき、偶然ザハ・ハディドの展覧会を観て雷に打たれたような衝撃が身体を走り、それから建築家を目指そうと思った中山さん。建築に興味が湧くと、その他の様々なことに興味の対象が開いていき、高校の頃とは違う新しい世界が建築によって始まったという。
「建築の展覧会で時々映像コーナーがあるが、実は自分はあまり好きではない。しかし今回その自分の好きではないことをして成り立つだろうかと。であるなら思い切って「GALLERY MA」を「CINE MA」と言い切ってしまえば、映画を見に行くとき時間を予め決めて、その時間をどのように過ごそうかと考えながら、友だちや恋人を誘うのではないかと、そんな使い方をしてもらいながら、建築に興味がない人でも、この展覧会を楽しんでもらえるのではないでしょうか。」


展覧会に合わせてTOTO出版から刊行される「建築のそれからにまつわる5本の映画」。
映画のパンフレットが5冊まとめてあるようなデザイン(大島依提亜)。


映画の解説や、撮影者や住み手、中山さんのエッセーのほか、建築の解説が盛り込まれている。


発売は5月28日。B5判、170ページ、¥3,300(税別)
https://jp.toto.com/publishing/detail/A0381.htm

【ギャラリートーク】
6月7日から7月26日の間、計8回トークや映画上映会が開催。
詳細:https://jp.toto.com/gallerma/ex190523/talk.htm


【中山英之展 , and then】
会期:2019年5月23日~8月4日(入場無料、月曜・祝日休館)
会場:TOTOギャラリー・間(港区南青山1-24-3)
詳細:https://jp.toto.com/gallerma/ex190523/index.htm


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古代裕一+トーマス・ ヒルデブラント/HILDEBRANDによる表参道の「GYRE GALLERY」

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表参道のGYREのギャラリーEYE OF GYREが「GYRE GALLERY」と名称を変えニューアルオープンした。
新たな「GYRE GALLERY」の空間プロデュースを手掛けたのはJTQ谷川じゅんじ、空間設計はスイスを拠点に活動する建築家 古代裕一とトーマス・ヒルデブラントが担当。
展覧会の企画はGYREの総合プロデュースを手掛けるHiRAO INC平尾香世子、 インディペンデントキュレーター飯田高誉がディレクターを務める。
[GYRE GALLERY, Tokyo by Yuichi Kodai + Thomas Hildebrand / HILDEBRAND]


新たなギャラリーのロゴデザインはvillage ®長嶋りかこが手がけた。


場所は同じ3階で、吹き抜けを挟んで反対側に移動した。ギャラリーは天井高3.5m、床面積143㎡のフロアに4つの空間で構成されている。


〈1, Entrance Gallery〉
その名の通りレセプションの手前、エントランスを入ってすぐの空間。15㎡ながら必要に応じて展示場所とできるのは有難い。ギャラリーは、渦をコンセプトに作られたGYREの建物のデザインを踏襲し、回遊型として設計された。そのためこの時点で中央へ進むこともできれば、左側の通路からスタートすることも出来る。


〈2, Overview gallery〉29㎡
切り取られたように覗いていた正面の壁面。正対することで展示をより印象的に演出することが出来そうだ。照明は調光により抑えた光にすることも可。


Daylight Galleryへ


〈3, Day Light Gallery〉41㎡
9mの可動壁付き。アーティストの世界観に合わせて閉じた暗めの演出をすることも出来れば、東京の街を背後にたっぷりの自然光を取り入れた野外彫刻展のような演出も可能。


可動壁を閉じる様子。


可動壁(右)を閉じ奥から見返す。


〈Installation Gallery〉58㎡
GYRE GALLERYでの展示は、アートを主軸として、ファッション、写真、建築、メディアといったさまざまなジャンルを想定している。この空間ではインスタレーションなど比較的大きいサイズの展示するにも適した大きな空間である。


そして最初のOverview galleryへと戻ることができる。


細部のデザインにも気をつかっているのが分かる。ギャラリーの扉や手摺は、京都の金物師、十六代金谷五良三郎に製作を依頼したもの。

ギャラリーの設計を手がけた古代裕一氏は、Herzog & de Meuron で携わったギャラリープロジェクト、SANDWITCH Inc.と京都造形大学で培った現代アーティストの名和晃平氏とのコラボレーションを踏まえ、アーティストの視点を汲み取ってこの空間を設計しているそうだ。これまで培われてきた自分なりの建築とアートの経験を、このギャラリーの空間に落とし込むことが出来たという。

こちらは現在開催中の「デヴィッド・リンチ_精神的辺境の帝国」展の様子。展示に始まりと終わりのない鑑賞シークエンスを組み立てることができるように計画されているため、実際に様々な動線で人が行き来していた。


Installation Galleryには、中央にリンチの映画のセットに出てくるような小屋が。まわりの壁面にはペインティングやドローイング。



オープニングのためにスイスより来日した古代裕一氏とトーマス・ ヒルデブラント氏。
「ギャラリーでありながら美術館で一日を過ごすような濃厚な体験、作品と真に向き合うことができる豊かな時間を提供できる空間を目指しました。可変性に富んだ設計にしているので、展示内容によって毎回新鮮さを感じてもらえると思います。」

GYRE GALLERY
gyre-omotesando.com/gallery/

【HILDEBRAND】
www.hildebrand.ch
www.world-architects.com/en/hildebrand-zurich


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三家大地展「建築の規模」

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南青山のプリズミックギャラリーで開催の三家大地の個展「建築の規模」を訪問。
三家さんは西沢大良事務所を経て、2012年に独立。今回初の個展となる。
(会期:2019年5月11日〜6月22日)


実作はまだ多くはないが、進行中のプロジェクトと合わせ、手掛けてきたことを整理していくと、『建築の規模』というものについて色々考えてきたことに気付いたという。一般的には規模というと長さや高さなどの大きさを示すもだが、広義では拠り所や、証拠という意味がある。その規模ということを題材にし掘り下げた展覧会だ。


それらを展覧会で表現するにあたって考えたのは、1/50や1/20の模型で、どういった構成で空間を作ったかを見せるのではなく、街がどうあるのか、どういう形・大きさで建っているのかのほうが重要であると考え、1/100の模型で周辺と合わせて表現した。




【山手通りの住宅】2014年、畝森泰行と共同設計したデビュー作。
東京の大動脈である山手通りに面し、ダイナミックに変化する都市環境を建築化。同時に「都市に住む」というクライアントの行為を形にした。


【川崎の住宅】2014年(手前)、【二子アパートメント】2017
同じ地域にある戸建住宅と長屋。路地に対してどのように建つべきか、テーマを同じくしながら解き方を変えた。
片や北側の接道に対してトップライトと全面開口により、路地に光を当てる。片や路地から連続する通路を敷地に通し、公開空地のような風通しの良い緑豊かな庭をつくった。


【安城の住宅】2016年
交通量の多い通りから家族を守るような中庭のある住宅。内部の機能を床レベルの異なるボリュームで分節し、様々なアングルで庭に対峙することができる。かつ中庭は完全に閉じるのではなく通りからピロティー越しにその気配が感じられるようにした。


【上馬アパートメント】2018年
住宅地にある1000m2を超える敷地。そこに巨大なボリュームで立ちはだかっては違和感があるので、隙間を空けながらボリュームを分けた。周囲に馴染むよう外壁の色も塗り分け、外部と連続する共用部も多数計画。アパートでありながら店舗として利用も可能で、地域に親しまれるアパートを目指した。


【深沢の住宅】2019年
本展のメインビジュアルに使われている建築。大きな階段が通りに接しファサードとなっていて、奥がどのようになっているのか気になるところだが、、


T字型の2世帯住宅で、分棟しているように見えるが地下は納戸で繋がっている1棟。階段には植栽が施され、上がるとルーフバルコニーとなり、かまぼこ形の離れがある。奥のボリュームは南北に開口し、それぞれ空地と緑地に対して開いている。


【代沢プロジェクト】2019年
住宅地に建つ企業の独身寮。一部屋4畳半ながら、45度に振って菱形を並べたような構成にすることで、室外に三角形のスペースが生まれ、そこから抜けをつくることができる。

三方を住宅に囲まれているため、それら抜けにより狭い個室が少しでも良好な環境となるように配慮した。

三家大地さん。「今回自分のやってきたはじめてまとめることができました。1/100の街の模型と、大きなものでは1/2や1/5のディテール図面などで、スケールを横断しながら見ることによって、何を根拠にして建築を設計しているのかが伝わりやすいのではないかと考えました。」


【三家大地展 — 建築の規模】
会期:2019年5月11日〜6月22日
開廊時間:平日10:00〜18:00、土曜11:00〜18:00、日祝休廊
http://www.prismic.co.jp/gallery/


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小泉雅生/小泉アトリエによる「横浜市寿町健康福祉交流センター/市営住宅」

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小泉雅生/小泉アトリエによる「横浜市寿町健康福祉交流センター/市営住宅」を見学。
この地に40年以上あった旧労働福祉会館および市営住宅(設計:緒形昭義)を建て替え、新たな施設として生まれ変わらせるためのプロポーザルコンペが2014年に行われ、小泉アトリエが設計者に選定された。
[Yokohama-Shi Kotobuki-cho Health Welfare Exchange Center by Masao Koizumi / Koizumi Atelier]

敷地面積2,647m2、建築面積1,630m2、延床面積7,693m2。RC造地下1階、地上9階建。
1階から2階に地域住民のための健康福祉交流センター、3階から9階を80戸の市営住宅で構成される。前面に芝生のある広場を設け、オープンな居場所として、また様々なイベントスペースとして活用する。


寿町は日本有数の簡易宿泊所街。多くの簡易宿泊所が建ち並ぶ独特の雰囲気を持つ街だ。近年は海外からのバックパッカーにも人気があり、旅行者向けにシフトする宿泊所も増えている。


昔からの日雇い労働者や生活保護を受けながらほぼ定住している人も多く、約6000人が暮らす。これら簡易宿泊所は一部屋2畳や3畳の狭小空間で、通常のホテルとは違い、ロビーや娯楽室などの寛ぐ場所がない。


