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遠藤克彦建築研究所 大阪オフィス訪問×「大阪新美術館」進捗レポート

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遠藤克彦建築研究所 大阪オフィスを訪問してきました。大阪市営地下鉄 四つ橋線 肥後橋駅から徒歩5分程。


1〜2階が吹き抜けの駐車場の小さな雑居ビル。3階に観葉植物が見えるのがオフィスだ。


ご存じの方も多いかと思うが遠藤さんは「大阪新美術館」の設計をコンペにより2017年2月に勝ち取った。東京品川にオフィスを構えているが、この仕事のためにスタッフの殆どと共に大阪に移り住み、大阪オフィスを立ち上げた。関東の業務や、他の業務の多くもここ大阪で進行させている。


大阪新美術館計画地(Googleマップより)。中之島の一番幅が広くなる辺りで、東(左)に関西電力本店ビル、南(上)に国立国際美術館、大阪市立科学館、西(右)は空地で大学の校舎が建つ予定。

関電ビル公開空地側から。右に見えている植栽の上に途切れたブリッジがあるが、美術館を造る造らないなどと検討している頃から、いつか接続できるようにと待ち構えている。このブリッジはコンペの要項にも記されていたそうだ。

西側は不測だが、各方向に大阪の異なる風景を切り取ることができる大開口。その大開口が光のトンネル(パサージュ)のように街の新しい風景をつくり出す。光のトンネルを強調するには外壁を白か黒にしたいが、街のなかにあって埋没しないように黒を選択し、新しいアイコンのような存在を目指す。内部はパサージュ空間を中心としながら空間体験を重ねながら巡れるようにする。
外壁の素材はオフィスで見せてもらったが、様々な素材と様々な黒を検討中だ。
構造は佐藤淳、照明はシリウス、ランドスケープはスタジオテラが担当している。


もうじき実施設計を完了させるスケジュールのため検討は大詰め。最新模型の詳細は今は公開できない。


美術館業務と、通常業務、新しいコンペと「ちょっと忙しすぎるな、、、(笑)。でも徹夜はさせない。早く帰って早く出社してもらっている、はず。」とフロアを見返す遠藤さん。


各地から手伝いに来てくれるインターン含め10数人が働く。


軽井沢で計画中の別荘。尾根に建ち三方に傾斜する敷地。


大阪から軽井沢へは東京周りになるそうだ。


遠藤克彦さん。「このところ週1〜2が東京、すっかりメインは大阪。一番気をつけているのは体調管理です。」「延床20,000m2以上ある上、美術館は通常のビルの常識が通用せず、当たり前にできるはずのことがNGだったり、設備が異常に多いなど検討事項は無限とも思えるほどありますが、きっと素晴らしい建築にしますので期待していて下さい。」
竣工は2021年、4年半後の予定。

【大阪新美術館の公募型設計競技について】


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長崎辰哉による恵比寿の住宅「190(one-ninety)」

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長崎辰哉/アトリエハレトケによる渋谷区恵比寿の住宅「190(one-ninety)」を、入居から数ヶ月経過した状態で見学させていただいた。
「190」とは断面方向の寸法が全て190の倍数で構成されていることに由来する。建物高さや階高、階段の蹴上、杉板型枠(1/2倍の95mm)なども含めて全て190の倍数とのこと。


敷地面積158m2、建築面積94m2、延べ床面積332m2。RC造、地下1階、地上3階、塔屋1階。
エントランスは2ヶ所あり、左が住居用、右がコミュニケーションスペース用。


接道からガレージを介したコミュニケーションスペースのエントランスへ。


ガレージから見上げると自分だけの空が覗く吹き抜け。


ルーバーは強靭なH鋼のキャンティレバーの構造で支持されている。


コミュニケーションスペース。ワインのエキスパートである施主は、試飲会やワイン講習会、料理教室、パーティなど、この空間を様々な用途に活用することを想定している。


北側には中庭を設けた。


造園は藤倉陽一(藤倉造園)が手がけ、「都心に居ながら季節感を感じる野趣溢れる森」をテーマに日陰に強い植物が選ばれている。ベンチも設えてあり、取材の後ワインをいただいた。


キッチンカウンターには、特注のステンレス製化粧パネルがはめ込まれる。後方のモザイクタイルは施主がイタリアで買い求めたもので、インテリアのデザインキーワードとなっている。


地下にはワインセラーというよりストックヤード。エアコンではなく、輻射パネルで室温を一定に保っている。施主は自らフランスやイタリアの産地を訪れ、畑、土、醸造所を確認し、作り手と話し、試飲し、気に入ったワインを日本で紹介するという。


2階へ。(屋上含め)5層を貫く階段室はコーナーに設えた照明により淡い光に包まれる。


2階には寝室のほか、ウォークインクローゼット、水周り、書斎、ジムがある。


寝室のバルコニーは冒頭で紹介した吹き抜けに面している。手摺りの唐草は1階コミュニケーションスペースのモザイクタイルから引用されデザインしたオリジナルだ。


寝室の背後から水周りへ。


浴室は中庭に面し、タイル張りのインフィニティバスが納まる。


3階トイレはKOHLERで統一。


LDK。キャビネットにはテレビが納まるが、ほとんど使用しないとのことでまだソファーが置かれていない。ブルーの部分のパントリーや、砂浜の色のタイルでビーチリゾートの雰囲気に。


キッチン。1階のキッチン共にリネアタラーラによる施工。水栓はKWC、オーブンとIHクッカーはガゲナウ、ガスコンロはハーマン、レンジフードはアリアフィーネ、食洗機はミーレ、ペンダントライトはバカラという仕様。


アーバンリゾート。食事はカウンターキッチンと、気候が良いときは専らこちらのバルコニーで摂るという。


長崎さんこだわりのルーバーの組み上げでH鋼フレームが透けて見ない。またガレージ側のルーバーは通りに面しているので、フレームが内側に見えたが、こちら中庭側はフレームを外にした。


屋上も積極的に利用。水場やオーニング、自動潅水付きのオーガニック菜園も。


「全体的にクライアントと縁の深い南仏エクス・アン・プロヴァンスを意識しつつ、クライアントの好みやこだわりを色濃く反映させながら、建築としてこの場所で、何をどのように表現すべきか、深く考えたプロジェクトです。」
「温熱環境制御をはじめ、住んで、使って、良さの分かる建築的工夫を随所に織り込みました。『楽しく充実した住まいづくりだった。ひと冬ひと夏を経て、とても心地良く、快適な住まいであることを実感している』との言葉を頂き、嬉しく思いました。」
「住宅という場所で、建築が、理念として、空間として、モノとして、どのような価値を生み出して行くべきか、これからも実践を重ねながら思考を深めていきたいと思います。」と長崎辰哉さん。

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田井勝馬による横浜の「下永谷の家」

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田井勝馬(田井勝馬建築設計工房)による横浜の二世帯住宅「下永谷の家」を見学してきました。
二世帯が住まう母屋の建て替えと、さらに離れを増築した。


母屋:敷地面積806m2、延床面積403m2。離れ:敷地面積304m2、延床面積70m2。
この地に古くからある旧家で、年に何度かは親戚一同が数十人が集まる本家。二代前が建てた母屋が老朽化したため建て替えた。


アプローチを上ってもなかなか建物が見えてこない。


門扉を抜けると来訪者を迎えるように両腕を広げたエントランスが現れた。


堂々たる構え。まずは左の塀により仕切られた庭に回ってみる。


張ったばかりの芝に面して威厳のある屋敷がが全貌を現した。伸びやかな2段の庇が印象的だ。


芝を挟んで向かいには既存の植栽が茂り、春には右に見える桜がこの庭の表情を一変させる。この桜は施主が生まれたときに植えられたそうだ。


エントランス。杉板型枠の重厚なRC壁が外からそのまま屋内に連続している。右手には4帖ほどもあるシューズクローゼット。
前述したように親戚が集まるときは30〜40人になるため、このサイズの玄関や大型のシューズクローゼットが必要になるのだ。


玄関から左を向くと、たっぷりの気積を持つエントランスホール。応接間、リビングと続く。
一階が施主である親世帯、2階が子世帯。


応接間は客を通すための屋敷には欠かせない要素。


リビングダイニング。大人数用のダイニングテーブルが2〜3台置けよう広さは約50m2。
折上げ天井に間接照明、天井・床共にチークで仕上げ本家としての格式も大切にした。


ガラス引戸は8枚。両側に寄せることができる。

庭には大きくデッキテラスを設けBBQなどもできるようにした。その幅13m。
左奥に1.5mほどの高低差をもって離れが見える。


掘り下げのリビングに低めの作り付けソファーに腰を下ろすと、折上げ天井も相まってさらに空間が広く感じられる。


2階の子世帯へ。


エントランスホールを見返す。

子世帯は中央に家具を配置し、左にLDK。右に廊下を挟んで個室や水回り、クローゼットが一直線に並ぶ。


手前からリビング、ダイニング、キッチンエリアと連続するワンルームのLDK。


正にアイランドキッチン。ミーレのIHを選択。
開口の幅は約20m。


1階はRC造だが、2階は鉄骨造。鉄骨の柱に寄せ棟の屋根をフワッと乗せたような格好だ。


バルコニーは2階を半周囲っている。


子供室。リビング側の収納家具上部に設えた照明を点灯した。欄間にはガラスが入っている。


主寝室。隣にはウォークインクローゼット。


洗面室。


トイレは洗面室の雰囲気を踏襲。


入浴が大好きだという子世帯のご主人。すっかり長湯ができる仕様になっている。


シャワー・水栓はハンスグローエ。


1階へ戻り、第2エントランス。敷地裏手に大きな駐車場があり、車での来客者はこちらを使う。


駐車場からのアプローチと母屋を繋ぐ屋根。


アプローチは車椅子に対応しスロープに。


スロープを上がると離れと駐車場に。離れは平屋の2LDK。施主の奥さまの母親が高齢のため住んでもらえるように建てた。


落ち着いた柔らかな光が差し込むリビングダイニング。


茶室。竹林が風情たっぷりだ。

田井勝馬さん。「家督を継いだお施主さんの強い意志を感じる住宅です。ここには次の世代と、さらに次の世代、つまり親子そして孫へ三代100年住まうことができるよう計画しました。」

【下永谷の家】
設計監理:田井勝馬建築設計工房(田井勝馬、柏原創)
構造設計:野村基建築構造設計
照明設計:リップルデザイン
施工:キクシマ


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インターオフィスの新オフィス&ショールーム

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インターオフィスが本社を移転し、新しいオフィス&ショールームのオープニングレセプションが開催されたので出席してきました。


インターオフィスはスイスのUSMやドイツのVitraなど著名ブランドの家具を扱い、設計・施工を含めてオフィスに関わる全てをトータルサポートしている会社。1983年の創業以来4度目となる移転先は、ラティス 青山スクエアの6階。それまでの谷口吉生設計のビル内にあったオフィスは、3フロアに分かれていた為コミュニケーションが取りづらい環境があった。新しいオフィスでは、広さ約844㎡の1フロアにすべて集約し、取り扱うブランドの商品を一堂に揃えたライブオフィス・ショールーム付きのオフィスとした。