かつ地域住民の高齢化が進行し、福祉ニーズが高くなってきた街における核として、この健康福祉交流センターが求められ、さらに地域の防災拠点としても機能する。


センター1階には広場に面して左から調理室、作業室、ラウンジ、管理人室、市営住宅の集会室・エントランス・駐輪場。
2階には精神科デイケア、診療所、活動・交流スペースのエントランス、健康コーディネート室、ことぶき協働スペース、裏側に公衆浴場と続く。


東側。センターの外縁にも居場所をつくった。


西側。階段から公衆浴場へアプローチできる。下は駐車場。


南側。通用口や非常階段。電解着色されたアルミのサイディングは、周辺のコンテクストから抽出した色でデザインされている。


そして正面の北側(正確には北西面)。


広場に面して軒の深い「まちの縁側」を設け、地域のひとが気軽に立ち寄れる構えとした。
左はセンターのパブリックゾーンであるラウンジへ。


中に入ると2層の吹き抜けと、さらに重力換気兼採光用の通風塔が5層分の高さまで伸びている。(強制排気用にファンも備わる)
床には縁側から連続するコンクリートブロックが敷き詰められ、外部が入り込んできたような雰囲気も入りやすくする設えだ。


左の柱は集合住宅の下に掛かるため太いが、右の柱は2階を支えるだけで応力が少ないため、細い十字柱で意匠としながら断面積を減らしている。梁も応力の少ない部分は単に梁せいを低くするのではなく、ハンチ梁にするなど細かなデザインを施している。ハンチ梁は既存建物でも取り入れらており、そのオマージュとも取れる。


ラウンジの奥にはテレビが備わっていたり、将棋などレクリエーションにも対応。
災害時には避難場所や情報発信の中心となる。


既存でも人気だった図書コーナーも。


空調は、冷温水輻射熱パネルをメインに用いる。書架の下に覗く開口は、地下のクールピットで自然に冷やされた空気を導く。


外へ出て軒下を奥へ進むと、市営住宅「寿町スカイハイツ」のエントランス。左に住民用の集会場がある。
この日は住居部の見学はできなかった。


住居部には「エコスリット」と名付けた外部吹き抜けをつくり、住戸の中程に位置するDKに開口を設けられるようにし通風や採光に配慮した。
既存の市営住宅では間取りは2Kがメインであったが、今回の建て替えで2DK、3DKをメインにし、ファミリー世帯向けを重視した。ちなみに入居者はほぼ全戸埋まっているそうだ。
(photo: 小泉アトリエ)


交流センターの通風塔。少し象徴的になるようにデザインしたという。
(photo: 小泉アトリエ)


2階に上がるには東側からの階段と、エレベーター、そしてこのスロープがある。
スロープは割り箸を割ったようなシャープなデザイン。右側は広場に面して芝生を張った築山を設えた。


スロープから。エレベーター、通風塔、階段などが垂直方向の意匠として共鳴しているように見える。


2階にも縁側。床は1階同様コンクリートブロックを敷いた。
奥からデイケア、診療所、パブリックゾーンのエントランス。


この日はオープニング。ステージを設置し、ミニコンサートやパフォーマンスなど様々なイベントが開催された。写真はウォーキングサッカーの様子。
地面にマークされている円は1.8mピッチに刻まれており、イベントなどのブース用マーキングだったり、並んだり、このようにエリアを区切る目印などに活用できるのではと機能と意匠性を持たせた。
左に並ぶマンホールは災害時用のトイレになる。




診療所。診療所のニーズは高く、毎朝開院前に20〜30人の行列が出来るそうで、そういったためにもこの軒下空間は重要になる。
隣は精神科デイケア。一般的には精神科デイケアは建物の目立たないところに配置するが、この地域では入りやすくする事が大切とのことで、一番表側に配置した。


診療所はセンター2階の1/3のスペースを占める。待合室にも通風塔の孔が見える。通風塔はハイサイドライトを導く機能も持つ。


診療所とパブリックゾーンは吹き抜けの渡り廊下で接続される。下はラウンジのエントランス。


2階パブリックゾーンは、右手に健康コーディネート室、会議室、活動・交流スペース、センター事務室へと通じる。


活動・交流スペース。右奥の会議室を開放しさらに広いスペースにもできる。主に地域の支援活動をしている団体などがミーティングや交流を気軽にできるようになっている。
左はセンター事務室で、見通しの良いガラス張りの室とした。


縁側へ出て、2階角のことぶき協働スペース。まちづくりの担い手となる地区内外の団体や事業者等がネットワークを築きながら活動を行い、交流を活性化させることで寿地区の「開かれたまちづくり」を進めていくための拠点となる。


2階奥の公衆浴場「翁湯」。一般の銭湯と同じく誰でも利用できる。左手のエントランスからは先ほどの活動・交流ペースへも通じている。


浴場内部は見学できなかったが、男女の脱衣所の界壁は可動式で、小上がりの座敷もあり、営業時間外に落語などのイベントが開催できるようにした。
(photo: 小泉アトリエ)


ガラスブロック越しに外光がたっぷり入り、夜は逆に、外に対して行灯のように光ることとなるだろう。
(photo: 小泉アトリエ)

小泉雅生さん
「関係者や利用者の方々との対話やワークショップを重ねていくうちに、明確に "このような建物"と設計するのではなく、どのような使われ方に変化していっても大丈夫なように、フレキシブルでタフな建物に設計すべきだと考えました。数年にわたって心血を注いでこの施設の設計に携わってきて、非常に思い入れ深いものとなっていますので、今日は娘を嫁に出すような気分です。これからこの建物をタフに使い倒して頂きなから、どのように育てていっていただけるか期待しています。」と話す一方、施設や地域の発展のために今後も関わっていくという。


【横浜市寿町健康福祉交流センター/市営住宅】
・設計・監理:小泉アトリエ
・構造設計:構造計画プラス・ワン
・設備設計:ZO設計室
・施工:松尾・小俣・土志田建設共同企業体(建築工事)他
・横浜市寿町健康福祉交流協会:www.yokohama-kotobuki.or.jp


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富永大毅による「四寸角の写真スタジオ」

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富永大毅(富永大毅建築都市計画事務所)による東京都北区の「四寸角の写真スタジオ」を訪問。
都内に複数のレンタルスタジオを展開するスタジオパスティス・バジルが、志茂にある3つのスタジオを段階的にリニューアル。うち一つの設計を富永さんが手掛けた。


面積113m2、バックヤード含め202m2、木造1階。住宅を再現したハウススタジオと呼ばれるものだ。
取材当日は仕上げや家具の搬入が大詰めだった。


外観はどうなっているかというと、鉄骨の元倉庫内に住宅が挿入されているような格好だ。


庭もスタジオの一部であるため、外壁はシラス壁を左官でしっかり仕上げた。


玄関ポーチ。セットのような雰囲気だが、実際の住宅に近いスペックで造られている。法規的には "間仕切り"になる。


右側はバックヤードへの搬入経路。


玄関から。広い玄関ホールと右手はメイクルームへ。正面にリビング、その左が寝室、右がダイニングとキッチン。
スタジオという性格上、スタッフや機材が多くなるので壁や柱がほとんどない、間口の広いワンルーム空間で小さな部屋がない。

その空間を引き締めているのがこの大梁だ。スパンは5mあるので通常なら集成材を使うところだが、国産無垢材の使用にこだわる富永さんは今回、多摩産の四寸角流通材を用いた構造にチャレンジした。


建て方の際のカット。「大梁が組まれる前は、他の梁も四寸角材で梁せいが低く、鉄骨の架構のようで不思議な光景だった。」と富永さん。倉庫の大屋根があることを利用して製材所から木材を搬入して、大工が手加工で組上げた。
(photo: 富永大毅建築都市計画事務所)


実際にはスタジオの軽い屋根を支えているだけなので、これだけの大梁は必要ないが、住宅に置き換えて考えた場合、5mのスパンを飛ばすためには360mm程度の梁せいが必要になる。それを流通材である4mと3mの材を交互に積み上げ、金物を使わずラグスリューのみで締め、明かり採りで高くなったハイサイドの分まで積み上げた格好で、ここでは仕上げとしての意味合いが大きい。
四寸角材は全部で230本使っているそうだ。


天井は全面に張らず、中空ポリカーボネート板の屋根から自然光をたっぷり導き、撮影に対応している。縁のよう取り囲む小天井は撮影の際の見切りで、裏側には照明が備わる。


サンドイッチしてひとつの梁になるため、梁端部は一本おきに止まっており、光や空気が回るようになっている。


壁はL字型の組合せでできており、撮影スポットが多くなるようにしつつ、後々部分的に仕上げを容易に変えることができる。
壁は漆喰、床はマラッツィのタイル。


実際の住宅だったら相当気持ちの良いテラス。




キッチンは製作で、ガスや水道も通っているが換気扇はない。それぞれの配管はフレキシブルでキッチン台を動かすことができる。


扉を一枚開けるとバックヤード。左奥は隣のスタジオに通じる。
右に見えるダイニングの壁もマラッツィのタイル。


こちらはメイクルームや控え室、トイレなど。

富永大毅さん。
「サイズ感や仕上げなどリアルとバーチャルの間のようなユニークなプロジェクトでしたが、仕上げが頻繁に交換されるプログラムだからこそ構造躯体が重要だと考えました。木造では、あるスパンを超えた途端に集成材を使わざるを得なくりますが、身近な流通材を使った構法を考えて、今後の設計に役立てたいと思いました。またそもそも木造は痩せてきたり材の狂いがあり合理的ではないですが、仕上げとして、或いは間仕切りとしてであったり多義的に機能することこそ、本当の木造らしさであるということを最大化した表現といえます。」

【四寸角の写真スタジオ】
設計・監理:富永大毅建築都市計画事務所
構造設計:川田知典構造設計
施工: AI建築都市計画事務所
製材:沖倉製材


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CAtによる宮城県「山元町役場庁舎」

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小嶋一浩+赤松佳珠子+大村真也/CAt(シーラカンスアンドアソシエイツ)による宮城県の「山元町役場庁舎」を見学。
2011年の東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城県山元町役場庁舎の建て替えで、2015年のプロポーザルによりCAtが設計者として選ばれ、2019年5月に開庁を迎えた。


敷地面積11,221m2、建築面積2,711m2、延床面積4,226m2。S造、地上2階建て。
敷地周辺には中央公民館や歴史民俗資料館など地域の公共施設があり、かつ多方向からアクセスできるため正面を感じさせない 丸みを帯びた形をしている。


山元町は宮城県の太平洋側南端の町。海辺(東)から広がる低地、そして山林(西)と大きく異なる環境に分かれており、そのちょうど中間地点に役場はある。


津波は最大で高さ13m、海岸から3.5km内陸まで達し、町域の4割に当たる24km2が浸水。2200棟以上の家屋が全壊、637名の犠牲者を出した。


海岸から1.2km程離れた場所にあり津波で破壊されたかつての町の中心地、JR常磐線山下駅。左のRC造のトイレは無事であったため今でも使用可能。
この山下駅の上下区間は海岸に近いことから、10数kmに渡って1km程内陸に高架化移設されたため、長大な空き地が遙か先まで続いている。
これらは防災集団移転促進事業の一環で進められており、ほかに災害公営住宅整備事業、区画整理事業など多くの国の助成を受けながら町の復興が進められている。


海辺から僅か400m程しか離れていなかった「山元町立山下第二小学校」は内陸の、町の新住宅整備区画に移転。プロポーザルによって選ばれた佐藤総合計画とSUEP.による設計で2016年に完成している。


同じ区画で隣接する「山元町こどもセンター」も佐藤総合計画とSUEP.による。


山下駅、小学校・子どもセンター・保育所・公園、住宅整備区画を内陸側に集約。駅前から高台にある役場まで新しく道路を整備し人と賑わいを結び、且ついつ襲ってくるとも知れない津波から避難を容易にする構想だ。


インフラ、住宅、学校、面整備などの事業が一通り済み、ほぼ最後に整備されるのが役場だ。山元町役場は台地にあるため津波の被害はなかったが、地震による躯体への被害から解体され、長らくプレハブの仮庁舎で業務を行ってきた。


はす向かいに完成した今回の新庁舎。建物には2層とも軒下空間がぐるりと回っているのが特徴だ。
左側はバスが軒下まで横付けできるバス停。


軒天井は杉の羽目板張り。軒下を通っていくと東の芝生広場に通じる。軒下や広場での活動が通りへと広がり、町の賑わいの中心となっていくだろう。


メインエントランス(エントランスは3ヶ所ある)。冬場は西側の山から冷たい風が吹き下ろすことから、エントランスの形状は流体シミュレーションを掛けながら検討し、東側から鋭角に回り込むようなフォルムの風除室を持つものとした。
「計画中に開催された地域住民とのワークショップでは、風や雪のことなど、住民ならではの貴重な意見を多く得られた。」と大村さん。手前・奥の自動ドアが同時に開いているタイミングを減らしたり、足元の雪が落ちる空間にするために大きな風除室となっているのだ。


エントランスを抜けると二層吹き抜け空間であるロビーへ。北向きのハイサイドライトと周囲の軒下から柔らかな光がたっぷりと注ぎ込む。
正面が大会議室、左に執務スペースや窓口、奥にはもう一つのロビーや町民スペースと続く。


大会議室。会議の他、イベントなどにも利用でき、正面の両開き戸から軒下空間に開放できる。
カーテンデザインは安東陽子が担当した。


1階執務室は大きくAとBに分かれており、各窓口カウンターのパーティションも遠くからでも見やすいデザインと配置になっている。サインなどのグラフィックデザインは、山野英之(高い山)が担当した。


鉄骨×ブレースと設備用のシャフトが納まるスモール・コアは様々な素材で仕上げられている。仕上げは1・2階を垂直に連続させ、一つのアングルから同じ素材が重なって見えないようにすることで、水平方向に奥行きを感じさせる効果を狙っている。


パンチングメタルのスモール・コアには熱交換用のダクトが納まる。冬場は太陽熱で温められた空気が床下へ導かれ、下から暖気を巡らせる。夏場はハイサイドから重力換気によって熱気を排出する。
4ヶ所の大きな吹き抜けから注ぐ自然光によって、照明の電気代削減にも貢献する。


1階は執務スペース以外の約半分は、町民のための共用部と言っても過言ではない程ゆったりしている。


ワークショップ等の意見交換により、キッチンカウンターのあるカフェスペースのような、フレキシブルなスペースも設けられた。山元町が抱える、復興、人口減少、少子高齢化など様々な問題に対して、行政と住民の垣根を出来るだけ取り払い、開かれた街づくりを進めていくための交流拠点となる場を目指しているようだ。


家具は藤森泰司が担当した。役場のベンチにありがちな一方向を向いて並ぶものは避け、開放的で広場のようなロビーに合わせるように、正面のない柔らかなデザインのベンチとした。


キッズスペース一体のベンチも。


藤森泰司さん。「役場の家具でメインとなるのは窓口カウンターですので、まずはそのデザインからはじめ、他の家具へ展開していきました。家具には色々な素材を使い、人と建築をグラデーションで繋げられるような存在としました。」




階段には製作したスチール製(溶融亜鉛メッキ)のグレーチング状手摺。


吹き抜けの手摺にも使われており、気流や光の透過、人の気配を妨げずに、深い角度では目隠しとなるように配慮されている。


2階は1/4が執務スペースや窓口とロビーで、その他は議場を中心として町長室、応接室、会議室など複数の室をテラスに面して配置。


2階の軒下は一周テラスになっており、職員や議員の休憩スペースであったり、一部町民にも開放している。
所々プランターとツル植物が巻き付くワイヤーが設置されており、徐々に緑に覆われていくだろう。


天井に使われている板状のルーバーはSwoodのストランドボードで、最近のシーラカンス作品に出番が多いとか。
ルーバーの隙間からハイサイドライトが覗いているが、ルーバーにより光源が曖昧で自然な明るさになっている。




議場は議員からの要望で、以前と同じ赤を基調とした重厚な雰囲気に。右手議長席の背後はプリーツのように織られたファブリックで、周囲の赤い壁はグラデーションのファブリックが使われており、いずれも安東陽子が担当した。


左から小野田泰明さん、赤松佳珠子さん、安東陽子さん。
東北大学の教授である小野田さんは、山元町のアドバイザーとして町の将来計画に長く携わっており、前出の山元町立山下第二小学校・子どもセンターや、本件のプロポーザルなども立案した。
安東陽子さんは「議場の壁のファブリックは濃い赤のボルドーからグレーを帯びたベージュのグラデーションに染め、天井のルーバーから腰壁までが美しく連続するようにしながら上昇感が得られるような印象にしました。」と話す。
当日スタッフや関係者が身につけていたネクタイやリボンは、今回使われたファブリックの余りを利用して安東さんからプレゼントされたものだ。


左から担当として現場に常駐していた和泉有祐さん、赤松佳珠子さん、本年よりCAtのパートナーとなった大村真也さん。
「海と山をつなぎ、人と人をつなぐ要となるタウンホールです。光溢れる屋内広場を目指し、役場と言うより気軽に立ち寄ってもらえる場所、何かがはじめられる場所として、住民、職員、議員が一緒になって活用していっていただけるように設計しました。」と赤松さん。

【山元町役場庁舎】
設計・監理:CAt
構造設計:オーク構造設計
施工:加賀田組
空調・衛生設備:三建設備
電気設備:ユアテック


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高塚章夫による「堀口珈琲横浜ロースタリー」

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高塚章夫(aaat 高塚章夫建築設計事務所)による横浜市の「堀口珈琲横浜ロースタリー」を見学。
スペシャルティコーヒーを専門に扱う堀口珈琲が、事業拡大のために焙煎工場を世田谷から横浜の本牧埠頭に新築移転したプロジェクトで、プロデュースは創造系不動産。ブランディングはエイトブランディングデザイン。

敷地面積643m2、建築面積385m2、延床面積499m2。S造、2階建て。
2階建てではあるがほぼ平屋で、門型鉄骨ラーメンの上に屋根を被せ、その小屋裏の一部(窓枠4枚分)が2階で梁の上に乗っているような構成。そのため両側の窓枠2枚分は殆どが吹き抜けとなっている。
左の引戸がエントランス、中が倉庫への搬入用、右が搬出用の引戸。


倉庫街にシンプルな切妻ボリュームは目を引くが、カフェや小売りをする建物ではなく、あくまでも焙煎工場だ。
食品を扱う工場なので、衛生面からも開口は殆ど設けられていないが、両妻面とサイドに1ヶ所採光のためにフィックスの開口がある。
屋根や外壁はガルバリウム鋼板の波板で、継ぎ目や段差の少ない塊感のあるボリューム。

エントランス。右手の倉庫スペースをできるだけ取るために廊下は狭くなる。そこで接道に向けて開口を設け、圧迫感をなくしている。
壁にはコーヒーかすを練り込んだ窯業系ボード、ケイミューのSOLIDを使った。

エントランスからクランク状に従業員の動線であると共に、見学通路でもある。
この建物の最優先はコーヒー豆の動線だ。倉庫に運び込まれた生豆は左上のパイプを空気搬送され、、 、

 左の生豆保管庫に流れる→保管庫からは別区画の正面焙煎室へ→焙煎された豆は右手の選別室に回され→次に別室の充填包装室へ→そしてさらに別室の梱包室へ→最後に出荷という一筆書きの淀みない動線が求められる。
衛生区画を可能な限りガラス面で仕切り、製造空間と居住空間が視覚的に連続し、空間的広がりを生み出した。


製造工程を一通り見学できたので紹介。
【生豆保管室】前室に運び込まれた生豆はエアダクトで左上のじょうごに流れてきて、その下の選別機で、異物や不良豆を取り除き、銘柄ごとにケースに収めてラックに並べられる。この部屋は常に25℃程に保たれており、生豆の温度を全て揃えてストックしておく。