広々としたエントランス空間。プレゼンテーションスペースとして様々なイベントや展覧会を行う。可動展示パネルや特注ディスプレイ棚、大型プロジェクターなど、様々な使い方を可能にするアイデアが取り入れられている。今秋デザインウィークでも早速活用していくそうだ。


ディスプレイは約3ヶ月毎に変えていく予定。現在は7月より独占契約を結んだKnoll Studioより、ミース・ファン・デル・ローエのバルセロナチェア、エーロ・サーリネンのチューリップチェアなどが展示されている。


サーリネン コレクション・オーバルテーブルの上には、カール・ハンセン&サン、マルニ、フリッツ・ハンセンなど、プロダクト主要仕入先の可愛らしいフラッグ付きのフィンガーフード。


Knollの歴史を表現した壁。


プレゼンテーションスペースを中心に左右にフロアが続いている。右ウィングがデザイナーや総務など、左ウィングが営業エリアと分けられており、それぞれにショールームが並行して配置されている。


左ウィング。ガラスパーティションが、執務スペースとショールーム(フローリングのエリア)を緩やかに仕切る。執務スペースは営業部エリアから始まり、奥に行くにつれてフリーアドレス席、ドライキッチン、会議室へと続く。平行するショールームには往年の名作家具から最新の家具までが展示されている。







ちなみにインターオフィスといえば、hhstyleを思い浮かべる人も多いかもしれないが、2016年にリテール部門として株式会社エイチエイチスタイルに譲渡し、現在は完全に独立した別会社となっている。


執務スペース内にはドイツFremery社のフォンブースも。国内で置いているオフィスはまだ他にはないとか。


フリーアドレス・エリア。イトーキと協働したオフィスファニチャーブランド i+(アイプラス)が使われている。


一番奥にはドライキッチン。普段はスタンディングのミーティングテーブルとして活用したり、社員同士のコミュニケーションを活発なものにしてくれそうだ。


会議室。昼間は眼下に赤坂御用地の豊かな緑が広がる景色をのぞむことができる。


右ウィングへ。


デザイナーやアドミニストレーションスタッフ等の固定席エリア。デスクや収納はUSMハラーで統一されている。


一番奥には社長室や会議室。


平行するショールームは一転シックなテイストに。


一番奥にはWALTER KNOLL、フォスターシリーズのソファやアームチェアなどゆったりとしたエリアとなっている。

取締役社長 寺田尚樹氏。「ほぼ10年ごとにオフィスを移転していますが、それは、常に先進のワークプレイスの提案を仕事としている私たちにとって、まず自分自身で時代に応じたさまざまなパターンのワークプレイスを実践した上で、お客さまに最適なオフィス環境を提案することが大切であると考えているからです。今年から新しいパートナーとしてKnoll Studioが加わりました。その普遍的でデザイン性の高い商品ラインナップの一部をショールームにて展示していますので、ぜひ足を運んでいただければと思います。」

新オフィス開設にあたり、社内ではプロジェクトチームを立ち上げ、要望や意見のヒヤリングから、設計・デザイン、家具コーディネート、工事監理、引っ越しに至るまで、移転に関するすべての業務を自分たちの手で行ったという。その移転プロジェクトムービーはこちらで公開中。

【インターオフィス東京本社/ライブオフィス/ショールーム】
東京都港区南青山1-2-6 ラティス青山スクエア6F
営業時間:10:00〜18:00
定休日:土・日・祝日
www.interoffice.co.jp
※ライブオフィス・ショールームの見学は予約制

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「実践と考察展 / miCo.」レポート

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9月16日より始まった今村水紀+篠原勲/miCo. による「実践と考察展 / miCo.」に行ってきました。会場は東京南青山のプリズミックギャラリー(Prismic Gallery)


「miCo.の近作での実践とそこでの気づきや、その考察を展示。模型やドローイング、モックアップやムービー、インスタレーションなど多くの形式を用いて、展示作品・ギャラリー・打ち合わせスペースと外苑西通りの一角を、形づくる。」という展覧会で、模型やインスタレーション、写真、映像などを織り交ぜた8作品を展示。


会場に入ると、ラックのような衝立や、シルバーのカーテンで仕切られた空間に演出されている。


奥から見返すと大きく三つの仕切りには何か意味があるように感じられる。


そこで表から見るとこのようになっているのが分かる。プリズミックギャラリーの全面ガラスの大開口を使って、内部空間を積極的に外に向かって表現してみた。特徴的な雁行したファサードに呼応するように、シルバー、白、赤茶それぞれ色や素材を変えながら空間や視覚的な変化を試したようなインスタレーションだ。


〈装飾の機能 実践1:群で全体の雰囲気が現れる〉
「赤っぽい面」と「赤っぽい色のサンプル」。実作や計画中のプロジェクトで検討した(している)様々な “赤” を面と群で表現しながら空間をつくる。


〈軸組で街を見る〉
自邸「駒沢公園の家」(中央)と周辺の家屋を軸組模型で表現。外観は形や色、仕上げも様々だが、尺貫法というルールでつくられた日本の家屋は、窓の位置や、航空写真で大体の間取りと軸組が想像できる。1軒という単位が、群という単位で再構築できるような可能性を感じる。


2016年のヴェネチアビエンナーレに出展した作品で、ギャラリー・間でのヴェネチアビエンナーレ帰国展に出展を予定してが、会期延期となりこちらに出せることとなった。


〈抽象的ではなく具体的な白〉
写真では分かりにくいが、様々なテクスチャーに様々な “白” を塗ってみることで白の持つ機能を探る。


〈いくつかの周縁でつくる〉
自社オフィスで実際に使用しているカーテンと、模型、写真。


3面が開口した30m2ほどの小さな空間を機能ごとにさらに小さく区分けると、部屋同士の繋がりより、外部との関係性が強くなると感じた。内部をファサードに見立てたてることで、道行く人や周辺環境との豊かな関係性をえられるのではないか。


実際のオフィスの3面写真。この風景を今回の展覧会でも実践した。


〈装飾の機能 実践2:ばらばらな体験をつなぐ〉
計画中の築40年RC造3階建て住宅のリノベーション「葉山の道」。室内と合わせ、外部から2階へ接続する階段の検討模型。傾斜地にある敷地を登っていく体験を階段にも投影し、景色が見え隠れしながら登れる階段。
※展覧会初日、この階段について見学者からいくつかの批評があり、白熱した議論の末、階段のもつ機能とデザインについて一度フォーラムを開いてはどうかと提案があった。その勢いを借りて会期中にミニフォーラムを開く予定になりましたので乞うご期待。

今村水紀さんと、篠原勲さん。「今回扱っている実践・考察は、建築の小さな部分の仕上げの気づきから、街や山といったスケールの話まで様々です。一見バラバラに感じるかもしれないこれらの展示作品が一体的に群としてあるときの、ギャラリーを含めた環境全体で何かが伝わり、それを体験していただければと思います。」

【実践と考察展 / miCo.】
会期:20179月16日〜10月29日
会場:プリズミックギャラリー(Prismic Gallery)
詳細:www.prismic.co.jp/gallery/works/?p=1578
※土日祝は9.16(土)、10.7(土)、10.8(日)、10.28(土)、10.29(日)のみ開廊


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磯崎新とアニッシュ・カプーアによる移動式コンサートホール「アーク・ノヴァ」

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9月19日より東京ミッドタウンの芝生広場で開催の「ルツェルン・フェスティバル アーク・ノヴァ 2017 in 東京ミッドタウン」内覧会に行ってきました。


「アーク・ノヴァ」はラテン語で「新しい方舟」を意味する。そのはじまりは、2011年3月、東日本大震災を知ったスイスの音楽祭ルツェルン・フェスティバル芸術総監督のミヒャエル・ヘフリガー氏から、友人である音楽イベント企画者の梶本眞秀氏に『何かできることはないか?何かしたいんだ』という一本の電話。いずれ被災地の人々の心をケアするため"音楽や芸術が必要になる”ということで、共通の知り合いである建築家磯崎新氏に声をかけ、さらに磯崎氏の友人で現代彫刻家のアニッシュ・カプーア氏も加わり、プロジェクトは本格始動。そうして人も建物も傷ついている被災へホールを携えて赴き音楽を届ける可動式のコンサートホールが生まれた。


これまで2013年から2015年にかけて、松島、仙台、福島の3か所の被災地で展示、使用されてきた。東京ミッドタウンはこの復興支援の取り組みに賛同し、「アーク・ノヴァ」を東京で初めて展示。展示期間中、映画上映会やコンサートなどのイベントを開催する。


高さ18m、幅30m、奥行き36mのエアドームは床面積642m2。
塩化ビニールでコーティングされたポリエステル製の0.63mmの膜でできている空気膜構造の建築。重さ約1,700kg。


巨大な送風機により1時間ほどで膨らませることができる。使用後は折り畳んでトラックで輸送できるように設計されている。東京ドームと同じつくりとのこと。


芝生広場ににちょうど納まる大きさ。建築、アート、デザイン、パフォーマンスをひとつ屋根の下で展開することができる。

突如現れた巨大な物体に取材陣も通りがかりの人も皆夢中になっている。

エントランスは2箇所。回転ドアからひとりずつ入場する。


昼間の内部は鮮やかなピンク色の世界。夕刻になるにつれて紫色に変化していく。収容人数は約500人。

アーク・ノヴァとは”新しい方舟"の意。
磯崎氏は、ヘフリガー氏と梶本氏から話をもちかけられた時すぐさま「ノアの方舟」を思い浮かべたという。そのコンセプトの元、何度もスケッチを描き、カプーア氏とのやり取りを重ねていった。構造強度、音響、客席をはじめ、雷雨時の対応、避難路の確保など、数え切れない難問を乗り越え、震災から約2年半をかけて東北の地でようやく現実のものとなった。


ホール後方から天井にかけて横断する柱のようなドーナツホールは、ダイナミックで有機的。まるで巨大な植物か胎内にいるかのよう。


ホール内のベンチの一部は、津波の塩害と地盤沈下によって伐採された宮城県の瑞巌寺の参道杉を使用している。


たちあがり部分。








パネル展示エリア。アーク・ノヴァ プロジェクトに関する資料、被災地で行われたクラシックを中心とした演奏会やワークショップの写真など。


梶本眞秀氏。「ひとりの人間の思いやりが連鎖して実際にかたちになる素晴らしさを感じてください。今回東北以外の地での開催を通じて、震災の記憶の風化を防ぐための一石になればと思います」

東京ミッドタウンで展示開催するきっかけとなった「そこまでやるか展」は、芝生広場に隣接する21_21 DESIGN SIGHTで開催中。アーク・ノヴァの模型や映像を含め、既存の表現方法の垣根を超えた作品群を観ることができる。