 生豆は焙煎室からの "注文"に応じて、ダクトで吸い込み隣の焙煎機上部のじょうごへ運ばれる。

 【焙煎】生豆は下の炉に落ち、データを用いながら職人の経験と感によって豆の様子を把握しながら焙煎される。目指す焙煎度になった瞬間に手前の冷却槽に取り出し、素早く冷却する。写真は正に焙煎豆が炉から出てきているところ。

【一時選別】冷却され出来上がった焙煎豆はもう一度選別機に掛け、異物や色づきの悪い物、焦げてしまった物などの不良を除去。

 【二次選別】さらに人の目で選別を行う。機械では除去しにくい虫食い豆や異物を手作業で除去。
その後ブレンド商品を作る場合は、左奥のブレンダーで複数の銘柄を攪拌しながらブレンドする。

【充填・包装室】衛生レベルのより高い部屋へパスボックスを介して運び入れ、個別包装した後、内容量のチェックと、X線検査機を用いて異物の最終チェックを行い、別なパスボックスから梱包室へ回されようやく出荷となる。

焙煎機は2台あるが、将来需要が高まった時に備え、右手前にさらに2台分の焙煎機を設置できるスペースを確保している。
前述した2階部分が梁に乗っている様子がよく分かる。L字型の吹き抜け空間は、本来これだけの気積は必要ないが、作業者への快適性を考慮した余剰空間といえる。

さらに妻面のハイサイドライトから外光が注ぎ、空を見て一息つくこともできるのだ。

2階へ。左はトイレ、更衣室、休憩室などが並ぶ。右の開口からは1階の作業工程が見える。

 1階から見えたボリュームはこのゲストルーム。主に海外の生産者を招き、生産工程を見学してもらいながら商談を行うという。

 反対側にはカッピングルーム。実際にコーヒーを淹れ、品質の確認や、卸の顧客に試飲などをしてもらう。左に並ぶ様々なコーヒーメーカーは顧客の要望に併せて機器のアドバイスを行うため。

エイトブランディングデザインでは数年前から堀口珈琲のリブランディングを手掛けており、ブランドロゴや、パッケージ、Webサイトデザインのほか、手前に見える冊子のようにブレンド商品を9種類に整理し、商品の違いをマトリクスで視覚化することなどを行ってきた。この後、工場内への掲示物なども担当していくという。

高塚章夫さん。「モノのためにデザインされる工場ですが、そこで働くヒトのためのデザインを等価に建築化することで、働く空間の居住性が高まり、それに伴って製品の品質向上にも繋がると考えました。切妻のハイサイド窓は柔らかな自然光を建物の奥の方に導くだけでなく、特徴的な外観を生みました。倉庫や工場が集中する殺風景な地域にあって、建物から漏れ出す光が街灯のような役割を担い、そこに少しばかり温かみのある街並みを作り出せたらと願っています。」


【堀口珈琲横浜ロースタリー】
意匠設計:高塚章夫/aaat 高塚章夫建築設計事務所
プロデュース:創造系不動産
サインデザイン:エイトブランディングデザイン
構造設計:小山直丈構造設計事務所
照明設計:岡安泉照明設計事務所
家具デザイン:イノウエインダストリィズ
建築工事:三和建設


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谷口吉生による「谷口吉郎・吉生記念金沢建築館」・「清らかな意匠 –金沢が育んだ建築家・谷口吉郎の世界–」展

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谷口吉生(谷口建築設計研究所)による「谷口吉郎・吉生記念金沢建築館」、開館記念特別展「清らかな意匠 —金沢が育んだ建築家・谷口吉郎の世界—」のプレス内覧会へ。
当館は建築・都市についての日本初のミュージアム。金沢市名誉市民第一号である谷口吉郎の住居跡地に、吉郎の長男・谷口吉生の設計により建設された。展覧会をはじめ、講座や建築ツアーなどさまざまな活動を通じて、金沢から世界へ建築文化の発信拠点を目指す金沢市の施設となる。


延べ床面積1,570m2。RC造+一部S造、地下1階、地上2階建て。
吉生はこの地に建っていた家では育っていないが、戦争中に疎開で一時暮らしたことがあるという。父吉郎は生前、この土地を金沢市に寄付し、金沢の文化の為に役立てたいと息子吉生に伝えていたそうだ。


古い木造の住宅や寺の多い風致地区おいて、低い軒をもつエントランスから、鉄骨造にガラス張り(線の細いステンレスのルーバー)のアトリウムで街に開き、RC造の本体は柔らかな色の石を張り街並みに調和するように配慮した。


父。吉郎の名作、迎賓館赤坂離宮 和風別館「游心亭」の広間と茶室が忠実に再現されていると聞くが、このモダン建築にどのように表現されているだろうか。






アトリウム。2層吹き抜けの光溢れる空間。受付、ミュージアムショップ、カフェ、ロッカーへと続く。


受付から左にホール。積層する地下1階と、2階を同時に見ることができる。地下は企画展示室で、2階は常設展示室だ。
ホールでは館の説明や、金沢市の歴史建造物や景観保護への取り組みなどが紹介される。金沢市の財産の一つは、数百年に渡って保存されてきた歴史的景観と、それらに配慮しながら計画されてきた近代・現代建築だ。


この住宅兼店舗は、建築館の近くで筆者が偶然見掛けたものだが、貼り紙に「この地区は国選定の寺町台伝統的建造物群保存地区です。この現場では金沢市伝統的建造物群保存地区保存整備事業補助金を利用し、工事を実施しています。」とあった。


建物ごとジャッキアップし、傷んだ基礎を新しくする工事を行っていた。このように景観保護のために行政が一丸となっていることを目の当たりにすることができた。


ホールにはスリット状のトップライトから光が落ちてくる。階段は蹴込みが低く、ゆったりとした傾斜となっている。右の白い壁は漆喰で仕上げられている。


企画展示室。最初の展覧会は「清らかな意匠 —金沢が育んだ建築家・谷口吉郎の世界—」。
展覧会概要:金沢が生んだ近代日本を代表する建築家であり、金沢市名誉市民第一号となった谷口吉郎氏の作品を紹介します。氏は九谷焼の窯元の家に生まれ、第四高等学校卒業まで金沢で過ごしました。 「清らかな意匠」と形容される端正な建築や「博物館明治村」の創設などの文化貢献で、昭和48(1973)年に文化勲章を受賞しています。
また氏は文筆家としても知られ、生まれ育った町金沢についてさまざまな著作のなかで語っています。開館を記念する特別展では、このような谷口吉郎氏の主要な建築作品と著作との関わりを取り上げ展示します。


サンクンガーデンを望む企画展示室1。企画によってはサンクンガーデンでも展示されることがあるだろう。


吉郎の創業設計図や、執筆原稿。本館では金沢市に寄贈された吉郎・吉生の資料を中心に建築アーカイブズの構築を目指していく。


石川県で手掛けた建築を紹介。〈石川県繊維会館〉1952、〈石川県美術館〉1959。


企画展示室2はホワイトキューブ。


本展の監修は建築史家 藤岡洋保(東京工業大学名誉教授)。吉郎の建築家としての活動を、1931〜1938、1939〜1959、1960〜1979と大きく3期に分け、"清らかな意匠"が完成する課程を紹介する。


27歳の時の処女作〈東京工業大学水力実験室〉にはじまり、1960年〈東宮御所(現 赤坂御所)の設計により"清らかな意匠" の完成を見て、〈ホテルオークラ〉1962、〈帝国劇場〉1966 へと繋がっていく。


模型も幾つか展示されているので紹介。
〈藤村記念館堂〉1947


〈秩父セメント第二工場〉1956

〈帝国劇場〉1966


〈東京国立近代美術館〉1969


2階に上がると常設展示室。1度ここで腰を下ろし休憩したり、トイレにいくのもいいだろう。
ここまでは谷口吉生の空間。そして乳白色の自動ドアの向こうは故 谷口吉郎の空間だ。


迎賓館赤坂離宮 和風別館〈游心亭 広間〉
寸分違わず再現された游心亭は、国賓を招く場としてサミットでの各国元首や、チャールズ皇太子・ダイアナ妃、最近ではトランプ大統領も訪れ、軒先から鯉にエサをやるシーンなどでお馴染みだ。


実物の広縁の床はカーペット敷きで、構造である柱が左に並ぶが省略。柱梁、天井、壁の材は同じもので、昇降式のテーブル、天板の材まで再現されている。特筆すべきは、当時内装を担当した水澤工務店に縁台のクス材がストックされているが発見され、その材が今回ここに使われていることだ。もちろん今回も内装は水澤工務店が担当した。


池に見立てた水庭。実物は奥に日本庭園が広がる。ここは犀川を望む急峻な段丘であるためそれは無理だ。


平天井と傾斜天井が特徴だ。また繊細な棹縁が連続し美しい。


手前の書院、左の床の間も再現。そして床の間の絵画も撮影され、プリントしたもので再現している。




迎賓館赤坂離宮 和風別館〈游心亭 茶室〉
小間に4畳半の畳席と、2辺に外国からの来賓に対応した椅子席で構成。小間を能舞台のように設え、点前を椅子席から観賞しながら茶を楽しむことができる。
広間と茶室は壁や障子も含め空間そのものが展示物であるため触ることができないが、茶室の椅子席だけは "展示物"に座っても大丈夫だ。


広間と同じく、平天井と傾斜天井の組合せ。手の込んだ編み込みの網代天井も確認できる。


細い畳帯。掛け軸はこちらもプリントで再現している。


茶室を出ると元のアトリウム、そして吉生の空間に戻る。


谷口吉生さん。「実寸台で再現することにより父が設計した空間のバランスがよく分かる。私と父の建築は違うので、父の作品を切り取ることができる額縁を設計しました。」


【清らかな意匠 —金沢が育んだ建築家・谷口吉郎の世界—】
会期:2019年7月26日〜2020年1月19日
会場:谷口吉郎・吉生記念金沢建築館

【谷口吉郎・吉生記念金沢建築館】
設計・監理:谷口建築設計研究所
施工:清水建設・豊蔵組・双建JV
内装(游心亭):水澤工務店


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本橋良介+三木達郎/MMAAAによる「玉川台のアパートメント」