9月30日には、磯崎新、ミヒャエル・へフリガー、梶本眞秀各氏が登壇するトークも開催される。

【東京ミッドタウン開業10周年記念イベント ルツェルン・フェスティバル アーク・ノヴァ 2017 in 東京ミッドタウン】
開催期間: 2017年9月19日〜10月4日
開催場所: 東京ミッドタウン 芝生広場
詳細:http://www.tokyo-midtown.com/jp/event/ark-nova/

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マニエラ建築設計による芦屋の住宅「三条町の家 II」

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大江一夫+てるみ+泰輔/マニエラ建築設計事務所による芦屋市の住宅「三条町の家 II」を見学してきました。


敷地面積643m2、建築面積153m2、延床面積195m2、鉄骨造2階建。この地域ではおなじみの急峻な住宅地。東面は谷側に向いて大きく開口している。


列柱によって持ち上げらた2階とその佇まいはサヴォア邸を彷彿させる。
右奥に続いていく石積みとコンクリートの擁壁は既存のもの。


接道からは来訪者を招き入れるような塀が特徴的。


アプローチからエントランスへ。450φのスチールパイプ8本が2階を支持している。


エントランス。1階はほぼ全てガラスで囲われ、その外側半分には水盤が広がっている。


1階はエントランスホールであり、アートのコレクターである施主のアートギャラリーでもある。(工事中のため一部資材があります)


水盤を結界としてギャラリー空間を別世界のように演出。ガラスはイメージとしてはないもので、1階をピロティーとて捉えているようだ。
正面のボックスは下足入れだが全体の浮遊感を壊さないように設えてある。
透明感を実現するためにシングルガラスの採用に理解を示した施主。


水盤の外側、外構には植栽が施されるため、完成時はかなり違った雰囲気になる。シンプルな螺旋階段で2階へ。


2階LDK。東を向いた大開口からは西宮や大阪湾を望むことができる。キッチンの背後に納戸、寝室、水回りと続く。


リビングを挟んだ反対側には客間。床はタイル貼り、右手にはテレビなども納まる収納が、片側一面に設えてある。


客間は6帖の和室が2室。


二人の娘さんが孫を連れて泊まりに来られるよう考慮した。


客間用のトイレ。


夜は芦屋の夜景を眺めながら料理できる。


デッキ貼りのバルコニーは1.8mの出幅で、長さは20m以上ある。


バルコニーを突き当たりまで進むと細長い敷地の奥に庭が現れた。バルコニーから降りられるようになっており、レモンの木植わり、芝生が敷き詰められた憩いの場として、家族でのBBQやお孫さんの遊び場となる。


バルコニーに面して浴室や寝室なども並び、全ての室がこの眺望を享受する。

「アートがお好きなお施主さんはギャラリースペースを望まれましたので、思い切って居住空間と切り離すような異なる世界観を作りました。外のような1階のギャラリー空間を横切り、螺旋階段で2階に抜けてくるようなシークエンスです。」
「敷地はかなりの高低差があるので、下から見上げたときに重くならないように浮遊感を持たせ、このロケーションを重視した開放的な住まいを計画しました。」と大江一夫さん。


現在大江一家は二世帯の自邸を建設中。西宮の事務所から50mほど離れて芦屋側の高台だ。


1月の完成が楽しみだ。


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「SDレビュー2017 入選展」レポート

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9月13〜9月24日まで開催の「SDレビュー2017 – 第35回 建築・環境・インテリアのドローイングと模型の入選展」に行ってきました。会場は代官山ヒルサイドテラスF棟。
[The 35th Exhibition of Winning Architectural Drawings and Models]


SDレビューは、実現見込みのないイメージやアイデアではなく、実際に「建てる」という厳しい現実の中で設計者がひとつの明確なコンセプトを導き出す、思考の過程を、ドローイングと模型によって示そうというもの。


飯田善彦、千葉学、江尻憲泰、乾久美子を審査員に、15の入選作品が選ばれ、本展を2次審査として「鹿島賞」はじめとする各賞を選定する。


〈西大井のあな 都市のワイルド・エコロジー〉
能作文徳+常山未央(能作文徳建築設計事務所+mnm)


東京品川区の住宅兼仕事場。中古ビルをリノベーションし、コワーキングが可能な仕事場、2階は民泊利用もできる宿泊スペースなどのフレキシブルなゲストルーム。3階は家族のリビング、4階は夫婦の寝室などがある。スラブに穴を開け、空間や光、熱の循環をさせる。


ツギテプロジェクト
大島奈緒子+与語一哉(ようび建築設計室)


岡山県西粟倉村で約10年前に起業し、2016年1月に火災で失われた家具工房「ようび」の再興プロジェクト。


〈Tの家〉
佐々木勝敏(佐々木勝敏建築設計事務所)


愛知県豊田市の住宅、地域交流スペース、ギャラリー。個人住宅の一部を開放し、街の余白となる庭など建物内外の使い方から街に開かれた住宅を計画。T型架構を等間隔に並べ床には梁を用いず50mm厚の板を使用。板材を水平垂直に並べながら構成していく様は建築より家具に近い。


〈三つの屋〉
李ヘドゥン+崔 在弼(o. heje architecture)


韓国天安市の住宅。都市で別々に暮らしていた夫婦とその子供たち、彼らの両親の3世代が田舎への移住を計画した「共に集まって住める家」。 しかし親夫婦と子夫婦はすでに長い間離れて暮らしており、それぞれ異なる価値観を持っていた。この3世代の同居は、多くの時間と空間を共有してきた過去の大家族とは本質的に異なっており、私たちは、現代社会型の大家族の暮らし方としての家を考えることとなった。


〈屋根上の休憩所〉
大井鉄也(大井鉄也建築設計事務所)


滋賀県長浜市のパン工場の休憩所。パン工場とまちとの接点としての建築のあり方を考えた。里山に向かって、まちや集落にグラデーショナルに溶け込んでいくような空間ができないかと考え、段床の空間が生まれた。


〈斜面と水平の関係 ―デッキプロジェクト―〉
魚谷剛紀(Uo. A)


神戸市の住宅。ゴルフ場の跡地を宅地開発によって再整備した場所。建築可能な平地は上部に2m程しか残らず、敷地の多くは斜面となっている。斜面と水平がつくる副産物として現れる、擁壁や床下空間といった余地を積極的に迎え入れることで、斜面での暮らし方に延びやかな新しい関係を示したいと考えている。


〈運動と風景〉
坂牛卓(O. F. D. A. 、東京理科大学)


東京神楽坂の住宅。各層は緩やかな階段で結ばれて、その途中にはいくつかの孔が穿たれており上下左右の隣接する室、テラスの緑、空に開かれている。階段を介した上り下りは住人の思索の時であり、その途中で孔から飛び込む風景に時として覚醒しさらに深い思索にはいりこむ。


〈鹿手袋の保育園〉
藤野高志+郡司絵美+藤野なみか+真沢直樹+森田達也(生物建築舎)


さいたま市の保育所。敷地内で完結させず、周囲に建つ施主所有の幾つかの建物と連携しながら、子育て世代が暮らしやすい地域環境を目指す。園舎は1枚のコンクリート板で上下に分かれ、大きな穴で繋がる。屋根の上は人工的な丘で、見晴し台で、ときどき観客席である。屋根の下には、鉄骨柱、樹木、塀の支柱、パラソルなど、様々な垂直線が3m間隔で規則正しく林立する。そのリズムは水平に反復し、保育園、カフェ、近隣の街並みへと、意識を外側へ向かわせる。


〈バンブーのトンネル〉
陳 建同+魏 書蘋(與木製研+層遞設計)


台湾固有種の桂竹を使った臨時施設、屋外カフェ、様々なイベントと合わせて使用機能が変化するパビリオン。施工と移動の利便性から、建物は3つに分割し多様なレイアウトが可能。イベントに応じた設えにより人を集め、活動を誘発する。


〈ドイツの「耕す」人の家〉
山﨑健太郎(山﨑健太郎デザインワークショップ)


ドイツ、カッセルの住宅。「働きながら自然と共に生きることのできる家」というクライアントの希望に、「耕す」ということを提案した。材料はできる限り自然に存在するものを使うことで、人間と自然との一体感を高めている。時間をかけて作る版築の壁は時間の概念を建築に取り込み、土地と居住者の結びつきを一層確実なものにする。環状のプランの真ん中に置かれた光庭はワイルドビオトープと名付け、ここに暮らす人々が耕すプロセスを日々体感できる場所になる。


〈Project in Santiniketan/インド・シャンティニケタンに同志を募って家を作りに行く〉
佐藤研吾(In-Field Studio)


インド・ベンガル地方郊外シャンティニケタンの住宅。インド人の施主はかつて日本に住んだこともあり、自分の故郷に「日本の家」を作るのが夢だと言う。すでに小さな敷地を購入して草木生い茂る秘匿の庭を用意していた。「日本の家」とは何か。正直うんざりもするこの茫洋な問いかけに安々と答えが出るはずもないが、自分が日本からインドへやってきた以上、避けられないことだとも痛感する。


〈残山剰水 山の再生を託されたゲートハウス〉
緒方洋平+李 光赫+田村 正(日建設計)


韓国ポチョン市の山中の会員制リゾート施設。福祉介護施設の建設が進んでいたが、リーマンショックによって事業計画が破綻し、建設途中の建物躯体が利用されることなく打ち捨てられていた敷地の地形、植生、環境、風景を尊重し、山を再生する計画。




〈漁師食堂 やまとうみ〉
石垣 充(西日本工業大学石垣研究室)


福岡県東部、京築地域の小さな漁港の、漁師食堂、海産物直売所、地域交流施設などの拠点機能の提案。「網干(あぼし)」という歴史的情景を意匠として取り込んだ三脚フレーム構造が連立し、菱形面格子のカーテンウォールを纏う。


〈真鶴出版2号店〉
冨永美保+伊藤孝仁(tomito architecture)


神奈川県真鶴町の宿泊施設・物販店舗・事務所。民家を改修し、「旅と移住の間」をコンセプトとする宿とキオスクを計画。買い物客、1泊2日の観光客、1ヶ月滞在する移住希望者、周辺住民といった、多様な時間感覚が重なる場所において、建築が持つべき質は何か。建築とランドスケープを一体的に設計することを通して、ひと繋がりであり多重心的である場をつくることが、心地よい距離感を生むと考えた。


〈山のなかの離れ〉
南 俊允(南俊允建築設計事務所)


長野県山中の住宅・宿泊施設(※時代により変遷予定)。過疎化の進む温泉地の温泉旅館の経営者家族の住まいと離れの計画。さまざまな特徴をできる限り拾い上げ、その中に、その都度家族が必要とする居場所をつくっていく。そこに建物ができ、人の営みが加わることで、その場にあった自然がより魅力的に感じられるようになること。一度に新しい離れや住まいをつくるのではなく、家族と旅館の変化に合わせ、時間をかけて場所をつくっていくことを目指す。




【SDレビュー2017 – 第36回 建築・環境・インテリアのドローイングと模型の入選展】
東京展
 会期:9月13日~9月24日
 会場:代官山ヒルサイドテラスF棟、ヒルサイドフォーラム
京都展
 会期:10月2日~10月29日
 会場:京都工芸繊維大学 美術工芸資料館



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「安藤忠雄展ー挑戦ー」レポート/国立新美術館

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9月27日より国立新美術館で開催の「安藤忠雄展―挑戦―」内覧会に行ってきました。


安藤忠雄は、独学で建築を学び1969年に「都市ゲリラ」として建築設計活動をスタートして以来、常に既成概念を打ち破るような斬新な建築作品を発表し続けてきた。本展は、安藤がいかに生きていかに創り、今またどこに向かおうとしているのかーその半世紀におよぶ活動と未来への展望に迫る約270点の資料や模型から89のプロジェクトを紹介する過去最大規模の個展である。


展示は6つのセクション「原点/住まい」「光」「余白の空間」「場所を読む」「あるものを生かしてないものをつくる」「育てる」で構成されている。展示空間も安藤自らデザインした。

《プロローグ》

〈独学時代、世界放浪の記録〉
設計活動をスタートする以前に行った世界放浪は、安藤の建築観に深い影響を与えた。トラベルマップや写真、スケッチブック等を通じて何を見て何を感じたか、その断片を読み取ることが出来る。


折り畳み式スケッチブック

《安藤忠雄の仕事場》


〈大淀のアトリエ〉
逐次増改築が行われ、即興的な改造の積み重ねは来訪者の意表をつく不連続な空間をつくり出した。


アトリエの一部を再現。安藤の日常やパーソナルな部分を垣間見る。

《セクション1 原点/住まい ORIGINS / HOUSES》
安藤にとって人間の「住まう」という最も根源的な営みを受け止める住宅こそが、建築の原点。その作品の展開の中で、打ち放しコンクリート、単純な幾何学的造形、自然との共生といったキーワードに象徴される、安藤建築の原型は完成した。ここでは、初期の代表作から近年の圧倒的スケールの海外作品まで、100を超える住宅作品を紹介する。






〈マンハッタンのペントハウス III(進行中)〉
マンハッタンで構想した3つ目のペントハウスの計画。1912年に建てられた12階建ての集合住宅の最上階を、現代美術の画廊経営者の依頼で改装する。螺旋階段でつながれた屋上にはテラスが設けられ、植物学者パトリック・ブランと協同で制作する緑の壁がアートとしての自然を演出する。




音声ガイドマークがある場所のひとつ(計15箇所で安藤による音声ガイド解説を聴くことができる)


〈六甲の集合住宅〉

《セクション2 光/LIGHT》
極限までそぎ落とされたようなシンプルな造形。その無地の「カンヴァス」に光や風といった自然の息吹が映し出されることにより、安藤忠雄の目指す空間が生まれる。ここではその意図がもっとも端的に現れているの一連の教会作品を紹介する。




屋外展示場。〈光の教会(1989)〉を原寸で再現。

内部。実物と異なる点は、十字架のスリット部分にガラスが無いことだ。当初から「無いほうがいい。いつか取ってやりたい」と言い続け諦めなかった安藤氏の執念ともいえる思いが此処に。




《セクション3 余白の空間/VOID SPACES》
自らを「都市ゲリラ」と称した安藤が、都市において一貫して試みてきたのは、意図的に「余白」の空間をつくりだし、人の集まる場を生み出すこと。〈ローズガーデン〉〈STEP〉といった初期の仕事から〈表参道ヒルズ〉〈東急東横線 渋谷駅〉といった2000年以降完成の都市施設、近年の〈モンテレイ大学〉〈上海保利大劇院〉といった海外都市でのビッグプロジェクトまで。規模もプログラムも時代状況も異なるが全て"余白の空間の創造"という一点においてつながっている。


〈中之島プロジェクトIIー地層空間 計画案〉9980×1092mmドローイングや〈アブダビ海洋博物館 計画案〉アクリル模型など


〈上海保利大劇院〉




〈21_21 DESIGN SIGHT〉
展示台などに直接描かれた安藤氏の手描きのドローイングも本展の見所のひとつだ。


〈表参道ヒルズ〉

《セクション4 場所を読む》
大自然に包まれた立地での安藤建築が登場するようになったのは、1980年代末から。一貫するテーマは、周辺環境と一体化してその場所の個性を際立たせるような建築。

〈直島一連のプロジェクト〉
空間インスタレーションを中心にパネルや映像など。


模型は中央工学校 建築倶楽部が手掛けた。


〈真駒内滝野霊園 頭大仏〉
北海道の緑豊かな霊園敷地内の一角に、15年前に築造された石の大仏があった。これをより"ありがたく”見せるべく提案したのが大仏の頭部より下をラベンダーの丘で覆い隠すというアイディア。


〈フォートワース現代美術館〉

《セクション5 あるものを生かしてないものをつくる》
安藤にとって、歴史の刻まれた建物の再生は、常に挑戦心をかき立てられるテーマ。ここでは、この古い建物の保存・再生に関わる作品の系譜を初期の未完に終わったプロジェクトから、国内での実現作品、歴史都市ヴェニスでの「プンタ・デラ・ドガーナ」を中心とする一連の作品、現在パリ中心部で進行中の最新プロジェクトに至るまで一挙公開。


〈プンタ・デラ・ドガーナ〉


〈ブルス・ドゥ・コメルス〉
いま新たな挑戦として取り組んでいるプロジェクト。
敷地はルーヴル美術館とポンピドゥ・センターの間に位置するパリ中心部。19世紀に建てられた元穀物取引所の建物を50年間借り受け、ピノー財団所蔵の現代アートを展示する美術館へと改修する。歴史的建造物の中に、コンクリートの壁に囲まれた空間を新設するという大胆な挑戦。2019年オープン予定。

《セクション6 育てる》
建築という枠組みを超えた社会活動への旺盛な取り組みについて。ここでは完成後の建物の周辺環境整備から、地元大阪でのまちづくり活動、瀬戸内海沿岸、東京湾岸部での環境再生運動まで、建築づくり=環境づくりと考える安藤の思想を、ドキュメンタリー映像を用いて紹介する。 

植樹活動で大きな力となったのは市民一人一人の参加。「皆が日常の生活風景の問題を我がこととして捉え、その思いを少しでも何か行動に移すならば、それは何よりも創造的で可能性に満ちた挑戦となるでしょう」と安藤氏。

最後に紹介したいのは、展示物の中で異彩を放っている、手作り感たっぷりのユニークなパネルたち。安藤が普段からクライアントに贈っているものであり、コミュニケーションツールと言えるだろうか。







安藤忠雄氏。「国立新美術館10周年ということで館長より『建築の展覧会をやってほしい』と頼まれたのがきっかけです。挑戦してきたというよりも、一つ一つ仕事を積み上げて自分なりに全力で生きてきました。これからも人々の記憶の中でそこにあってよかったと思われる建築を作りたい」

【安藤忠雄展ー挑戦ー】
会期:2017年9月27日(水)~12月18日
会場:国立新美術館 企画展示室1E+野外展示場
詳細:www.nact.jp/exhibition_special/2017/ANDO_Tadao

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「窓学展 – 窓から見える世界」レポート

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9月28日からはじまる窓学10周年記念「窓学展 – 窓から見える世界」の内覧会に行ってきました。会場は南青山のスパイラルガーデン。
出展者は、ミケーレ・デ・ルッキ、レアンドロ・エルリッヒ、鎌田友介、ホンマタカシ、五十嵐太郎、小玉祐一郎、佐藤浩司、塚本由晴、中谷礼仁、原広司、村松伸+六角美瑠と多彩だ。会場構成は西澤徹夫が担当。


概要:「研究者・建築家とともに窓をアカデミックに調査・研究する『窓学』。様々な蓄積を経て今あえてゆるやかに定義するならば、“窓”とは『私たちの日常に寄り添い、暮らしに楽しみをもたらすもの』といえるでしょう。本展はこうした“窓”をめぐる知性や感性を、世界共通の文化として俯瞰し、その魅力に新たなまなざしを向ける展覧会。」


「窓学」とは、YKK APが2007年に開始した「窓は文明であり、文化である」の思想のもと窓を学問として多角的に研究する活動です。窓を歴史的、文化的に位置づけ、その新たな可能性や魅力を提示することで、よりよい建築、都市、社会づくりに貢献することをめざして活動している。


壁面には窓学10年の歴史とミケーレ・デ・ルッキの特別展示(写真)、什器を使った研究展示が7点、作品展示が3点からなる。


作品展示 〈窓と梯子 – 歴史への傾倒〉
レアンドロ・エルリッヒ


エルリッヒと言えば、金沢21世紀美術館に常設されている〈スイミングプール〉が有名だ。




アート作品をあまり解説しないほうが良いが、ワイヤーで吊られることなく梯子で自立している。


レアンドロ・エルリッヒさん
「アトリウムのスロープに沿って原広司さんの研究展示〈窓のものがたり学〉と呼応するかちで、窓が本来持つ力を呼び起こし、窓の想像力をかき立てる新作を制作しました。」


研究展示〈窓のものがたり学〉 原広司


グリム童話や宮沢賢治、シェークスピアなどの物語の中で表現された窓は、私たちの創造力をはるかに超えた豊かさを示してくれる。
「待て、何だろう、あの窓からこぼれる光は? 向こうは東、ジュリエットは太陽だ。」


ギャラリースペースでの研究展示は西澤徹夫がデザインした窓付きの什器。
「スパイラルガーデンの特徴である展示スペースごとに、サイズ、形態、内容、訴求性、情報などを振り分けて整理し、シークエンス、滞留、場所、読み流れを作っています。そして、この展示計画そのものが窓学への窓となることを目指しました。」


展示ディレクター 五十嵐太郎さん。
「窓学は世界でも類がないユニークなリサーチプロジェクトとして10年前に始まりました。これまでの展開の中で意匠、言語、環境、健康、民族、歴史、物語、漫画、映画などその射程は様々な領域に広がりました。展覧会という場を活かしてアートやインスタレーションにも挑戦。個性的な研究発表を通じて、窓が建築のもっとも魅力的な部位である事を感じていただきたいと思います。」


〈窓の漫画学〉 五十嵐太郎
サザエさん、ドラえもん、こち亀といった国民的漫画に登場する窓から、窓辺の生活や時代の移り変わりと、ストーリーを豊かにする舞台装置としての窓を読み解く。


〈窓の環境制御学〉 小玉祐一郎
ルイス・カーン「フィッシャー邸」、自作「高知・本山の家」、アルヴァ・アアルト「アアルト自邸」において、窓は実際どう機能しているのか、風、光、熱のシュミレーション解析を行った。


〈窓の記録学〉 中谷礼仁
日本の伝統的な建築に窓はなく、柱と柱の間に取り付けられる壁、障子、襖などでありそれらを「柱間(はしらま)装置」と呼ぶ。「柱間装置」に関わる日本の風景を映像に記録した。