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本橋良介+三木達郎/MMAAAによる世田谷区の集合住宅「玉川台のアパートメント」を訪問。田園都市線用賀駅から徒歩5分程の住宅地。
(新建築:2019年8月号掲載)


敷地面積359m2、建築面積202m2、延床面積537m2。RC造4階建て、21戸からなる共同住宅。
昔ながらの比較的広い敷地をもつ住宅地で、周辺には庭を持つ住宅が多い。そのため上階をセットバックさせながらボリュームを絞り、周囲の雰囲気に合わせながら庭のある家型のデザインを意識した。


建物は接道面から法令よりさらにセットバックし植栽面を確保。建物左の小径のようなアプローチにも緑化条例に適合するように植栽を施す。少し芽吹きはじめているが、蒔かれているのは草花の種だそうだ。
オートロックはアプローチ中程の門扉で行う。


小径を進むと広い庭が現れ、庭を挟んで二棟のアパートと、その棟を接続するブリッジが見える。右手通り側をA棟、左手をB棟と呼ぶ。


回り込みながら小径が中庭に引き込まれるようにデザインされているが分かる。通常ここにアパートを建てるなら、当然四角いボリュームを1棟建てるのが商業的にも管理をする上でも効率が良いだろう。


しかし、周辺にある比較的広めな庭を持つ住宅環境に合わせる意味も含め、この庭によって生まれる居住者の豊かな生活シーンを想像するのは難くない。
庭に植わるのは、ダンコウバイとモクレン。


高さ制限内で4層にし住戸数を確保するために、1階は1.4mほど掘り下げた。掘り下げた部分が共用部でありながら専有部のドライエリアにみえる不思議な空間。


1階の中央の住戸に入ってみる。いずれも1DKで25m2前後のコンパクトな間取り。


この住戸のみ寝室側は1.5層の空間。正面はトイレとシャワー室で、タラップを使ってロフトへ上がることができる。白い壁は雑壁。


A棟2階から見る。B棟の3階に行くにはA棟の3階に上がってからブリッジを渡る。さらにA棟の4階に行くには、一度B棟の4階に上がってからA棟へブリッジを渡るという "所作"を必要とする。


A棟3階からB棟を見る。


逆にB棟からA棟を見るとこのように。周辺の住宅と比較してボリュームはあるが、住宅に "擬態"し周囲から突出した存在にならないよう配慮しているのがわかる。


A棟3階中央の住戸。この住戸のみ寝室に段差がつく。(下が先に紹介した1.5層の吹き抜け)


A棟右側の住戸。斜線によって生まれた傾斜が三角の小屋裏を作りだしている。


ブリッジ越しに "お向かい"が見える。


B棟の住戸から見たブリッジ。共用部と専有部が連続する存在であるため、いわゆるアパートドアではなくガラスの引戸(1階は開き戸)とし、連続性を強調している。住み手にはこの開放性をポジティブに受け入れる度量や、住み方が求められるだろう。


4階へ。A・B棟の共用部を正に共用している様子がよく分かる。
遠景に用賀駅の世田谷ビジネススクエアが望める。


4階住戸。全ての住戸で計画されているが、共用部とのオープンな関係であるため、共用部寄りにキッチン(DK)と、一度障壁を用いてその奥に寝室を設けている。


その障壁のレイアウトは各住戸で様々だ。


切妻ボリュームに天井を張っていないため、4階ではかなりの天高となる。


浴室もたっぷりの気積となる。


アパートでありながら美術館のような不思議なスケール感。




本橋良介さん。
「分棟にすることで豊かな共用空間を立体的に生みだすことが出来ました。ブリッジを架けたのは、窓先空地からの通路を確保するために、ブリッジ経由でアクセスする必要があったとうことでもありますが、分棟でありながらもそれを統合するという、両義的な状態にさせたかったという意匠的な意味合いが大きく、ボリュームが奥の上で繋がっていることで、中庭が外部として統合されつつ、地上レベルで感じられる隣家の隙間からの抜けを、様々なレベルで同時に存在させているという意図です。」


【玉川台のアパートメント】
設計・監理:本橋良介+三木達郎/MMAAA
構造設計:ロウファットストラクチュア
施工:SAS


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前田圭介による浅草の旅館「茶室ryokan asakusa」

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前田圭介(UID)による浅草の旅館「茶室ryokan asakusa」を訪問。
主にインバウンドをターゲットにした旅館で、浅草駅から徒歩8分程の場所に位置する。


敷地面積85m2、建築面積56m2、延床面積336m2。S造、6階建て。9m2〜23m2の全11室からなる。


浅草寺の裏手に位置し、本殿までは歩いて3分程。下町の雰囲気が色濃く残り、周囲には飲食店や宿泊施設が点在するエリア。


下から見上げると、グレーチングを張ったバルコニーが覗く。庇と裳階(もこし)が連続する日本の伝統建築をイメージした。このような帯状の外壁は前田さんの建築でしばしば採用されている。


エントランスは荻野寿也が手掛けた庭。旅行客や通りを行く人を出迎えるようだ。脇には縁側のようなベンチが設えてあり、ちょっと座っていきたくなる雰囲気。


苔むした石がわざわざ大阪から運び込まれ、できてから既に何年も経過しているかのような庭だ。


ロビーは食堂にもなっている。外国からの宿泊客に和食を中心とした朝食を楽しんでもらう。囲みのオープンカウンターで、客同士のコミュニケーションも生みやすくしている。
この日は神職による祝詞が上げられる神事が行われた。


かなりタイトな間口だが、庭を介して通りへ連続させることで出来るだけ開放感を持たせている。
右側は2mの避難経路で、上部に防火シャッターが見える。この間口でロビー、食堂、避難経路を満たすのは容易ではなかったという。


ロビーから奥に進んで玄関。下足を脱ぎたらいで足を洗いを洗ってもらい、足袋に履き替える。昔の旅籠(はたご)での習慣を導入し、日本の伝統を体験してもらう。


廊下へ上がると床は畳。


エレベーターの床も畳だ。壁は銀箔風ダイノックフィルム、天井の照明は一つだけ点け、カバーには和紙まで貼り、ほの暗い日本の旅館を細かく演出。

客室階の廊下はサイザル麻に変わる。玉砂利、土壁、竹、和紙。にじり口の如く低い出入り口、抑えた天高は独特だ。


廊下の突き当たりには床と一輪挿し。


テーマは茶室。客室は9m2〜23m2まであり、トイレ・浴室なし、トイレ・シャワールーム付き、露天風呂付きまで様々なタイプを用意し、旅人のスタイルに対応する。
敷き布団は全室テンピュール。この客室ではヴェルナー・パントンによるTatami Chairが置かれている。


この一番広いスイートでは二間の続き部屋と簾(すだれ)の仕切り。さらに風呂先屏風、なぐりの框、唐紙や土壁、網代天井などの伝統的な仕上げ、雪見障子、掛け障子、欄間などの開口と、日本建築・茶室を想起させる設えが徹底的に施されている。
出入り口はにじり口の高さでは低すぎるので、茶室の給仕口をベースにした高さとした。


床面積が非常にタイトなため、限られたスペースでの水回りの使い勝手を検討するのは苦労したという。この客室の水回りはオーナーの自宅に実物大のモック、というより、実動する同じものを施工して検討したそうだ。


ミニマルな客室は正に茶室サイズ。その中でも床の間や床柱、書院を模した洗面台などをしっかり設えた。雪見障子からは枯山水まで眺められる。
照明は客室でも出来るだけ抑えられており、右下の障子越しと、右奥の小さな障子からロウソクのようなささやかな灯りになる。(左上にあるスポットは清掃作業時のみ点灯する)
天高も2.1mとかなり低く、寝室は実質3.5畳程。このサイズの客室もオーナーのオフィスに実物大モックを作り、サイズや仕上げを入念に検討した。


障子を開けるとバルコニーが現れる。非日常と日常と、内と外の中間領域をこの奥行きでつくり出している。


11m2の少し広い客室。


統一されたイメージの中で、少しずつ仕上げが異なる。
畳は通常よりかなり小さく、襖や押入も低い。


こちらにはトイレ・シャワールームが備わる。


6階最上階には、露天風呂付きスイート、共用のシャワールーム、予約制の貸し切り露天風呂がある。


貸し切り露天風呂は十和田石の浴槽。3方に開き、スカイツリーを望む。


露天風呂付きスイート。


寝室は広くはないが、シャワールームと露天風呂が付く。


これらの植栽も荻野寿也によるものだ。


ブランディングやグラフィックデザインは北川一成のGRAPHが担当し、その旅館のマークをあしらった浴衣を着る前田圭介さん。「3年以上かけて宿泊施設の種類やコンセプトなどからじっくり検討を進めてきました。その中で浅草ということからも、外国の方々に日本の伝統的な作法や、佇まい、空間などはもちろん、人と人の距離感、サイズ感を感じて貰えることを大事にした、現代的で伝統的なスタイルの旅館を目指しました。」

【茶室ryokan asakusa】
設計・監理:前田圭介/UID
ブランディング(VIデザイン、アートディレクション): GRAPH/北川一成
内装プロデュース: kaland/川村裕文
造園・ランドスケープ: 荻野寿也景観設計
照明デザイン: ぼんぼり光環境計画/角館まさひで
施工:慶成建設
企画開発及び経営主体: レッドテック
運営主体: レッドテック


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廣部剛司による伊豆高原の別荘「PHASE DANCE」

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廣部剛司(廣部剛司建築研究所)による静岡県伊東市の別荘「PHASE DANCE」を見学。
敷地は雑木林を抱える傾斜地で、1970年代に別荘地として開発されたが今まで建物が建ったことはなかったそうだ。