〈窓の進化系統学〉 村松伸+六角美瑠
窓は様々な系統に分かれながらも樹形図のように進化してきた。そして現代、さらに面白い方向に進化しようとしている。古今東西の窓と建築模型と共に、その歴史を紐解く。


〈窓の民俗学〉 佐藤浩司
文化人類学者として長年、原始的な生活が残る地の建築を訪ね歩く際使用する道具や、スケッチなどを展示。


〈窓の仕事学〉 塚本由晴
日本の伝統的な生産工程が残る工房や食品加工所などで、人間ではなく物や食品に対して窓がどう関わるかを調査。




作品展示 〈不確定性の透視図法〉 鎌田友介
窓のオブジェ。窓のようでありながら、重なったり、変形されたりして、人や風景をとりこむ。


作品展示 〈Camera Obscura Studies, La Tourette〉
ホンマタカシ


針穴を通して外の風景が室内に逆さまに映し出されるカメラオブスキュラの原理を使い、ル。コルビュジエが設計したラ・トゥーレット修道院の寝坊部屋を丸ごとピンホールカメラにし、窓から見える風景を露光させ撮影した。


撮影された写真。


実際の寝坊部屋。


スパイラルの外から。

【窓学展 – 窓から見える世界】
会期:2017年9月28日(木)~10月9日(月・祝)
会場:スパイラルガーデン(東京都港区南青山5-6-23)
詳細:http://madogaku.madoken.jp/exhibition

【窓学展―窓から見える世界―巡回展】
会期:2017年10月21日(土)~11月12日(日)
会場:金沢工業大学ライブラリーセンター(石川県野々市市扇が丘7-1)
※その後、東北大学、名古屋工業大学、大阪市立大学、九州大学を巡回
※巡回展では研究展示のみ。

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藤原徹平による鎌倉「稲村の森の家」

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藤原徹平/フジワラテッペイアーキテクツラボによる鎌倉「稲村の森の家」を見学してきました。江ノ電 極楽寺駅・稲村ガ崎駅より徒歩15分程の住宅地。


敷地面積479m2、建築面積94m2、延床面積184m2。鎌倉特有の山を背負った敷地で、山と住宅地の境に位置する。
宅地化可能なエリア以外に、後方に見える山を含め土地全体は4,000m2ある。鎌倉市の条例で山の維持・管理ができなければこの土地を購入できないそうで、所有すると鎌倉の風土を守る責任を負うこととなる。


敷地は更地であったが、既存の地下駐車場(右)から、大谷石の擁壁が続いていたものを左側半分を掘削し、駐車場兼ポケットパークのような役割を持たせる。
海辺→緩い坂を上る住宅街→敷地・建築→山と繋がるシークエンスの接続点として機能する。確かにここに擁壁が立ちはだかっていては、山と住宅街は分断される。


地下駐車場だった場所はトンネル状の貸しギャラリー「INAMORI」として、街に対して積極的に開く。


駐車場奥の土を掘り、穴を空けギャラリー併設の「喫茶スペース」へ通じる階段が現れる。


階段を上がると1階に暖簾の掛かる喫茶スペース。右手には縁側、そして芝も見える。
建蔽率は何と19.6%。ゆったりと建っている。

左に移動したところで全貌が露わになった。


ここで模型を見て頂くと分かりやすい。地下ギャラリーを抜けて、敷地の上へ。掘削した駐車場の土は敷地後方へ運び、山へのアプローチし易いように斜面をなだらかにした。
取り囲むような山+森から生活圏、掘削した斜面や広場、街へと連続する様子が理解できる。


奥の人がいるあたりから山への散策路も作っていく予定。右には家庭菜園作りが進行中で、既に収穫もしている。


外壁はレッドシダー。


建物は二つのボリュームが繋がったようなかたち。出窓やバルコニー、縁側、ピロティーなどなど、外へ繋がろうとするアクションが多彩だ。


ピロティーには家族用の玄関や作業場がある。"山を管理・維持” しなければならないことから、DIYや畑仕事が大好きな奥さまのお父さんがしばしば訪れ、ご主人と共に庭造りや山道の開墾を進めている。
またギャラリーの延長としてワークショップなどの開催も視野に入れている。


正面には軒と庇を設え、ギャラリーから喫茶スペースにアプローチさせる。足元は真砂土と、左に見える飛び石は擁壁に使われていた大谷石を流用した。


喫茶スペースは15席ほどの規模。右奥にキッチンがあるが生活用のキッチンでもあるので、家族が朝食をこちらでも摂るという。
天高は梁下で2m程と低め。それに合わせるようにテーブル高も低めで63cm、椅子も低く子どもたちを集めた地域のイベントなどに活用できるよう、大人用・子供用の中間の高さだ。


フロアの片隅には薪ストーブ。テーブルは台形で用途に応じて並べ方を変えられる。椅子やテーブルはフジワラボのデザインによるオリジナルだ。


窓際席からは緑を切り取る全面開口。心地良い風が吹き抜ける。


山と街の境に建つ建築の、外と内の境は絶妙に曖昧。


内覧会当日は焼きおにぎりのランチとワインをいただいた。
今のところ木〜土で週2〜3日の営業なのでチェックしてからどうぞ。


2階居住スペースへ。


2階へ上がると直ぐに水回りが現れた。


水回りは反対側にも通じており回遊型の動線をとっている。下の喫茶スペースが営業中でキッチンが使えないとき、お湯くらいは沸かせられるようにと手前にIHヒーターを備えた。
空間の中心が暗くならないようにトップライト。


2階の天高は高いところで3.5m。天井ぎりぎりまで開口を取り、山が室内に入り込んでくるようだ。

反対側は3m以上の一枚ガラス。坂を上ってくるとこの窓がこの家のシンボルとして見えてくるのだ。
遠くに湘南の海も望むことができる。


ほぼ外のように感じられるフリースペース。
これだけ山に近いと窓枠の外には蜘蛛の巣がすぐ張られる。「掃除は大変ですが、それだけ自然に近い環境で暮らしているのだと実感する。」とお施主さん。


水回りの裏は寝室。家族4人で川の字に寝ているという。子どもの成長に従って分割、或いはこの下のピロティーを改築して寝室にすることもできる。
右に見えるバルコニーは1枚上の写真で見えるバルコニーと同じなのでここも回遊動線だ。


「お施主さんは30代のご夫婦と2人のお子さん(写真は違う)。東京の下町に暮らしていましたが東日本大震災で住宅に対する考え方が変わり、100年先になっても住み続けていくような『人間のための居場所』が必要だと感じたそうです。いくつかのイメージをもって依頼され、我々はこの住宅で街と森の境界を建築化しました。住むことと人を迎えること、様々な活動が渦を巻くように同居しながら、おおらかで協同的な状況をつくりだす多言語の建築を目指しました。」と藤原徹平さんと、担当の岩井一也さん。

【INAMORI】
・神奈川県鎌倉市稲村ガ崎5-39-20
http://inamura-inamori.com/

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佐野健太による新大久保の「DOMO CAFÉ」

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"日本と台湾をコーヒーでつなぐ"をコンセプトとしたDOMO CAFÉ(ドウモ カフェ)が新大久保にオープンし内覧会が開催されたので行ってきました。

DOMO CAFÉは、台湾で人気のカフェと、京都の自家焙煎珈琲のお店の二つが組み合わさった、日台が融合したカフェ。インテリアデザインは元・伊東豊雄事務所でオペラハウスなどの設計に携わった建築家、佐野健太(佐野健太建築設計事務所)が手掛けた。

場所は、JR新大久保駅から徒歩約3分。大通りから路地を入った落ち着いた雰囲気の場所にある。面積は80.13㎡。

4階建て集合住宅の地下1階にある一部分がカフェだ。

店内。コンクリートの壁が部屋を真二つに分けるようにカウンターキッチンまで続いている。


コンクリート壁は動線上視界上の障害となっていたが、それをあえて二つの異なる世界をつくりだす残した要素として残した。ブランドカラーであるパステル調のピンクとグリーンをそれぞれの空間に用い、日本と台湾、深煎りと浅煎り、カジュアルな空間と落ち着いた空間、というような対称性を表現。

 
「CASUAL AREA」
一人でも気軽に立ち寄れるようなハイカウンターテーブルに、パソコン電源なども設置されているテーブル席。


壁の向こう側は「RELAX AREA」。
複数人で利用できるテーブルやソファ席などゆったり過ごすことができる。自然と会話が生まれるような空間を目指し、家具の設計や選定においては、とくに距離感を意識したという。

 
カウンター席はバーのような感覚で利用することもできる。

 
ソファ席からカウンターキッチン側の見返し。

佐野健太氏
「設計で大切にしたいと思っていることは、その空間を通じて人々の間につながりのきっかけをつくりだすことです。基本的に日本をベースに活動をしていますが、これまでのキャリアのなかで台湾とのつながりがとても深くなりました。今後も今回同様両国の掛け橋となれるようなプロジェクトに携わることができればと考えています」

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前田紀貞+白石隆治による横浜の住宅「NOSTALGHIA」

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前田紀貞(前田紀貞アトリエ)+白石隆治(RS STUDIO)による横浜の住宅「NOSTALGHIA」を見学してきました。


敷地面積135m2、延床面積101m2。鉄骨造2階建て。


引いていくとこのように傾斜地の畑が広がる。横浜の、それも東横線の駅から10分程でありながら奇跡的な環境だ。


エントランス側へ。当日は外構の工事がまだ行われていてたが、ピロティの下は駐車スペースになる。


エントランスからすぐに広いワンルームのLDK空間。1階には他に小さな書斎がある。


室内には何段かのステップよって高低差が付けられている。


そして大開口の向こうには “ご近所” がない景色が広がる。




ステップはそのまま外のテラスに連続し、、、


それは周囲のランドスケープに呼応するように設えられているのだと理解できる。テラスから眺める、季節毎に移ろう景色はライブ感抜群だろう。
畑は複数の地権者が所有しており、生産緑地に指定され、広い道路に接していないなど、簡単には開発されるこはないと推測される。


2階へ上がる階段は突如黒くなる。その前に天井から垂れ下がるものは何か?と思われるだろうが、その「何これ?」が正解だそうだ。
ここに住まう子どものが「何これ?」と疑問に思い、触れ、考え、様々に想像するのだ。


黒い壁と黒いチェッカープレートの階段室を上がっていく。




2階はそのまま黒の別世界だった。開口からの明かりが差し込んではいるが、明るい1階からここへ来ると、脳がリセットされるような不思議な感覚になる。
左の隙間は「籠もり部屋」。通常であればこの分を個室に含めたいところだが、これも単調にならない住空間をつくるためだ。