敷地面積1,124m2、建築面積122m2、延床面積205m2。RC造+木造、2階建て。
敷地は広いものの、傾斜地で、且つ接道から10mのセットバック、隣地境界から2mのセットバックなどが求められ、建築可能なエリアは限られている。


計画前は鬱蒼と草木に覆われており、大きな木もある程度伐採する必要があったが、敷地を訪れた廣部さんは、どうも気になるヒメシャラの木が1本あったという。


建築家可能エリアのほぼ中心に屹立するこのヒメシャラを何とか残す方法を考えていくうちに、ご覧のような木を取り囲むような計画となった。
この木を屋内からどこにいても愛でることができるのだ。


三日月型のボリュームに多面体の複雑な屋根を持ちながら、ヒメシャラを取り囲む様子がよく分かる。


玄関は傾斜地のため半階上がったところにある。床下はオーバーハングしハンチ梁で支持。空いた床下空間にエアコンなどの設備を設置。
1階の外壁は廣部さんが多用する櫛引仕上げ外断熱。


玄関から一歩入ると、陰影のあるしっとりとした光と空気に包まれた空間が現れる。
右奥から寝室、ラウンジ、左奥に向かってキッチン、ダイニング、リビング、テラスへと回り込みながら、シーンを変えていく。


床は大判のタイル。壁や天井は浮造焼き杉板・コンパネ・ラーチと材を変えた型枠を用いてコンクリートを打設し、非常に豊かな表情を見せている。


寝室は吹き抜けになっていた。木部も様々な材が多彩な表情を生んでいる。引戸で間仕切ができる。


ラウンジと呼ぶスペース。読書好きの施主は、読書が出来る様々なスペースを望んだ。


左の椅子はコルビュジエのいとこであるピエール・ジャンヌレがチャンディーガルのプロジェクトの際デザインした "ライティングチェア"のオリジナルで、50年代製のヴィンテージ。


ラウンジの奥には浴室が配される。


浴槽に浸かりながらも森の緑が眺められる。


キッチンからダイニング、リビングと続く。


ダイニングからリビングにかけて施主の好きな家具が並ぶ。ザ・チェアやUSMのキャビネット、TRUNKのテーブルやソファ。


ダイニングから上の2階床スラブはキャンティレバー化され吹き抜けとなる。椅子やソファに腰を下ろしたとき森が大きく切り取られて眺めることができるのだ。


リビング上部ではスラブは円弧状に切り取られることで、、、


テラスに向かって段階的に開放しつつ、回り込む空間をより強調しているように見える。
リビングは奥でスキップし、床下には収納を設けた。
この逆R部、かなり小さなRだが杉板を横張りで型枠が作られていることに注目。


1階の終点であるテラス。


ワンルームで、なんと多彩な居場所があっただろうか。シーン毎に開口の大きさを変え、絶妙に雰囲気を変えてきた1階。2階は大きく連続した開口がみえる。


2階は片側にシェルフがずらりと作り付けられている。


2階の中央から。建物はシンメトリーではない。折れ曲がった面の幅や角度が異っているのは、1階で必要とされた場の広さに対応したためで、幅・角度は結果として現れたものだ。また屋根の高さも一律で変化していないため、梁や垂木は複雑な形状変化に合わせた組み方になっている。


吹き抜け部のスラブに座るとこのような光景。


2階にもジャンヌレのイージーアームチェア(オリジナル)と、TRUNKのソファ。
1階とは違い木造で大開口なので異なる雰囲気が楽しめる。


1階寝室(右下)から屋根が立ち上がり、テラスに向かって回り込みながら消失していく様子がよく分かる。
天井は野地板が黒く塗装されている。窓辺にアップライトが据えてあるので、夜には照明によって架構のみが浮かび上がってくるだろう。


廣部剛司さん。「PHASE DANCE(フェイズダンス)」というタイトルは、様々なフェイズ(局面・様相)において、それぞれどのように対応していくのかと考え続けていた行為がダンスのようだと感じたこと、全体が三日月のような形態をしていることからMoon Phaseを連想させること、そしてギタリスト、パット・メセニーの同名曲の持つ透明感とスピード感にインスパイアされています。」


【PHASE DANCE】
設計・監理:廣部剛司建築研究所
構造設計:TS構造設計(RC造部)、シェルター(木造部)
施工:大同工業


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成瀬・猪熊建築設計事務所による杉並区の「U邸/Y邸」

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成瀬・猪熊建築設計事務所による東京都杉並区の二世帯住宅「U邸/Y邸」を訪問。


敷地面積147m2、建築面積78m2、延床面積120m2。木造2階建て。
接道面に約10m接する長細い敷地で、道路境界からセットバックを求められた。


左が子世帯、右が親世帯の玄関。
扉はこの家のアクセントカラーであるカッパー色の特注で製作。


玄関に入り目を引くのが右上に横たわるピッチの広いルーバーと、その上の吹き抜け。


ルーバーと吹き抜けはそのままLDKにまで連続し、さらに奥まで続いている。そして傾斜した天井が平屋のように錯覚させる。


吹き抜けは1.5層分でハイサイドライトが幾つか室ごとにレイアウトされ、西から間接光で柔らかく採光し、ご覧のように照明も備わり夜間の間接光ともなる。
右手接道面からの視線や音を避けるための工夫だ。


一方東側も天井が斜めに下がっていることで、隣家からの視線を適度遮り、室内からは庭に向かってフォーカスしていくような感覚になる。


しかし、庭に近付けば天高一杯の開口となり庭の木々を目一杯享受できるのだ。天井は下がりきったところで2m、先端と中央は順梁で、左上では逆梁になっているという。
奥の壁は、施主が選んだエアコンのパネルカラーに合わせて壁を一面だけ塗装したところ、空間に奥行き感が生まれている。
テラス端の扉から間接的に子世帯と通じる。


コンクリートで立体的に配されたテラス。中央はタイルで仕上げられている。
植栽は1階はもちろん、2階の子世帯からも眺められる枝振りや樹高の異なるのもが選ばれている。ヤマツツジ、ミツバツツジ、ガマズミ、アオダモ、カエデなどを使いながら葉の密度や色がグラデーショナルに変化している。


右手キッチンからガラス引戸を介して水回りへ。筆者の背中に浴室、左手寝室へ繋がる一直線の生活動線。
洗面の上からも外光が入ってきているのが分かる。


子世帯の玄関へ。飼い猫が外に出ないように引戸を設えた。
黄色のガラスはインテリアデザインも手掛ける成瀬・猪熊事務所としてのチャレンジだが、アパレルブランドにお勤めのご主人は直ぐに気に入ってくれたという。


半円状の階段室はシルバーに黄色の蛍光灯が主張する。プラスターボードを曲げて作られたカーブは室内側だけで、外側は平面だ。
この敷地は防火地域であり、耐火のため木構造は現しにできなかった。柱梁を耐火壁で覆わなければならないのであれば、それをデザイン要素として生かしてみようというのが、この階段室や、1階の天井などだ。


工務店泣かせの開口の先はLDK。右は寝室となる。


左の低い開口、右の高い開口、バルコニーの腰壁は隣家との視線の交錯を軽減。


トム・ディクソンのペンダントライトが吊り下がる天井は、フレキシブルボードを斜め貼りにするという、こちらも工務店泣かせのデザイン。パテ後はそのまま意匠として残した。
丸いペンダントライトの下には丸いダイニングテーブルが置かれる予定。


こちらも梁を被覆しつつさらにふかしを多くして生まれたデザイン。開口から離れた時と近づいたときで、空間の広がりと空の見え方に変化が生まれる。
キッチンと階段室の間の壁がRC造のように厚いが、105mmの柱を両側から21mmのプラスターボード2枚重ねで被覆されているそうだ。


緑と青空が切り取られるピクチャーウィンドウ。


寝室。天井や扉は低く、開口も小さい。右のウォークインクローゼットもダークな色調にして籠もるような雰囲気に。


階段室で対をなす小窓は、寝室からちょうど庭の木が覗けるように現場で合わせながら施工した。


猪熊純さんと、担当の永山樹さん。「木造では構造を現しにできない中、それをネガティブにとらえず積極的に解釈し、新しい建築のあり方にまで昇華することを試みました。通常、壁や床は一定の厚みのエレメントと捉えがちなところを、大胆に厚みを変化させることで、外観の街のスケールと内部空間の人のスケールを調整し、外への環境的な繋がりと、近接する周囲からの視線の回避との両立を行いました。アクティブな街に少しだけ距離をおきながら、欲しい環境を味わい尽くす住処です。」

【U邸/Y邸】
設計・監理:成瀬・猪熊建築設計事務所
構造設計:オーノJAPAN
設備設計:環境エンジニアリング
植栽:...andgreen
施工:山菱工務店


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ミース・ファン・デル・ローエによる「バルセロナ・パヴィリオン」

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ミース・ファン・デル・ローエ(独・米)による「バルセロナ・パヴィリオン」を訪問。バルセロナ郊外モンジュイックの丘の麓にある、1929年のバルセロナ万国博覧会でドイツ館として建設されたパヴィリオンでモダニズム建築の傑作として名高い。
[Barcelona Pavilion by Ludwig Mies van der Rohe]


万博終了後には解体され、各部材も売却された。その後モダニズム建築を語る上で欠かせない建築として評価が高まり、1986年、ミース生誕100周年に合わせて同じ場所に復元された。


トラバーチンが張られた基壇に2つの水盤。8本のスチール製(復元ではステンレス製)の柱が1枚の屋根を支え、数枚の石の壁とガラスで空間を仕切る。


基壇に上がるとまず目の前に水盤が広がる。


十字断面の柱。右の壁はオリジナルではスタッコ仕上げであったが、ミースとしてはこのテニアン大理石にしたかったそうだ。


両開きのガラス戸から中へ。


このパヴィリオンのためにミースがデザインした「バルセロナ・チェア」。

中の壁はオニキス。

奥の水盤には唯一の "展示物"であるゲオルク・コルベによる裸婦像。


壁やガラスの仕切りを越え、体の向きが変わる度に光と空間が切り替わっていく。
オニキスの壁の裏側から外へ。


本来の入口だった側へ。


長大なトラバーチンの壁の先にはミュージアムショップがある。


ミュージアムショップの前から。
限りなくシンプルでありながら豊かな空間の変化、構成の美しさ、素材や現象の美しさなど高密度に計画されており、訪れた人それぞれが気付くこと、解釈や感想があるだろう。