廊下の奥から。壁は黒板塗料なので、子どもの自由な創作スペースでもある。
左に水回り、奥が主寝室、右が子供室。


水回りは真っ白に。


全面FRP防水で、至るところに手の込んだRが付けられている。


洗面周りもRを多用して全てFRPだ。


子供室。借景の緑が望めるいい環境。


主寝室からはバルコニーに出られる。回遊型のバルコニーで浴室や廊下からも通じている。当然子どもが走り回れるようにだ。


バルコニーからは敢えて背の高い金網を張り、1階とは異なる風景の見え方を演出した。


前田紀貞さんと、協働の白石隆治さん(RS STUDIO)は長年前田アトリエのチーフを務めていた。
「お施主さんは時間を掛けこの敷地を見つけ、我々に唯一無二のもを期待されました。ここから広がる記号化されていない景色を見て、周囲と一体化しながら建築自体も記号化されていないものを作るべきだと思いました。溶けた階段をはじめ、ステップは並行でなければ、壁は直角でなければ、廊下は真っ直ぐでなければ、などといった既成の当たり前を排除し、お子さんの記憶が熟成されてゆくに最も敏感な時期に、濃密な匂いが建築自体から滲み出てくることを期待して計画しました。」

【NOSTALGHIA】
建築設計:前田紀貞アトリエ+RS STUDIO(白石隆治)
構造設計:梅沢建築構造研究所
施工:和田建築

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竹尾「紙のかたち展2 ふわふわ、ごろごろ、じわじわ」

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竹尾見本帖本店で10月6日から開催の「紙のかたち展2 ふわふわ、ごろごろ、じわじわ」に行ってきました。
萬代基介、中山英之 + 砂山太一、猪熊純の3組の建築家が「紙のかたち」をテーマに作品を制作。企画・ディレクションは中﨑隆司、グラフィック・会場構成は田久保彬。


2015年の「紙のかたち まるめる、かさねる、ひっぱる」に続く「紙のかたち」展シリーズの第2弾。


「ふわふわ」「ごろごろ」「じわじわ」という言葉が浮かぶそれぞれの表現を通して、新しい紙の可能性を探る。


〈ねり紙 - ふわふわ〉 萬代基介
紙を手で "ねる"ことで形を自由に作れる粘土のような紙。


和紙に細い針金が漉き込んである。(会場限定で1枚1,500円で販売もしている)




捻ったり、つまんだり、曲げたり、何かに押し当てて型を取ることもできる。


萬代基介さん「何でもできるので沢山作ってしまいました。会場にはサンプルもあるので実際にねってみてください。」


〈かみのいし - ごろごろ〉中山英之 + 砂山太一
紙の主な用途は印刷物とパッケージ。印刷と立体。それならば、と伝えるべき情報や、包むべき商品がない、ありふれた石をスキャンして印刷し、展開図を工夫して立体にしてみた。


6種類の石は高精細に撮影し、25面体に分解。それを組み立て可能なように展開図に落とし込んだ。


実際にスキャンした石はこんなにも小さい。
右は組み立てキットで、会場限定販売18,000円。


日常の中に石を置いてみた写真も。


中山英之さん(右)、  砂山太一さん(左)
「はじめイチゴなどフルーツも考えましたが、拡大すると単に大きなイチゴにしかなりません。でも石は拡大しても石のままなのが発見でした。」


〈光の残像 - じわじわ〉 猪熊純
紙を、光や時間といった物質ではないのもを表現するメディアとして捉えた。


感熱すると色がなくなる特殊塗料が塗られた紙でできた箱型の筒に蛍光灯が光る。


時間が経ち蛍光灯は消えるが、感熱した部分は光の残像のように残る。


それもやがて時間の経過と共に消えてゆき、元通り青くなる。


猪熊純さん(右)と、スタッフの長谷川駿さん。
「この照明に完成はなく、光の残像と、ゆっくりと変わる呼吸のような変化を楽しんでもらえればと思います。」

(※紹介した全ての作品は、出品者がその知的財産権を保有しており無断で模倣することはできません)
[Each designer retain the intellectual property rights in all the works introduced here. Reproduction or imitation of these works without written permission is strictly prohibited.]

【紙のかたち展2 ふわふわ、ごろごろ、じわじわ】
会期:2017年10月6日〜12月1日
会場:株式会社竹尾 見本帖本店2F(千代田区神田錦町3-18-3

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伊藤暁による「横浜の住宅2」

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伊藤暁(伊藤暁建築設計事務所)による「横浜の住宅2」を見学してきました。
2014年に完成した伊藤さんの自邸から至近で、工務店からの紹介だったという。


敷地面積166m2、建築面積68m2、延床面積106m2。木造2階建て。
傾斜地の住宅街で、北側には比較的人通りの多い生活道路と神社の森に面している。


正面から見ると反対側まで見通せる開口がある。


敷地は接道より1mほど下がっている。


玄関は土間になっており、そのまま南側の庭まで通じ、遠くまで見渡せる風景と、後ろは神社の森だ。吹き抜けと天井までの大開口で、建物の断面をつくっているようだ。


玄関扉と、庭側の扉は1階天井まである高さ2.9m。南アフリカ人の施主はこの扉を見て「Big is good!」と言ったとか。


南北に門型フレームを構築し、東西に広い(長い)空間を持たせた。それをこの土間・吹き抜けで分節し、空間を緩くゾーニングした。


土間はL字に展開し、奥はキッチンに直通。箱型の収納は上着などを掛けるクローゼットで、靴は縁の下にしまう。


振り返るとAVルーム。後ほど施主の自主施工により正面の壁はプロジェクター投影用に白く塗装される。


門型のフレームが奥へ連続する。


土間を渡りフリースペースと奥にDK。


フリースペースで左を見ると寒冷紗を使ったのオリジナルの簾戸が。


太鼓貼りされているのでモアレ越しに神社の緑と通りを行く人がうっすら見える。


右を向くと庭に面して全面ガラスなので、ここも南北が開口で抜けていることとなる。


キッチンは広い作業台とたっぷりの収納。DKの中心には柱が立つが、ダイニングテーブルが置かれるので気にならなくなる。


DKから振り返ると南北だけでなく、東西にも抜けているのが分かる。


キッチンの奥から。仕上げる必要のないところは仕上げない(コストを抑える)、伊藤さんの流儀。


森と街、家の境界を土間がバッファーとして調停する。密度のある魅力的な風景は、細かな操作がなされた結果だろう。


DKから庭に出ると雁行する小気味よいテラスやバルコニーが現れる。左に植わるミカンは、土地の売り主さんから美味しい実が生ると教えられ残した。もう少しで収穫だ。


2階へ。グローゼットは完全に階段の一部と化している。

潔い手摺のディテール。



吹き抜けの土間は、2階では渡り廊下で子供室へ接続されている。門型フレームの様子が分かりやすい。
左右の、大壁なのか真壁なのかよく分からない不思議な納まりを見せる壁を伊藤さんは「三六判の石膏ボードがここまでくるならここでいい。この後塗装されるので、パネルを貼ったみたいで面白い。」と話す。


子供室の壁も施主やお子さんが自身で塗装するそうだ。
右手奥に見える白い箱はトイレ、さらに奥に水回りと主寝室の扉が2枚。


主寝室。バルコニーからは谷側なので隣家の屋根の上を見渡すことができる。


ウォークインクローゼットには水道管と排水管が。


回り込むと洗面台だった。


伊藤暁さん(右)と、大阪から見学に立ち寄った前田茂樹さん(左)。
「南アフリカ出身のご主人はとても豪快で、大きな空間を中も外も全部開け放つような住宅を望まれました。奥さまのご意見も調整しながら大きな気積でありながらも、空間を程よく分節し、おおらかで変化のある住宅を提案できたと思います。」

【関連記事】
伊藤暁自邸「横浜の住宅」

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クライン・ダイサム、長坂常、CKRらが参加の「DESIGNART2017」レポート

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今年から新しく始まったデザイン&アートフェスティバル「DESIGNART(デザイナート)2017」。"Emotional Life~感動のある暮らし~"をコンセプトに掲げ、表参道、原宿、渋谷、代官山、六本木をメイン会場として72箇所で開催された。
発起人は青木昭夫/MIRU DESIGN) 、川上シュン/artless Inc. 、小池博史/NON-GRID/IMG SRC 、永田宙郷/EXS 、マーク・ダイサム&アストリッド・クライン/Klein Dytham architecture


インフォメーションセンターはこちらのワールド北青山ビルとスパイラルの2箇所。会場の目印となるフラッグは山縣良和、スタンドは芦沢啓治がデザインを手がけた。


オフィシャルカー「DESIGNART×MINI」。
宣伝も兼ねて街中を走る(3台ほど用意されていたらしい)。

本イベントの楽しみ方は実に自由だ。例えばiPhone専用オーディオガイド「ON THE TRIP」をインストールすれば、展示作品の概要のみならず、開催エリア内に点在する建築散策ができる。また点在する会場はファッションブランドの旗艦店なども多く、新作チェックにも好都合だ。また展示されているほとんどのものは値段付きで購入することができるため、最新のデザインアイテムを狙いに本気でショッピングをすることもできる。

出展する側も、選択趣旨が増えたことで、新しいコラボレーターと共同したり取り組んでいることを発表する場として、よりオリジナリティを出しやすい状況が生まれていた。トータルでデザインを様々な角度から考察する機会となっていたことは間違いない。

ほんの一部ではあるがプレスツアーなどで訪れた展示を紹介する。

ワールド北青山ビル

ピエール・シャルパン個展「From the studio」
フランス人デザイナー、ピエール・シャルパンによる東京初個展として開催。タイトルの通り、シャルパン氏のスタジオの壁や棚に置かれているアイテムの数々を展示。ガラスファサードには、シャルパン氏がカラー監修を行なった塗料「BELAY」を使用した新作アートワークも。


デザインやドローイング、スケッチ、プロトタイプなど彼が手がけたものから、収集したものまで。


ピエール・シャルパン氏とTAIYOU&C.からリリースの新作シェルフ。

【ORANGE BRAINERY】

「プロトタイプ展 〜未来のデザイン〜
オレンジ・アンド・パートナーズ、ジョージクリエイティブカンパニー、キャンプファイヤーの3社共同プロジェクトとして開催。様々なジャンルのクリエイターの試作品や、クラウドファンディングで実現を目指すアイディアなどの「プロトタイプ」にフォーカスした展示。

参加クリエイターは谷尻誠、吉田愛、須賀洋介、室井淳司、noiz、寺田尚樹、ドリルデザイン、角田陽太、minna、長谷川依与、EVERY DENIM、OTON GLASS、法政大学。

〈OTON GLASS〉島影 圭佑
文字を読むことが困難なディスクレシア、弱視者、海外渡航者を対象とした「読む行為」をサポートするスマートグラス。視覚的な文字情報を変換することでユーザーはその内容を理解することができる。


〈Magic Loop〉法政大学デザイン工学部システムデザイン学科の学生・卒業生
ロープに内臓された60個のLEDの光が、跳ぶ速さや跳び方によってインタラクティブに変化する。光の軌跡は残像となって様々な模様を描き出し、点滅のパターンによっては空中に絵を描くような光り方にすることもできる。