【バルセロナ・パヴィリオン】
所在地:Av. Francesc Ferrer i Guàrdia, 7, 08038 Barcelona
詳細:miesbcn.com/the-pavilion


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「Apple 丸の内」

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9月7日にオープンの「Apple 丸の内」を訪問。
日本のApple直営店としては9店舗目となる。


東京駅目の前、三菱ビルの1〜2階。iPhoneやiPadを連想させるファサードが特徴的だ。


左右奥に少し見えるが、既存の三菱ビルのファサードからイメージされたデザイン。


ヴィトリン・スタイルと呼ぶショーケース状の開口は、アルミによって三次曲面の非常に凝った作り。窓際には竹が植栽されている。


国内のApple Storeで最大の面積をもつ店舗。1階はリテール。グリッド状の白い柱梁と、オークの什器と天井でシンプルだが暖かみのある表情を出している。


中央は吹き抜けになった「フォーラム」と呼ぶイベントスペースを設けた。右手には幅7mの6Kディスプレー。


回り階段は途中に支持のない塊感のあるデザイン。


踏面は研ぎ出し仕上げ。つい触りたくなる滑らかなステンレスの手摺。


2階は主にGenius Barのスペースで、8人掛けのテーブルが6台並ぶ。竹は2階まで伸びているのが見える。





【Apple 丸の内】
東京都千代田区丸の内2-5-2 三菱ビル


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「突然ですが、納谷建築設計事務所 2019年9月7日から19日まで丸の内に引越します」展

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納谷学+納谷新/納谷建築設計事務所による「突然ですが、納谷建築設計事務所 2019年9月7日から19日まで丸の内に引越します」展をレポート。会場は丸の内のASJ TOKYO CELL。
[NAYA architects exhibition]


1993年事務所設立から26年間の活動をダイジェストにした展示で、存在感のある無垢の展示台に模型、両側の壁にビジュアルが並んでいる。


事務所のターニングポイントとなった作品の模型が並んでおり、会場をぐるぐる回りながら、どの側からでも模型が見られるように構成されている。


そして作品の模型もさることながら、展示台にも目がいってしまう。ずっしりとした木毛セメント板に、、、


こちらは軽い断熱用のスタイロフォームと、、、


そして黄色のコンパネが無加工で積み上げられた展示台。総重量は6tあるとか。これらは協賛の建材会社がここに "仮置き"しているもので、展覧会終了後には実際に現場に運ばれ使われるものだ。(納谷設計の現場とは限らない)
ちなみにフォークリフトなどは使えないので、人力で1枚ずつ搬入し積み上げたそうだ。


展覧会のタイトルにあるように、事務所機能の半分が期間限定で会場に引っ越してきた格好で、スタッフがMacで製図していたり、横では進行中のプロジェクトのスタディ模型を作っていたりする。
納谷兄弟も毎日ここに "通勤"するので、必要に応じてクライアントとのミーティングも行うそうだ。


エントランス付近の有孔ボードに掛けられているのは、今まで手掛けてきた作品のファーストプレゼン模型の一部。これらの模型は場所を取るため多くの設計事務所では廃棄されてしまうが、このようにパッケージ化することで、壁に掛けたり、積み上げて保管できる。また台紙にあえて蛍光カラーを使うことでオブジェクト化しているという。


〈京都の住宅〉京都市/1995
兄弟で事務所を立ち上げ、最初に竣工した作品。模型は弟の新さんが制作した。


〈尼崎パーキングエリア〉尼崎市/2019


パーキングエリアの設計者をコンペにより選定するという珍しいプロジェクトを手掛けた。


〈野辺山の住処〉長野県/2019
6月に竣工したばかりの最新作。バイク好きの施主のための別荘で、バイクのアプローチを中心に計画されている。


他にも本展の為に新たに制作した模型が多数あるので是非会場でご覧頂きたい。


左からスタッフの太田諭さん、納谷新さん、納谷学さん、スタッフの高野健太さん
「事務所開設当初は何一つ確かなものはなく、時々舞い込んでくる小さい店舗の設計からスタートしました。何度も住宅設計の話は立ち消えし、初めて建ち上がったのが〈京都の住宅〉です。この住宅を切っ掛けに少しずつ仕事が増え、今までにおよそ200のプロジェクトが形になりました。今回の展覧会では全てをお伝えできませんが、我々が26年余りの中で節目となったいくつかの作品を中心にご覧いただけるようにしました。」

【突然ですが、納谷建築設計事務所 2019年9月7日から19日まで丸の内に引越します】
会期:2019年9月7日〜19日
会場:ASJ TOKYO CELL(東京都千代田区丸の内3-4-2新日石ビル)
https://special.asj-net.com/Naya-hikkoshi
納谷建築設計事務所


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「New Nature/御手洗龍 展」

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御手洗龍による初の個展「New Nature/御手洗龍 展」。
会場は南青山のプリズミックギャラリー。
[New Nature / Ryu Mitarai Exhibition, Tokyo]

展覧会概要
「住宅から公共まで様々なプロジェクトが進行する中、本展覧会を通し、今考えていることを切り取ってかたちにしてみました。自然と人工が融和し、さらにそれ自身が生きた新しい環境をつくり出していく、そんな建築をめざします。そこに生き生きとした場をつくり出す新しい幾何学を発見していきます。」


「New Nature」の副題に「新しい幾何学でつくられる小さな生態系としての建築」とあり、御手洗さんは以下のように定義した。

・成長する幾何学を持つ建築である。
・部分と部分の関係によって自己組織化された建築である。
・やわらかく構造化された外を持つ建築である。
・不均質でゆらぎを内包した建築である。
・環境の循環を促す構造を持った建築である。


自然と人間の融合、自然が持っているルール・役目・目的などを建築に引き上げられたら面白いな、と御手洗さんが日頃から漠然と考えていたものを、この展覧会によって言語化・視覚化することを試みた。


プロジェクトを解説するパネルには「New Nature」の視点で分析・考察が書かれているので会場で是非確認してもらいたい。


〈みらいの図書館〉コンペ応募案
皮付きの丸太をそのまま柱とした。柱にはiBeaconが埋め込まれており書籍や情報を端末にダウンロードできる、本のない図書館。


会場にはこの皮付きの丸太をイメージしたインスタレーションも展開されている。筆者が訪れた際はまだ準備されていなかったが、現在は柱にQRコードが添付されており、スマホやタブレットで読み込むことで仮想の展示空間が現れるという。
また模型の傍らにiPadが置いてあるが、AR(拡張現実)技術を用いて現実=模型の中に仮想の人を歩かせることができるものだ。


〈松原児童センター〉進行中
50年以上前に完成し、老朽化のため大規模な建て替えが進んでいるた巨大な松原団地(埼玉県草加市)内の施設。


構造的に安定するヴォールト構造を採用し前後を大きく開口。さらにヴォールトを前後で高さを変え、互いに重ね合わせることでキャンティレバー状の大屋根となり変化のある空間を生みだす。


〈The New Nature〉架空プロジェクト
目黒川沿いに設定した敷地に、目黒川沿いに設定した敷地に、御手洗さんの夢を描いた美術館、図書館、スポーツ施設、レストラン、自然、工房などからなる複合文化施設。


自然のもつ営みがそのまま地面からせり上がり、小さな生態系をもつ建築。スラブは厚さ4mの土で構成されており、雨水が浸透しながら濾過され、地下の貯水槽に溜まり飲用水としても利用できる。


御手洗龍さんが「AR(拡張現実)技術を用いた模型展示」を紹介。
現実の世界にデジタル映像を重ね合わせるというポケモンGOに似た技術。模型の屋根や壁を3D上で作ってマスキングしているので、歩いている人が模型の屋根の奥にいる場合は消えるように設定され、自然に見えるようにしてある。

【New Nature/御手洗龍 展】
会期:2019年9月7日 ~ 10月26日
時間:平日10:00 ~ 18:00、土日祝13:00 ~ 18:00(入場無料)
会場:プリズミックギャラリー(東京都港区南青山4-1-9 1F)
詳細:www.prismic.co.jp/gallery/works/?p=3012

【関連プログラム】
トークイベント① 浅子佳英+御手洗龍
日時:2019.9.14(土)16:00 ~ 18:00

トークイベント② 福島加津也+末光弘和+御手洗龍
日時:2019.9.21(土)16:00 ~ 18:00

トークイベント③ 平田晃久+百田有希+御手洗龍
日時:2019.10.5(土)16:00 ~ 18:00

トークイベント④ 高塚章夫+南俊允+御手洗龍
日時:2019.10.19(土)18:00 ~ 20:00


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「アーキテクテン・デ・ヴィルダー・ヴィンク・タユー展」レポート

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9月13日から始まった「アーキテクテン・デ・ヴィルダー・ヴィンク・タユー展 – ヴァリエテ/アーキテクチャー/ディザイア」をレポート。ベルギーのゲントを拠点に活動する、3人組の建築家ユニットで日本初の展覧会を開催。会場は東京 乃木坂のTOTOギャラリー・間。
[Exhibition: architecten de vylder vinck taillieu: VARIETE / ARCHITECTURE / DESIRE]


展覧会コンセプト
アーキテクテン・デ・ヴィルダー・ヴィンク・タユー(以下ADVVT)は、「ヴァリエテ/アーキテクチャー/ディザイア」というテーマを通じて、自らの実践の幅広い視野をさらに展開させる。
ADVVTの多種多様な作品の実践 ―ヴァリエテ[VARIETE]。
建築をつくることのみならず、常に建築のあり方を探究する姿勢 ―アーキテクチャー[ARCHITECTURE]。
そして建築に属するふるまいのデザインを希求しつづける ―ディザイア[DESIRE]。