そのほかにも抗火石を使用した電気コンロや、投げ方によって光り方の変わるフライングディスク、線香花火をモチーフにしたベッドライトなども出展。


〈Underwater Stool〉noiz
待合室用のスツール。noizが今年BAO BAO ISSEY MIYAKEポップアップストアの一部としてつくった波打つビニール構造の什器と同じ構造にステンレスのロッドで補強したもの。


〈社食堂のおかんカレー〉谷尻誠、吉田愛
多忙なスタッフの栄養管理を考えたSUPPOSE DESIGN OFFICE社食堂の新メニュー。

マッキントッシュ

フィリップ・ニグロ×AKITA-NDA 
漆職人の佐藤公、曲げわっぱ職人の柴田昌正、フランス人デザイナー、フィリップ・ニグロが立ち上げた伝統工芸をモダンに昇華させた「NDA」シリーズ。スツールや花器。サイドテーブルのお値段は160万円。

kolor】
長坂常/スキーマ建築計画
会津塗りを用いた新作のテーブル。素材感が強く感じられるよう綺麗すぎない漆の表現を追求。「手掛けるプロジェクトに欲しいと思えるものをつくっています。このシリーズも今後展開していきます」

【KASSETTE OMOTESANDO

松山祥樹 「Small World Project」
三菱電機株式会社デザイン研究所のプロダクトデザイナー松山祥樹による、インドネシア東部の港町から離れた村々をバイクで巡り魚を売る人々との出会いからスタートしたプロジェクト。魚を新鮮なまま販売するため、バイクの電源で動く小さな冷蔵庫と、その形状をアレンジしたリビングやベッドルームのための冷蔵庫のプロトタイプを展示。

【GALLERY 360°】

クラーソン・コイヴィスト・ルーネ 「Facem」
ストックホルムの建築事務所クラーソン・コイヴィスト・ルーネによる12枚のプリントシリーズ。12の超高層ビルを選び、分析及び再解釈。「比率を大事にしました。超高層ビルは現代的だけどクラシック要素もあり魅了されます」 




建物の”顔”をフィーチャー。
左:Commonwealth Promenade Apartments / Mies van der Rohe 右:Bibliotheque nationale de France / Perrault

【アシックス

アンリアレイジ 「KALEIDOSCOPE COLLECTION」
アシックスと、ANREALAGE(アンリアレイジ)のコラボーレーション。都会の夜のランニングや街歩きに映えるデザインとして、幾何学調のグラフィックを施した特別仕様の再帰反射プリントをアパレルの襟元や背中、シューズのアッパーなどに採用。日中はベージュを背景に繊細な模様が表現され、暗くなると光が当たるたびにさまざまな色や形が浮かび上がり、カレイドスコープのようなデザイン変化が楽しめる。
 

ライゾマティクスリサーチが手掛けた映像と特設インスタレーションも(写真は完成前の様子)

【フレッドペリーショップ東京

清水久和 「テニスの家具」 
英国の伝説的テニスプレイヤー、Frederick John Perryが展開するファッションブランドFRED PERRYショップにて、清水久和(S&O DESIGN) が「Tennis」をテーマに制作した作品を展示。ラケットと同じ製造技術でつくられる「ラケット・チェア」に加え、テニスボールやロッカーをモチーフにした作品など。


テニスロッカーと木の色を生かしたシックなポンスツール

【TOMORROWLAND渋谷本店

Katsuki Connection 「呼応の間/あなたのクリエイションが開花する旅」
テキスタイルデザイナーの香月裕子が展開するKatsuki Connectionの新作コレクション展示、販売、インスタレーション。


〈分身」bunshin〉 
越前和紙でできたクッション。折紙のアイデアを応用し、守り神や魔除けとも言われる"やっこさん”をモチーフにしたもの。

【100BANCH

FUTURE LIFE FACTORY
オリジナルレシピのフルーツバーをつくることができるパナソニックが開発中の調理家電「HARVEST」。海外では定番のフルーツバーを国内でも広めていきたいという。


会場の「100BANCH」は渋谷駅新南口からすぐの3階建てのビルで、パナソニック、ロフトワーク、カフェ・カンパニが共同で開設した空間だ。未来をつくる実験区として若い世代とともに取り組むプロトタイプやアート作品も展示しておりアイディアの種がそこかしこに感じられる。空間デザインはスキーマ建築計画が担当した。


〈拍手をあびるシャワー〉
蛇口をひねると大群衆による拍手サウンドが鳴り響く。

【B&B ITALIA TOKYO

沖津雄司 「lightflakes」
ミラノサローネ2017サテリテに出展した作品。フレネルレンズ(PET板)を用いて空間、用途に合わせて自由な造形をつくり出せるプロダクト。 





【CIBONE Aoyama

What is normalをテーマに、オランダ人デザイナー、ベルトイアン・ポットのパーソナルコレクション「Masks」シリーズを中心に構成される個展「Rope Works」の開催や、パリのセレクトショップ「Merci」のアートディレクターを務めるダニエル・ローゼンストロックが収集したさまざまなスプーンの展示とその出版本のローンチのほか、国内外の新進気鋭のデザイナーたちの新作を発表。

ベルトイアン ポット 「Rope Works」


ノーマル 「日々/HIBI」
ロス・ミクブライド/normalより約2年ぶりの新作。

【ifs未来研究所 未来研サロン WORK WORK SHOP

POP UP STORE 「HAY KITCHEN MARKET」
今年6月にコペンハーゲンでの開催を皮切りにスタートした「HAY KITCHEN MARKET」の巡回展。

【マテリアルコネクション東京

「MATERIAL DESIGN EXHIBITION 2017」
企業とデザイナーが組んで素材の可能性をデザイナー視点で引き出し、新しい用途につなぐ道筋を紹介する企画展。3回目となる今回はテーマを「BYPASS」。企業とデザイナーが見出した用途につなぐ新たな道=BYPASSを、プロセスの途中で生まれたサンプルとともに体感する。8組の企業とデザイナーが参加。会期は12月22日まで。


三和化工株式会社 × トラフ建築設計事務所〈ポリモックスツール〉
ビート板や梱包材として使われているポリエチレン発泡体「サンペルカ」の端材を圧縮成形し、様々な色の組み合わせでできたカラフルな迷彩模様のスツールを制作。


AGC旭硝子 × 伊藤聡一〈Dragon Scales〉
ガラスと天然木材を薄くスライスした突板を特殊な工法で貼合の上鱗状にした掛け軸のデザイン。

【artless appointment gallery

「FIL」
熊本県阿蘇郡・南小国町を拠点に自然の景観を守るため間伐された杉材などを活用した製品づくりを行うインテリア・ライフスタイルブランド「FIL」。artless Inc. が運営およびキュレーションを行うアートギャラリーを会場に、ブランドの活動を紹介。コッパーをアクセントにしたMASS Seriesのダイニングチェア、ラウンジチェア、ラウンドテーブルなどすべてCANUCH Inc.(カヌチ)が手掛けた。
展示期間終了後も予約制で見にいくことができる。 

【サンワカンパニーショールーム

「doradora」クライン ダイサム アーキテクツ×カリモク


気分や雰囲気に合わせて空間自体をカスタマイズしたくなる新しいソファユニットの提案。テーブルやスタンドライトなどさまざまなアクセサリーで、オフィスロビーのような空間から住宅まで多様なシーンに対応。


表参道ヒルズでAmazon Fashion Week TOKYOと合同で開催したオープニングイベント「PechaKucha Night」の様子。津村耕佑、吉泉聡(TAKT PROJECT)、Claesson Koivisto Rune (CKR) 、Moritz Waldemeyer等が登壇した。


イベント初日の朝、集まったメディアを前に挨拶をするMIRU DESIGNの青木昭夫さん。DESIGNTIDE、AnyTokyoなどこれまで開催されてきた秋のデザインイベントDNAを受け継いでいる本イベントのキーパーソンだ。

DESIGNARTは新しいイベントであるわけだが、マップ片手に街中に溢れるデザインを楽しむスタイル、一期一会のデザイン体験など、10数年前の東京デザイナーズ・ブロックのような親しみやすさがある。近年の秋のデザインイベントの流れを一度リセットしたかのような清々しさとともに、デザイン業界の未来へ注ぐ愛情を感じる。

【DESIGNART 2017】
会期:2017年10月16日〜10月22日
会場:表参道・外苑前/原宿・明治神宮前/渋谷・恵比寿/代官山・中目黒/六本木・広尾
詳細:http://designart.jp/designart2017/

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「吉岡徳仁 光とガラス」展レポート/21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー3

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11月2日から21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー3で始まる展覧会「吉岡徳仁 光とガラス/Tokujin Yoshioka Glass Project」の内覧会に行って来ました。

吉岡徳仁氏はプロダクトや商業空間など、詩的で実験的な独自の表現で国際的に活動するデザイナー。本展では光の表現に最も近い素材としてガラスに着目し、創作の本質に迫るというもの。代表作であるウォーターブロックシリーズから最新作のガラスの腕時計、プリズムを用いた建築物の構想まで、挑戦しつづける吉岡氏のデザイン観と光の世界を感じることができる(期間中、本展の作品はすべて撮影可能)。


ここで「おや?」と思った人は21_21 DESIGN SIGHT通かもしれない。本ギャラリーの展示では通常屋外に作品は展示しない。しかし吉岡氏が"どうしても"と自ら交渉し、このスペースでの設置が叶ったそうだ。


〈Waterfall / ウォーターフォール〉
世界最大のオプティカルグラスのテーブルである。スペースシャトルにも使用されるこの特殊なガラスは、4.5メートルにも及ぶ巨大なオプティカルガラスの塊によって作られている。美しい光の透過を全方向から眺めることができる。


ギャラリー内部。スペースには余白があり、ひとつひとつをじっくり観ることができるようにレイアウトされている。


〈Water Block/ウォーターブロック〉
透明でありながら光の屈折によって強いオーラを放つガラスのベンチ。 2002年の作品。


ギャラリー奥では新作などをメインに展示。


〈Water BlockーKATANA/ウォーターブロック ーカタナ〉
プラチナのモールドから生み出されたこの作品は、まるで水面のような造形をつくり出す。光の刀のような三角形の無垢のガラスにより、自然が生み出す美しさを水の塊の彫刻のように表現している。

〈Glass Watch/ガラスの時計〉
ISSEY MIYAKEプロデュースのウオッチ・プロジェクト。ガラスの存在感を感じさせる塊のような厚みが特徴。


セイコーウオッチによる緻密な形状加工と研削技術に加え、特殊な内部構造をつくることで実現された。 

〈Rainbow Architecture Project/虹の建築プロジェクト〉
建物上部の巨大なプリズムにより虹の光を体感するというあたらしい建築の提案。吉岡氏はこのように実現したいというプロジェクトをいくつかもっており、これは「Rainbow Churchー光の教会」につづく一連の虹シリーズ。

写真上がプリズムの模型(実際のものは10倍ほどの大きさを想定)