この展覧会では、ADVVTが設計したベルギーのフランダース地方の11の住宅を、図面と模型を制作することで理解を深めた日本の学生とのコラボレーションの結果が展示される。学生たちはさまざまな住宅を日本のコンテクストに置き換え、再解釈することで、異なるコンテクストに置かれたことによって生じる違いを探究している。ADVVTはこの方法によって、作品自体の探究結果を示すだけでなく、両者のコンテクストや文化の違いをも探究しようとしている。
さらには、多彩な写真家が撮影した建築写真のループ再生により、ADVVT作品をさらに深く洞察する。何千枚という画像が見る人をADVVTの宇宙[UNIVERSUM]へと誘う。いくつかの異なるスクリーンに映し出された映像は、メリーゴーラウンド[CORROUSEL]のように回り続ける。この展覧会は、TOTOギャラリー・間のスペースを回遊する旅[JOURNEY]であり、空間の背後にあるものというアイデアは、「間」という言葉の意を解釈したものでもある。


上記「日本の学生とのコラボレーションの結果」とあるが、本展に先立ち、ADVVTは東京工業大学の学生と3週間にわたるワークショップを行い、そこでの学生達の解釈や学びが展示されている。ADVVTはこの展覧会を単なる発表の場ではなく、探究や議論の一行程に過ぎず、展覧会をつくる長いプロセスそのものが発見や気付きの機会であり、ここでも議論が生まれて欲しいと望んでいる。


会場には11の作品が11の島に展示されており、それぞれの島には概ね4種類の模型が置かれている。ADVVTの作品、日本の建築家の作品、ADVVTの作品からピックアップされたディテール、東工大の学生の作品からなる。
ADVVTと日本の建築家の作品双方のコンセプトを学生が読み取り、日本のコンテクストに落とし込み新たな作品を設計した。学生たちはベルギーと日本の文化背景の違いと共通点をどう見出したのか、学生達の解釈が介在することで展覧会は複雑なものとなっているが、それを理解するために観る人はより深く考え主体的に展覧会に関わる事になるのだ。これは従来の受動的な展覧会の在り方への問いかけでもある。


壁にはADVVTの作品、日本の建築家の作品、双方からインスパイアされた東工大の学生の作品の各ドローイングと、オリジナル作品のスライド映像を孔から覗くことができる。
ここで壁の "違和感"にお気付きの方はいるだろうか。壁は前回の展覧会「中山英之展」のものがそのままが使われており、所々薄いグレーでペイントされた四角形とのぞき穴が今回の演出だが、その部分は中山さんが手書きしたキャプションや釘が打たれた跡で、展示会場のリノベーションということだ。




4階展示室は「施工途中?」と言わんばかし。仕上げがないどころか、バックヤードがむき出しの箇所がありそこにモニターが設置されている。偶然性や既存条件も積極的に設計に取り入れ、不要な仕上げはしない彼らのサスティナビリティな設計思想の現れだ。


中庭には大きな白いボードが1枚。


スタンプや色鉛筆を使って来場者が自由に街を描くことが出来る。11月23日にはどんな街が出来上がっているか楽しみだ。


〈BALADIN|バラディン〉 2011
島にはこのように展示されている。
左はADVVTのオリジナル模型で、ベルギーからの運搬用木箱に乗せられているので見分けが付く。左から2番目は近隣作品として選ばれた篠原一男による〈上原通りの住宅〉の模型。その隣は先の二つの作品からインスパイアされた学生による作品の模型。右はオリジナルから抽出されたディテールを拡大した模型で学生が制作した。
こちらのリンクから各作品の詳細が読めるが、会場で実際に模型を見ながら読んで頂くと理解が深まるだろう。


〈VERBRANDE BRUG |フェルブランデ・ブルク〉 2016
近隣作品はアトリエ・ワンによる〈理科まちや〉。


〈BERN HEIM BEUK|ベルン・ハイム・ベーク〉 2012
近隣作品はアトリエ・ワンによる〈ガエ・ハウス〉右


ディテール(この作品では架構をピックアップ)の模型と、左に学生の作品。


〈HOUSE VOS|ハウス・フォス〉 2014


近隣作品はアトリエ・ワンによる〈ハウス・アトリウム〉右
学生による作品が左。


〈FRIANT|フリアント〉


近隣作品は能作文徳×常山未央による〈西大井のあな 都市のワイルドエコロジー〉左
中央が学生の作品。


〈ARBED|アルベッド〉2013


近隣作品は坂本一成による〈代田の町家〉左
中央が学生の作品。


〈SPADE ZAAM STRAAT|スパーデ・ザーム・ストラート〉左下
近隣作品は長谷川豪による〈浅草の町家〉左上
学生の作品が中央


〈TICHEL|ティッケル〉 2013
近隣作品はアトリエ・ワンによる〈ハウス&アトリエ・ワン〉右
学生の作品が中央


〈HOUSE BM|ハウス BM〉 2011



近隣作品は清家清による〈私の家〉手前
奥が学生の作品


〈WARANDE |ワランデ〉 2013


近隣作品は東孝光の〈塔の家〉右
中央が学生の作品


〈ROT-ELLEN-BERG|ロット・エレン・ベルグ〉 2011 左
近隣作品はアトリエコによる〈菊名貝塚の住宅〉 右


そして学生の作品。
国や文化が異なるが、その建築を丁寧に紐解いていくことで、異なるコンテクストにおいてもその建築の要素やアイデアを発展させていくことができただろうか。是非会場で議論しながら見て欲しい。


ヤン・デ・ヴィルダーさん(左)とヨー・タユーさん
ADVVTではリノベーションの作品が多い。「現在、サスティナビリティというものは新しいものから始まる傾向があると思います。しかし、周辺のコンテクストを見回すと役に立たない物ばかりに感じるかも知れませんが、実はそのなかに大切なリソースである。そういったことを今回学生達に気付いて欲しいと思いました。」
Jan de Vylder and Jo Taillieu.


本展に合わせTOTO出版から刊行された「アーキテクテン・デ・ヴィルダー・ヴィンク・タユー建築作品集」
塚本由晴さんとの対談も含め、ADVVTの63作品を収めた作品集。写真・図面・テキストの3部構成。個々の場の条件の中でポジティブに建築に取り組む彼らの姿勢が読み取れる一冊。https://jp.toto.com/publishing/detail/A0382.htm

【アーキテクテン・デ・ヴィルダー・ヴィンク・タユー展 ヴァリエテ/アーキテクチャー/ディザイア】
会期:2019年9月13日(金)~11月24日(日)
会場:TOTOギャラリー・間(港区南青山1-24-3 TOTO乃木坂ビル)
詳細:https://jp.toto.com/gallerma/ex190913/index.htm


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乃村工藝社による東京2020パラリンピック開催1年前記念イベント「スポーツ・ラウンジ COLORS」

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乃村工藝社の社屋内に、COLORS=色をテーマに2日間限定のスポーツ・ラウンジが登場した。東京2020パラリンピックの内部空間・展示空間のデザイン、設計、施工カテゴリーにおけるオフィシャルサポーターである乃村工藝社が、開催まであと1年となった機に提案したパラリンピックスポーツの新しい楽しみ方を体感できる空間である。


会場となったのは、地下1階にある多目的スペース「ノムラスタジオ」。真っ白い空間に色とりどりの幾何学模様が浮かび上がり、中央には2つのパラ卓球台と、ボッチャをデジタルテクノロジーで体験できるコーナー、奥にスポーツ・バーという構成だ。




〈パラ卓球体験コーナー〉
選手それぞれの個性を表現したパラリンピックの特別なパラ卓球台を体験することができる。

〈ボッチャ体験コーナー〉
競技の面白さや奥深さを体験できるデジタルテクノロジーを使ったエンターテインメント型ボッチャ。 


完成した際には真っ白だったというこの空間。来場者が白いシートをめくることで、時間を追う毎に様々なカラーが現れてくる。これは先入観というレイヤーをめくって気持ちを新たにするようなアクションだ。パラリンピックスポーツについては勿論のこと、普段あまりよく知ろうとしてこなかった身近な事やまわりの人たちについても、無関心にならずに探求してほしいというメッセージが込められている。

現れたカラー部分にはパラリンスポーツのトリビアも(景品があたる金銀銅賞も隠されていたそう!)

〈スポーツバー〉
白いシートは再剥離シートでできており、めくったあと好きなメッセージを書いてカウンターバーの壁面に貼るシステムになっていた。


めくる、ひらく、自由なカタチのコンセプトを取り入れた什器。動かすことで床に色を見せたり隠したりすることが出来る。

空間の演出を手掛けたのは、乃村工藝社デザイナーの青野恵太、大西亮(写真右)、山口茜(写真左)各氏。それぞれ他のプロジェクトを抱えながら、什器デザイン、空間デザイン、コピーライティング・グラフィック等と役割分担して進めたという。

「ここは、新しい発見をする場所です。自分たちが実際にパラリンピックスポーツを体験したらとても楽しかったという素直な驚きや感動から発想を得ました。それぞれの違いを知り、十人十色さまざまな良さを認めあう空間、スポーツ体験の感動を共有する場所です」


イベントにはパラ卓球選手による競技実演もあり多くの招待客が集まった。

【スポーツ・ラウンジ COLORS】
日 時:9月30日(月)、10月1日(火) 16:30~20:00
会 場: 乃村工藝社 本社 ノムラスタジオ


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【お知らせ】japan-architectsブログを引越しました

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いつもjapan-architectsブログをご愛読いただき有難うございます。

2009年の開設以降、当ブログは外部のシステムを利用しておりましたが、2019年10月よりWorld-Architects.comのシステムを使った「Japan-Architects Magazine」にリニューアルいたしました。

あたらしいシステムは海外からもアクセスしやすく、さらに多くの人たちに日本の最新の建築物やデザインを国内外に発信できる環境となりました。すでに新しい記事もございますので是非ご覧ください。

今後ともJapan-Architects、World-Architectsを宜しくお願いいたします。

ジャパンアーキテクツ事務局一同

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