〈Dom Perignon×Tokujin YoshiokaーPrism/プリズム〉
ドン・ペリニヨンのアートプロジェクト。これまでビョーク、デヴィット・リンチ、ジェフ・クーンズなど国際的に活躍するクリエイターを招きコラボしてきた。日本人としては初となる。

光が透明なプリズムの表面を透過し屈折することで、無数の色のスペクトルが現れる。


話題を集めた「ガラスの茶室―光庵」や「虹の教会―Rainbow Church」などの様子を収めた映像も。


吉岡徳仁氏。
「いつもはインスタレーションですが、今回はオブジェの展示です。ガラスの取り組みは長く、20年位になります。これからも時代を越える常に新鮮なデザインを生み出していきたいです。現在2020年に向けたプロジェクトの関係で国内をメインに活動しています」

【吉岡徳仁 光とガラス】
会期:2017年11月2日~11月13
会場:21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー3
詳細:https://www.tokujin-glass.jp/

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「gravity」展レポート/DESIGN小石川

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芦沢啓治氏が運営するスペースDESIGN小石川で開催中の「gravity展」に行って来ました。7組の建築家、デザイナーが“gravity” = 重力(引力)をテーマにそれぞれデザインしたプロダクトを中心とした展示。参加デザイナーは、藤森泰司、藤城成貴、安積伸、TORAFU ARCHITECTS、二俣公一、DRILL DESIGN、芦沢啓治、tempo x ECAL collaboration。


本展は、英国人音楽家であるAnthony Moore氏からのメール「DESIGN小石川においてサウンドインスタレーションを行えるか?」からはじまったという。DESIGNARTの展示のひとつとして10月中から開催しており、会期中はムーア氏によるトークやライヴも開催された。


【スイング スタンド】TORAFU ARCHITECTS
「音楽×重力」というテーマから考案したメトロノームのようにゆっくりスイングするハンガースタンド。コートやカバンなどを引っ掛けると、少し傾いてバランスを取る。異なる長さで3種あり、それぞれ異なるテンポを刻む様子が面白い。


【Hapalua/ハパルア】藤森泰司
小さな置き型のモビール。木製の器と羽のような薄いパーツの間に、球状の真鍮のウェイトを挟んで組み合わせると、重力バランスによってすっと立ち上がる。


【wood steel lighting/ウッド・スチール・ライティング】芦沢啓治
同じ厚みの木材と鉄板を挟み込んでつくった照明。素材の重量バランスの関係で浮遊感がうまれ、不思議と軽やかさを感じる。一本の照明でも成立するが、数本を重ねることで建築的なモビールやシンプルなシャンデリアのような使い方もできる。


【IN THE SKY B.G. /イン・ザ・スカイ B.G.】二俣公一
E&Yより2010年にリリースしたコレクションラインedition HORIZONTALのひとつ「in the sky」のスケールを拡大したもの。針金を曲げてスタディを重ね、重力のもとにのみ成立する。より大きくなった同作が、重力のもとでどのような空気をつくり、どのように空間を切り取るのか、実際に体感できる。現在限定10台で製作・販売中。


【Dark Crescent /ダーク・クレセント】安積伸
三日月に身をもたげ、揺らぎを楽しむスウィング・ベンチ。三日月に人が座る「Paper Moon」という古典的なイメージをアイデアの源泉としている。


【Libra/リブラ】DRILL DESIGN
天井から吊られた1本のアームが、先端の光源の重さによって傾き、逆側は天井に接して重さを支える。天秤のようなシンプルな構造でモビールのようにバランスをとるペンダントライト。


【sticks/スティックス】藤城成貴
マグネットの力で、太さ、長さの違う2種類の棒を自由に形を作り上げて楽しむモビール。


【gravity waves/重力の波】Anthony Moore(アンソニー・ムーア)
サウンド・インスタレーション。上部に等間隔に設置された5つのスピーカーのあるエリア中央に置かれたスツールに座ると、音の振り子が大きな弧を描きながら自分の回りを揺れているようなサウンドに包まれる。


スツールはKarimokuのキャストールスツールプラス。5つの異なる樹種を無塗装で仕上げた本展示限定バージョンだ。

【Useless Machine/使い道のない器具】tempo x ECAL
栃木県足利市を拠点とするモビールブランドtempo(mother tool)との協働により、ローザンヌ美術大学(ECAL)、工業デザイン学科2年に在籍する学生たちが、日本滞在期間に得た異なる製造技術や知識を元にモビールを制作した。

展示は好評で、会期が12日まで延長された。

【gravity】
会期:2017年10月17日~11月12日
会場:DESIGN小石川
詳細:http://designkoishikawa.com/gravity2017/

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レベルアーキテクツによる埼玉の「志木の住宅」

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中村和基+出原賢一/レベルアーキテクツによる埼玉県志木市の「志木の住宅」を見学してきました。東武東上線 志木駅より15分ほどの住宅地。


敷地面積373m2、建築面積154m2、延床面積164m2。木造2階建。広さのある恵まれた敷地に芝を貼った大きな庭と、伸びやかな大屋根がよく似合う。


施主はここに建っていた築100年近い家に暮らしていたが、敷地を親族より分筆され今回建て替えた。南に面した前庭は親族の家と概ね共用スペースであることから、ほぼ全面が開口になっている。
左はシンボルツリーのシマトネリコだが、庭が広いのではじめから樹高5m以上のものを植えることができた。


敷地は “コ” 型に三面接道する。大屋根はガレージ部分で角度を変える。


ピンコロ石を敷き詰めた玄関アプローチ。


玄関扉を開けると石張りのたたきと引き戸。左へは収納を通ってキッチンへ直通できる。


引き戸を開けるとダイニング・キッチン。ダイニングは石貼りで、縦横2mの木サッシュの大開口から庭のテラスへとそのまま連続する。
石張りの床は玄関から連続する土間をイメージしているので、キッチンは数センチの段差を設けゾーニングしている。


キッチンは中央にコーリアンの天板を設えた大きな作業台が使いやすそうだ。エアコンは天井埋め込みを採用しすっきり。


ダイニングを抜けると二層吹き抜け空間が現れる。床は無垢のチーク材。


施主は既存住宅での空間感覚から、コンパクトな動線と包まれるような落ち着いたリビングを望んだ。天井も高く開口も大きいが、床レベルを40cmほど下げ、目線を低くすることで囲われた空間をつくった。


こちら、オーバースペック気味の柱だが、既存住宅の大黒柱を再利用したもの。足元の踏み板も大梁だったものを流用しこれからも家族を見守る存在だ。


リビングの片隅には小さなデイベッドを作り付けた。窓には肘掛けが付き、お茶や読書などを楽しむには格好のスペース。


リビング脇のトイレと手洗い。




主寝室はリビングから連続する床レベルを下げた空間のため庭が近く見える。開口は出窓になっておりデスクを作り付けた。




2階にはスタディスペースに面して左に個室が2つ、右奥には和室。
天井には意匠としても効いている2×10材の垂木が並ぶ。


反対側から。


和室は客間としても使用する。天井の傾斜に合わせた4枚もある扉がユニークだ。


和室側から。向かい子供室と予備室。


子供室は楽しい “基地” の雰囲気。ベッドはイケアだが、大工さんの職人技が合わさりこんなことに。右下の穴はもちろん隣の部屋に通じている。


「築100年の家にコンパクトにお住まいだったお施主さんは平屋を望まれましたが、プログラムを満たすためにはどうしても2階建てにする必要がありました。そこで平屋のフォルムに床レベルを操作し2階を挿入。床レベルを下げることで、大開口と多きな気積の開放感がありながら、包まれるような安心感を得られるリビングが実現しました。また上質な素材を使えることができましたので、空間だけでなく素材感のある心地よさを作ることができたと思います。」と中村和基さんと出原賢一さん。

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オンデザインの新オフィス

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西田司率いるオンデザインの新オフィスお披露目会に行ってきました。今年の夏、オンデザインはじめ多くのクリエーションオフィスが入居していた「宇徳ビルヨンカイ」が、組織としてビルとの契約が終了し解散。多くのオフィスが横浜の関内周辺に散り散りに移転した。


オンデザインは関内駅に400mほど寄った、築51年、泰生ビルの2階に新オフィスを構えた。


2階に上がると「ondesign」のネオンサインが出迎える。


エントランスの直ぐ左にはスタッフ全員のポートレートが並ぶ。28名の大所帯だ。


そのまま進むと、オンデザイン名物の “そこまでやるか模型” がズラリ。
数年前、オンデザインの模型展を見たときはほとんどが住宅であったが、近年は公共建築を含む大型プロジェクトも多く見られるようになった。


模型の多くは1年経つと廃棄されることから、これらは概ね1年以内に作られたことになる。
模型ラックの間にはテーブルがあり、通常はクライアントや業者との打合せをするスペースでもある。


奥へ進むと、グリーンに囲まれた大きなキッチンテーブルと、長テーブルが現れた。

足元は防水層を設え、屋外用チェアが並び、沢山のプランターと植物が吊り下がり、アウトドアをイメージしたグリーンゾーンだ。
植物は100鉢あり、コーディネートはSOLSO(金子結花)、右の散水が掛からないように撥水のレースカーテンを制作したのは安東陽子、屋外チェアのコーディネートはニチエス、照明のコンサルは岡安泉がそれぞれ協力した。


このグリーンゾーンを確保するために、スタッフのデスクを1人分当たり40cm削ったという。


各デスクで簡単な打合せや相談ができなくなった分、こちらの長テーブル使う。気分転換しながらの作業をするフリーアドレススペースとして。ランチ、イベントなどにも。


右のワークスペースが固定アドレスの「ON」、左のフリースアドレスのグリーンゾーンが「OFF」ということだ。




今回インテリアの主要素は植物と、この単管パイプ。これにより今後もフレキシブルにレイアウトが変えられる。それと水平使いされているの単管パイプと同サイズの丸棒はアラキ+ササキアーキテクツで開発した、その名も「モクタンカン」。


金属の単管パイプだけでは堅いイメージになるが、モクタンカンにより、木の温もりや柔らかを加えることができる。
ヒノキの間伐材で作られているそうだ。


オフィスの一番奥は模型制作スペース+書庫。

机上にはオンデザインのしごとのメソッドが収められた書籍「オンデザインの実験」(TOTO出版/2018年2月発売)。
内容は「プレゼンをつくる時の5ヶ条」「伝えるリサーチの5ヶ条」「地域/人の巻き込み方5ヶ条」「コンペに取り組むときの5ヶ条」と4つのテーマを5ヶ条にまとめてある。




西田司さん。「1日の多くの時間を過ごす場として、ONとOFFを切り替えられる気持ちのいい仕事場。トライアンドエラーを繰り返しながら様々な実験ができ、新しいことが生まれてくるオフィスを目指しました。ちなみに植物に囲まれた環境は、生産性が6%上がり、クリエイティビティは15%も上がる研究結果があります!」

【オンデザイン】
横浜市中区相生町3-60 泰生ビル2F
www.ondesign.co.jp


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